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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1231847 |
審判番号 | 不服2007-26130 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-09-25 |
確定日 | 2011-02-09 |
事件の表示 | 特願2002-229338「通信ネットワークによるコンテントの無線配達システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年6月27日出願公開,特開2003-178202〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成14年8月7日(パリ条約による優先権主張2001年8月7日米国)の出願であって,平成18年11月8日付けの拒絶理由通知に対して,平成19年4月25日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,同年6月20日付けで拒絶の査定がなされ,この拒絶の査定を不服として,同年9月25日に審判請求がなされるとともに,同年10月25日付けで手続補正がなされ,当審による平成21年7月24日付けの審尋に対して,平成22年1月27日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成19年10月25日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年10月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成19年10月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,本件補正前の 「【請求項1】 コンテントの無線配達用コンテント販売機であって, 要求装置から支払い情報およびコンテント要求を無線受信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置と, 該要求受信装置と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じてコンテントを呼出し,該コンテントを該要求装置へ無線送信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置とを含むコンテント販売機。」 から,本件補正後の 「【請求項1】 コンテントの無線配達用の,通信ネットワークに接続されたコンテント販売機であって, 要求装置から支払い情報およびコンテント要求を表わすデジタル信号を無線受信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置と, 該要求受信装置と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じて該通信ネットワークを介して遠隔場所からコンテントを呼出し,該コンテントを表わすデジタル信号を該要求装置へ無線送信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置とを含むコンテント販売機。」 に補正された。 上記補正は,「コンテントの無線配達用コンテント販売機」を「コンテントの無線配達用の,通信ネットワークに接続されたコンテント販売機」と限定し,「コンテントを呼び出し」を「該通信ネットワークを介して遠隔場所からコンテントを呼び出し」と限定するものであり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当すると認められる。 そこで,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-91864号公報(以下「引用例1」という。)には,以下a.-d.の記載がある。 a.「【0003】【発明が解決しようとする課題】したがって,この発明の課題は受信機を設置しなくとも,携帯型端末を所持するだけで有料情報をサービスできるようにすること,また,大量の有料情報を低コストにサービスできるようにすることにある。」 b.「【0012】図8はこの発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。これは有料情報自動販売機を示し,ここでは制御部11,記憶部12,受信部13,購入代金支払い部16およびインターフェース部17等より構成する。つまり,図1に示す表示部14と操作部15がここでは削除されており,このため,有料情報の販売メニューの表示および販売メニューの選択,操作は利用者の所持する携帯型端末側で行なうようにする。」 c.「【0013】図9(a)は有料情報自動販売機側の動作を説明するためのフローチャート,(b)は携帯型端末側の動作を説明するためのフローチャートである。処理21は利用者による有料情報の購入指示の監視処理で,携帯型端末からの処理31を待ち,インターフェース部17を経由して購入指示を受信するまで待機する。購入指示を受信した時点で処理22へ進む。処理22は有料情報の販売メニューの転送処理で,販売メニューはインターフェース部17を経由して携帯型端末に送信し,処理32により携帯型端末側の表示部に表示する。 【0014】処理23は利用者による販売メニューの操作監視処理で,携帯型端末での処理33の操作を待ち,操作が完了した時点で携帯型端末とのインターフェース部17を経由し,販売メニューの操作情報を受信し,その後処理24へ進む。なお,販売メニューが階層化されていて複数存在する場合は,或る操作に対して次の販売メニューを処理22で再度送信して処理23を行なうというように,処理22と処理23を繰り返しても良いし,処理22で一度に全販売メニューを送信しておき,販売メニューの表示切り換えを携帯型端末側に任せるようにしても良い。