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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1231891
審判番号 不服2009-13049  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-17 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2001-369891「排気ガス浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月20日出願公開、特開2003-172125〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年12月4日の出願であって、平成20年9月5日付けで拒絶理由が通知され、平成20年11月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年4月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年7月17日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成21年12月14日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成22年3月10日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成21年7月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年7月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成21年7月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成20年11月13日付けの手続補正書により補正された)以下のaに示す請求項1を、bに示す請求項1とする補正を含むものである。

a 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】 エンジンからの排気ガスを排出する排気管に接続されたハウジング,及び前記ハウジング内に配置された前記排気ガスに含まれるパティキュレート物質を捕集し且つ捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却するフィルタを有する排気ガス浄化装置において,
前記ハウジングは,前記排気管に連通した前記排気ガスが送り込まれるガス室を形成する入口管,前記ガス室に接続して隔壁によって少なくとも3個以上に分割され且つ前記フィルタが内外周に排気ガス通路を形成してそれぞれ配置された区画室,及び前記区画室に接続され前記区画室から送り出される前記排気ガスを集合する集合管を有し,
前記区画室の排気ガス入口には前記排気ガス入口を開閉するための開閉弁がそれぞれ配置され,前記ハウジングに形成された前記区画室には,前記フィルタの再生時に前記パティキュレート物質の燃焼用空気を供給するため空気供給手段がそれぞれ設けられ,
前記排気管からの前記排気ガスを前記区画室へ送り込むため前記開閉弁を開放制御すると共に前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却して前記フィルタを再生するため前記開閉弁を閉鎖制御し,前記フィルタの再生時に前記フィルタに設けたヒータを通電制御するコントローラを有し,
前記コントローラは,少なくとも2個の前記区画室の排気ガス入口を開閉する前記開閉弁を開放し前記排気ガスに含まれる前記パティキュレート物質を前記フィルタに捕集する捕集処理と,1個の前記区画室の前記開閉弁を閉鎖し前記空気供給手段を働かせて再生するための前記区画室の前記フィルタに前記燃焼用空気を供給して前記ヒータに通電して前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却する再生処理とを順次経時的に制御することを特徴とする排気ガス浄化装置。」

b 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】 エンジンからの排気ガスを排出する排気管に接続されたハウジング,及び前記ハウジング内に配置された前記排気ガスに含まれるパティキュレート物質を捕集し且つ捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却して再生されるフィルタを有する排気ガス浄化装置において,
前記ハウジングは,前記排気管に連通した前記排気ガスが送り込まれるガス室を形成する入口管,前記ガス室に排気ガス入口を通じてそれぞれ接続し且つ隔壁によって少なくとも3個以上に分割され且つ前記フィルタが内外周に排気ガス通路を形成してそれぞれ配置された区画室,及び前記区画室の出口に接続され且つ前記区画室から送り出される前記排気ガスを集合する集合管を有し,
前記区画室の排気ガス入口には前記排気ガス入口を開閉するための開閉弁がそれぞれ配置され,それぞれの前記フィルタの再生時に,前記ハウジングに形成された前記区画室内の前記フイルタに前記パティキュレート物質を加熱焼却するための燃焼用空気を供給する空気供給手段が設けられ,
前記排気管からの前記排気ガスを前記区画室へ送り込むため前記開閉弁を開放制御すると共に前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却して前記フィルタを再生するため前記開閉弁を閉鎖制御し,前記フィルタの再生時に前記フィルタに設けたヒータを通電制御するコントローラを有し,
前記コントローラは,少なくとも2個の前記区画室の排気ガス入口を開閉する前記開閉弁を開放し前記排気ガスに含まれる前記パティキュレート物質を前記フィルタに捕集する捕集処理と,1個の前記区画室の前記開閉弁を閉鎖し前記空気供給手段を働かせて再生するための前記区画室の前記フィルタに前記燃焼用空気を供給して前記ヒータに通電して前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却する再生処理とを順次経時的に制御することを特徴とする排気ガス浄化装置。」(なお、下線は補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の適否についての判断
[理由1]
2-1 本件補正の目的
本件補正によって、本件補正前の請求項1における「前記ハウジングに形成された前記区画室には,前記フィルタの再生時に前記パティキュレート物質の燃焼用空気を供給するため空気供給手段がそれぞれ設けられ」が、「それぞれの前記フィルタの再生時に,前記ハウジングに形成された前記区画室内の前記フイルタに前記パティキュレート物質を加熱焼却するための燃焼用空気を供給する空気供給手段が設けられ」と補正された。
この補正によって、区画室には空気供給手段がそれぞれ設けられるという事項、すなわち、区画室と同数の空気供給手段が存在するという事項が削除された。
したがって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものではないので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。
さらに、本件補正が、同第1号の請求項の削除、同第3号の誤記の訂正、同第4号の明りようでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことも明らかである。

