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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1231901 |
審判番号 | 不服2009-16795 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-09-10 |
確定日 | 2011-02-10 |
事件の表示 | 特願2002-270572「再剥離再貼付ラベル」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-109375〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年9月17日の出願であって、平成20年12月12日付けで手続補正がなされ、平成21年6月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月10日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 平成21年9月10日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである。 「再剥離再貼付可能な粘着剤を保護紙で保護した再剥離再貼付ラベルにおいて、再剥離再貼付可能な粘着剤が、厚み10?100μmであって平面直径が10?150μmである偏平状の粘着性微球成分とバインダー成分とからなり、該再剥離再貼付可能な粘着剤面に突出する前記粘着性微球成分に点接触して保護する保護紙側の前記粘着剤と接する面に、シリコーン剥離剤を含まない紫外線硬化型オフセットインキによる目止層が設けられており、該目止層を設けることにより、JIS-P8122で規定される保護紙側のサイズ度が、再剥離再貼付粘着剤を塗布した基材側と比較して高く、1.5倍以上であることを特徴とする再剥離再貼付ラベル。」 第3 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-70525号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 1 「【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる状況を鑑み鋭意研究を重ねた結果、剥離剤には従来の水溶性シリコーン系は使用せず、その代わりに、金属錯塩あるいは非シリコーン系水溶性高分子の剥離剤を、水溶性基材の表面に直接塗布した剥離シートと、これを保護紙として貼付したラベル用紙を供給することにより所期の目的を達成するに至った。 【0006】 【作用】剥離シートの水溶性基材(例えば、上質紙等)の表面には、予め目止め剤は使用せず、その表面に直接、水溶性の金属錯塩あるいは非シリコーン系水溶性高分子を塗布することで、剥離剤自体が水によって容易に溶解し、結果、剥離シートが水溶性基材と同等の再生適性を有する。 【0007】 【実施例】以下、本発明を好適な実施例を、添付図面に基づき詳細に説明する。図1に示す剥離シート1の水溶性基材2としては、再生適性を考慮すると情報用紙あるいは印刷用紙が最も良い。すなわち、剥離シートの処理が問題となるのは、ビジネスユースで大量にラベル用紙を使用した場合であり、その場合、周辺で使用されている基材はフォーム用紙、PPC用紙等の情報用紙、あるいは、上質紙、中質紙といった印刷用紙が多く、剥離シートの再生適性を最高のものとするためには、基材と剥離シートの再生適性が同等となるのが最も好ましく、したがって、再生処理の際、周辺の基材と同じ材質の方が分別の問題が生じ難い。 【0008】また、通常、基材と剥離剤との間に目止め剤層(剥離剤防浸膜)を設けるが、目止め剤は水溶性と言えども基材とは溶解性が異なり、再生適性を悪化させるため、本発明ではこれを使用せず、したがって、剥離剤の基材への浸透、定着のバランスを考慮した場合は上質紙あるいは印刷用紙が最も適するが、水溶性の高分子フィルム等を用いても良い。 【0009】次に、図1に示す剥離剤3には、ワーナー型クロム錯塩を主成分とする撥水剤(デュポン製、キロンC)あるいは、ポリエチレンイミン系水溶性高分子(日本触媒製、RP-18w)を用いる。これらの金属錯塩、あるいは非シリコーン系水溶性高分子の剥離剤は、従来の水溶性シリコーン系と同等以上の水溶性を有するだけでなく、さらに、基材への浸透性が小さいため、従来のような目止め剤を必要としない。また、従来のシリコーン系剥離剤が殆ど筆記適性あるいは印字適性を有していなかったのに比べ、これらの剥離剤は、ある程度の適性を有するものである。