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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1231445
審判番号 不服2009-21332  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-04 
確定日 2011-02-04 
事件の表示 特願2003-145387「太陽電池モジュール用端子ボックス」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-349507〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年5月22日の出願であって、平成21年7月10日に手続補正がなされたところ、同年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月4日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成21年11月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年11月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成21年11月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1を以下のように補正して新たに補正後の請求項1とすることを含むものである。

「複数個の太陽電池モジュールを互いに並列に接続しうる太陽電池モジュール用端子ボックスであって、
結線用の開口部が形成されたボックス本体と、このボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの出力端が前記開口部を介して接続されるプラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子とを有し、
前記ボックス本体は、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に接続する2芯ケーブルを2本導出しており、各ケーブルの端部には共通の2極コネクタが設けられ、
前記2極コネクタは、雄端子及び雌端子が内側モールド部によって雌雄一体に樹脂モールドされ、さらに外側モールド部で被覆された二重成形構造を有し、外側モールド部は雌端子側に形成された嵌合凸部と雄端子側に形成された嵌合凹部とが相互に嵌め込まれる形状であり、
ボックス本体の一方に備えられた2極コネクタは、嵌合凸部内の雌端子がプラス側電極端子に導通し、嵌合凹部内の雄端子がマイナス側電極端子に導通し、
ボックス本体の他方に備えられた2極コネクタは、嵌合凹部内の雄端子がプラス側電極端子に導通し、嵌合凸部内の雌端子がマイナス側電極端子に導通して、
隣接する太陽電池モジュールに設けたボックス本体から導出する共通したコネクタ同士を互いに嵌合するだけで、一方のコネクタの嵌合凸部及び嵌合凹部が、他方のコネクタの嵌合凹部及び嵌合凸部に嵌め合わされ、同極同士が電気的に接続されることを特徴とする太陽電池モジュール用端子ボックス。」

本件補正は、補正前(平成21年7月10日付け手続補正後のもの)の請求項1において、「前記ボックス本体には、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に導通する複数個のコネクタが接続用ケーブルを介して備えられ、前記コネクタは、樹脂モールドされた雄端子及び雌端子を備え、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に導通するプラス極及びマイナス極の2電極で構成されたコネクタであり、これらのコネクタが、隣接する太陽電池モジュールの端子ボックスから導出された同極のコネクタと互いに嵌合して電気的に接続される」とあったものを、「前記ボックス本体は、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に接続する2芯ケーブルを2本導出しており、各ケーブルの端部には共通の2極コネクタが設けられ、前記2極コネクタは、雄端子及び雌端子が内側モールド部によって雌雄一体に樹脂モールドされ、さらに外側モールド部で被覆された二重成形構造を有し、外側モールド部は雌端子側に形成された嵌合凸部と雄端子側に形成された嵌合凹部とが相互に嵌め込まれる形状であり、ボックス本体の一方に備えられた2極コネクタは、嵌合凸部内の雌端子がプラス側電極端子に導通し、嵌合凹部内の雄端子がマイナス側電極端子に導通し、ボックス本体の他方に備えられた2極コネクタは、嵌合凹部内の雄端子がプラス側電極端子に導通し、嵌合凸部内の雌端子がマイナス側電極端子に導通して、隣接する太陽電池モジュールに設けたボックス本体から導出する共通したコネクタ同士を互いに嵌合するだけで、一方のコネクタの嵌合凸部及び嵌合凹部が、他方のコネクタの嵌合凹部及び嵌合凸部に嵌め合わされ、同極同士が電気的に接続される」と限定することを含むものであるから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

