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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1231451
審判番号 不服2010-5499  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-12 
確定日 2011-02-04 
事件の表示 特願2000-320655号「ボールジョイント、そのボールスタッドおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月 9日出願公開、特開2002-130248号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯

本願は、平成12年10月20日の出願であって、平成22年2月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで明細書を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成22年9月10日付けで審尋がなされ、平成22年10月22日に当該審尋に対する回答書が提出されたものである。

【2】平成22年3月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕

平成22年3月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正後の本願発明

本件補正により、特許請求の範囲は、

「【請求項1】 開口部を開口する内室を有したハウジングの前記内室内に摺動自在に内包される略球状の球頭部と、
この球頭部に軸方向の基端が連続してこの球頭部と一体に設けられた軸部と、
この軸部の先端部に設けられたねじ部と、
前記軸部に鍛造成形により鍔状に一体形成され、前記ねじ部側の端面に被取付部に当接する座面、及び、この座面と反対側の端面である係止面を有した係止部と、
前記軸部の基端で、かつ、前記球頭部と前記係止部との間の前記軸部の転造成形により前記係止面から所定距離の位置に一体成形され、この軸部より径小に周方向に沿う首部と、
この転造成形の際の肉流動により前記首部に沿って鍔状にこの首部と前記係止部との間で前記軸部にて前記係止面から所定距離の位置に一体形成され一端が前記ハウジングに嵌合する略円筒状のダストカバーの他端を前記係止面との間で挟持することで係止するシール突起部と
を具備したことを特徴としたボールジョイントのボールスタッド。
【請求項2】 開口部を開口する内室を有したハウジングの前記内室内に摺動自在に内包される略球状の球頭部と、この球頭部に軸方向の基端が径小の首部を介して連続してこの球頭部と一体に設けられ、一端が前記ハウジングに嵌合する略円筒状のダストカバーの他端が嵌合する軸部と、この軸部の先端部に設けられ被取付部に取り付けるためのねじ部と、前記軸部に鍔状に一体に設けられ前記被取付部に当接する座面、及び、この座面と反対側の端面である係止面を有した係止部と、前記軸部に鍔状に一体に設けられ前記ダストカバーの他端を前記係止面との間で挟持することで係止するシール突起部とを備えたボールジョイントのボールスタッドの製造方法であって、
細長柱状の素材を鍛造成形して、略円柱状の軸相当部、この軸相当部の一端に連続する略球状の頭相当部および前記軸相当部の他端側に同軸上に形成された略柱状のねじ相当部を備えた第1の中間成形体を形成し、
この第1の中間成形体の軸相当部を鍛造成形して前記係止部を成形して第2の中間成形体を形成し、
この第2の中間成形体の前記係止部および前記頭相当部間の前記軸相当部を、前記係止部の前記頭相当部側の端面を基準として前記頭相当部と前記係止部との間を転造成形して肉流動させ周方向に沿った前記首部および前記シール突起部を前記端面を基準として所定距離の位置に形成する
ことを特徴とするボールジョイントのボールスタッドの製造方法。
【請求項3】 請求項1記載のボールジョイントのボールスタッドと、
前記ボールスタッドの球頭部を内包し前記ボールスタッドの軸部を挿通する挿通孔を有したベアリングシートと、
前記ボールスタッドの軸部を挿通する開口部を有しこの開口部に連続し前記ボースタッドの球頭部を内包するベアリングを収容する内室を備えたハウジングと
を具備したことを特徴としたボールジョイント。
【請求項4】 請求項2記載のボールジョイントのボールスタッドの製造方法により製造されたボールスタッドと、
前記ボールスタッドの球頭部を内包し前記ボールスタッドの軸部を挿通する挿通孔を有したベアリングシートと、
前記ボールスタッドの軸部を挿通する開口部を有しこの開口部に連続し前記ボースタッドの球頭部を内包するベアリングを収容する内室を備えたハウジングと
を具備したことを特徴としたボールジョイント。」と、補正された。

