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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M |
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管理番号 | 1231888 |
審判番号 | 不服2009-12413 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-07-07 |
確定日 | 2011-02-10 |
事件の表示 | 特願2008-148356「携帯型無線電話装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日出願公開、特開2009- 5349〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は、平成5年3月30日に出願した特願平5-72367号の一部を平成7年11月28日に新たな特許出願とした特願平7-309277号の一部を平成10年6月26日に新たな特許出願とした特願平10-180965号の一部を平成15年5月15日に新たな特許出願とした特願2003-137722号の一部を平成15年9月26日に新たな特許出願とした特願2003-336052号の一部を平成16年2月17日に新たな特許出願とした特願2004-40374号の一部を平成17年9月29日に新たな特許出願とした特願2005-285307号の一部を平成19年3月29日に新たな特許出願とした特願2007-88463号の一部を平成20年6月5日に新たな特許出願としたものであって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年7月21日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 なお、平成20年7月1日付け手続補正書、平成21年1月29日付け手続補正書及び平成21年7月7日付け手続補正書はいずれも明細書の要旨を変更するものであるという理由により当審において別途却下されている。 (本願発明) 「公衆通信回線に無線により接続され、前記公衆通信回線を経由して音声もしくはデータの発信、または受信を行う無線通信手段と、 前記無線通信手段に対する制御指令の出力、前記無線通信手段を経由して前記公衆通信回線からの音声もしくはデータの入力、または前記無線通信手段を経由して前記公衆通信回線への音声もしくはデータの送出を制御するCPUと、 前記CPUに入力されたデータ、及び当該携帯型無線電話装置の留守録機能により音声を格納するメモリと、 電力を蓄える蓄電池と、 所定の画像を表示する第一ディスプレイ、及び第二ディスプレイと、 前記第二ディスプレイを含む当該携帯型無線電話装置の予め設定された部位を待機系とし、オン信号を出力するオンスイッチが操作された場合には、当該携帯型無線電話装置全体に前記蓄電池から電力を供給するアクティブ状態にし、オフ信号を出力するオフスイッチが操作された場合には、前記待機系に前記蓄電池から電力を供給する待機状態にする電源コントローラと、 前記電源コントローラによる電力供給が、前記アクティブ状態であるか前記待機状態であるかに拘わらず、前記無線通信手段が受信待機中であるか否かを繰り返し判定する受信待機中判定手段と、 前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるものと判定されると、受信待機中である旨を前記第二ディスプレイに表示する第二受信待機中表示手段と、 前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも前に、前記蓄電池の残量を検出して、その検出結果を前記第二ディスプレイに表示をする電源容量表示手段と、 前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも後に、前記メモリのデータ格納量を検出して、その検出結果を前記第二ディスプレイに表示をするデータ格納量表示手段と、 前記電源コントローラによる電力供給が前記アクティブ状態である期間に、前記受信待機中であるか否かを含む当該携帯型無線電話装置の動作状態の調査を繰り返し実行する現況調査手段と、 前記現況調査手段での調査の結果、前記受信待機中であれば、受信待機中である旨を前記第一ディスプレイに表示する第一受信待機中表示手段と を備えることを特徴とする携帯型無線電話装置。」 2.引用発明および周知技術 (1)当審の拒絶理由に引用された特開平3-235116号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「データの通信手段を有する情報処理装置において、各種の情報を表示する表示画面を開閉自在にした第1の表示手段と、 上記第1の表示手段と独立してデータ通信の状態を表示する第2の表示手段と、 上記表示画面の開閉状態に応じて上記第1表示手段の表示制御を行うとともに、上記第2表示手段の表示制御は上記表示画面の開閉状態と無関係に行う制御手段を有することを特徴とする情報処理装置。」(1頁左下欄、特許請求の範囲) ロ.「また右のヒンジM39にはディスプレイの開閉を検知するマイクロスイッチM44が配置され、ヒンジの部材M45に取り付けたアクチュエータM46がマイクロスイッチM44をディスプレイの回転位置に応じてON、OFFし開閉状態を検知する。」(3頁右上欄18?左下欄3行目) ハ.「M48、M49はそれぞれ赤、緑のLEDであって、緑はPOWERを、赤はスタンバイ状態、FAX受信などの表示をするものである。」