2 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物記載の発明
ア 引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-289893号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】複数枚の太陽電池モジュールを並列に接続して発電出力を集約する配線を含む太陽光発電システムに使用される太陽電池モジュールにおいて、並列接続の接続部を太陽電池のモジュール内部に設けたことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】太陽電池モジュールの正極および負極の端子を太陽電池のモジュール内部にて2つに分岐させ、1つの太陽電池モジュールから正極2端子、負極2端子を取り出し、隣接して配置される太陽電池モジュールと互いに正極同士と負極同士を接続することにより、複数枚の太陽電池モジュールの並列接続を形成可能としたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
・・・
【請求項7】1つの太陽電池モジュールから正極2端子、負極2端子を取り出すため、正負2対の出力取り出しケーブルを備えた端子箱を1つ具備することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュール。
・・・
【請求項9】端子箱から導き出される正負2対の出力取り出しケーブルが、互いに絶縁した状態で一体化された正負1対の2芯ケーブル2本で構成されることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】隣接して配置される太陽電池モジュールとの接続のため、端子箱から導き出される2組の正負1対の出力取り出しケーブルの先端にそれぞれ取り付けられる正負1対のコネクタが、互いに絶縁した状態で一体化された正負1対の2芯コネクタであることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池モジュール。
・・・」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は配線工事を単純化できる太陽電池モジュール、太陽光発電システム及びその施工方法に関する。」

(ウ)「【0023】(第1の実施形態)図1、図2を参照して、本発明の第1の実施形態の太陽光発電システムとして、有効発電面積が20cm×100cm、発電出力が15W、動作電圧が30Vの太陽電池モジュールを用いて3kW発電システムを構築する場合を例にあげて説明する。
【0024】図1の(a)に示すように、太陽電池モジュール2Aは、正極21が矩形基板20の一方側の短辺寄りに配置され、負極22が矩形基板20の他方側の短辺寄りに配置され、第1及び第2の端子箱23,24は正負両極21,22の間に配置されている。第1の端子箱23のほうは正極21の近傍に設けられ、第2の端子箱24のほうは負極22の近傍に設けられている。
【0025】正極21と負極22は、銅箔等からなるモジュール内配線25,29,32と端子箱内配線27,28,30,31,33により、それぞれ2つに分岐されている。
【0026】第1及び第2の端子箱23,24は、それぞれ2つに分岐された正極と負極の端子を2組の正負1対のケーブル51,52としてそれぞれ外部に導き出すために備えられている。
【0027】第1の端子箱23の一端側において正負一対のケーブル51,52が端子箱内配線28,33にそれぞれ接続され、同様に第2の端子箱24の一端側にも反対側に延び出す他の正負一対のケーブル51,52が端子箱内配線30,31にそれぞれ接続されている。正負2対のケーブル51,52はモジュール2Aの本体から所定長だけそれぞれ延び出し、各々の先端には正負のコネクタ53,54がそれぞれ取り付けられる。
【0028】該モジュール2Aの正極コネクタ53を隣接するモジュール2Aの正極コネクタ53に差し込み、該モジュール2Aの負極コネクタ54を隣接するモジュール2Aの負極コネクタ54に差し込むことによりモジュール2A同士が次々に並列接続されるようになっている。この場合に、正極用のコネクタ53の形状と負極用のコネクタ54の形状を変えることにより、間違った挿し込みが不可能なようにすることが好ましい。
・・・
【0031】上記の実施形態では2本で一対の正負ケーブル51,52をモジュール2Aから2方向にそれぞれ導き出すようにしたが、図1の(b)に示す正負極2芯ケーブル55を用いてモジュール2Bから2方向にそれぞれ導き出すようにしてもよい。すなわち、正負極2芯ケーブル55の正極芯線28b,30bを端子箱内配線としてモジュール内配線29にそれぞれ接続し、また正負極2芯ケーブル55の負極芯線31b,33bを端子箱内配線としてモジュール内配線32bにそれぞれ接続する。この場合に、正極用のコネクタ53の形状と負極用のコネクタ54の形状を変えることにより、間違った挿し込みが不可能なようにすることが好ましい。」