上記補正は、請求項1についてみると、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記ねじ部側の端面に被取付部に当接する座面を有した係止部」を、「前記ねじ部側の端面に被取付部に当接する座面、及び、この座面と反対側の端面である係止面を有した係止部」と限定するとともに、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記軸部の基端に転造成形により一体成形され」た「首部」を、「前記軸部の基端で、かつ、前記球頭部と前記係止部との間の前記軸部の転造成形により前記係止面から所定距離の位置に一体成形され」た「首部」と限定するとともに、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「この転造成形の際の肉流動により前記首部に沿って鍔状にこの首部と前記係止部との間で前記軸部に一体形成され一端が前記ハウジングに嵌合する略円筒状のダストカバーの他端を係止するシール突起部」を、「この転造成形の際の肉流動により前記首部に沿って鍔状にこの首部と前記係止部との間で前記軸部にて前記係止面から所定距離の位置に一体形成され一端が前記ハウジングに嵌合する略円筒状のダストカバーの他端を前記係止面との間で挟持することで係止するシール突起部」と限定するものであって、これは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物記載の発明

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開平8-82318号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
ア)「【0003】図9に示した一般的なボールジョイント100 は、金属製のボールスタッド101と、ボールシート102 などを備えて構成されている。ボールスタッド101 は軸部104 の一端側に球状部105 を有し、軸部104 の他端側に雄ねじ部106 が設けられている。雄ねじ部106 にナット107 が螺合される。また、ボールスタッド101 の軸線方向中間部に鍔状のナックル部110 が設けられており、このナックル部110とナット107 との間に、取付相手部材111 を挟み込んだ状態でナット107 を締付けるようにしている。・・・」
【0004】ナックル部110 は、図9に示されるようにボールスタッド101 の軸部104 と一体に成形される場合もあるし、あるいはナット等のように軸部104 とは別体の部品を雄ねじ部106 に螺合させるとか、リング状の部品をボールスタッド101 に圧入するなどの固定手段によって、軸部104 に固定されることもある。
【0005】従来より、軸部104 と球状部105 は、鍛造あるいは削り出しによって互いに一体に成形されている。・・・」

イ)「【0008】このようなダストカバー120 を備えたボールジョイント100 において、ボールスタッド101 が球状部105 を中心として大きく傾くと、ダストカバー120 の弾性により、ダストカバー120 が一方向に大きく引っ張られる。その結果、ダストカバー120 のゴムの弾性限界により、ダストカバー120 の端部121 の位置がずれてしまい、ダスト等の異物が入り込む原因になることがある。
【0009】上記の問題を避けるために、軸部104 にダストカバーずれ止め用の凸部130 を設け、この凸部130 とナックル部110 との間でダストカバー120 の端部121 を挟むことが行われている。この凸部130 は、ボールシート102 に対するボールスタッド101 の最大揺動角が20°を越える場合に必要となることや、凸部130 の高さがおおむね1mm以上あれば効果があることが経験的に知られている。」

ウ)「【0011】また、近年、ボールスタッド101 を安価に製造する方法として、冷間鍛造法が適用されている。冷間鍛造法によってボールスタッド101 を製造するには、例えば図10に示されるように少なくとも2つに分割された据え込み型140 ,141 が使われている。これらの型140 ,141 によってボールスタッド101 の材料を叩くことにより、球状部105 を成形するようにしている。この場合、鍛造後のボールスタッド101 には、型140 ,141 の接合面に沿って、球状部105 の円周方向に連なる微小な突起(パーティングライン145 )が形成されてしまう。図11にパーティングライン145 を拡大して示す。
【0012】また、ナックル部110 を成形するためには、図12に示すような割り型150 ,151 の間に球状部105 を保持した状態で、上方から型152 によってボールスタッド101 の軸線方向に圧力をかけて鍛造が行われる。この鍛造時にも、左右の割り型150 ,151 の接合面に沿って、微小な突起(パーティングライン)155 が球状部105 の表面に生じてしまう。また逆に、ナックル部110 を先に成形し、球状部105 をあとから成形する方法もあるが、前記と同様の割り型が必要になるため、パーティングラインが発生する。」

エ)「【0015】また、ダストカバーずれ止め凸部130 のように突出高さが小さい凸部については、必要な鍛造圧力とワーク(ボールスタッド101 )の大きさ・形状から見て、一般的に鍛造加工は不可能である。従ってこのような小さな凸部130 は、従来、切削加工による削り出しで作らざるを得ず、コストの高いものとなっていた。従って本発明の目的は、製造が容易であり、低コストで製造可能なボールジョイントとその製造方法を提供することにある。」