(3頁左下欄19行目?右下欄1行目) ニ.「第6図に示すように、デイスプレイ後ろカバーM14には、バツクライト液晶ユニツトM16が固定され、その前面にはタツチパネルM19が2mmの薄いクツシヨンM60を介して取り付けられている。・・・(中略)・・・さらに下方両端には前述のヒンジユニツト部材M40が固定部材M41によって固定され、デイスプレイがヒンジ回りに回転する。」(3頁右下欄9?19行目) ホ.「E18はスピーカであり、TEL・FAX・音源コントローラE23による音声、音楽、信号等を再生する場合に使用する。」(11頁右下欄19行目?12頁左上欄1行目) ヘ.「E25はハンドセツトである。本ハンドセツトは、ダイヤルボタン、フツクボタン等を持つ電話機である。」(12頁右上欄14?16行目) ト.「E26は1200/300BAUDの非同期通信モデムである。本モデムボードを対応するコネクタに挿入することによって、電話/フアクス共用の公衆回線E14をパソコン通信としても使用できるようになる。」(12頁左下欄3?7行目) チ.「E29は本機器のROMである。512K×8bitsの4Mビツト マスクROMを8個使用している。本装置全体の制御用プログラム(マネージヤ、ドライバ、DOS、アプリケーション)やフオント、辞書等のデータを記憶している。」(12頁右下欄3?7行目) リ.「E30はRAMであり、本装置全体のデータ、プログラムを記憶するために使用する。」(12頁右下欄10?11行目) ヌ.「E40は赤と緑の2つのLEDであり、CPU E1からの指示によりON/OFFをすることができる。例えば留守中フアクシミリや電話の状態をしめすランプとしても使用可能である。」(13頁右下欄4?7行目) ル.「E105はマイクの入力信号MICinである。ハンドセツトをマイクの代わりとして使用するときにこの部分からADPCM回路に入力を行なう。」(14頁右上欄18?20行目) ヲ.「E116は公衆回線用の端子(モジユラ ジヤツク)である。この端子を用いて本機器を公衆回線に接続する。」(14頁右下欄8?10行目) ワ.「第28図から第53図は本発明の実施例のCPUE1の制御動作を示した図である。 第28図は本実施例のおけるソフトウエア構造である。S1-3のOS(オペレーテイングシステム)は、FAXの送受信をバツクグラウンドで行えるようにマルチタスクOSである。S1-2のマネージヤと呼ばれる管理プログラムが、S1-3のOSとS1-1のアプリケーシヨンの間に介在し、ユーザとアプリケーシヨンとのインターフエースを取り持っている。その中で特に、タツチパネルへのタツチ、キーボード入力、タイマなどの各種イベントを一括して管理し、発注したイベントを待っているアプリケーシヨンに制御を渡す、いわゆるイベント駆動型システムを制御する機能を持つ。」(15頁右上欄11行目?左下欄5行目) カ.「アプリケーシヨンは複数メモリ上に常駐し、それぞれイベント待ちの状態にある。イベント待ちとは、制御はマネージヤの中にあり、あるイベントが発生するまでマネージヤが監視している状態を言う。あるイベントが発生すると、そのイベントを待っているアプリケーシヨンを起動する。マネージヤによって起動されたアプリケーシヨンは、制御が渡ると発生したイベントに応じた処理を行い、その後マネージヤに制御を帰しイベントを待つ状態になる。」(15頁左下欄15?右下欄5行目) ヨ.「また、デイスプレイ自体が蓋の役目をしているので、デイスプレイを閉められると画面を消し、開けるとつける制御をする。」(16頁左上欄19?右上欄2行目) タ.「第29図はアプリケーシヨンひとつであるメインメニユーの画面である。メインメニユーは、メモリ上に展開されたアプリケーシヨンの一覧を表示して、ユーザによりカレントアプリケーシヨンを選択する機能を持っている。この状態に於いてはカレントアプリケーシヨンはメインメニユーである。」(16頁右上欄3?9行目) レ.「S2-3はワープロアプリケーシヨンである。第31図はこのワープロの基本画面、第32図は印刷設定画面で、S5-1のフアクス送信スイツチは、印刷することなく、直接送信用フアイルを作成しフアイル送信を行うものである。 ・・・(中略)・・・ S2-5はFAXアプリケーシヨンで、第33図はこのFAXアプリケーシヨンの基本画面、第34図は拡張機能画面、第35図はFAX環境画面、第36図は文書取り出し画面である。第33図において、相手の番号をタツチパネルより入力し、原稿を給紙台ユニツト上にセツトしてスタートボタンS6-3をタツチすることで送信できる。」(16頁左下欄10行目?右下欄4行目) ソ.「第29図のS2-6は電話アプリケーシヨンである。第38図はこの電話アプリケーシヨンの基本画面、第39図は電話帳画面である。本システムにはダイヤリング可能なハンドセットが接続されているので、電話をかける場合、ハンドセットから直接ダイヤルすることができるが、そのとき、第39図の電話帳画面が自動的に表示される。・・・(中略)・・・FAXアプリケーシヨンと電話アプリケーシヨンは、内部ではお互いに呼びあっているので、マネージヤのイベント制御下では、1つのアプリケーシヨンと見なされる。」(17頁左上欄12行目?右上欄7行目) ツ.「以上の様に本発明によれば、表示画面を開閉自在にした情報処理装置においても表示画面の開閉状態に拘らずデータ通信状態を常時認識可能にできる。」(23頁右上欄2?5行目) 上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野の技術常識を勘案すると、上記「情報処理装置」は「FAXアプリケーシヨンと電話アプリケーシヨン」及び「ワープロアプリケーシヨン」を備え、「公衆回線」に接続され、該公衆回線を経由して音声もしくはFAXデータ、ワードプロセッサデータ等のデータの送受信及びパソコン通信を行うものであり、上記「公衆回線」はいわゆる「公衆通信回線」であるから、当該装置は「公衆通信回線に接続され、該公衆通信回線を経由して音声もしくはデータの発信、または受信を行う通信手段」を備えた「データ通信機能付き電話装置」である。 