処理24は購入代金要求処理である。利用者による販売メニューの操作情報をもとに,購入代金を計算する。その後,インターフェース部17を経由して購入代金入金要求画面を携帯型端末に送信し,処理34により携帯型端末の表示部に表示される。処理25は購入代金入金処理である。購入代金支払い部16より入金された代金をカウントし,購入代金以上になった時点で,処理26へ進む。 【0015】処理26は,転送開始指示要求処理である。入金金額が購入代金以上になった時点で,インターフェース部17を経由して転送開始指示画面を携帯型端末に送信し,処理35により携帯型端末の表示部に表示させる。処理27は,転送開始指示監視処理である。携帯型端末の処理36を待ち,携帯型端末とのインターフェース部17を経由し,転送開始指示を受信するまで待機する。転送開始指示を受信した時点で,処理28へ進む。処理28は転送処理である。選択された有料情報をインターフェース部17を経由し,携帯型端末へ送信する。処理29は,釣り銭支払い処理である。処理28で,正常に有料情報が利用者の携帯型端末へ転送できた場合に,処理25で入金した購入代金に釣り銭があれば,釣り銭を支払う。処理28で,正常に転送できなかった場合は,処理25で入金した購入代金を全額払い戻しする。 【0016】処理31は有料情報販売機に対する購入指示,処理32は販売メニューの表示処理,処理33は販売メニューの選択操作処理で,処理32と処理33は販売メニューによっては繰り返すことがある。処理34は購入代金要求画面の表示処理,処理35は転送開始指示画面の表示処理,処理36は転送開始指示の操作,処理37は有料情報の転送処理である。」 d.「【0025】図15は図8における有料情報販売手順の変形例を示すフローチャートで,(a)は有料情報自動販売機側の動作を示し(b)は携帯型端末側の動作を示す。図9との相違は,購入代金を現金で支払う代わりに携帯型端末に予め設定されている利用者ID番号を,パスワードとともに転送する点である。なお,パスワードについては,携帯型端末紛失時の悪用を回避するため,その都度入力できるものとする。購入代金の課金方法としては,利用者ID番号毎に銀行口座やクレジット番号を登録しておき,利用者ID番号毎にセンターで購入代金を集計し,例えば月単位で課金するものとする。 【0026】処理24は,転送開始指示要求処理である。利用者による販売メニューの操作情報をもとに購入代金を計算後,携帯型端末とのインターフェース部17を経由し,転送開始指示画面を携帯型端末に送信する。転送開始指示画面には,計算された購入代金の表示を含むものとする。処理25は,転送開始指示監視処理である。携帯型端末の処理35の操作を待ち,インターフェース部17を経由して転送開始指示を受信するまで待機する。転送開始指示を受信した時点で,処理26へ進む。なお,受信する転送開始指示には,携帯型端末に予め設定されている利用者ID番号が含まれているものとする。処理26は,パスワード要求処理である。携帯型端末とのインターフェース部17を経由し,パスワード設定画面を携帯型端末に送信する。処理27は,パスワード入力監視処理である。携帯型端末の処理37の操作を待ち,インターフェース部17を経由してパスワードを受信するまで待機する。パスワードを受信した時点で,処理28へ進む。 【0027】処理28は,転送処理である。選択された有料情報を,携帯型端末とのインターフェース部17を経由し,携帯型端末に送信する。処理29は販売情報蓄積処理である。処理28で,正常に有料情報が利用者の携帯型端末へ転送できた場合は,利用者ID番号とパスワードを記憶部12へ保存する。保存された販売情報は,センターからの有料情報更新のための通信処理などのタイミングでセンターに送信し,センターが課金処理を行なう。また,図15(b)の処理34は転送開始指示画面の表示処理,処理35は転送開始指示の操作,処理36はパスワード設定画面の表示処理,処理37はパスワード入力処理,処理38は有料情報の転送処理である。」 上記d.の有料情報自動販売機が,有料情報を携帯型端末へ送信する前に,受信した利用者ID番号とパスワードを確認することは,自明のことであり,さらに,上記d.の有料情報自動販売機が,有料情報を携帯型端末へ送信するのに,上記b.の記憶部12から読み出して送信することも,自明のことである。 したがって,上記a.-d.の記載及び図面の記載から,引用例1には, 「有料情報を利用者の所持する携帯型端末に転送する有料情報自動販売機であって, 有料情報を記憶する記憶部と, 有料情報の購入指示を携帯型端末から受信する手段と, 有料情報を選択する販売メニューの操作情報を携帯型端末から受信する手段と, 利用者ID番号を含む転送開始指示を携帯型端末から受信する手段と, パスワードを携帯型端末から受信する手段と, 課金処理に用いられる受信した利用者ID番号とパスワードを確認し,受信した販売メニューの操作情報に基づき選択された有料情報を記憶部から読み出して携帯型端末へ送信する手段とを備える有料情報自動販売機。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 さらに,引用例1には, 「【0017】図10は第3の実施の形態を示すブロック図で,11は制御部,12は記憶部,13Aはセンター通信部,14は表示部,15は操作部,16は購入代金支払い部,17は携帯型端末とのインターフェース部を示す。図1の受信部がセンター通信部13Aになった点で異なっている。つまり,地上波テレビや衛星放送等の放送インフラの代わりに,電話回線,ISDN(ディジタル通信網),PHSを含む携帯電話,無線などの通信インフラを利用し,センター通信部13Aを介して有料情報を受信するようにした点が特徴である。 【0018】図11はセンターとの有料情報通信手順を示すフローチャートである。処理21ではセンターからの回線接続監視を行ない,処理22では新らしい有料情報を記憶するために,記憶部のクリア(初期化)を行なう。処理23はセンターとの通信処理で,完了後に処理24へ進み,回線切断処理を行なう。