これらの記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「開口部を開口する球面状の凹部115を有したボールシート102の前記凹部115内に摺動自在に嵌合される球状部105と、
この球状部105に軸方向の基端が連続してこの球状部105と一体に設けられた軸部104と、
この軸部104の先端部に設けられた雄ねじ部106と、
前記軸部104に鍛造により鍔状に一体形成され、前記雄ねじ部106側の端面及びこの端面と反対側の他の端面を有したナックル部110と、
前記軸部104の基端で、かつ、前記球状部105と前記ナックル部110との間の前記軸部104の切削加工により一体に製造され、周方向に沿う凸部130と球状部105との間の凹状部位(以下、「首状部」という。)と、
この切削加工による削り出しにより前記首状部に沿って鍔状にこの首状部と前記ナックル部110との間に一体に製造され一端が前記ボールシート102に嵌合するダストカバー120の他端を前記ナックル部110の他の端面との間で挟む凸部130とを具備したボールスタッド。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開昭61-38730号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
カ)「(従来技術)
従来、ボールスタッド頭部の首下加工方法としては、例えば第7図に示すようなものがある。
第7図において、1はボールスタッドであり、球状頭部2、頭部首下3、テーパ軸部4及びネジ部5を備え、冷間鍛造により規定の形状に成形したボールスタッドワークを図示のようにチャック9に固定して拘束回転し、頭部首下3をバイト台6に装着したチップまたはバイト7で切削加工する方法をとっている。
(発明が解決しようとする問題点)
しかしながら、このような従来の切削による頭部首下加工方法にあっては、倣い加工等の機械設備を必要とするために設備コスト及び加工コストが高く、また、首下切削で発生した切り粉が首下加工部へのからまり等により工具寿命を短くし、更に切削加工であることから切削除去された分だけ材料コストもかさむという問題があった。
(問題点を解決するための手段)
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、加工コストの低減、材料コストの節減および加工精度の向上できるボールスタッド頭部の首下加工方法を提供することを目的とし、この目的を達成するため、冷間鍛造によりボールスタッドワークを球状頭部、首下円筒部、テーパ軸部およびネジ切り円筒部を順次有する規定形状に成形し、この鍛造ボールスタッドワークの頭部首下円筒部をロールダイスによる転造で凹周状に加工成形するようにしたものである。」 (第1頁右下欄第10行-第2頁左上欄第18行)

キ)「即ち、第3図に示すように冷間鍛造で得られたボールスタッドワーク10aの頭部首下円筒部3aに対し一対のロールダイス14,15を押し付ける場合、球状頭部2における頭部首下円筒部3a寄りの端部とロールダイス14,15との間に所定の隙間16を設けるようにロールダイス14,15を位置決めし、この隙間16の設定でロールダイス14,15により頭部首下円筒部3aを転造加工すると、ロールダイス14,15の押込みによる塑性変形で球状頭部2側の隙間16を埋める変形が生ずると共に、テーパ軸部4側においても塑性変形による肉の盛り上がりができ、その結果、第4図に示すように転造加工による首下加工と同時にテーパ軸部4の大径端部に鍔部17を一体に形成することができる。この鍔部17はボールスタッドをボールジョイントにベアリングシートを介して組み込んだとき、ダストカバーの一端を係止するために利用される。」 (第2頁右下欄第9行-第3頁左上欄第6行)