したがって、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
2-2 独立特許要件
仮に、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正による補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2-2-1 引用文献記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-260945号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

a 「【0003】自動車等に装備されるディーゼルエンジン用のフィルタ装置の場合は、フィルタ装置の再生をエンジンの運転中に実施できるものが実用上好ましい。このようなフィルタ装置として堆積したパティキュレートの除去のための電気ヒータを組み込んだ多数のフィルタユニットを備えたフィルタ装置が提案されている(例えば、USP5293742号、特開平6-264722号公報等)。これらの装置では複数のフィルタユニットへの通電時期をずらして順次再生することにより、エンジンの運転中でもフィルタユニットの再生が可能となる。」(段落【0003】)

b 「【0023】
【実施例】
(実施例1)以下、本発明をディーゼルエンジンの排ガス処理に使用する排ガス浄化装置に具体化した第1実施例を図1?図3に従って説明する。図1及び図2に示すように、排ガス浄化装置1を構成する円筒状のハウジング2には、その内部前寄りに隔壁としての円板状の区画板3がハウジング2の長手方向と直交する状態で固定配置されている。区画板3によりハウジング2内が排ガス導入側空間4と、排出側空間5とに区画されている。ハウジング2の周壁2aには排ガス導入側空間4と連通する排ガス導入管6が突設され、後壁2bの中央には排出側空間5に連通する排気管7が突設されている。ハウジング2内には複数本(この実施例では4本)のフィルタユニット8が並列状態で配設されている。
【0024】フィルタユニット8は円筒状に形成された筒状フィルタ9と、筒状フィルタ9の内表面に沿って配設された熱源としてのヒータ10とを備えている。…(中略)…
【0025】図1及び図3に示すように、区画板3の前面にはフィルタユニット8への排ガス導入用の開口部を構成する扇形の凹部3aが4個形成され、その底部にフィルタユニット8を取り付けるための取付け孔3bがそれぞれ形成されている。…(後略)…」(段落【0023】ないし【0025】)

c 「【0028】図3に示すように、弁21は区画板3のほぼ1/4を覆う扇状に形成されると共に、区画板3の前面に摺接する状態に設けられている。そして、弁21は常に1個の凹部3aを閉鎖してフィルタユニット8への排ガスの導入を遮断する位置に配置されている。」(段落【0028】)

d 「【0032】次に前記のように構成された排ガス浄化装置1の作用を説明する。排ガス浄化装置1は図示しないディーゼルエンジンの排気管の途中に連結されて使用される。排ガス導入管6から排ガス導入側空間4内に導入された排ガスは凹部3a及び開口部8aを通って各フィルタユニット8の内側に導かれ、筒状フィルタ9を内側から外側へ向かって通過する。そして、筒状フィルタ9を通過する間に排ガス中に含まれるパティキュレート等がろ過され、清浄になった排ガスが排出側空間5を経て排気管7から排出される。
【0033】弁21はいずれか1個の凹部3aを閉鎖する位置に配置され、排ガスの処理は3本のフィルタユニット8によって行われる。排ガス導入管6内の圧力(背圧)は筒状フィルタ9に捕集されたパティキュレート量の増加に伴って上昇する。そして、背圧が再生開始設定圧力に達した後にフィルタユニット8の再生が行われる。
【0034】再生時期になると、コントローラ19からモータ23に作動指令が出力され、モータ23は回動軸20を1/4回転回動させるだけ作動される。その結果、弁21も1/4回転回動されて隣接するフィルタユニット8と対応する凹部3aが弁21によって閉鎖され、当該フィルタユニット8への排ガスの導入が遮断される。次にヒータリレー17を介して当該フィルタユニット8のヒータ10が所定時間通電発熱される。ヒータ10への通電開始後、パティキュレートの温度が着火温度に達するのに必要な所定時間経過後、コントローラ19からの指令によりバルブ30が開放される。そして、酸素供給源29から管路27、第2通路26、第1通路25及び第3通路28を経てフィルタユニット8に酸素が供給される。
【0035】そして、ヒータ10の発熱によりパティキュレートが燃焼温度以上に加熱された状態で充分な酸素の存在下でパティキュレートが燃焼される。…(中略)…
【0037】ヒータ10への通電及び酸素供給が所定時間継続されてパティキュレートの燃焼が完了した後、当該ヒータ10への通電が停止され、その後にバルブ30が閉じられて酸素供給が停止される。次いでモータ23が作動されて弁21が1/4回転回動されて次のフィルタユニット8と対応する凹部3aが閉鎖される。そして、前記と同様にして当該フィルタユニット8の再生が行われる。…(後略)…」(段落【0032】ないし【0037】)