そして、剥離剤3の基材2表面への塗付は、公知の塗工方法、例えば、グラビア、メイヤーバー、エアーナイフ、リバースロールあるいはロールコーター等で行なうことができる。再生適性を考慮すると塗工量はなるべく少ない方がよいが、あまり少ないと剥離が重くなるので、乾燥後の固形分ベースでクロム錯塩(キロンC)では0.2?0.5g/m^(2)、ポリエチレンイミン系(RP-18w)では1.0?1.5g/m^(2)程度が好ましい。 【0010】尚、本発明の剥離剤には、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、他の合成樹脂やゴムあるいは架橋剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、顔料、染料、発泡剤、難燃剤等の通例の添加剤を添加しても差し支えない。 【0011】次に、図2及び図3に示しているのは、本発明の剥離シートを用いて、その連続ウエヴの剥離剤塗布面にラベルを貼付して形成されたラベルシートであるが、基材シートの両面に本発明における剥離剤を塗布した剥離シートにラベルを貼付した両面ラベルシートとしてもよく、さらに、連続シートウエヴの任意の部分に本発明における剥離剤をスポット状に塗布し、部分的にラベルを貼付し、他の部分には必要な印字をしてなる連続帳票を形成することもできる。そして、これらのラベルシートは巻き取ってロール状としたり、あるいは、折り畳んで貯蔵されるものである。尚、本発明の剥離シートはこのような連続状態のラベルシートに限らず、単片状態のラベルシートとしても利用できる。また、ラベル基材4に塗布される粘着剤5は、次の理由により高進性の無いものあるいは小さいものを選定するのが良い。すなわち、通常の粘着剤には貼着後の高進性が大きく、剥離剤の剥離効果が弱いと高進性の影響を受けてしまい、経時変化で剥離が非常に重くなってしまったり、ついには、剥離紙が基材に完全に固着してしまうものもある。そこで、本発明における粘着剤には、好ましくは弱粘着性のもの、さらに好ましくは高進性が小さい弱粘着性のものを使用する。このような高進性の小さい弱粘着性の粘着剤については、現在使用されているものでは、殆ど全てが再剥離再貼着可能な粘着剤タイプのものであるが、このタイプの他ではアクリル系球状粘着剤等を使用するのが好ましい。」 2 「【図面の簡単な説明】 【図1】再生可能な剥離シートを示す概略的な断面図。 【図2】再生可能な剥離シートに貼付してなるラベル用紙の平面図。 【図3】再生可能な剥離シートに貼付してなるラベル用紙の概略的なA-A線断面図。 【符号の説明】 1 再生可能な剥離シート 2 水溶性基材 3 剥離剤 4 ラベル基材 5 粘着剤 」 3 図3から、ラベルの粘着剤5塗布面に、剥離シートの剥離剤3塗布面が貼付されることが見て取れる。 4 上記1ないし3から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ラベルの粘着剤塗布面に、保護紙として剥離シートの剥離剤塗布面を貼付したラベル用紙であって、前記ラベルは、ラベル基材に再剥離再貼着可能な粘着剤を塗布したものであり、前記剥離シートは、上質紙である水溶性基材に非シリコーン系水溶性高分子の剥離剤を塗布したものであり、前記非シリコーン系水溶性高分子の剥離剤は、前記水溶性基材への浸透性が小さいため目止め剤を必要としないものである、ラベル用紙。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 引用発明において、「ラベル用紙」は、ラベルの粘着剤塗布面に、保護紙として剥離シートの剥離剤塗布面を貼付したものであり、前記ラベルは、ラベル基材に再剥離再貼着可能な粘着剤を塗布したものであるから、引用発明の「ラベル用紙」は、本願発明の「再剥離再貼付可能な粘着剤を保護紙で保護した再剥離再貼付ラベル」に相当する。 2 引用発明の剥離剤は、水溶性基材への浸透性が小さいため目止め剤を必要としない非シリコーン系水溶性高分子の剥離剤であるから、この剥離剤自体に目止め剤を必要としない程度の目止め機能があるといえ、このことと、保護紙としての剥離シートの剥離剤塗布面が、ラベルの粘着剤塗布面に貼付されることとから、引用発明の「『粘着剤塗布面』に貼付される『保護紙』の『剥離剤塗布面』をなす『非シリコーン系水溶性高分子の剥離剤』」は、本願発明の「『保護紙側の前記粘着剤と接する面』に設けられた『シリコーン剥離剤を含まない目止層』」に相当する。 3 上記1及び2から、本願発明と引用発明とは、 「再剥離再貼付可能な粘着剤を保護紙で保護した再剥離再貼付ラベルにおいて、保護紙側の前記粘着剤と接する面に、シリコーン剥離剤を含まない目止層が設けられている再剥離再貼付ラベル。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1: 本願発明では、前記再剥離再貼付可能な粘着剤が、「厚み10?100μmであって平面直径が10?150μmである偏平状の粘着性微球成分とバインダー成分とからな」るものであり、前記保護紙が、「再剥離再貼付可能な粘着剤面に突出する前記粘着性微球成分に点接触」して保護するものであるのに対して、引用発明では、前記再剥離再貼付可能な粘着剤が、どのようなものであるのか明らかでない点。 相違点2: 前記目止層が、本願発明では、「紫外線硬化型オフセットインキによる」ものであり、「JIS-P8122で規定される保護紙側のサイズ度」を、「再剥離再貼付粘着剤を塗布した基材側と比較して高く、1.5倍以上」とするものであるのに対して、引用発明では、非シリコーン系水溶性高分子からなり、上質紙である水溶性基材への浸透性が小さいものであるが、そのようなサイズ度は明らかでない点。 第5 判断 上記相違点1及び2について検討する。 1 相違点1について (1)引用例には、「本発明における粘着剤には、好ましくは弱粘着性のもの、さらに好ましくは高進性が小さい弱粘着性のものを使用する。このような高進性の小さい弱粘着性の粘着剤については、現在使用されているものでは、殆ど全てが再剥離再貼着可能な粘着剤タイプのものであるが、このタイプの他ではアクリル系球状粘着剤等を使用するのが好ましい。」と記載されている(上記第3の1【0011】参照。)。 (2)粘着性微球体と結合剤とからなり、粘着性微球体を結合剤層の表面から突出させ被着体と点接触させることにより再剥離再貼付を可能とする粘着剤は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.特開昭50-2736号公報特に1頁右下欄11行?15行、3頁左下欄下から6行?下から3行及びFIG.1、特開平7-210088号公報特に【0012】及び【0013】、実願昭52-134136号(実開昭54-60661号)のマイクロフィルム特に実用新案登録請求の範囲、5頁下から2行?6頁5行及び第2図参照。)ところ、前記粘着性微球体の形状及び寸法は、当業者が適宜決定すべき設計事項というべきものである。 (3)上記(1)及び(2)から、引用発明の再剥離再貼付可能な粘着剤として、「厚み10?100μm」、「平面直径10?150μm」の偏平状の粘着性微球体と結合剤とからなるものを用い、結合剤層の表面から突出する前記粘着性微球体に保護紙を点接触させることとし、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が、引用例に記載された事項及び周知技術1に基づいて適宜なし得た設計上のことである。 2 相違点2について (1)紫外線硬化型印刷用インキからなる目止層は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開2001-265222号公報特に【0026】、特開2002-72889号公報特に【0015】、特開2002-62813号公報特に【0015】、特開2002-40946号公報特に【0015】参照。)ところ、目止層の形成法として何を用いるか、目止層の目止機能をどの程度とするかは、いずれも当業者が適宜決定すべき設計事項というべきである。 (2)上記(1)から、引用発明の目止層を、紫外線硬化型印刷用インキを用いてオフセット印刷したものとするとともに、「JIS-P8122で規定される保護紙側のサイズ度が、再剥離再貼付粘着剤を塗布した基材側と比較して高く、1.5倍以上」となるものとし、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得た設計上のことである。 3 効果について 本願発明の奏する効果は、当業者が、引用発明、周知技術1及び周知技術2それぞれの奏する効果並びに引用例に記載された事項から予測し得た程度のものである。 4 まとめ したがって、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-13 |
結審通知日 | 2010-12-14 |
審決日 | 2010-12-27 |
出願番号 | 特願2002-270572(P2002-270572) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 安久 司郎 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
菅野 芳男 桐畑 幸▲廣▼ |
発明の名称 | 再剥離再貼付ラベル |
代理人 | 金山 聡 |