また、前記装置は「FAXの送受信をバックグラウンドで行う」OSで動作するイベント駆動型コンピュータ(即ち、前記「通信手段」に対する制御指令の出力、前記「通信手段」を経由して前記「公衆通信回線」から音声もしくはデータを入力、または前記「通信手段」を経由して前記「公衆通信回線」に音声もしくはデータを送出する処理を行うイベント駆動型コンピュータ)「CPU E1」を備えている。そして、該コンピュータはイベント待ち(即ち、「タイマイベントを含む各種イベント監視」)を繰り返し、イベントの発生により所定のアプリケーションを制御し、その処理を実行するものである。 また、上記「第1の表示手段」は、「所定の画像を表示する第一ディスプレイ」を備え、上記「第2の表示手段」は、「LEDからなる第二ディスプレイ」を備え、該「第2の表示手段」は、「前記CPUの制御により、スタンバイ状態即ち受信待機中及びFAX受信等の装置の通信状態を前記第二ディスプレイに表示する通信状態表示手段」と「電源の状態を表示する電源状態表示手段」を備えている。 また、上記装置は「表示画面(即ち、第一ディスプレイ)」の開閉状態を検知するマイクロスイッチを備えており、該スイッチは「開信号(即ち、オン信号)を検出し、オンスイッチ(マイクロスイッチ)が操作された場合には、当該装置全体に前記電源から電力を供給するアクティブ状態にし、スイッチがオフスイッチ操作された場合には、前記待機系に前記電源から電力を供給する待機状態にする電源制御手段(即ち、コントローラ)を構成している。また、前記「第二ディスプレイを含む第2の表示手段」は装置が閉状態になったときにも動作するいわゆる「待機系」として設定されており、具体的には「画面の開を検出して(即ち、スイッチがオン操作されたとき)、所定の画像を前記第一ディスプレイに表示し、画面の開閉状態と無関係に(即ち、スイッチの操作にかかわらず)、受信待機中を含む装置の通信状態及び装置の電源状態を前記第二のディスプレイに表示する」構成を備えている。 また、上記「装置」はアプリケーションを記憶したROM(E29)、データやプログラムを記憶するRAM(E30)、文字の入力機能を提供するキーボード(E8)を備え、第31図によれば、入力した文字や画像(例えばワードプロセッサデータ)を上記第1の表示手段に表示する手段及びそのための(即ち、前記CPUを介して入力されたデータ)を格納するRAM等のメモリを備えている。 したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「公衆通信回線に接続され、前記公衆通信回線を経由して音声もしくはデータの発信、または受信を行う通信手段と、 前記通信手段に対する制御指令の出力、前記通信手段を経由して前記公衆通信回線からの音声もしくはデータの入力、または前記通信手段を経由して前記公衆通信回線への音声もしくはデータの送出を制御するCPUと、 前記CPUに入力されたデータを格納するメモリと、 電源と、 所定の画像を表示する第一ディスプレイ、及びLEDからなる第二ディスプレイと、 前記第二ディスプレイを含む当該データ通信機能付き電話装置の予め設定された部位を待機系とし、オン信号を出力するオンスイッチが操作された場合には、当該データ通信機能付き電話装置全体に前記電源から電力を供給するアクティブ状態にし、オフ信号を出力するオフスイッチが操作された場合には、前記待機系に前記電源から電力を供給する待機状態にする電源コントローラと、 前記電源コントローラによる電力供給が、前記アクティブ状態であるか前記待機状態であるかに拘わらず、前記通信手段が受信待機中であるか否かを繰り返し判定する受信待機中判定手段と、 前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるものと判定されると、受信待機中である旨を前記第二ディスプレイに表示する受信待機中表示手段と、 前記電源状態を検出して、その検出結果を前記第二ディスプレイに表示をする電源状態表示手段と、 前記電源コントローラによる電力供給が前記アクティブ状態である期間に、前記受信待機中であるか否かを含む当該データ通信機能付き電話装置の動作状態の調査を繰り返し実行する現況調査手段と、 を備えることを特徴とするデータ通信機能付き電話装置。」 (2)例えば特開平5-30230号公報(以下、「周知例1」という。)または特開平4-340681号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 (周知例1) イ.「電波により送受信を行い回線網を介して通信を行う通信機能部と、該通信機能部に接続され、ボタン部、マイク部、スピーカー部を有し携帯電話として動作する電話機能部と、前記通信機能部に接続され、キー入力部、表示部、記憶部、データ制御部を有する電子手帳機能部とを併せ備えた集合端末装置。」(2頁1欄、【特許請求の範囲】) ロ.「【0010】 【作用】本発明によれば、通信機能部、電話機能部、電子手帳機能部とを併せ備えることで、無線通信により音声あるいはデータの送受信ができ、また同時に電子手帳の機能を利用でき、ネットワーク・ツールとして使用できる携帯に便利な端末が実現される。」(2頁2欄、段落10) ハ.「【0013】上記通信機機能部12は、アンテナ12aを介して無線電波の送受信を行う送受信部12bと、この送受信部12bと電話機能部13及び電子手帳機能部14との間にあって、音声及びデータに応じた制御を行う制御部12cとから構成される。