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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1231855 |
審判番号 | 不服2008-3132 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-02-12 |
確定日 | 2011-02-09 |
事件の表示 | 特願2004-319197「無線端末を制御する装置及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-143110〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成16年11月2日(優先権主張 2003年11月3日 韓国)の出願であって,平成18年10月12日付けで拒絶の理由が通知され,平成19年1月16日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,同年11月7日付けで拒絶査定され,平成20年2月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年3月12日付けで手続補正書の提出がなされたものである。 第2 平成20年3月12日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年3月12日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成20年3月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。 本件補正は,平成19年1月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下「補正前請求項1」という。)に記載された事項 「 【請求項1】 無線端末を制御するシステムであって, 前記無線端末との通信方式における制御信号中の,定義されていないフィールド又は,新しく定義したフィールドに,前記無線端末の機能モードを制御する制御情報を含ませた制御信号を生成して送り出す信号送出装置と, 前記信号送出装置から送り出された制御信号を受信すると,該制御信号に含まれた制御情報に基づく機能モードを設定する,少なくとも一つ以上の無線端末と,を含むことを特徴とする無線端末の制御システム。」を 「 【請求項1】 無線端末を制御するシステムであって, 前記無線端末とのCDMA通信方式における制御信号中のSystem Parameter MessageのBASE_CLASSフィールド又はSync Channel MessageのPARTフィールドの予備フィールドに,前記無線端末の機能モードを制御するための制御情報であって,少なくとも前記無線端末のカメラモードを制御するために新たに定義された制御情報を含むCDMA通信方式制御信号を生成して送り出す第1信号送出装置と, 前記無線端末とのWCDMA通信方式における制御信号中の新たに定義されたSIBタイプに,前記無線端末の機能モードを制御するための制御情報であって,少なくとも前記無線端末のカメラモードを制御するための制御情報を含むWCDMA通信方式制御信号を生成して送り出す第2信号送出装置と, 前記各信号送出装置から送り出された制御信号のうち該当する制御信号を受信し,該制御信号に含まれた前記カメラモードを制御する制御情報に基づいて,前記カメラモードのオン/オフを設定する少なくとも一つ以上の無線端末と,を含み, 前記第1及び第2信号送出装置から送出される前記各制御信号は,周期的にかつ連続して送出されるとともに,各制御信号の送出周期の少なくとも一部が互いに重なり合うように送出されることを特徴とする無線端末の制御システム。」 と補正するものであり,当該補正は補正前請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,特許請求の範囲を減縮するものである。 そこで,本件補正による請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するか)検討する。 2.引用発明 原査定の理由において引用文献1として引用された特開2003-259460号公報(平成15年9月12日公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【請求項1】 無線通信端末の機能を制御する無線通信端末制御システムであって, 端末制御装置と無線通信端末とを備え, 前記端末制御装置は, 制御対象となる端末を特定するための制御対象情報と,端末の機能状態の変更内容を示す機能状態変更情報とを含んだ制御データを生成する制御データ生成手段と, 前記制御データ生成手段で生成された制御データを前記無線通信端末に送信する送信手段とを含み, 前記無線通信端末は, 当該無線通信端末の機能状態を記憶する機能状態記憶手段と, 前記端末制御装置から送信された制御データを受信する受信手段と, 前記受信手段で受信した制御データから,前記制御対象情報と前記機能状態変更情報とを抽出する抽出手段と, 前記抽出手段で抽出された制御対象情報に基づき,前記機能状態記憶手段に記憶された機能状態を変更するか否かを判定する判定手段と, 前記判定手段における判定結果に従い,前記抽出手段で抽出された機能状態変更情報に基づき,前記機能状態記憶手段に記憶された機能状態を変更する変更手段とを含む,無線通信端末制御システム。」