(エ)「【0052】(第3の実施形態)図4を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。上記の第1および第2の実施形態の太陽電池モジュール2A,2Bでは内蔵する端子箱を汎用性のあるもの、即ち2つの端子箱から正負一対の端子がそれぞれ導き出される構造としたが、本実施形態のモジュール2Cでは2つの端子箱を一体化して1つの端子箱23とし、なおかつ正負1対2組、計4つの端子を2本の正負極2芯ケーブル55につなぐ構造の回路とする。すなわち、1つの端子箱23の中において、モジュール内配線25と端子箱内配線27により正極に接続されたモジュール内配線29cに端子箱内配線28,30が接続され、負極に接続されたモジュール内配線32cに端子箱内配線31,33が接続される。このような回路とすることにより、部品点数および組立工数を削減でき、なおかつ隣接するモジュールとの接続工数を正負2回から正負1対1回に削減できる。・・・
【0054】また、隣接するモジュールとの接続に用いるコネクタは正負の挿し間違いを防止するため、正負で色を変えるか、正負の記号を表示することが好ましい。さらには、正極用のコネクタの形状と負極用のコネクタの形状を変えることにより、間違った挿し込みが不可能なようにすることが好ましい。」

(オ)前記(ウ)及び(エ)を踏まえて図4をみると、端子箱23内には、モジュール内配線25と端子箱内配線27により太陽電池モジュールの正極21に接続されるとともに、正負1対の2芯ケーブルである正負極2芯ケーブル55の正極芯線である端子箱内配線28,30が接続されたモジュール内配線29cと、太陽電池モジュールの負極22に接続されるとともに、正負極2芯ケーブル55の負極芯線である端子箱内配線31,33が接続されたモジュール内配線32cとが配されていること、がみて取れる。

上記摘記事項の記載を総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている、と認められる。

「複数枚の太陽電池モジュールを並列に接続して発電出力を集約する配線を含む太陽光発電システムに使用され、並列接続の接続部を太陽電池のモジュール内部に設けた太陽電池モジュールであって、
太陽電池モジュールの正極および負極の端子を太陽電池のモジュール内部にて2つに分岐させ、1つの太陽電池モジュールから正極2端子、負極2端子を取り出し、隣接して配置される太陽電池モジュールと互いに正極同士と負極同士を接続することにより、複数枚の太陽電池モジュールの並列接続を形成可能とし、
1つの太陽電池モジュールから正極2端子、負極2端子を取り出すため、正負2対の出力取り出しケーブルを備えた端子箱を1つ具備し、
端子箱から導き出される正負2対の出力取り出しケーブルが、互いに絶縁した状態で一体化された正負1対の2芯ケーブル2本で構成され、
端子箱23内には、モジュール内配線25と端子箱内配線27により太陽電池モジュールの正極21に接続されるとともに、正負1対の2芯ケーブルである正負極2芯ケーブル55の正極芯線である端子箱内配線28,30が接続されたモジュール内配線29cと、太陽電池モジュールの負極22に接続されるとともに、正負極2芯ケーブル55の負極芯線である端子箱内配線31,33が接続されたモジュール内配線32cとが配されており、
正極用のコネクタの形状と負極用のコネクタの形状を変えることにより、間違った挿し込みが不可能なようにすることが好ましく、
隣接して配置される太陽電池モジュールとの接続のため、端子箱から導き出される2組の正負1対の出力取り出しケーブルの先端にそれぞれ取り付けられる正負1対のコネクタが、互いに絶縁した状態で一体化された正負1対の2芯コネクタである太陽電池モジュール。」

イ 引用刊行物2
原査定に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-115353号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーブルの導体に接合された雄端子を有するプラグと、他のケーブルの導体に接合された雌端子を有するリセプタクルとの対からなる防水コネクタにおいて、
プラグは、少なくともケーブルの絶縁体の端部から雄端子の基端部までの範囲を被覆する内側モールド部と、少なくともこの内側モールド部を被覆する外側モールド部とを備え、
リセプタクルは、雌端子を保持する樹脂製のハウジングと、少なくともケーブルの絶縁体の端部から前記ハウジングの基端部までの範囲を被覆する内側モールド部と、少なくともこの内側モールド部および前記ハウジングを被覆する外側モールド部とを備え、
前記プラグの外側モールド部とリセプタクルの外側モールド部とが互いに嵌合して雄端子と雌端子との水密的な接続が確保されるとともに、
前記プラグおよびリセプタクルの外側モールド部は、合成ゴム系材料により形成されていることを特徴とする防水コネクタ。
・・・」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば太陽電池モジュールの配線をはじめとする屋外配線の接続に利用される防水コネクタに関する。」