e 「【0040】また、この実施例ではいずれか1本のフィルタユニット8は排ガスの流入が遮断された状態、すなわち休止状態に保持され、フィルタユニット8の休止状態の間に当該フィルタユニット8の再生処理が行われる。そして、フィルタユニット8を再生するときに、それまで排ガス処理を行わずに休止状態にあった再生済のフィルタユニット8が開放されて、再生すべきフィルタユニット8に代わって排ガス処理を行うため、再生時に背圧が急上昇する不都合がない。」(段落【0040】)

f 「【0058】(11) 各フィルタユニット8の外側に筒状の隔壁を配設して、フィルタユニット8を通過した排ガスを再生中のフィルタユニット8に接触することなく出口へ導くようにしてもよい。」(段落【0058】)

上記aないしf及び図面から、次のことが分かる。

g 上記b及びd並びに図1ないし3から、フィルタユニット8への排ガス導入用の開口部を構成する扇形の凹部3aは、フィルタユニット8への排ガス入口であることが分かる。

h 上記b及びd並びに図1ないし3から、排ガスは、凹部3aから筒状フィルタ9の内側に導かれ、筒状フィルタ9を内側から外側へ向かって通過し、該ハウジング2内の空間を通って排気管7に送り出されることが分かる。また、このことから、筒状フィルタ9の内周及び外周に排ガス通路があることが分かる。

i 上記b、g及びhから、ハウジング2内には、4個の「排ガス導入側空間4に凹部3aを通じて接続し且つ筒状フィルタ9,筒状フィルタ9内周の排ガス通路,及び筒状フィルタ9外周の排ガス通路を含む領域」(以下、この領域を「領域A」という。)が存在することが分かる。

j 上記dの「酸素供給源29から管路27、第2通路26、第1通路25及び第3通路28を経てフィルタユニット8に酸素が供給される」ことから、「酸素供給手段」があることが分かる。

k 上記a及びcないしeから、弁21は常に1個の凹部3aを閉鎖制御し、残り3個の凹部3aを開放制御して、フィルタの再生処理を1個ずつ順番に行うとともに、再生処理を行っていない残りの3個のフィルタには排ガスが送り込まれて捕集処理を行っていることが分かる。これらのことから、3個のフィルタの捕集処理と1個のフィルタの再生処理とが「順次経時的に」行われていることが分かる。

