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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1231450
審判番号 不服2010-1063  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-18 
確定日 2011-02-04 
事件の表示 特願2002-275077「紙製オーバーキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-106918〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年9月20日の出願であって、平成21年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年1月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書についての手続補正がなされたものである。

第2.平成22年1月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年1月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2
「【請求項1】胴部材と底部材とが互いに接合され、前記胴部材の胴部の上端にトップカール部又は該トップカール部を潰したフランジ部が形成された紙カップに被せる天部と側壁部とからなるオーバーキャップであって、一枚のブランクから深絞りで成形され、使用する材料が紙又は紙を主体とする積層体からなり、前記紙の坪量が50?300g/m2の範囲であり、湿度65%の環境下での前記紙の破断伸びが縦方向で10%以上、横方向で10%以上であり、前記天部と前記側壁部との角度を90?105度の範囲とし、前記側壁部の内面に全周に渡ってトップカール部又はフランジ部を嵌合する側壁凹部を形成したことを特徴とする紙製オーバーキャップ。
【請求項2】前記天部の全部又は一部に内側方向(下方向)に凹状に成形した天凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の紙製オーバーキャップ。」を、
「【請求項2】胴部材と底部材とが互いに接合され、前記胴部材の胴部の上端にトップカール部が形成された紙カップに被せる側壁部と、天面が全部又は一部を内側方向(下方向)に凹状に成形した底面と側壁面とからなる天凹部とからなるオーバーキャップであって、一枚のブランクから深絞りで成形され、使用する材料が紙又は紙を主体とする積層体からなり、前記紙の坪量が50?300g/m2の範囲であり、湿度65%の環境下での前記紙の破断伸びが縦方向で10%以上、横方向で10%以上であり、前記側壁部の内面に全周に渡って略半円形の側壁凹部を形成し、前記側壁部と前記側壁面とで前記トップカール部に挟むようにして、前記側壁凹部と前記トップカール部とを嵌合することを特徴とする紙製オーバーキャップ。」とする補正を含むものである。

2.補正の適否
しかしながら、補正後の請求項2は、補正前の請求項1を引用する請求項2における発明特定事項である、「天部と側壁部との角度を90?105度の範囲とし」た点を、その発明特定事項に含んでいないので、本件補正は、、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものとはいえない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的としたものともいえない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年4月24日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項3】
胴部材と底部材とが互いに接合され、前記胴部材の胴部の上端にトップカール部又は該トップカール部を潰したフランジ部が形成された紙カップに被せる天部と側壁部とからなるオーバーキャップであって、一枚のブランクから深絞りで成形され、使用する材料が紙又は紙を主体とする積層体からなり、前記紙の坪量が50?300g/m2の範囲であり、湿度65%の環境下での前記紙の破断伸びが縦方向で10%以上、横方向で10%以上であり、前記天部と前記側壁部との角度を90?105度の範囲とし、前記側壁部の下端部を内側に巻き込んで内カール部を形成したことを特徴とする紙製オーバーキャップ。」

第4.引用例の記載事項
4-1.原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-237644号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【請求項1】紙を深絞り成形した蓋材が、容器本体の上端周縁の巻込み部に嵌合する蓋付き紙製容器であって、容器本体の前記の巻込み部の上端部分が当接する蓋材の天部の部分に凹状のリブを形成し、且つ、蓋材の側部周壁の下端部分を巻き込んで、容器本体の前記の巻込み部の下端部分と嵌合する嵌合部を形成したことを特徴とする蓋付き紙製容器。」

b.「【0004】
【課題を解決するための手段】第1の本発明は、図1に示すように、紙を深絞り成形した蓋材(100)が、容器本体(500)の上端周縁の巻込み部(510)に嵌合する蓋付き紙製容器であって、容器本体(500)の前記の巻込み部(510)の上端部分(511)に当接する蓋材(100)の天部(110)の部分に凹状のリブ(111)を形成し、且つ、蓋材(100)の側部周壁(120)の下端部分を巻き込んで、容器本体(500)の前記の巻込み部(510)の下端部分(512)と嵌合する嵌合部(121)を形成したことを特徴とする蓋付き紙製容器(10)である。」

c.「【0007】
【作用】蓋材の天部内面に設けられた凹状リブが、容器本体の上端周縁の巻込み部の上端部分と当接し、蓋材の側部周壁の下端部分に設けられた嵌合部が、容器本体の前記の巻込み部の下端部分に嵌合して、蓋材が容器本体をしっかりと封鎖しているため、蓋材の脱落や塵などの異物の侵入が、極めて起こりにくい。
【0008】また、蓋材の天部内面に設けられた凹状リブが、蓋材の剛性を高める働きがあるため、蓋材が、外力に対して変形しにくく、さらに、蓋材の脱落や塵などの異物の侵入を防いでいる。」

d.「【0010】
【実施例】
<実施例1>まず、図1に示す上端周縁に巻込み部(510)をもつカップ状の内容量125mlの容器本体(500)を、紙カップ成形機によって作製した。
【0011】次に、図4に示すように、リブを形成するための突部(61)を有する雄型(60)と、リブを形成するための凹部(51)を有する雌型(50)とにより、カップ原紙を深絞り成形して、天部(410)にリング状のリブ(411)を設けた蓋材の中間成形品(400)を作製した。この蓋材の中間成形品(400)の側部周壁(420)の下端部分(421)を巻き込んで、図1に示す本実施例の蓋材(100)を作製した。」

e.「【0017】
【発明の効果】本発明の蓋付き紙性容器を使用すると、蓋材が天部内面に設けられた凹状リブと側部周壁の下端部分に設けられた嵌合部とで、容器本体の上端周縁の巻込み部のしっかりと嵌合しているため、蓋材が脱落したり、塵などの異物の侵入することが極めて少ない。」


そして、【図1】には、実施例1の蓋付き紙容器の蓋材と容器本体との嵌合状態を示す部分断面図が示されており、天部110と側部周壁120との角度がおよそ90度程度であることが見て取れる。
また、容器本体500は、胴部材と底部材とからなり、それら胴部材と底部材とが当初一体であるか別体であるかはともかくとして、容器本体500の完成時(使用時)には一体化されていることは自明である。

これら記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「胴部材と底部材とが一体化され、前記胴部材の胴部の上端に巻込み部が形成された容器本体に被せる天部と側部周壁とからなる蓋材であって、一枚のカップ原紙から深絞りで成形され、使用する材料が紙からなり、前記天部と前記側部周壁との角度を90度程度とし、前記側部周壁の下端部を内側に巻き込んで嵌合部を形成した紙製蓋材。」

4-2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「容器本体」は、本願発明の「紙カップ」に相当し、以下同様に、「巻込み部」は「トップカール部」に、「側部周壁」は「側壁部」に、「蓋材」は「オーバーキャップ」に、「カップ原紙」は「ブランク」に、「嵌合部」は「内カール部」に、それぞれ相当する。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「胴部材と底部材とが一体化され、前記胴部材の胴部の上端にトップカール部が形成された紙カップに被せる天部と側壁部とからなるオーバーキャップであって、一枚のブランクから深絞りで成形され、使用する材料が紙からなり、前記天部と前記側壁部との角度を90?105度の範囲とし、前記側壁部の下端部を内側に巻き込んで内カール部を形成した紙製オーバーキャップ。」


そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明では、紙カップの胴部材と底部材とが互いに接合されている点。
(相違点2)
本願発明では、紙の坪量が50?300g/m2の範囲であり、湿度65%の環境下での紙の破断伸びが縦方向で10%以上、横方向で10%以上である点。


第5.当審の判断
(相違点1)について
紙カップにおいて、胴部材と底部材とが互いに接合されているものは、引用文献を挙げるまでもないが、例えば、特開2001-169910号公報、特開2001-206339号公報、特開2002-68163号公報にあるように本願出願前周知のものであるから、引用発明において前記周知技術を適用して、相違点1に係る本願発明の事項とすることは当業者が適宜なし得たことにすぎない。

(相違点2)について
紙又は紙を主体とする積層体から深絞り成形品を製造するに際し、絞り深さの深い成形容器は、深さの浅いものに比べて成形時により多く延伸され、特に、成形容器の外側となる側の紙層は、内側(内容物側)よりも多く延伸されるので、高い破断伸びが必要となるため、成形加工原紙の少なくとも容器の外側となる側の最外層に、破断伸び(伸度)及び坪量(米坪、目付け)がある値以上のものを用いることで、絞り成形時の延伸により発生する亀裂等の防止を可能とすることは、本願出願前周知の事項(特開2002-201598号公報「周知文献1」、特開2002-200726号公報「周知文献2」、特開平10-8394号公報「周知文献3」を参照)であるところ、外層の破断伸びが5%以上の紙シートを積層し、多層紙全体の米坪(坪量)が100?500g/m^(2)とすること(周知文献1の請求項3,請求項6,請求項8,段落0041,段落0044または周知文献2の請求項1,請求項2,段落0007、段落0011,段落0013を参照)、また、プレス成形用紙であって、坪量(目付け)が10?400g/m^(2)の範囲であり、湿度65%(65RH)の環境下での破断伸び(伸度)が縦方向で10%以上、横方向で10%以上である紙を使用すること(周知文献3の請求項1,請求項2,段落0001,段落0030)が記載されているから、引用発明において当該周知技術を適用して、相違点2に係る本願発明の事項とすることは当業者が容易に想起し得たものと認められる。

そして、本願発明を全体構成でみても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願日前に頒布された刊行物に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-26 
結審通知日 2010-11-30 
審決日 2010-12-15 
出願番号 特願2002-275077(P2002-275077)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 一夫  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 豊島 ひろみ
佐野 健治
発明の名称 紙製オーバーキャップ  
代理人 金山 聡  

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