すなわち,有料情報の通信は図2の場合と異なり,1回だけ行なえば良い。」 とも記載されている。 当審で周知の事項を示す例として引用する特開2000-306003号公報(以下「周知例」という。)には, 「【0196】(第13実施例)図16は,電子バリュー活用システムの第1の実施形態としての電子バリュー購入システムに関する第13実施例を示すブロック構成図である。本実施例では,固定端末11bはコンビニ等に設置され,モバイル端末13はユーザ(ユーザB)が所有するものであり,ユーザBが固定端末11bおよびモバイル端末13を使用する場合を想定している。また本実施例では,モバイル端末13とサーバ15との間の通信には,必ず固定端末11bが介在する態様をとっている。 【0197】(省略) 【0198】このように,本実施例では,固定端末11bを介してモバイル端末13からサーバ15へ送信されるデータがサーバ15の公開鍵cで暗号化され,固定端末11bを介してサーバ15からモバイル端末13へ送信されるデータがユーザBの公開鍵bで暗号化される。したがって,固定端末11bから該データが読み出されても,該データは暗号化されているため,該データからは有効な情報を得ることができない。したがって,本実施例は信頼性の高い電子バリュー活用システムを提供することができる。また,固定端末11bとモバイル端末13間は,赤外線(IrDA)や近距離用無線(Bluetooth)等を用いた通信コストのかからないローカル無線で通信を行うため,ユーザBは通信費を気にせずにサーバ15と通信することができる。」 と記載されている。 当審で引用する特開2000-215250号公報(以下「引用例2」という。)には, 「【0046】図2は,商品販売情報処理システム1を構成する販売管理センターB,及び店舗Aに設置される各装置の接続関係を示すブロック図である。この図2に示すように,商品販売情報処理システム1は,ネットワーク2に対して,販売管理センターBに設置されるネットワークサーバとしての商品販売情報管理装置3,及び各店舗Aに設置されるネットワーククライアントとしての複数の商品販売情報処理端末装置4が,相互に接続されることにより構成されている。」, 「【0113】次に,商品販売情報処理端末装置4内のCPU401において実行されるコンテンツ販売処理について図8?10に示すフローチャートに基づいて説明する。 【0114】図8?10に示すコンテンツ販売処理では,まず,CPU401は,上記表示処理において,利用客によるコンテンツ情報が指定されることを待機し(ステップS21),コンテンツ情報が指定されると,当該コンテンツ情報の記憶容量あるいは使用目的等に基づいて,書込先はカード型記録媒体かディスク型記録媒体かを判定する(ステップS22)。書込先をカード型記録媒体であると判定した場合は,そのカード型記録媒体の記録媒体挿入・排出部45へのセットを利用客に促すため,メイン表示部402における表示と,音声合成部406における音声合成によるスピーカー51,51からの音声発声により指示する(ステップS23)。また,書込先をディスク型記録媒体であると判定した場合は,そのディスク型記録媒体の記録媒体挿入・排出部47へのセットを利用客に促すため,メイン表示部402における表示と,音声合成部406における音声合成によるスピーカー51,51からの音声発声と,により指示する(ステップS24)。 【0115】(省略) 【0116】(省略) 【0117】次いで,CPU401は,該当コンテンツ情報がHDドライブ413に格納されているか否かを確認し(ステップS29),格納されていれば,当該コンテンツ情報をHDドライブ413から読み出して,メモリカードドライブ416あるいはディスクメディアドライブ417により,そのカード型記録媒体,あるいはディスク型記録媒体に書き込ませる(ステップS30)。また,該当コンテンツ情報がHDドライブ413に格納されていなければ,当該コンテンツ情報を通信制御部408によりネットワーク2を介して商品販売情報管理装置3からHDドライブ413にダウンロードさせた後(ステップS31),当該コンテンツ情報をHDドライブ413から読み出して,メモリカードドライブ416あるいはディスクメディアドライブ417により,そのカード型記録媒体,あるいはディスク型記録媒体に書き込ませる(ステップS30)。」 と記載されている。 3 対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると, (イ)引用発明の「有料情報」は,本願補正発明の「コンテント」に相当し, (ロ)引用発明の「携帯型端末」は,本願補正発明の「要求装置」に相当し, (ハ)引用発明の「有料情報を利用者の所持する携帯型端末に転送する有料情報自動販売機」は,本願補正発明の「コンテントの無線配達用の,通信ネットワークに接続されたコンテント販売機」と「コンテントの配達用のコンテント販売機」として共通し, (ニ)引用発明の「利用者ID番号」と「パスワード」とは課金処理に用いられるのであるから,引用発明の「利用者ID番号」と「パスワード」とで,本願補正発明の「支払い情報」に相当し, (ホ)引用発明の「有料情報の購入指示」と「有料情報を選択する販売メニューの操作情報」と「転送開始指示」とで,本願補正発明の「コンテント要求」に相当し, (ヘ)情報を信号として受信することが技術常識であるから,引用発明の「有料情報の購入指示を携帯型端末から受信する手段」と「有料情報を選択する販売メニューの操作情報を携帯型端末から受信する手段」と「利用者ID番号を含む転送開始指示を携帯型端末から受信する手段」と「パスワードを携帯型端末から受信する手段」とで,本願補正発明の「要求装置から支払い情報およびコンテント要求を表わすデジタル信号を無線受信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置」と「要求装置から支払い情報およびコンテント要求を表わす信号を受信するように構成された要求受信手段」として共通し, (ト)情報を信号として送信することが技術常識であるから,引用発明の「課金処理に用いられる受信した利用者ID番号とパスワードを確認し,受信した販売メニューの操作情報に基づき選択された有料情報を記憶部から読み出して携帯型端末へ送信する手段」は,本願補正発明の「該要求受信装置と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じて該通信ネットワークを介して遠隔場所からコンテントを呼出し,該コンテントを表わすデジタル信号を該要求装置へ無線送信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置」と「該要求受信手段と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じてコンテントを呼出し,該コンテントを表わす信号を該要求装置へ送信するように構成された要求履行手段」として共通している。 したがって,両者は, 「コンテントの配達用のコンテント販売機であって, 要求装置から支払い情報およびコンテント要求を表わす信号を受信するように構成された要求受信手段と, 該要求受信手段と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じてコンテントを呼出し,該コンテントを表わす信号を該要求装置へ送信するように構成された要求履行手段とを含むコンテント販売機。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は,要求装置から支払い情報およびコンテント要求を表わす信号を受信し,コンテントを表わす信号を要求装置へ送信して,コンテントを配達するのに,支払い情報およびコンテント要求を表わすデジタル信号を無線受信し,コンテントを表わすデジタル信号を無線送信して,コンテントを無線配達するものであるのに対して,引用発明は,そうであるのか不明である点。 [相違点2] 本願補正発明は,要求受信手段がコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置であり,要求履行手段がコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置であるに対して,引用発明は,そうであるのか不明である点。 [相違点3] 本願補正発明は,通信ネットワークに接続されており,コンテント要求に応じてコンテントを呼び出すのに,通信ネットワークを介して遠隔場所からコンテントを呼び出すものであるのに対して,引用発明は,そうではない点。 4 判断 [相違点1]について検討する。 例えば周知例に固定端末とモバイル端末間でブルートゥースを用いて通信することが記載されているように,近距離にある情報機器間で無線通信を用いて通信することが周知の事項であり,また,デジタル信号で通信することも例示するまでもなく周知の事項であるから,引用発明において,要求装置から支払い情報およびコンテント要求を表わす信号を受信し,コンテントを表わす信号を要求装置へ送信して,コンテントを配達するのに,支払い情報およびコンテント要求を表わすデジタル信号を無線受信し,コンテントを表わすデジタル信号を無線送信して,コンテントを無線配達するようにし,本願補正発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。 [相違点2]について検討する。 情報処理手段をコンピュータのハードウェアにより構成することが例示するまでもなく周知の事項であるから,引用発明において,要求受信手段をコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置とし,要求履行手段をコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置として,本願補正発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。 [相違点3]について検討する。 引用例1には,コンテント(有料情報)を記憶する記憶部からコンテントを読み出して要求装置(携帯型端末)に配達(転送)するコンテント販売機(有料情報自動販売機)において,記憶部にコンテントを記憶するのに,放送インフラの代わりに通信インフラを利用してセンターからコンテントを受信して記憶することも記載されており,引用例2に,ネットワークに接続され店舗に設置されてコンテンツ情報を販売する商品販売情報処理端末装置において,利用者により指定されたコンテンツ情報が自身のHDドライブに格納されていなければ,当該コンテンツ情報をネットワークを介して販売管理センターに設置されたネットワークサーバから取り込み,取り込んだ当該コンテンツ情報を販売することが記載されているから,コンテント販売機として共通する引用発明において,コンテントが記憶部に記憶されていなくとも販売できるようにするべく,通信ネットワークに接続し,コンテント要求に応じて該通信ネットワークを介して遠隔場所からコンテントを呼び出すようにして,本願補正発明のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項の作用効果から,当業者が容易に予測し得たことである。 したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項から,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成19年10月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年4月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「コンテントの無線配達用コンテント販売機であって, 要求装置から支払い情報およびコンテント要求を無線受信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置と, 該要求受信装置と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じてコンテントを呼出し,該コンテントを該要求装置へ無線送信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置とを含むコンテント販売機。」 