3.対比

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能又は構成からみて、後者の「内室」は前者の「凹部115」に相当し、以下同様に、「ボールシート102」は「ハウジング」に、「嵌合」は「内包」に、「球状部105」は「略球状の球頭部」に、「軸部104」は「軸部」に、「雄ねじ部106」は「ねじ部」に、「鍛造」は「鍛造成形」に、「雄ねじ部106側の端面」は「ねじ部側の端面に被取付部に当接する座面」に、「反対側の他の端面」は「座面と反対側の端面である係止面」に、「ナックル部110」は「係止部」に、「凸部130と球状部105との間の凹状部位」及びそれを言い換えた「首状部」は「首部」に、「挟む」は「挟持する」に、「ダストカバー120」は「ダストカバー」に、「凸部130」は「シール突起部」にそれぞれ相当する。また、後者の首状部を「切削加工により一体に製造」と前者の首部を「転造成形により前記係止面から所定距離の位置に一体成形」は、首部を「一体に製造」する限りにおいて一致し、後者のナックル部を「切削加工による削り出しにより」、「一体に製造」と前者のシール突起部を「転造成形の際の肉流動により」、「一体形成」は、シール突起部を「一体に製造」する限りにおいて一致するから、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は、
「開口部を開口する内室を有したハウジングの前記内室内に摺動自在に
内包される略球状の球頭部と、
この球頭部に軸方向の基端が連続してこの球頭部と一体に設けられた軸部と、
この軸部の先端部に設けられたねじ部と、
前記軸部に鍛造成形により鍔状に一体形成され、前記ねじ部側の端面に被取付部に当接する座面、及び、この座面と反対側の端面である係止面を有した係止部と、
前記軸部の基端で、かつ、前記球頭部と前記係止部との間に一体に製造され、周方向に沿う首部と、
前記首部に沿って鍔状にこの首部と前記係止部との間に一体に製造され一端が前記ハウジングに嵌合するダストカバーの他端を前記係止面との間で挟持することで係止するシール突起部と
を具備したボールジョイントのボールスタッド。」である点で一致し、次の点で相違する。
・相違点1
本願補正発明のボールスタッドは、首部が「前記球頭部と前記係止部との間の前記軸部の転造成形により前記係止面から所定距離の位置に一体成形され、この軸部より径小」であり、「この転造成形の際の肉流動により」シール突起部を「一体形成」するのに対して、引用発明は、首状部が「前記球状部105と前記ナックル部110との間の前記軸部104の切削加工により一体に製造され」たものであり、「切削加工による削り出しにより」凸部130を「一体に製造」する点。

・相違点2
本願補正発明のダストカバーは、「略円筒状」であるのに対して、引用発明のダストカバー120は、どのような形状であるのか明らかではない点。

4.当審の判断

(1)上記相違点1の検討
引用例2には、上記「2.引用刊行物記載の発明」に摘記したように、ボールスタッド頭部の首下加工方法として、設備コスト及び加工コストが高く、首下切削で発生した切り粉が首下加工部へのからまり等により工具寿命を短くし、さらに材料コストもかさむ切削加工に代えて、ロールダイスによる転造で加工成形する事項が記載され、第3、4図に示すように球状頭部2、首下円筒部3a、テーパ軸部4及びネジ切り円筒部5aを順次有する規定形状に冷間鍛造加工により形成したボールスタッドワーク10aの頭部首下円筒部3aに対し、ロールダイス14,15を押込む転造加工により、首下加工と同時にテーパ軸部4の大径端部に、ダストカバーの一端を係止するために利用される鍔部17を一体形成する事項が記載されている。
そして、引用発明に記載されたボールスタッド101と引用例2に記載されたボールスタッドとは、共に自動車等のボールジョイントに使用されるボールスタッドである点で共通するから、引用発明に記載された首状部及び凸部130の形成技術として、引用例2に記載された事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであると認められる。そして、ボールスタッド等の工業製品は、通常、設計図等に記載された寸法となるよう製作されるものであるから、その各部寸法を設計寸法、つまり、各部の間隔が所定距離となるよう製作することは、当業者が当然に行うべき事項にすぎない。

(2)上記相違点2の検討
ボールジョイントで使用するダストカバーの形状をどのような形状とするかは適宜の設計的事項であり、略円筒状は格別特異な形状ではないから、ダストカバーを略円筒状とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、他の補正事項について検討するまでもなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