(公報第1ページ第1欄) (2) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,無線通信システムで使用される無線通信端末制御システムに関し,より特定的には,無線通信端末の機能状態を端末制御装置を用いて制御する無線通信端末制御システムに関する。」(公報第3ページ第3欄) (3) 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記システムでは,制御信号を受信した無線通信端末の機能状態はすべて同じように変更され,機能状態を変更すべきでない無線通信端末の機能も制限されるという問題がある。また,端末制御装置は,無線通信端末が実際に機能状態を変更したことを確認できないため,無線通信端末の機能状態を把握した上で,無線通信端末の機能状態を管理できないという問題もある。 【0007】それ故に,本発明は,特定の無線通信端末の機能状態を変更でき,端末制御装置において無線通信端末が機能状態を変更したことを確認できる,無線通信端末制御システムを提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段および発明の効果】第1の発明は,無線通信端末の機能を制御する無線通信端末制御システムであって,端末制御装置と無線通信端末とを備え,端末制御装置は,制御対象となる端末を特定するための制御対象情報と,端末の機能状態の変更内容を示す機能状態変更情報とを含んだ制御データを生成する制御データ生成手段と,制御データ生成手段で生成された制御データを無線通信端末に送信する送信手段とを含み,無線通信端末は,当該無線通信端末の機能状態を記憶する機能状態記憶手段と,端末制御装置から送信された制御データを受信する受信手段と,受信手段で受信した制御データから,制御対象情報と機能状態変更情報とを抽出する抽出手段と,抽出手段で抽出された制御対象情報に基づき,機能状態記憶手段に記憶された機能状態を変更するか否かを判定する判定手段と,判定手段における判定結果に従い,抽出手段で抽出された機能状態変更情報に基づき,機能状態記憶手段に記憶された機能状態を変更する変更手段とを含む。このような第1の発明によれば,無線通信端末は,自らの機能状態を記憶し,端末制御装置は,制御対象情報と機能状態変更情報とを含んだ制御データを,無線通信端末に送信する。無線通信端末は,受信した制御対象情報に基づき,機能状態を変更するか否かを判定し,その判定結果に従い,記憶した機能状態を変更する。これにより,特定の無線通信端末の機能状態を変更することができる。」(公報第3ページ第4欄) (4) 「【0016】 【発明の実施の形態】図1は,本発明の一実施形態に係る無線通信端末制御システムの構成を示す図である。図1に示すシステムは,端末制御装置10と無線通信端末20とを備え,機能状態変更エリア内にある無線通信端末20の機能状態を変更することを特徴とする。なお,図1の上下方向は,鉛直方向に対応する。 【0017】図1に示すように,端末制御装置10と無線通信端末20とは,互いに無線で通信可能に接続される。より詳細には,端末制御装置10と無線通信端末20とは,例えば,無線LAN,Bluetooth (R),赤外線通信,携帯電話,PHSなどの無線ネットワークを用いて,互いに通信可能に接続される。端末制御装置10は,無線通信端末20の機能状態を変更すべき場所(以下,機能状態変更エリアという)の出入口41の付近の壁面に設置される。機能状態変更エリアとしては,例えば,病院,電車の中,コンサート会場,会議室,教室などが選ばれる。端末制御装置10は,機能状態変更エリア内に出入りする無線通信端末20に,定期的に,常時,あるいは,特定期間に限定して,制御データ31を送信する。 【0018】制御データ31は,無線通信端末20の機能状態を変更するために使用される。制御データ31は,制御対象情報と機能状態変更情報とを含む。制御対象情報とは,制御対象となる(あるいは,制御対象から除外される)無線通信端末を特定するための情報である。具体的には,制御対象情報とは,例えば,制御対象となる無線通信端末に設定されているユーザ名,ユーザグループ名,ユーザの役職,電話番号,メールアドレス,シリアル番号,品番,機器の一般名称,固有名称などのうちのいずれか1つ,あるいは,それらの任意の組合せをいう。 【0019】機能状態変更情報とは,制御対象となる無線通信端末の機能状態の変更内容を示す情報である。機能状態変更情報は,機能指定情報と,必要に応じて時間指定情報とを含む。機能指定情報は,無線通信端末に機能状態として設定すべき値を含んでいる。