上記aないしkから、引用文献には、次の発明が記載されているといえる。

「エンジンからの排ガスを排出する排ガス導入管6に接続されたハウジング2,及び前記ハウジング2内に配置された前記排ガスに含まれるパティキュレートを捕集し且つ捕集された前記パティキュレートを加熱燃焼して再生される筒状フィルタ9を有する排ガス浄化装置において,
前記ハウジング2は,前記排ガス導入管6に連通した前記排ガスが送り込まれる排ガス導入側空間4,前記排ガス導入側空間4に凹部3aを通じてそれぞれ接続し且つ前記筒状フィルタ9,前記筒状フィルタ9内周の排ガス通路,及び前記筒状フィルタ9外周の排ガス通路を含む4個の領域Aを有し,
前記領域Aの前記凹部3aには前記凹部3aを開閉するための弁21が配置され,それぞれの前記筒状フィルタ9の再生時に,前記ハウジング2に形成された前記領域Aの前記筒状フィルタ9に前記パティキュレートを加熱燃焼するための酸素を供給する酸素供給手段が設けられ,
前記排ガス導入管6からの前記排ガスを前記領域Aへ送り込むため前記弁21を開放制御すると共に前記筒状フィルタ9に捕集された前記パティキュレートを加熱燃焼して前記筒状フィルタ9を再生するため前記弁21を閉鎖制御し,前記筒状フィルタ9の再生時に前記筒状フィルタ9に設けたヒータ10を通電制御するコントローラ19を有し,
前記コントローラ19は,3個の前記領域Aの凹部3aを開放し前記排ガスに含まれる前記パティキュレートを前記筒状フィルタ9に捕集する捕集処理と,1個の前記領域Aの凹部3aを前記弁21で閉鎖し前記酸素供給手段を働かせて再生するための前記領域Aの前記筒状フィルタ9に前記酸素を供給して前記ヒータ10に通電して前記筒状フィルタ9に捕集された前記パティキュレートを加熱燃焼する再生処理とを順次経時的に制御する排ガス浄化装置。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

2-2-2 対比
本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「排ガス」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「排気ガス」に相当し、以下同様に、「排ガス導入管6」は「排気管」に、「ハウジング2」は「ハウジング」に、「パティキュレート」は「パティキュレート物質」に、「加熱燃焼」は「加熱焼却」に、「筒状フィルタ9」は「フィルタ」に、「排ガス浄化装置」は「排気ガス浄化装置」に、「排ガス導入側空間4」は「ガス室を形成する入口管」及び「ガス室」に、「凹部3a」は「排気ガス入口」に、「排ガス通路」は「排気ガス通路」に、「弁21」は「開閉弁」に、「酸素」は「燃焼用空気」に、「ヒータ10」は「ヒータ」に、「コントローラ19」は「コントローラ」に、「酸素供給手段」は「空気供給手段」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「前記排ガス導入側空間4に凹部3aを通じて接続し且つ前記筒状フィルタ9,前記筒状フィルタ9内周の排ガス通路,及び前記筒状フィルタ9外周の排ガス通路を含む4個の領域A」は、本願補正発明における「前記ガス室に排気ガス入口を通じてそれぞれ接続し且つ隔壁によって少なくとも3個以上に分割され且つ前記フィルタが内外周に排気ガス通路を形成してそれぞれ配置された区画室」に、「前記ガス室に排気ガス入口を通じてそれぞれ接続し且つ前記フィルタ,前記フィルタ内周の排気ガス通路,及び前記フィルタ外周の排気ガス通路を含む少なくとも3個以上の領域」(すなわち、「領域A」)の限りにおいて相当する。
さらに、引用文献記載の発明における「3個の前記領域Aの凹部3aを開放し前記排ガスに含まれる前記パティキュレートを前記筒状フィルタ9に捕集する捕集処理と,1個の前記領域Aの凹部3aを前記弁21で閉鎖し前記酸素供給手段を働かせて再生するための前記領域Aの前記筒状フィルタ9に前記酸素を供給して前記ヒータ10に通電して前記筒状フィルタ9に捕集された前記パティキュレートを加熱燃焼する再生処理」は、本願補正発明における「少なくとも2個の前記区画室の排気ガス入口を開閉する前記開閉弁を開放し前記排気ガスに含まれる前記パティキュレート物質を前記フィルタに捕集する捕集処理と,1個の前記区画室の前記開閉弁を閉鎖し前記空気供給手段を働かせて再生するための前記区画室の前記フィルタに前記燃焼用空気を供給して前記ヒータに通電して前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却する再生処理」に、「少なくとも2個の前記領域Aの排気ガス入口を開放し前記排気ガスに含まれる前記パティキュレート物質を前記フィルタに捕集する捕集処理と,1個の前記領域Aの排気ガス入口を前記開閉弁で閉鎖し前記空気供給手段を働かせて再生するための前記領域Aの前記フィルタに前記燃焼用空気を供給して前記ヒータに通電して前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却する再生処理」の限りにおいて相当する。