そして、この通信機機能部12は、センタ-計算機(ホスト)のリモート端末としての機能を有し、後述の各種電子手帳機能を伴って、無線電子メール、無線掲示板機能、メッセージ交換機能が使用でき、また、、センタ-計算機の一部機能としてリモート使用ができる。」(2頁2欄、段落13) ニ.「【0015】上記電子手帳機能部14は、通信機能部12との間で送受信されるデータの調整を行う電子手帳インターフェース部14aと、電子手帳としての中央処理装置を含むデータの演算や処理等を行う電子手帳制御部14bと、この電子手帳制御部14bにバスライン等を介してそれぞれ接続される、各種表示を行うための表示パネル14cを制御する表示制御部14d、キーボード14eの制御を行うキー入力制御部14f、ユーザ向けの各種アプリケーションソフト等が使用できるICカード14g、各種プログラムあるいはデータを記憶するためのデータ記憶部14h、及び例えばRS-232Cインターフェースや二線式モジュラージャックが装備された外部インターフェース部14i等から構成される。そして、電子手帳機能部14としては、上記の構成から通常の電子手帳と同様な、例えば、カレンダー機能、スケジュール機能、名刺管理機能、電話帳機能、各種メモ機能、時計機能、計算機能等を使用できるものである。」(2頁2欄?3頁3欄、段落15) ホ.「電子手帳機能を用いたワープロの文章もメッセージとして送ることが可能になる。また、データの送受信は、テキストファイルだけでなく、バイナリデータも転送すれば、地図情報や手書きデータ等のイメージデータの転送が可能になる。」(3頁4欄、28?32行目) ヘ.周知例1の図2、図3には「アンテナ12a」が記載されており、図3には「アンテナによって、公衆回線網に無線によって接続され、該公衆回線網を経由して音声あるいはデータの発信、または受信を行う無線通信手段を備えた集合端末装置」が記載されている。 (周知例2) イ.「【0027】次に、携帯部Bは図3に示すように構成される。すなわち、携帯部インタフェイス(I/F)31は、携帯部B側の本体部Aとのインタフェイスで、たとえば、赤外線あるいは無線などによるワイヤレスインタフェイスである。制御部32(図1の制御部8に相当)は、携帯部Bのみで使用する際、あるいは、本体部Aと携帯部Bとを連結して使用する際に、携帯部Bの各部の動作をそれぞれ制御するもので、たとえば、マイクロプロセッサを主体として構成される。 【0028】位置入力部33(図1の位置入力部7に相当)は、携帯部Bを使用して、指定された位置座標情報を入力するもので、たとえば、透明タブレットなどによって構成され、ペン34(図1のペン6に相当)を使用して手書きでタブレットの上で図形および文字の入力を行なうことが可能であり、後述するディスプレイ部40上に載置される。なお、マウスの代わりにペン34をタブレット上に触れることにより、位置座標情報を入力することもできる(以下、ポインティングと称する)。 【0029】オンライン文字認識部35(図1のオンライン文字認識部4に相当)は、携帯部Bを使用して文字入力するためのものである。イメージ入力部36は、静止画などの各種イメージ情報を入力するもので、たとえば、イメージスキャナや電子カメラなどにより構成される。音声入力部37は、音声情報を入力するもので、たとえば、マイクロフォンなどにより構成される。バスコントローラ38は、バス39を介して行なわれる各部間の情報転送を制御する。バス39は、携帯部Bの各部の間での必要な情報転送を行なうために用いられる。 【0030】ディスプレイ部40(図1の表示部5に相当)は、文字,図形,画像などを表示するもので、たとえば液晶ディスプレイなどからなり、その表示画面上に位置入力部33が載置される。通信部41は、携帯部Bと電話回線、あるいは、ファクシミリ回線などの通信回線を介して他の電話機、ファクシミリ装置、あるいは、個人複合化OA機器や端末装置などとの情報通信を行なう。 【0031】音声出力部42は、音声情報を出力するもので、たとえば、スピーカなどからなる。メモリカード部43は、メモリカードが装着され、メモリカードとの間で必要な情報を入出力する。メモリ部44は、各種処理、データ蓄積のためのメモリである。テキストデータ処理部45は、テキストデータの各種編集処理などを行なう。」(4頁5?6欄、段落27?31) ロ.「【0059】まず、音声情報記録機能について説明する。音声入力部23や通信部30による電話機能から得られる音声を音声圧縮/伸長部57で圧縮処理し、音声バス16cを介してデータベース部21に音声情報として記録することができる。」(7頁11欄、段落59) ハ.「【0068】電話機能の制御も、当然のことながら制御部14において行なわれる。制御部14では、時分割制御や電話機能専用の制御部を持つことにより、たとえば、ワープロなど別の機能を使用しているときでも、電話機能を使用することができるようになっている。電話機能の操作メニューは、「電話」メニューをタッチするか、または、送受話器71が取られた状態をフックスイッチで検知することにより、ディスプレイ部27の表示画面上にマルチウィンドウ表示で、たとえば、図15に示すように表示される。操作メニューをタッチすることにより、主な操作は実行される。」(7頁12欄、段落68) ニ.「【0071】(・・・中略・・・)なお、留守録機能や伝言板機能などは、音声合成部56による応答メッセージの読上げや、先に説明した音声情報記録機能により実現される。」(8頁13欄、段落71) ホ.「【0073】次に、ファクシミリ機能について説明する。ファクシミリ機能は、イメージ入力部13、イメージ出力部29、イメージ圧縮/伸長部53、メディア変換部22、および通信部30を用いて実現される。