具体的には,機能指定情報には,例えば,電源切,電源入,着信音消去,着信音量増幅,着信音量減少,着信音消去解除,受信音量増幅,受信音量減少,振動部動作,振動部非動作,無線信号発信禁止,無線信号発信禁止解除,着信禁止,着信禁止解除,データ受信禁止,データ受信禁止解除,データ送信禁止,データ送信禁止解除などについて,無線通信端末に設定すべき値(ON/OFF値またはパラメータ)が含まれる。時間指定情報は,無線通信端末の機能状態を変更すべき時間を指定する。具体的には,時間指定情報とは,例えば,開始時刻,終了時刻,継続時間などのうちのいずれか1つ,あるいは,それらの任意の組合せをいう。機能状態変更情報は,少なくとも機能指定情報を含んでいれば足り,時間指定情報を含んでいなくてもよい。 【0020】端末制御装置10から送信される制御データ31は,種々の方法で決定される。例えば,端末制御装置10は,入力キーや入力スイッチなどの入力手段を備えており,端末制御装置10の管理者が入力手段を用いて制御データ31を決定してもよい。あるいは,端末制御装置10は,無線通信システムの管理装置などと通信可能に接続されており,管理装置から制御データ31を受信してもよい。あるいは,端末制御装置10は,無線通信端末20において機能状態が変更されたか否かを示す処理完了通知32を受信し,これに基づき,制御データ31の内容を切り替えてもよい。 【0021】無線通信端末20は,例えば,携帯電話,PHS,PDA(Personal DigitalAssistant),パーソナルコンピュータ,AV機器などである。また,無線通信端末20は,上記各機器に接続され,無線通信機能を有するヘッドホンやイヤホンなどであってもよい。無線通信端末20は,機能状態変更エリアの出入口41の付近で端末制御装置10から制御データ31を受信し,受信した制御データ31に基づき自らの機能状態を変更した上で,処理完了通知32を端末制御装置10に送信する。 【0022】なお,図1では,1台の端末制御装置10を機能状態変更エリアの出入口41の付近の壁面に設置することとしたが,端末制御装置10の設置台数および設置場所はこれに限るものではない。図2は,端末制御装置10の他の設置例を示す図である。なお,図2の上下方向は,図1と同様,鉛直方向に対応する。図2(a)に示す例では,端末制御装置10a,10bが,それぞれ,機能状態変更エリアの入口42および出口43の付近の壁面に設置されている。図2(b)に示す例では,端末制御装置10cが,機能状態変更エリア内部の天井に設置されている。図2(c)に示す例では,端末制御装置10d?gが,機能状態変更エリアの入口42および出口43の付近の壁面,並びに,機能状態変更エリア内部の天井に設置されている。図2に示す例では,壁面または天井に端末制御装置10a?gを設置することとしたが,端末制御装置を床の上に設置してもよく,移動可能に設置してもよい。 【0023】また,端末制御装置10は,制御対象情報と機能状態変更情報とを,1つの制御データ31に含めて送信してもよく,これらを別々に送信してもよい。また,端末制御装置10を無線通信端末20の通信制御を行う基地局と兼用し,制御データ31を無線通信端末20の本来の無線通信機能を用いて伝送してもよく,あるいは,端末制御装置10を上記基地局とは別に設置し,制御データ31を無線通信端末20の本来の無線通信機能以外の無線通信機能を用いて伝送してもよい。後者の例としては,例えば,無線通信端末20が携帯電話であるときに,Bluetooth (R)を用いて制御データ31を伝送する無線通信端末制御システムを考えることができる。」(下線は当審が付与。公報第4ページ第6欄?第5ページ第8欄) これらの記載から,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「無線通信端末の機能を制御する無線通信端末制御システムであって, 端末制御装置と無線通信端末とを備え, 前記端末制御装置は, 制御対象となる端末を特定するための制御対象情報と,端末の機能状態の変更内容を示す機能状態変更情報とを含んだ制御データを生成する制御データ生成手段と, 前記制御データ生成手段で生成された制御データを前記無線通信端末に送信する送信手段とを含み, 前記無線通信端末は, 当該無線通信端末の機能状態を記憶する機能状態記憶手段と, 前記端末制御装置から送信された制御データを受信する受信手段と, 前記受信手段で受信した制御データから,前記制御対象情報と前記機能状態変更情報とを抽出する抽出手段と, 前記抽出手段で抽出された制御対象情報に基づき,前記機能状態記憶手段に記憶された機能状態を変更するか否かを判定する判定手段と, 前記判定手段における判定結果に従い,前記抽出手段で抽出された機能状態変更情報に基づき,前記機能状態記憶手段に記憶された機能状態を変更する変更手段とを含み, 端末制御装置は,機能状態変更エリア内に出入りする無線通信端末に,定期的に,常時,あるいは,特定期間に限定して,制御データを送信する, 無線通信端末制御システム。」 3.対比 本願補正発明と引用発明を比較する。 ・引用発明の「無線通信端末制御システム」は本願補正発明の「無線端末の制御システム」に相当する。 ・引用発明も本願補正発明もともに,無線端末の機能を制御する点で共通することは明らかであるから,引用発明の無線端末の機能状態の変更内容を示す「機能状態変更情報」は本願補正発明の無線端末の機能モードを制御するための「制御情報」といえる。 そして,引用発明の「送信手段」は機能状態変更情報を含む信号を生成して,無線端末装置との通信方式において送出することは当然であるから,該「送信手段」は本願補正発明の「第1の信号送出装置」及び「第2の信号送出装置」と,無線端末装置との通信方式における無線端末の機能モードを制御するための制御情報を生成して送り出す点で一致し,該「制御情報」を含む点において「制御データ」は本願補正発明の「制御信号」と共通する。 ・引用発明の無線通信端末も本願補正発明の「無線端末」もともに,「信号送出装置から送り出された制御信号のうち該当する制御信号を受信し,該制御信号に含まれた機能モードを制御する制御情報に基づいて,前記機能モードのを設定する」点で共通し,引用発明の「無線通信端末」が「少なくとも一つ以上」であることは明白である。 ・引用発明の機能状態変更情報は,無線通信端末に定期的に,常時,送信手段から送信されるのであるから,本願補正発明の「信号送出装置から送出される制御信号は,周期的にかつ連続して送出される」点で一致する。 上記から,本願補正発明と引用発明は次の点で一致,相違する。 <一致点> 無線端末を制御するシステムであって, 前記無線端末との通信方式における制御信号中に,前記無線端末の機能モードを制御するための制御情報を含む通信方式制御信号を生成して送り出す信号送出装置と, 前記信号送出装置から送り出された制御信号のうち該当する制御信号を受信し,該制御信号に含まれた前記機能モードを制御する制御情報に基づいて,前記モードを設定する少なくとも一つ以上の無線端末と,を含み, 前記信号送出装置から送出される前記制御信号は,周期的にかつ連続して送出されることを特徴とする無線端末の制御システム。 <相違点1> 本願補正発明も引用発明もともに,「制御信号」が「無線通信端末との通信方式における」ものであり,「無線端末の機能モードを制御するための制御情報」を含み,「信号送出装置から」,「周期的にかつ連続して」送出される点で一致する。 しかし,(a)本願補正発明では通信方式を「CDMA」として,「無線端末の機能モードを制御するための制御情報」をCDMA通信方式における制御信号中の「System Parameter MessageのBASE_CLASSフィールド又はSync Channel MessageのPARTフィールドの予備フィールド」に「少なくとも前記無線端末のカメラモードを制御するために新たに定義された制御情報」として含む「CDMA通信方式制御信号生成して送り出す」信号送出装置を「第1信号送出装置」とし,さらに(b)本願補正発明では通信方式を「WCDMA」として,「無線端末の機能モードを制御するための制御情報」をWCDMA通信方式における制御信号中の「新たに定義されたSIBタイプ」に「少なくとも前記無線端末のカメラモードを制御するための制御情報」として含む「WCDMA通信方式制御信号を生成して送り出す」信号送出装置を「第2信号送出装置」としているのに対して,(c)引用発明には,「通信方式」について「CDMA」と「WCDMA」に関する記載も,「System Parameter MessageのBASE_CLASSフィールド又はSync Channel MessageのPARTフィールドの予備フィールド」及び「新たに定義されたSIBタイプ」に関する記載もなく,また制御情報を「BASE_CLASSフィールド」又は「PARTフィールドの予備フィールド」に含むようにする点についても記載はない。そして,「制御情報」として「少なくとも前記無線端末のカメラモードを制御する」記載も,制御情報に基づいて「カメラモードのオン/オフを設定する」記載もない点。 <相違点2> 本願補正発明では「制御信号」を送出する「信号送出装置」が「第1及び第2」であり,「制御信号」は該「第1及び第2」の「各制御信号」であって「各制御信号」の「送出周期の少なくとも一部が互いに重なり合うように送出される」記載があるのに対して,引用発明にはそのような記載はない点。 4.当審の判断 <相違点1>について (a)無線端末がカメラ機能を搭載し,そのカメラの機能モードのオン/オフを信号送出装置から制御することは周知(例えば,特開2000-152217号公報(公報第3ページ第4欄?第4ページ第5欄の【0007】?【0011】),特開2002-27554号公報(公報第7ページ【0084】?【0088】,特に【0087】)等参照。)である。 (b)通信方式として,CDMA通信方式もWCDMA通信方式もともに引用例を示すまでもなく周知である。 そして,CDMA通信方式における制御信号中に「System Parameter MessageのBASE_CLASSフィールド」が定義されていること(例えば,特表2001-522212号公報(公報第13ページ?第16ページの【0018】?【0022】)等参照。),また同じく制御信号中に「Sync Channel MessageのPARTフィールドの予備フィールド」が定義されていること(例えば,特表2002-543675号公報(公報第5ページ?