よって、本願補正発明と引用文献記載の発明とは、
「エンジンからの排気ガスを排出する排気管に接続されたハウジング,及び前記ハウジング内に配置された前記排気ガスに含まれるパティキュレート物質を捕集し且つ捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却して再生されるフィルタを有する排気ガス浄化装置において,
前記ハウジングは,前記排気管に連通した前記排気ガスが送り込まれるガス室を形成する入口管,前記ガス室に排気ガス入口を通じてそれぞれ接続し且つ前記フィルタ,前記フィルタ内周の排気ガス通路,及び前記フィルタ外周の排気ガス通路を含む少なくとも3個以上の領域Aを有し,
前記領域Aの排気ガス入口には前記排気ガス入口を開閉するための開閉弁が配置され,それぞれの前記フィルタの再生時に,前記ハウジングに形成された前記領域Aの前記フィルタに前記パティキュレート物質を加熱焼却するための燃焼用空気を供給する空気供給手段が設けられ,
前記排気管からの前記排気ガスを前記領域Aへ送り込むため前記開閉弁を開放制御すると共に前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却して前記フィルタを再生するため前記開閉弁を閉鎖制御し,前記フィルタの再生時に前記フィルタに設けたヒータを通電制御するコントローラを有し,
前記コントローラは,少なくとも2個の前記領域Aの排気ガス入口を開放し前記排気ガスに含まれる前記パティキュレート物質を前記フィルタに捕集する捕集処理と,1個の前記領域Aの排気ガス入口を前記開閉弁で閉鎖し前記空気供給手段を働かせて再生するための前記領域Aの前記フィルタに前記燃焼用空気を供給して前記ヒータに通電して前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却する再生処理とを順次経時的に制御する排気ガス浄化装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
領域Aに関し、
本願補正発明においては、ハウジングが「前記ガス室に排気ガス入口を通じてそれぞれ接続し且つ隔壁によって少なくとも3個以上に分割され且つ前記フィルタが内外周に排気ガス通路を形成してそれぞれ配置された区画室」を有するとともに、ハウジングが「前記区画室の出口に接続され且つ前記区画室から送り出される前記排気ガスを集合する集合管」を有し、さらに、「前記区画室の排気ガス入口」、「前記区画室内の前記フィルタ」及び「前記区画室の前記開閉弁」のように、「排気ガス入口」、「フィルタ」及び「開閉弁」が「区画室」と関係するのに対し、
引用文献記載の発明においては、ハウジング2が「前記排ガス導入側空間4に凹部3aを通じてそれぞれ接続し且つ前記筒状フィルタ9,前記筒状フィルタ9内周の排ガス通路,及び前記筒状フィルタ9外周の排ガス通路を含む4個の領域A」を有し、領域Aが凹部3aに接続され、領域A内に筒状フィルタ9が配置され、領域Aが接続される凹部3aに弁21が配置されるものの、前記「領域A」が本願補正発明のような「区画室」ではなく、また、ハウジング2が本願補正発明における「前記区画室の出口に接続され且つ前記区画室から送り出される前記排気ガスを集合する集合管」に相当するものを有さず、さらに、「凹部3a」、「筒状フィルタ9」及び「弁21」が「領域A」と関係する点(以下、「相違点1」という。)。

相違点2
捕集処理で少なくとも2個の排気ガス入口を開放し、再生処理で1個の排気ガス入口を閉鎖するために、
本願補正発明においては、(少なくとも3個以上の)排気ガス入口に、排気ガス入口を開閉するための開閉弁がそれぞれ配置されており、捕集処理において「少なくとも2個の前記区画室の排気ガス入口を開閉する前記開閉弁を開放」し、再生処理において「1個の前記区画室の前記開閉弁を閉鎖」するのに対し、
引用文献記載の発明においては、4個の凹部3aに、弁21が1個だけ配置されている点(以下、「相違点2」という。)。