ファクシミリ機能の制御も、当然のことながら制御部14において行なわれる。制御部14では、時分割制御やファクシミリ機能専用の制御部を持つことにより、たとえば、ワープロなど別の機能を使用しているときでも、ファクシミリ機能を使用することができるようになっている。ファクシミリ機能の操作メニューは、「FAX]メニューをタッチすることにより、ディスプレイ部27の表示画面上にマルチウィンドウ表示で、たとえば、図16に示すように表示される。操作メニューをタッチすることにより、主な操作は実行される。 【0074】ファクシミリ機能の受信動作は以下のようになされる。通信部30がファクシミリの受信を検知すると、制御部14は受信したファクシミリ情報をとりあえずデータベース部21のイメージ領域に蓄える。ファクシミリ情報ヘッダには、図17に示すように受信日時などの情報が格納される。同時に、制御部14は、ディスプレイ部27の表示画面上の特定領域に、現在行なっている操作の妨げにならないように、たとえば、「ファックス受信中」の表示を行なう。以上の受信動作は、制御部14の制御により自動的に行なわれる。」(8頁13?14欄、段落73?74) 例えば上記周知例1、2に記載されているように「公衆通信回線に無線によって接続され、該公衆回線回線を経由して音声あるいはデータの発信、または受信を行う無線通信手段を備え、電話機能、FAX機能、ワープロ機能を備えた携帯型端末装置」は周知である。(ここで、上記周知例1に記載された「地図情報や手書きデータ等のイメージデータの転送」が「FAX機能」を指すこと、上記周知例2に記載された「無線などによるワイヤレスインタフェイス」と「電話回線、あるいは、ファクシミリ回線などの通信回線」の組合せが例えば上記周知例1の第3図のネットワーク構成を指すこと、該ネットワーク中の「公衆回線網」はいわゆる「公衆通信回線」であること等は当業者であれば自明のことである。) また、上記周知例2の「留守録機能」を実現する「音声情報記録機能」は「音声入力部23や通信部30による電話機能から得られる音声を音声圧縮/伸長部57で圧縮処理し、音声バス16cを介してデータベース部21に音声情報として記録する」ものであり、受信した「ファクシミリ情報」は「データベース部21のイメージ領域」に蓄えるのであるから、当該「データベース部」は「通信制御手段(即ち、CPU)に入力されたデータ、及び携帯型無線電話装置の留守録機能により音声を格納するメモリ」である。 (3)例えば特開平3-184431号公報(以下、「周知例3」という。)または特開昭60-203065号公報(以下、「周知例4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 (周知例3) イ.「本発明の携帯電話機は、電話機本体の筐体の一部を構成する電池パックの背面に、電話機本体と同一平面となる部分と、この部分以外の部分に突設した突部を形成している。そして、この突部内にも2次電池を収納することで、高容量型電池パックを構成する。 この場合、突部の背面に電池残量を表示する表示部を設けることができる。」(2頁右下欄18行目?3頁左上欄5行目) ロ.「また、電池パック背面の他の部分に設けた突部に電池残量を表示する表示部を設けることにより、利用者が適切な時期に電池の充電又は電池の交換を行なうことができる効果もある。」(4頁左下欄、2?5行目) ハ.上記周知例3の第4図には電池残量をパーセント表示する例が記載されている。 (周知例4) イ.「第1および第2の表示手段を設け、これらの表示手段のうち一方に入力部により入力された外部情報を表示し、かつ他方に装置本体より発せられた内部情報を表示するようにしたことを特徴とするファクシミリ装置の情報表示方式。」(1頁左下欄、特許請求の範囲) 上記「携帯電話機」や「ファクシミリ」はいわゆる「通信装置」であり、上記「電池残量」や「装置本体より発せられた内部情報」はいわゆる「装置の内部情報」であり、上記「電池パック背面」に設けた「表示部」や「第1および第2の表示手段」のうちの「一方」は「第2のディスプレイ」であるから上記周知例3、4に開示されているように「携帯電話機等の通信装置にコンピュータによって装置の内部情報等の所定の画像を表示する第2のディスプレイを設ける」構成は周知である。 (4)例えば特開平5-14565号公報(以下、「周知例5」という。)又は特開平5-56233号公報(以下、「周知例6」という。)又は特開昭62-248356号公報(以下、「周知例7」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 (周知例5) 「【請求項1】 原稿の画像情報及び音声情報の通信を行なう手段と、この手段により通信した、あるいは通信すべき画像情報及び音声情報を蓄積するためのメモリと、このメモリの使用管理及び情報の蓄積または取り出しの制御を行なうメモリ制御手段と、情報の表示手段と、この表示手段の表示を制御する表示制御手段とを具備し、前記表示制御手段により、画像情報及び音声情報に関して、前記メモリの蓄積可能な情報量または残容量が、標準原稿の枚数及び通話回数にそれぞれ換算されて前記表示手段に表示されることを特徴とする情報通信装置。」(2頁2欄、【請求項1】) (周知例6) イ.「【請求項1】 原稿を読み取って画像データを出力するスキャナと、 上記画像データを相手に送信する回路と、 相手からの画像データを受信する回路と、 上記受信した画像データを原稿としてプリントアウトするプリンタと、 上記送信する画像データ及び上記受信した画像データを蓄積するメモリと、 表示手段とを有し、 この表示手段に、上記メモリのうちの上記画像データの蓄積可能な残りの容量と、上記メモリにすでに蓄積されている画像データのデータ量とを表示するようにしたファクシミリ装置。」