以上に関して、審判請求人は、審判請求の理由の「 【本願発明が特許されるべき理由】 」の「(d) 本願発明と引用文献との対比」の「(請求項1)」において、
A)「引用文献2に記載された鍔部は、係止部の係止面との間でダストカバーの端部を挟持する本願の請求項1に係る発明のシール突起部に対応するものではない。」(審判請求書の「引用文献2」は、本審決の「引用例2」と同じ。)と、主張している。
しかし、上記「2.引用刊行物記載の発明」のキ)に摘記したように、引用例2の鍔部17は、ダストカバーの一端を係止するために利用されることが記載されており、同イ)に摘記した、引用発明のボールスタッド101が球状部105を中心として大きく傾いた時にダストカバー120の端部121の位置がずれるのを防止するダストカバーずれ止め用凸部130として使用することを阻害するものではない。
B)「付言すれば、引用文献1には、軸部よりも径小の首部について何ら記載されていない以上、引用文献2に記載された発明の軸部よりも径小の首部の転造成形の構成を、引用文献1に記載された発明と容易に組み合わせることができるということはできない。」(審判請求書の「引用文献1」は、本審決の「引用例1」と同じ。)と、さらに主張している。
しかし、径小の凹部を形成すると同時に鍔部を形成するという事項が、引用例2に記載されており、引用発明に記載された首状部及び凸部130の形成技術として、引用例2に記載された事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであることは上記のとおりである。
C)「また、引用文献1に記載された発明の構成と引用文献2に記載された発明の構成とを仮に組み合わせたとしても、引用文献2に記載された発明の鍔部は、単に首部周辺の塑性変形によって形成しているに過ぎず、首部と係止部との間で軸部にて係止面から所定距離の位置に形成した本願の請求項1に係る発明のシール突起部とは全く異なり、したがって、被取付部に取り付けるための基準となる係止部と首部との位置関係を確実に一定にでき、安定した特性を得ることができるという本願の請求項1に係る発明の効果を何ら奏することができない。」と、主張している。
しかし、「(1)上記相違点1の検討」で記載したように、ボールスタッド等の工業製品は、通常、設計図等に記載された寸法となるよう製作されるものであるから、その各部寸法を設計寸法、つまり、各部の間隔が所定距離となるよう製作することは、当業者が当然に行うべき事項にすぎない。

【3】本願発明について

1.本願発明の内容

平成22年3月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし9に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明9」という。)は、平成21年9月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、本願発明1は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 開口部を開口する内室を有したハウジングの前記内室内に摺動自在に内包される略球状の球頭部と、
この球頭部に軸方向の基端が連続してこの球頭部と一体に設けられた軸部と、
この軸部の先端部に設けられたねじ部と、
前記軸部に鍛造成形により鍔状に一体形成され、前記ねじ部側の端面に被取付部に当接する座面を有した係止部と、
前記軸部の基端に転造成形により一体成形され、この軸部より径小に周方向に沿う首部と、
この転造成形の際の肉流動により前記首部に沿って鍔状にこの首部と前記係止部との間で前記軸部に一体形成され一端が前記ハウジングに嵌合する略円筒状のダストカバーの他端を係止するシール突起部と
を具備したことを特徴としたボールジョイントのボールスタッド。」

2.引用刊行物記載の発明

原査定の拒絶の理由に引用された引用例1ないし2とその記載事項は、上記「【2】平成22年3月12日付けの手続補正についての補正却下の決定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明1は、実質的に、上記「【2】平成22年3月12日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明を、係止部について、「前記ねじ部側の端面に被取付部に当接する座面、及び、この座面と反対側の端面である係止面を有した係止部」を「前記ねじ部側の端面に被取付部に当接する座面を有した係止部」として拡張したものに、首部について、「前記軸部の基端で、かつ、前記球頭部と前記係止部との間の前記軸部の転造成形により前記係止面から所定距離の位置に一体成形され」た「首部」を「前記軸部の基端に転造成形により一体成形され」た「首部」として拡張したものに、同じくシール突起部について、「この転造成形の際の肉流動により前記首部に沿って鍔状にこの首部と前記係止部との間で前記軸部にて前記係止面から所定距離の位置に一体形成され一端が前記ハウジングに嵌合する略円筒状のダストカバーの他端を前記係止面との間で挟持することで係止するシール突起部」を「この転造成形の際の肉流動により前記首部に沿って鍔状にこの首部と前記係止部との間で前記軸部に一体形成され一端が前記ハウジングに嵌合する略円筒状のダストカバーの他端を係止するシール突起部」として拡張したものに相当する。

そうすると、本願発明1の特定事項をすべて含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「【2】平成22年3月12日付けの手続補正についての補正却下の決定」に記載したとおり、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明1は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そして、本願発明1が特許を受けることができないものである以上、本願発明2ないし9について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-26 
結審通知日 2010-12-01 
審決日 2010-12-15 
出願番号 特願2000-320655(P2000-320655)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
P 1 8・ 575- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔田村 嘉章  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 倉田 和博
川上 溢喜
発明の名称 ボールジョイント、そのボールスタッドおよびその製造方法  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  
代理人 山田 哲也  
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