2 引用例 原査定の拒絶理由に引用された引用例及び該引用例に記載された発明は,上記第2の2の項に記載したとおりである。 3 対比 本願発明と引用発明とを対比すると, (イ)引用発明の「有料情報」は,本願発明の「コンテント」に相当し, (ロ)引用発明の「携帯型端末」は,本願発明の「要求装置」に相当し, (ハ)引用発明の「有料情報を利用者の所持する携帯型端末に転送する有料情報自動販売機」は,本願発明の「コンテントの無線配達用コンテント販売機」と「コンテントの配達用コンテント販売機」として共通し, (ニ)引用発明の「利用者ID番号」と「パスワード」とは課金処理に用いられるのであるから,引用発明の「利用者ID番号」と「パスワード」とで,本願発明の「支払い情報」に相当し, (ホ)引用発明の「有料情報の購入指示」と「有料情報を選択する販売メニューの操作情報」と「転送開始指示」とで,本願発明の「コンテント要求」に相当し, (ヘ)引用発明の「有料情報の購入指示を携帯型端末から受信する手段」と「有料情報を選択する販売メニューの操作情報を携帯型端末から受信する手段」と「利用者ID番号を含む転送開始指示を携帯型端末から受信する手段」と「パスワードを携帯型端末から受信する手段」とで,本願発明の「要求装置から支払い情報およびコンテント要求を無線受信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置」と「要求装置から支払い情報およびコンテント要求を受信するように構成された要求受信手段」として共通し, (ト)引用発明の「課金処理に用いられる受信した利用者ID番号とパスワードを確認し,受信した販売メニューの操作情報に基づき選択された有料情報を記憶部から読み出して携帯型端末へ送信する手段」は,本願発明の「該要求受信装置と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じてコンテントを呼出し,該コンテントを該要求装置へ無線送信するようにコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置」と「該要求受信手段と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じてコンテントを呼出し,該コンテントを該要求装置へ送信するように構成された要求履行手段」として共通している。 したがって,両者は, 「コンテントの配達用コンテント販売機であって, 要求装置から支払い情報およびコンテント要求を受信するように構成された要求受信手段と, 該要求受信手段と関連して,該支払い情報を確認し,該コンテント要求に応じてコンテントを呼出し,該コンテントを該要求装置へ送信するように構成された要求履行手段とを含むコンテント販売機。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明は,要求装置から支払い情報およびコンテント要求を受信し,コンテントを要求装置へ送信して,コンテントを配達するのに,支払い情報およびコンテント要求を無線受信し,コンテントを無線送信して,コンテントを無線配達するものであるのに対して,引用発明は,そうであるのか不明である点。 [相違点2] 本願発明は,要求受信手段がコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置であり,要求履行手段がコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置であるに対して,引用発明は,そうであるのか不明である点。 4 判断 [相違点1]について検討する。 例えば周知例(特開2000-306003号公報)に固定端末とモバイル端末間でブルートゥースを用いて通信することが記載されているように,近距離にある情報機器間で無線通信を用いて通信することが周知の事項であるから,引用発明において,要求装置から支払い情報およびコンテント要求を受信し,コンテントを要求装置へ送信して,コンテントを配達するのに,支払い情報およびコンテント要求を無線受信し,コンテントを無線送信して,コンテントを無線配達するようにし,本願発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。 [相違点2]について検討する。 情報処理手段をコンピュータのハードウェアにより構成することが例示するまでもなく周知の事項であるから,引用発明において,要求受信手段をコンピュータのハードウェアにより構成された要求受信装置とし,要求履行手段をコンピュータのハードウェアにより構成された要求履行装置として,本願発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。 そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知の事項の作用効果から,当業者が容易に予測し得たことである。 5 むすび したがって,本願発明は,引用発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-08 |
結審通知日 | 2010-09-13 |
審決日 | 2010-09-28 |
出願番号 | 特願2002-229338(P2002-229338) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 裕子 |
特許庁審判長 |
清田 健一 |
特許庁審判官 |
小林 義晴 山本 穂積 |
発明の名称 | 通信ネットワークによるコンテントの無線配達システムおよび方法 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 臼井 伸一 |