(ウ)「【0031】・・・本発明の防水コネクタの他の実施の形態について、図4を参照しつつ説明する。
【0032】この防水コネクタ10は、2本のコア14b,14bを1本のシース14cで束ねた2芯ケーブル14用の2極コネクタであって、同一の構造を有する2個のコネクタ半体4,4の対からなる。各コネクタ半体4は雄端子41と雌端子42を1個ずつ備え、雄端子41は相手方コネクタ半体4の雌端子42と、雌端子42は相手方コネクタ半体4の雄端子41と、それぞれ電気的に接続されるようになっている。
【0033】各コネクタ半体4において、雄端子41は2芯ケーブル14の一方の導体14aに接合されている。また雌端子42は、2芯ケーブル14の他方の導体14aに接合されて略筒状のハウジング43内に抜け出し不能に保持されている。そして、これら雄端子41および雌端子42が、内側モールド部44および外側モールド部45からなる二重成形構造の外包体によって一体に被覆されている。
【0034】内側モールド部44は、シース14cの端部から、2本のコア14b,14bの露出部分、雄端子41の基端部、さらにハウジング43の基端側略半部にかけての範囲を一体に被覆している。この内側モールド部44は、前記実施の形態と同様に、シース14cおよびコア14bに溶着しうる合成樹脂系材料の射出成形によって形成されている。内側モールド部44の外周面の一部には、断面山谷状の環状起伏44aが形成されている。
【0035】外側モールド部45は、前記内側モールド部44、内側モールド部44によって被覆されていないシース14cの端部近傍部、およびハウジング43の先端側略半部を一体に被覆している。そして、雄端子41の先端側に延出した部分には、前記実施の形態に示したプラグ2と同形状の嵌合凹部45aが形成され、雌端子42の先端側には、前記実施の形態に示したリセプタクル3と同形状の嵌合凸部45bが形成されている。この外側モールド部45も、前記実施の形態と同様に、内側モールド部44に溶着しうる合成ゴム系材料の射出成形によって形成されている。
【0036】すなわちこのコネクタ半体4は、前記実施の形態に示したプラグ2とリセプタクル3とが、共通の内側モールド部44および外側モールド部45を介して一体に形成されたものに相当する。このコネクタ半体4,4を対にして接続すると、図示のように、雌端子42側に形成された嵌合凸部45bが雄端子41側に形成された嵌合凹部45a内にそれぞれ挿し込まれて、雄端子41および雌端子42の防水が確保される。このように2極以上の端子を接合する場合でも、各端子および各端子に接合された2芯ケーブル14の端部を、内側モールド部44と外側モールド部45とからなる二重成形構造の外包体によって一体に被覆することにより、高い防水性能を得ることができる。」

上記摘記事項の記載を総合すると、引用刊行物2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている、と認められる。

「例えば太陽電池モジュールの配線をはじめとする屋外配線の接続に利用される防水コネクタであって、
2本のコア14b,14bを1本のシース14cで束ねた2芯ケーブル14用の2極コネクタであり、同一の構造を有する2個のコネクタ半体4,4の対からなり、
各コネクタ半体4は雄端子41と雌端子42を1個ずつ備え、雄端子41は相手方コネクタ半体4の雌端子42と、雌端子42は相手方コネクタ半体4の雄端子41と、それぞれ電気的に接続されるようになっており、各コネクタ半体4において、雄端子41は2芯ケーブル14の一方の導体14aに接合され、また雌端子42は、2芯ケーブル14の他方の導体14aに接合されて略筒状のハウジング43内に抜け出し不能に保持されており、これら雄端子41および雌端子42が、内側モールド部44および外側モールド部45からなる二重成形構造の外包体によって一体に被覆されており、
内側モールド部44は、シース14cの端部から、2本のコア14b,14bの露出部分、雄端子41の基端部、さらにハウジング43の基端側略半部にかけての範囲を一体に被覆しており、この内側モールド部44は、シース14cおよびコア14bに溶着しうる合成樹脂系材料の射出成形によって形成されており、内側モールド部44の外周面の一部には、断面山谷状の環状起伏44aが形成されており、
外側モールド部45は、前記内側モールド部44、内側モールド部44によって被覆されていないシース14cの端部近傍部、およびハウジング43の先端側略半部を一体に被覆しており、雄端子41の先端側に延出した部分には、プラグ2と同形状の嵌合凹部45aが形成され、雌端子42の先端側には、リセプタクル3と同形状の嵌合凸部45bが形成されており、この外側モールド部45も、内側モールド部44に溶着しうる合成ゴム系材料の射出成形によって形成されており、
このコネクタ半体4,4を対にして接続すると、雌端子42側に形成された嵌合凸部45bが雄端子41側に形成された嵌合凹部45a内にそれぞれ挿し込まれて、雄端子41および雌端子42の防水が確保される、防水コネクタ。」

(2)対比、判断
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「太陽電池モジュール」は、「複数枚の太陽電池モジュールを並列に接続して発電出力を集約する配線を含む太陽光発電システムに使用され」るものであるから、本願補正発明の「(複数個の太陽電池モジュールを互いに並列に接続しうる)太陽電池モジュール用端子ボックス」に相当する。

イ 引用発明1は、「1つの太陽電池モジュールから正極2端子、負極2端子を取り出すため、正負2対の出力取り出しケーブルを備えた端子箱を1つ具備し、・・・端子箱23内には、モジュール内配線25と端子箱内配線27により太陽電池モジュールの正極21に接続されるとともに、正負1対の2芯ケーブルである正負極2芯ケーブル55の正極芯線である端子箱内配線28,30が接続されたモジュール内配線29cと、太陽電池モジュールの負極22に接続されるとともに、正負極2芯ケーブル55の負極芯線である端子箱内配線31,33が接続されたモジュール内配線32cとが配されて」いるから、
(ア)引用発明1の「端子箱23」、「(太陽電池モジュールの正極21に接続される)モジュール内配線29c」及び「(太陽電池モジュールの負極22に接続される)モジュール内配線32c」は、それぞれ、本願補正発明の「ボックス本体」、「(このボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの出力端が接続される)プラス側電極接続端子」及び「(このボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの出力端が接続される)マイナス側電極接続端子」に相当し、
(イ)引用発明1の上記事項は、本願補正発明の「結線用の開口部が形成されたボックス本体と、このボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの出力端が前記開口部を介して接続されるプラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子とを有し」との事項と、「ボックス本体と、このボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの出力端が接続されるプラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子とを有し」との事項で一致する。

ウ 引用発明1は、「端子箱から導き出される正負2対の出力取り出しケーブルが、互いに絶縁した状態で一体化された正負1対の2芯ケーブル2本で構成され」、「『正負1対の2芯ケーブルである正負極2芯ケーブル55の正極芯線である端子箱内配線28,30』が『モジュール内配線29c』に接続され」、「『正負極2芯ケーブル55の負極芯線である端子箱内配線31,33』が『モジュール内配線32c』に接続され」るから、
(ア)引用発明1の「(正負1対の2芯ケーブル2本で構成される)正負極2芯ケーブル55」は、本願補正発明の「(ボックス本体から2本導出され、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に接続する)2芯ケーブル」に相当し、
(イ)引用発明1は、本願補正発明の「前記ボックス本体は、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に接続する2芯ケーブルを2本導出しており」との事項を備える。

エ 引用発明1は、「隣接して配置される太陽電池モジュールとの接続のため、端子箱から導き出される2組の正負1対の出力取り出しケーブルの先端にそれぞれ取り付けられる正負1対のコネクタが、互いに絶縁した状態で一体化された正負1対の2芯コネクタ」であり、隣接して配置される太陽電池モジュールの接続時に正負の同極同士が電気的に接続されるものであることは明らかであるから、
(ア)引用発明1の「(端子箱から導き出される2組の正負1対の出力取り出しケーブルの先端にそれぞれ取り付けられ、互いに絶縁した状態で一体化された正負1対の)2芯コネクタ」は、本願補正発明の「(各ケーブルの端部に設けられた)2極コネクタ」に相当し、
(イ)引用発明1の「2組の正負1対の出力取り出しケーブルの先端にそれぞれ取り付けられる正負1対のコネクタが、互いに絶縁した状態で一体化された正負1対の2芯コネクタであり」との事項は、本願補正発明の「各ケーブルの端部には共通の2極コネクタが設けられ」との事項と、「各ケーブルの端部には2極コネクタが設けられ」との点で一致し、
(ウ)引用発明1は、本願補正発明の「同極同士が電気的に接続される」との事項を備える。