2-2-3 判断
(1)相違点1について検討する。
上記2-2-1のfで示したように、引用文献には、「各フィルタユニット8の外側に筒状の隔壁を配設して、フィルタユニット8を通過した排ガスを再生中のフィルタユニット8に接触することなく出口へ導くようにしてもよい。」と示唆されている。
また、ガス室に排気ガス入口を通じてそれぞれ接続し且つ隔壁によって複数に分割された区画室にフィルタを配置し、フィルタが内外周に排気ガス通路を形成するように構成するとともに、区画室から送り出される排気ガスを集合する集合管を設けることは、従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、本願明細書の段落【0004】に開示された特開平8-312329号公報の段落【0020】及び図1のほか、特開2000-352304号公報の段落【0019】及び図1を参照。)である。
これらの示唆や該周知技術1を考慮すれば、引用文献記載の発明において、4個の筒状フィルタ9それぞれが内外周に排ガス通路を形成するように、隔壁によって分割された4個の区画室を設けるとともに、排ガス導入側空間4に凹部3aを通じてそれぞれの区画室を接続し、区画室から送り出される排ガスを集合管で集合するように前記領域Aを構成することによって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

(2)相違点2について検討する。
隔壁で区画された区画室の複数の排気ガス入口に、開閉弁をそれぞれ配置することは、従来周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、本願明細書の段落【0004】に開示された特開平8-312329号公報のほか、特開平5-179931号公報、特開平5-332125号公報を参照。)である。
引用文献記載の発明において、該周知技術2を適用し、捕集処理で3個の凹部3aを開放し、再生処理で1個の凹部3aを閉鎖するために、弁21を1個だけ配置する構成に代えて、4個の凹部3aにそれぞれ開閉弁を配置する構成を採用することによって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

(3)そして、本願補正発明を全体としてみても、本願補正発明の奏する効果は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。
よって、本願補正発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(4)以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 むすび
よって、[理由1]又は[理由2]により、結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成21年7月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1のaの請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 引用文献記載の発明
引用文献には、上記第2[理由]2[理由2]2-2-1に記載したとおりの発明が記載されている。

3 対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、上記第2[理由]2[理由2]2-2-2で指摘したような相当関係がある。
また、引用文献記載の発明における「前記排ガス導入側空間4に凹部3aを通じて接続し且つ前記筒状フィルタ9,前記筒状フィルタ9内周の排ガス通路,及び前記筒状フィルタ9外周の排ガス通路を含む4個の領域A」は、本願発明における「前記ガス室に接続して隔壁によって少なくとも3個以上に分割され且つ前記フィルタが内外周に排気ガス通路を形成してそれぞれ配置された区画室」に、「前記ガス室に接続して前記フィルタ,前記フィルタ内周の排気ガス通路,及び前記フィルタ外周の排気ガス通路を含む少なくとも3個以上の領域A」の限りにおいて相当する。

よって、本願発明と引用文献記載の発明とは、
「エンジンからの排気ガスを排出する排気管に接続されたハウジング,及び前記ハウジング内に配置された前記排気ガスに含まれるパティキュレート物質を捕集し且つ捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却するフィルタを有する排気ガス浄化装置において,
前記ハウジングは,前記排気管に連通した前記排気ガスが送り込まれるガス室を形成する入口管,前記ガス室に接続して前記フィルタ,前記フィルタ内周の排気ガス通路,及び前記フィルタ外周の排気ガス通路を含む少なくとも3個以上の領域Aを有し,
前記領域Aの排気ガス入口には前記排気ガス入口を開閉するための開閉弁が配置され,前記ハウジングに形成された前記領域Aには,前記フィルタの再生時に前記パティキュレート物質の燃焼用空気を供給するため空気供給手段が設けられ,
前記排気管からの前記排気ガスを前記領域Aへ送り込むため前記開閉弁を開放制御すると共に前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却して前記フィルタを再生するため前記開閉弁を閉鎖制御し,前記フィルタの再生時に前記フィルタに設けたヒータを通電制御するコントローラを有し,
前記コントローラは,少なくとも2個の前記領域Aの排気ガス入口を開放し前記排気ガスに含まれる前記パティキュレート物質を前記フィルタに捕集する捕集処理と,1個の前記領域Aの排気ガス入口を前記開閉弁で閉鎖し前記空気供給手段を働かせて再生するための前記領域Aの前記フィルタに前記燃焼用空気を供給して前記ヒータに通電して前記フィルタに捕集された前記パティキュレート物質を加熱焼却する再生処理とを順次経時的に制御する排気ガス浄化装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1’
領域Aに関し、
本願発明においては、ハウジングが「前記ガス室に接続して隔壁によって少なくとも3個以上に分割され且つ前記フィルタが内外周に排気ガス通路を形成してそれぞれ配置された区画室」を有するとともに、ハウジングが「前記区画室に接続され前記区画室から送り出される前記排気ガスを集合する集合管」を有し、さらに、「前記区画室の排気ガス入口」及び「前記区画室の前記開閉弁」のように、「排気ガス入口」及び「開閉弁」が「区画室」と関係するのに対し、
引用文献記載の発明においては、ハウジング2が「前記排ガス導入側空間4に凹部3aを通じて接続し且つ前記筒状フィルタ9,前記筒状フィルタ9内周の排ガス通路,及び前記筒状フィルタ9外周の排ガス通路を含む4個の領域A」を有し、領域Aが凹部3aに接続され、領域Aが接続される凹部3aに弁21が配置されるものの、前記「領域A」が本願発明のような「区画室」ではなく、また、ハウジング2が本願発明における「前記区画室に接続され前記区画室から送り出される前記排気ガスを集合する集合管」に相当するものを有さず、さらに、「凹部3a」及び「弁21」が「領域A」と関係する点(以下、「相違点1’」という。)。

相違点2
捕集処理で少なくとも2個の排気ガス入口を開放し、再生処理で1個の排気ガス入口を閉鎖するために、
本願発明においては、(少なくとも3個の)排気ガス入口に、排気ガス入口を開閉するための開閉弁がそれぞれ配置されており、捕集処理において「少なくとも2個の前記区画室の排気ガス入口を開閉する前記開閉弁を開放」し、再生処理において「1個の前記区画室の前記開閉弁を閉鎖」するのに対し、
引用文献記載の発明においては、4個の凹部3aに、弁21が1個だけ配置されている点(相違点2)。

相違点3
領域Aに空気供給手段を設けることに関し、
本願発明においては、「前記フィルタの再生時に前記パティキュレート物質の燃焼用空気を供給するため空気供給手段がそれぞれ設けられ」ているのに対し、
引用文献記載の発明においては、「前記筒状フィルタ9の再生時に前記パティキュレートの酸素を供給するため酸素供給手段が設けられ」ている点(以下、「相違点3」という。)。

4 判断
(1)相違点1’について検討する。
上記第2[理由]2[理由2]2-2-1のfで示したように、引用文献には、「各フィルタユニット8の外側に筒状の隔壁を配設して、フィルタユニット8を通過した排ガスを再生中のフィルタユニット8に接触することなく出口へ導くようにしてもよい。」と示唆されている。
また、ガス室に排気ガス入口を通じてそれぞれ接続し且つ隔壁によって複数に分割された区画室にフィルタを配置し、フィルタが内外周に排気ガス通路を形成するように構成するとともに、区画室から送り出される排気ガスを集合する集合管を設けることは、従来周知の技術(周知技術1)である。
これらの示唆や周知技術1を考慮すれば、引用文献記載の発明において、4個の筒状フィルタ9それぞれが内外周に排ガス通路を形成するように、隔壁によって分割された4個の区画室を設けるとともに、排ガス導入側空間4に凹部3aを通じてそれぞれの区画室を接続し、区画室から送り出される排ガスを集合管で集合するように前記領域Aを構成することによって、相違点1’に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

(2)相違点2については、上記第2[理由]2[理由2]2-2-2で検討したとおりである。
よって、引用文献記載の発明において、周知技術2を適用し、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

(3)相違点3について検討する。
空気供給手段をフィルタごとにそれぞれ設けることは、従来周知の技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開平5-179931号公報の段落【0014】及び図1、特開2000-352304号公報の段落【0019】及び図1を参照。)である。
引用文献記載の発明に該周知技術3を適用し、酸素供給手段を1個だけ設ける構成に代えて、4個の筒状フィルタ9にそれぞれ(すなわち、4個の領域Aにそれぞれ)空気供給手段を設ける構成を採用し、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

(4)そして、本願発明を全体としてみても、本願発明の奏する効果は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-14 
結審通知日 2010-11-09 
審決日 2010-11-24 
出願番号 特願2001-369891(P2001-369891)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 572- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前崎 渉  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 中川 隆司
西山 真二
発明の名称 排気ガス浄化装置  
代理人 尾仲 一宗  

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