第7ページの【0004】,なお該公報記載の「PRAT」と本願補正発明の「PART」が同義であることは明らかである。)等参照。)はいずれも技術常識である。 さらに,WCDMA通信方式における制御信号中に「SIBタイプ」が定義されていること(例えば,特表2003-500950号公報(公報第13ページ【0010】,第16ページ【0017】,第37ページ?第38ページの【0059】?【0061】,【図17a】,【図17b】)等参照。)は技術常識である。 ここで,予備フィールド等未定義のフィールドを新しく定義することにより,新しい機能を制御できるようにすることは,当業者が一般に行っていることであり格別なものではなく,また通信方式を「CDMA」及び「WCDMA」に特定したことについても明細書及び図面の記載を参酌しても格別な技術的意義を見いだすことはできない。 そうすると,上記(a),(b)から,「CDMA通信方式制御信号を生成して送り出す第1信号送出装置」と「WCDMA通信方式制御信号を生成して送り出す第2信号送出装置」とし相違点1のように構成することは,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 <相違点2>について 「第1及び第2信号送出装置」については上記のとおりであるから,「制御信号」を該「第1及び第2信号送出装置」の「各制御信号」とすることは当業者が容易に想到し得たものであり,「各制御信号」を「周期的にかつ連続して送出」するとともに,「各制御信号の送出周期の少なくとも一部が互いに重なり合うように送出」した点には,明細書及び図面の記載を参酌しても格別な技術的意義を見いだすことができない。 そうすると,上記「<相違点1>について」と同じく,引用発明及び周知技術に基づいて,相違点2のように構成することは,当業者が容易に想到し得たものである。 そして,本願補正発明のように構成したことによる効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる程度のものである。 したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.補正却下の決定のまとめ 以上のとおり,本願補正発明(本件補正(平成20年3月12日付け手続補正)による特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)は,特許法第29条第2項の規定に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 上記「第2」に記載のとおり,平成20年3月12日付け手続補正は,却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年1月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「 【請求項1】 無線端末を制御するシステムであって, 前記無線端末との通信方式における制御信号中の,定義されていないフィールド又は,新しく定義したフィールドに,前記無線端末の機能モードを制御する制御情報を含ませた制御信号を生成して送り出す信号送出装置と, 前記信号送出装置から送り出された制御信号を受信すると,該制御信号に含まれた制御情報に基づく機能モードを設定する,少なくとも一つ以上の無線端末と,を含むことを特徴とする無線端末の制御システム。」 第4 当審の判断 1.引用文献及び周知技術 引用文献1及び周知技術については,上記「第2」の「2.引用発明」及び「4.当審の判断」に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明は,上記「第2」の「1.補正後の本願発明」に記載した,本願補正発明にした限定事項を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成をすべて含み,さらに,他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,上記「第2」の「4.当審の判断」に記載したとおり,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 まとめ 以上のとおり,本願発明(平成19年1月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)は,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-08 |
結審通知日 | 2010-09-14 |
審決日 | 2010-09-27 |
出願番号 | 特願2004-319197(P2004-319197) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 博之、高木 進、海江田 章裕 |
特許庁審判長 |
江嶋 清仁 |
特許庁審判官 |
中野 裕二 近藤 聡 |
発明の名称 | 無線端末を制御する装置及びその方法 |
代理人 | 岸田 正行 |
代理人 | 川上 成年 |
代理人 | 小川 英宣 |
代理人 | 水野 勝文 |