したがって、両者は、
「複数個の太陽電池モジュールを互いに並列に接続しうる太陽電池モジュール用端子ボックスであって、
ボックス本体と、このボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの出力端が接続されるプラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子とを有し、
前記ボックス本体は、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に接続する2芯ケーブルを2本導出しており、各ケーブルの端部には2極コネクタが設けられ、
同極同士が電気的に接続される太陽電池モジュール用端子ボックス。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

a 本願補正発明は、ボックス本体に結線用の開口部が形成され、太陽電池モジュールの出力端が前記開口部を介してプラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に接続されるのに対し、引用発明1は、ボックス本体にそのような結線用の開口部が形成されていない点(以下「相違点1」という。)。

b 本願補正発明は、各ケーブルの端部に設けられる2極コネクタが共通のものであり、前記2極コネクタは、雄端子及び雌端子が内側モールド部によって雌雄一体に樹脂モールドされ、さらに外側モールド部で被覆された二重成形構造を有し、外側モールド部は雌端子側に形成された嵌合凸部と雄端子側に形成された嵌合凹部とが相互に嵌め込まれる形状であり、ボックス本体の一方に備えられた2極コネクタは、嵌合凸部内の雌端子がプラス側電極端子に導通し、嵌合凹部内の雄端子がマイナス側電極端子に導通し、ボックス本体の他方に備えられた2極コネクタは、嵌合凹部内の雄端子がプラス側電極端子に導通し、嵌合凸部内の雌端子がマイナス側電極端子に導通して、隣接する太陽電池モジュールに設けたボックス本体から導出する共通したコネクタ同士を互いに嵌合するだけで、一方のコネクタの嵌合凸部及び嵌合凹部が、他方のコネクタの嵌合凹部及び嵌合凸部に嵌め合わされるのに対し、引用発明1は、各ケーブルの端部に設けられる2極コネクタがそのような二重成形構造を有するものではなく、共通のものであるのか否か明らかではない点(以下「相違点2」という。)。

上記各相違点につき検討する。
・相違点1について
太陽電池モジュールに開口部を形成した端子箱を設け、該開口部を介して太陽電池モジュールの出力端を端子箱内のプラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に接続するようにしたものは、本願の出願時点で周知であるから(必要なら、特開2000-349324号公報(【0027】、図3)、特開2002-76412号公報(【0019】?【0021】、図1)、特開平11-251614号公報(【0014】、図1)参照。)、引用発明1において、端子箱に結線用の開口部を形成し、太陽電池モジュールの正極および負極の端子が、それぞれ、該開口部を介してモジュール内配線29cおよびモジュール内配線32cに接続されるようにして、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。
・相違点2について
上記(1)イによれば、引用刊行物2には引用発明2が記載され、「『2極コネクタ』からなり、『太陽電池モジュールの配線・・・の接続に利用される防水コネクタ』であって、『同一の構造を有する2個のコネクタ半体4,4の対からなり』、『各コネクタ半体4は雄端子41と雌端子42を1個ずつ備え』、『これら雄端子41および雌端子42が、内側モールド部44および外側モールド部45からなる二重成形構造の外包体によって一体に被覆されており』、『内側モールド部44は、シース14cの端部から、2本のコア14b,14bの露出部分、雄端子41の基端部、さらにハウジング43の基端側略半部にかけての範囲を一体に被覆しており』、『外側モールド部45は、前記内側モールド部44、内側モールド部44によって被覆されていないシース14cの端部近傍部、およびハウジング43の先端側略半部を一体に被覆しており、雄端子41の先端側に延出した部分には、プラグ2と同形状の嵌合凹部45aが形成され、雌端子42の先端側には、リセプタクル3と同形状の嵌合凸部45bが形成されて』いる『(2極コネクタからなる)防水コネクタ』が示されているから、引用発明1の「太陽電池モジュール」の「(2組の正負1対の出力取り出しケーブルの先端にそれぞれ取り付けられる)2芯コネクタ」として引用発明2の上記「(2極コネクタからなる)防水コネクタ」を採用し、その際、隣接して配置される太陽電池モジュールとの接続時に正極及び負極が間違って接続されないよう、「端子箱」の一方に備えられた「2極コネクタ」は、「雌端子」が「(正極21に接続された)モジュール内配線29c」に導通し、「雄端子」が「(負極22に接続された)モジュール内配線32c」に導通し、「端子箱」の他方に備えられた「2極コネクタ」は、「雄端子」が「(正極21に接続された)モジュール内配線29c」に導通し、「雌端子」が「(負極22に接続された)モジュール内配線32c」に導通するようになし、その結果、隣接する太陽電池モジュールに設けた「端子箱」から導出する共通した「2極コネクタ」同士を互いに嵌合するだけで、一方の「2極コネクタ」の「嵌合凸部」及び「嵌合凹部」が、他方の「2極コネクタ」の「嵌合凹部」及び「嵌合凸部」に嵌め合わされるようになして、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明1、2及び周知技術から予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年7月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。

「複数個の太陽電池モジュールを互いに並列に接続しうる太陽電池モジュール用端子ボックスであって、
結線用の開口部が形成されたボックス本体と、このボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの出力端が前記開口部を介して接続されるプラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子とを有し、
前記ボックス本体には、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に導通する複数個のコネクタが接続用ケーブルを介して備えられ、
前記コネクタは、樹脂モールドされた雄端子及び雌端子を備え、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に導通するプラス極及びマイナス極の2電極で構成されたコネクタであり、
これらのコネクタが、隣接する太陽電池モジュールの端子ボックスから導出された同極のコネクタと互いに嵌合して電気的に接続されることを特徴とする太陽電池モジュール用端子ボックス。」(以下「本願発明」という。)

2 刊行物記載の発明
原審における拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用刊行物1、2及び引用発明1、2は、上記第2の2(1)のとおりである。

3 判断
本願発明は、上記第2の2(2)で検討した本願補正発明において、「ボックス本体は、プラス側電極接続端子及びマイナス側電極接続端子に接続する2芯ケーブルを2本導出しており、各ケーブルの端部には共通の2極コネクタが設けられ、前記2極コネクタは、雄端子及び雌端子が内側モールド部によって雌雄一体に樹脂モールドされ、さらに外側モールド部で被覆された二重成形構造を有し、外側モールド部は雌端子側に形成された嵌合凸部と雄端子側に形成された嵌合凹部とが相互に嵌め込まれる形状であり、ボックス本体の一方に備えられた2極コネクタは、嵌合凸部内の雌端子がプラス側電極端子に導通し、嵌合凹部内の雄端子がマイナス側電極端子に導通し、ボックス本体の他方に備えられた2極コネクタは、嵌合凹部内の雄端子がプラス側電極端子に導通し、嵌合凸部内の雌端子がマイナス側電極端子に導通して、隣接する太陽電池モジュールに設けたボックス本体から導出する共通したコネクタ同士を互いに嵌合するだけで、一方のコネクタの嵌合凸部及び嵌合凹部が、他方のコネクタの嵌合凹部及び嵌合凸部に嵌め合わされ、同極同士が電気的に接続される」との限定を省いて元に戻したものである。そうすると、本願発明を減縮したものである本願補正発明が、上記第2の2(2)で検討したとおり、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明1、2及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-17 
結審通知日 2010-11-30 
審決日 2010-12-14 
出願番号 特願2003-145387(P2003-145387)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 服部 秀男
橿本 英吾
発明の名称 太陽電池モジュール用端子ボックス  
代理人 特許業務法人あーく特許事務所  

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