(2頁1欄、【請求項1】) ロ.「【0012】また、図3は、ファクシミリ装置が待機状態の場合のLCD6の表示内容を示すものであり、この図の場合には、「メモリ残:100%」、「記録ページ00枚」であるから、メモリ4の残りの容量が100 %(まったく画像データが蓄積されていない)であり、送信する原稿あるいは受信した原稿が0枚であることを示している。なお、原稿の内容にもよるが、画像データのデータ量は、原稿の1ページにつき25Kバイト程度にデータ圧縮されるので、メモリ4には、およそ20ページ分の原稿の画像データを蓄積できることになる。 【0013】そして、表示エリアSTTSの表示は、原稿の読み取り中、送信中、受信中、プリントアウト中などにも一定の周期で更新されるとともに、特に、「メモリ残」及び「記録ページ数」の表示は、スキャナ5が原稿を読み取ったとき、及び画像データを受信したとき、その1ページ分の画像データがメモリ4に格納されるごとに更新される。また、シスコン1の処理によりメモリ4の画像データが消去されたときにも(この消去は1ページ単位)、その1ページごとに更新される。」(4頁3欄、段落12?13) (周知例7) 「通話の内容を録音する時には、使用者はICカード14をこの通信システムにセットし(205)、キーボード13を操作してLCD17にICカード14のメモリ残量を表示させる(206)。使用者は、表示されたメモリ残量で録音が可能かどうかを判断し(207)、録音が可能であれば、キーボード13から録音命令を与え、録音を開始させる(208)。」(2頁右下欄8?15行目) 例えば上記周知例5?7に開示されているように「画像データや音声データ等が記憶されたメモリのデータ格納量又は残量を検出するデータ格納量検出手段と、前記データ格納量検出手段で検出したデータ格納量を表示手段に表示させる格納量表示手段を備えた通信装置」は周知である。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明の「公衆通信回線に無線によって接続され」という構成と引用発明の「公衆通信回線に接続され」という構成はいずれも「公衆通信回線に接続され」という構成である点で一致しており、本願発明の「無線通信手段」、「携帯型無線電話装置」と引用発明の「通信手段」、「データ通信機能付き電話装置」はいずれも、それぞれ「通信手段」、「電話装置」であるという点で一致している。 また、本願発明の「前記CPUに入力されたデータ、及び当該携帯型無線電話装置の留守録機能により音声を格納するメモリ」と引用発明の「前記CPUに入力されたデータを格納するメモリ」はいずれも「少なくとも前記CPUに入力されたデータを格納するメモリ」であるという点で一致している。 また、本願発明の「第二ディスプレイ」と引用発明の「LEDからなる第二ディスプレイ」はいずれも「第二ディスプレイ」であるという点で一致し、当該「第二ディスプレイ」にかかる本願発明の「第二受信待機中表示手段」と引用発明の「受信待機中表示手段」の間に実質的な差異はない。 また、本願発明の「(電力を蓄える)蓄電池」と引用発明の「電源」はいずれも「電源」であるという点で一致しており、本願発明の「蓄電池の残量(容量)」と引用発明の「電源状態」はいずれも「電源状態」であるという点で一致している。 また、電源状態の検出に際し、本願発明は「電源状態の検出」を「前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも前に」行う構成を備えているが、引用発明のその点の構成は不明である。 また、データ格納量の表示に際し、本願発明は「前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも後に、前記メモリのデータ格納量を検出して、その検出結果を前記第二ディスプレイに表示をするデータ格納量表示手段」を備えているが、引用発明は当該構成を備えていない。 また、本願発明は「前記電源コントローラによる電力供給が前記アクティブ状態である期間に、前記受信待機中であるか否かを含む当該電話装置の動作状態の調査を繰り返し実行する現況調査手段」及び「前記現況調査手段での調査の結果、前記受信待機中であれば、受信待機中である旨を前記第一ディスプレイに表示する第一受信待機中表示手段」を備えているが、引用発明が当該構成を備えているか否かは不明である。 したがって、本願発明と引用発明は以下の点で一致ないし相違している。 <一致点> 「公衆通信回線に接続され、前記公衆通信回線を経由して音声もしくはデータの発信、または受信を行う通信手段と、 前記通信手段に対する制御指令の出力、前記通信手段を経由して前記公衆通信回線からの音声もしくはデータの入力、または前記通信手段を経由して前記公衆通信回線への音声もしくはデータの送出を制御するCPUと、 前記CPUに入力されたデータを格納するメモリと、 電源と、 所定の画像を表示する第一ディスプレイ、及び第二ディスプレイと、 前記第二ディスプレイを含む当該電話装置の予め設定された部位を待機系とし、オン信号を出力するオンスイッチが操作された場合には、当該電話装置全体に前記電源から電力を供給するアクティブ状態にし、オフ信号を出力するオフスイッチが操作された場合には、前記待機系に前記電源から電力を供給する待機状態にする電源コントローラと、 前記電源コントローラによる電力供給が、前記アクティブ状態であるか前記待機状態であるかに拘わらず、前記通信手段が受信待機中であるか否かを繰り返し判定する受信待機中判定手段と、 前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるものと判定されると、受信待機中である旨を前記第二ディスプレイに表示する受信待機中表示手段と、 前記電源状態を検出して、その検出結果を前記第二ディスプレイに表示をする電源状態表示手段と、 を備えることを特徴とする電話装置。」 <相違点> (1)「通信手段」及び「電話装置」に関し、本願発明の「通信手段」は「公衆通信回線に無線によって接続され」る「無線通信手段」であり、「電話装置」は「携帯型無線電話装置」であるのに対し、引用発明のそれらはそれぞれ単に「公衆通信回線に接続され」る「通信手段」及び「データ通信機能付き電話装置」である点。 (2)「少なくとも前記CPUに入力されたデータを格納するメモリ」に関し、本願発明は「前記CPUに入力されたデータ、及び当該携帯型無線電話装置の留守録機能により音声を格納するメモリ」であるのに対し、引用発明は「前記CPUに入力されたデータを格納するメモリ」である点。 (3)「第二ディスプレイ」に関し、本願発明は「第二ディスプレイ」であるのに対し、引用発明は「LEDからなる第二ディスプレイ」である点。 (4)「電源」及び「電源状態」に関し、本願発明は電源は「(電力を蓄える)畜電池」であり、電源状態は「蓄電池の残量(容量)」であるのに対し、引用発明のそれぞれは単に「電源」、「電源状態」である点。 (5)電源状態の検出に際し、本願発明は「電源状態の検出」を「前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも前に」行う構成を備えているのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点。 (6)本願発明は「前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも後に、前記メモリのデータ格納量を検出して、その検出結果を前記第二ディスプレイに表示をするデータ格納量表示手段」を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点。 (7)本願発明は「前記電源コントローラによる電力供給が前記アクティブ状態である期間に、前記受信待機中であるか否かを含む当該電話装置の動作状態の調査を繰り返し実行する現況調査手段」及び「前記現況調査手段での調査の結果、前記受信待機中であれば、受信待機中である旨を前記第一ディスプレイに表示する第一受信待機中表示手段」を備えているのに対し、引用発明がこれらの構成を備えているか否かは不明である点。 4.当審の判断 (1)相違点(1)の「通信手段」及び「電話装置」について 例えば上記周知例1、2に開示されているように「公衆回線網に無線によって接続され、該公衆回線網を経由して音声あるいはデータの発信、または受信を行う無線通信手段を備え、電話機能、FAX機能、ワープロ機能を備えた携帯型端末装置」は周知であるところ、引用発明の「データ通信機能付き電話装置」は電話機能、FAX機能、ワープロ機能を備えたいわゆる「端末装置」であり、当該周知技術を適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて引用発明の「通信手段」を本願発明のような「公衆通信回線に無線によって接続され」る「無線通信手段」とする程度のことは、当業者であれば、適宜成し得ることである。また、前記通信手段の無線化に伴い、引用発明の「データ通信機能付き電話装置」を本願発明のような「携帯型無線電話装置」とする程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。 (2)相違点(2)の「少なくとも前記CPUに入力されたデータを格納するメモリ」について また上記周知例2には前項で指摘した構成の他に、「通信制御手段(即ち、CPU)に入力されたデータ、及び携帯型無線電話装置の留守録機能により音声を格納するメモリ」を備えることも開示されており、当該技術手段を引用発明の電話装置に適用する上での阻害要因もまた何ら見あたらないから、当該技術手段に基づいて、引用発明の「CPUに入力されたデータを格納するメモリ」を本願発明のような「前記CPUに入力されたデータ、及び当該携帯型無線電話装置の留守録機能により音声を格納するメモリ」とする程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。 (3)相違点(3)の「第二ディスプレイ」について 例えば上記周知例3、4に開示されているように「携帯電話機等の通信装置にコンピュータによって装置の内部情報等の所定の画像を表示する第2のディスプレイを設ける」構成は周知であり、当該周知の技術手段をFAX機能を備えた引用発明の電話装置に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて、引用発明の「LEDからなる第二ディスプレイ」を本願発明のような「第二ディスプレイ」とする程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。 (4)相違点(4)の「電源」及び「電源状態」について 上記相違点(1)で検討したように、携帯型端末装置が「公衆通信回線に無線によって接続され」るものであることは周知であるから、通信手段の無線化に伴い、その電源を本願発明のような「蓄電池」とし、電源状態を「蓄電池の残量(容量)」とする程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。 (5)相違点(5)の『電源状態の検出に際し、本願発明は「電源状態の検出」を「前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも前に」行う構成を備えているのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点』について 検出する「電源状態」も「通信状態」も装置の現況の一種であって、その検出順位に制約がない(即ち、検出順による作用効果上の差異がない)ことは当業者であれば自明のことであるから、当該自明の事項に基づいて、引用発明の電源状態の検出を、本願発明のような「前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも前に」行う構成とする程度のことは、当業者であれば適宜成し得ることである。 (6)相違点(6)の『本願発明は「前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも後に、前記メモリのデータ格納量を検出して、その検出結果を前記第二ディスプレイに表示をするデータ格納量表示手段」を備えているのに対し、引用発明は当該構成を備えていない点』について 例えば上記周知例3、4に開示されているように「携帯電話機等の通信装置にコンピュータによって装置の内部情報等の所定の画像を表示する第2のディスプレイを設ける」構成は周知であり、また上記周知例5?7に開示されているように「画像データや音声データ等が記憶されたメモリのデータ格納量又は残量を検出するデータ格納量検出手段と、前記データ格納量検出手段で検出したデータ格納量を表示手段に表示させる格納量表示手段を備えた通信装置」も周知である。そして、これらの周知の技術手段をデータ用のメモリを備えた引用発明に適用する上での阻害要因もまた何ら見あたらず、前記周知技術における「データ量」は前記周知技術における「装置の内部情報」であるから、第二ディスプレイに表示されるものであり、上記相違点(5)で検討したとおり、検出する「データ格納量」や「電源状態」、「通信状態」等はいずれも装置の現況の一種であって、その検出順位に制約がないことは当業者であれば自明のことであるから、これらの周知技術ないしは自明の事項に基づいて、引用発明の構成に、本願発明のような「前記受信待機中判定手段にて受信待機中であるか否かを判定するタイミングよりも後に、前記メモリのデータ格納量を検出して、その検出結果を前記第二ディスプレイに表示をするデータ格納量表示手段」を付加する程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。 (7)相違点(7)の『本願発明は「前記電源コントローラによる電力供給が前記アクティブ状態である期間に、前記受信待機中であるか否かを含む当該電話装置の動作状態の調査を繰り返し実行する現況調査手段」及び「前記現況調査手段での調査の結果、前記受信待機中であれば、受信待機中である旨を前記第一ディスプレイに表示する第一受信待機中表示手段」を備えているのに対し、引用発明がこれらの構成を備えているか否かは不明である点』について 引用発明の「タイマイベントを含む各種イベント監視を繰り返し、第2の表示手段に受信待機中を表示する通信状態表示手段」における「タイマイベントを含む各種イベント監視」は例えばタイマイベントにより所定時間毎に所定の状態監視を行うものであり、また、「受信待機中」等の通信状態が装置のいわゆる「現況」であり、装置が受信待機中であるか否かを検出することは装置の「現況調査」そのものであり、「受信待機中であると判断された場合に、受信待機中表示を行う」ものであることや「第一ディスプレイ用の画面データ(即ち、現況報告画面データ)の作成が第一ディスプレイがアクティブなときに行われること等は当業者であれば自明のことである。 また、例えば上記周知例2に開示されているように、操作中の画面が表示される「ディスプレイ部の表示画面上の特定領域に、現在行なっている操作の妨げにならないように、たとえば、「ファックス受信中」の表示を行なう」ことは周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて、第一ディスプレイに表示する現況報告画面に「ファックス受信中」等の通信状態の一種である「受信待機中」を追加し、当該「受信待機中」の表示を第二のディスプレイばかりでなく、第一ディスプレイにも表示することにより、引用発明の構成に、本願発明のような「前記電源コントローラによる電力供給が前記アクティブ状態である期間に、前記受信待機中であるか否かを含む当該電話装置の動作状態の調査を繰り返し実行する現況調査手段」及び「前記現況調査手段での調査の結果、前記受信待機中であれば、受信待機中である旨を前記第一ディスプレイに表示する第一受信待機中表示手段」を備えるように構成する程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。 以上のとおり、本願発明は、引用例や周知例に開示されている技術を単に寄せ集めたに過ぎないものであり、その作用効果も寄せ集め前の個々の作用効果から予想される範囲内のものである。したがって、このような単なる技術の寄せ集めは当業者であれば適宜なし得ることである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-06 |
結審通知日 | 2010-12-07 |
審決日 | 2010-12-21 |
出願番号 | 特願2008-148356(P2008-148356) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 矢島 伸一 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 猪瀬 隆広 |
発明の名称 | 携帯型無線電話装置 |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |