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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63J
管理番号 1231910
審判番号 不服2009-20215  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-21 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2006- 91845「シアターコントロール装置およびシアターコントロールシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月17日出願公開、特開2007-117709〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
1 本願は、平成18年3月29日(優先権主張平成17年9月29日)の出願であって、平成21年6月22日に手続補正がなされ、同年7月16日日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

2 本願の請求項1及び2に係る発明は、平成21年10月21日付け手続補正後の特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりの次のものと認める。
(1)「【請求項1】
デジタル記録された本編コンテンツの指定、この本編コンテンツと共に1幕を構成する各種のコンテンツの指定、前記本編コンテンツと前記各種コンテンツの再生順序および再生開始条件、前記本編コンテンツと前記各種のコンテンツを再生出力する場合の上映機器および劇場設備機器の機器設定を1上映シーケンスデータとして登録可能な制御シーケンス設定装置と、
前記制御シーケンス設定装置に登録された1上映シーケンスデータに基づいて制御対象機器に対する制御指示を制御インターフェースを介して出力するプログラム実行装置とを備え、
前記上映機器には、少なくとも前記本編コンテンツの再生出力に関するデジタル機器が含められ、そのデジタル機器と別途に、前記各種のコンテンツに対応した再生出力に関する機器が選択的に含められるシアターコントロール装置。」(以下「本願発明1」という。)

(2)「【請求項2】
前記1上映シーケンスデータに前記上映機器としてフィルム映写機の指定を登録可能とし、前記制御インターフェースにフィルム映写機を接続可能とした請求項1に記載のシアターコントロール装置。」(以下「本願発明2」という。)

第2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-249035号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

1 「【請求項1】 配給元の上映用コンテンツを所定方式のデジタルコンテンツデータで保持するコンテンツサーバと、該コンテンツサーバからのデジタルコンテンツデータを受信し、該受信したデジタルコンテンツデータを記録する記録媒体を有するシネマパッケージに、所定のフォーマットで記録して、記録用又は配信用のコンテンツデータに管理情報を追加する手段と、を備え、前記記録用又は配信用のコンテンツデータに管理情報を追加する手段は、前記デジタルコンテンツデータを記録する際に、少なくとも、前記シネマパッケージ固有のメデイアIDコード、前記上映用コンテンツ特有のコンテンツIDコード、再生側のシネマサーバ特有のシネマシステムIDコードからなる識別コードを記録するようにしたことを特徴とするシネマコンテンツ記録装置。
【請求項2】 上記配給元の上映用コンテンツには、本編のコンテンツの他に、予告編、CM、案内、インフォメーション、始めのアナウンス、終わりのアナウンス、チャイム、BGMのコンテンツを含むことを特徴とする請求項2に記載のシネマコンテンツ記録装置。」

2 「【請求項9】 配給元の上映用コンテンツを非公開のユニークなフォーマットで、デジタル方式の記録媒体に記録してなるシネマパッケージをカセット装着部に装填することができるアップロードマネージャと、
前記上映用コンテンツを蓄積し、所定のスクリーンに放映するシネマサーバと、
所定のスケジューリングに基づいてスクリーンに放映するための制御するサーバコマンダと、を備え、前記アップロードマネージャは、前記装填したシネマパッケージに対して、別ルートで得られたシネマパッケージ固有のメディアIDコードデータと、前記装填したシネマパッケージに付与されているシネマパッケージ固有のメディアIDコードとを照合するメディアIDコード照合手段と、該照合が一致したときに、前記シネマパッケージに記録されているデータを記録したときのフォーマットで再生する再生手段と、を備えてなるシネマコンテンツ再生装置。
【請求項10】 上記配給元の上映用コンテンツには、本編のコンテンツの他に、予告編、CM、案内、インフォメーション、始めのアナウンス、終わりのアナウンス、チャイム、BGMのコンテンツを含むことを特徴とする請求項9に記載のシネマコンテンツ再生装置。」

3 「【0002】
【従来の技術】現在、各種コンテンツの配信や配給がアナログ方式からデジタル方式へと切り替わりつつある。映画業界も例外ではない。従来、多くの映画館においては、35mmフィルムの形態で映画の配給を受け、その上映を行なっていた。又、一部の映画館においては、磁気テープにアナログ方式で記録された映画の配給を受け、その上映を行なっていた。しかし、フィルムによる配給は、フィルムの管理や上映のための作業に多くの労力を映画館側に要求する。具体的には、本編の上映期間中に行なわれる広告内容の切り替え作業、即ち、映画フィルムと広告フィルムの組み合わせの変更に応じた切り取りとつなぎ合わせ作業、その他に過度の労力を要求する。他方、アナログ記録された磁気テープによる配給は、フィルムに比べ管理は容易になるものの、反復再生による画質や音量の劣化が進み易いという問題があった。このため、この種の映画館においては、上映回数が所定回数、例えば、10回程度になる毎に、新しい磁気テープに交換する作業が必要である。これに対して、デジタル記録した映画の配給を受ける場合には、画質や音質の劣化がなく、管理も容易になると考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、現在行なわれているデジタル化された映画の配給は本編に限られている。例えば、広告については依然としてフィルムにより配給されている。このため、予告編(審決注:「予告偏」は「予告編」の明らかな誤記なので修正して摘記した。)の上映や開始終了のアナウンスタイミング、広告の上映などを含めた上映単位全体での管理は従前のままであるという問題がある。」

4 「【0018】その他の特徴として、現行のシネマシックシステムは、1スクリーン当り標準4台のVTRを装備するが、新システムは、1台のシネマサーバで4スクリーンまで主力管理制御できる。又、現行シネマチックシステムでは、上映するコンテンツ順にベータカムテープをセットする必要があるが、新システムは、どのコンテンツを何処のスクリーンに、どの順序で上映するかという「タイムテーブル」を画面上で設定するため、使い勝手が大幅に改善される。」

5 「【0043】シアター側には、アップロードマネージャ32を備えた映画運営コントロール部31と、コンテンツをスケジュールに合わせて出力制御等する上映用サーバユニット33と、実際にスクリーンに上映する上映部37とからなる。
【0044】上映用サーバユニット33は、アップロードマネージャ32からデータを受信するハブ34と、上映するコンテンツを蓄積し、複数のスクリーン室での上映を制御するシネマサーバ35と、コンテンツを上映するときのスケジュールに従ってシネマサーバ35からのコンテンツの送出の制御及び劇場での照明等の制御を司るサーバコマンダ36とからなり、配給されてくるシネマパッケージ19を再生すると共に、音響・照明などの上映施設の設備の制御を行う。」

6 「【0047】上映部37は、シネマサーバ35により複数の上映するスクリーン室が制御される構成になっており、それぞれのスクリーン室には、サーバコマンダに接続するインターフェースユニット38と、照明、BGM、スクリーン等の上映システム40を制御するシステムコマンダ39と、画郭を切換える画郭切換ユニット41と、SDI変換ユニット42と、液晶プロジェクタ43と、ドルビーEデコーダ44と、D/Aコンバータ45と、シアターオーディオシステム46と、スクリーン47とからなる。
【0048】液晶プロジェクタ42は、シネマサーバ35から送られてくる映像信号(SDI信号やPAL信号)をコンポーネント信号(輝度信号Yと色差信号R-Y、B-Y)などの光信号に変換してスクリーン46に投射する機器である。」

7 「【0093】又、アップロードマネージャ32にロードされたコンテンツに対して、上映するための番組編集及び編成作業を画面上で行なってから、各シネマサーバ35に送出する。
【0094】画面上にて行なう番組編集及び編成作業は、図5に示すように、様々なコンテンツはフィルム、ビデオカセット、CDやMD等のディスクからAITテープ(シネマパッケージ19)に収録され、この収録されている内容は、本編、予告編、CM、案内、インフォメーション、始めのアナウンス、終りのアナウンス、チャイム、BGM、のデータからなる。
【0095】これらのデータからなるコンテンツは、シアター側のアップロードマネージャ32において、番組編集する。番組編集は、各種のコンテンツを時系列に編集し、本編をメインにした番組を作成する。編集をする作品の種類は9種類あり、(1)本編、(2)予告編、(3)CM、(4)案内・他、(5)インフォメーション(音のみ)、(6)始めのアナウンス(音のみ)、(7)終わりのアナウンス(音のみ)、(8)チャイム(音のみ)、(9)BGN(音のみ)、である。これらの作品のそれぞれは、複数種類用意されているものがある。例えば、「BGM」であれば、BGMと外部BGMの2種類のBGM情報、「案内」であれば、案内1と案内2の2種類の案内情報、「CM」であれば、CM1?CM12の12種類のCM情報、「始めのアナウンス」であれば、開始アナウンス1、開始アナウンス2の2種類の開始アナウンス情報、「予告編」であれば予告?1?予告?12の12種類の予告情報、「終わりのアナウンス」であれば、終了アナウンス1、終了アナウンス2の2種類のアナウンス情報、である。
【0096】これら9種類の作品を画面上にて組み合わせて番組を生成する。実施例において、興行の基本単位であるA番組は、BGMを流すことを前提として、インフォメーション、CM1・CM2、チャイム、始めのアナウンス、案内、予告1・予告2、本編?1、終わりのアナウンス、の順に編集し、最後にBGMが流れるようになっている。この編集作業は、画面上に表示する内容を選択し、或いは入力して作成する。
【0097】このようにして番組を作成した後に、この作成した番組を1日の興行単位で幾つかの番組で編成する番組編成を画面上で行なう。番組編成は、実施例において、例えば、10時から12時までがA番組の興行、12時から12時30分までは休憩をしてBGMを流すようにし、12時30分から14時30分までがA番組の興行、14時30分から15時までが休憩タイムでBGMを流すようにし、15時から17時までがA番組の興行、17時から17時30分までが休憩にしてBGMを流すようにし、17時30分から20時までがB番組の興行、20時から20時30分までが休憩でBGMを流すようにし、20時30分から23時までがB番組を興行するといったように1日の上映時間表を作成する。この1日の番組編成を仮にA編成と命名すれば、同じようにして1日の番組編成をしたB編成、C編成というように、様々なバリエーションの番組の編成を行なって作成しておく。そして、これらのA編成は何日の何曜日に実行するというスケジュールを作成する。実施例においては、初日(金曜日)から3日(日曜日)はA編成、4日(月曜日)から7日(木曜日)はB編成、8日(金曜日)から10日(日曜日)はA編成、11日(月曜日)から14日(木曜日)はB編成というように設定する。これらの番組編成も、画面表示に従って、選択や入力することによって設定する。
【0098】このようにして、アップロードマネージャ32で番組編集及び編成作業が終了すると、その編集及び編成された上映用コンテンツはシネマサーバ35に送出し、ハードディスク等の媒体に記録し、編集及び編成した情報がサーバコマンダ36に送出する。
【0099】そして、映画の自動上映のプログラム運用がスタートし、設定された時間及び期間に、サーバコマンダ36が上映部37に指示を出し、自動的に設定されている映画を上映パターン(編集)に従って上映することができるのである。
【0100】上映パターンは、図6に示すように、ひとつの番組時間に対して、9種類の作品の種類をBGM、インフォメーション、CM・案内、チャイム、始めのアナウンス、CM・案内、予告編、本編、終りのアナウンス、BGM、という順序で実行する。ここで番組時間は、上映時間を挟んで最初と終わりのBGM、インフォメーション、CM・案内からなる時間設定からなる。上映時間は、チャイムからなる上映開始時刻、本編が実際に開始する本編開始時刻、本編開始時刻から自動的に設定することができる終映時刻とからなる。
【0101】そして、各シネマサーバが記録したデータ(コンテンツ)を所定のスケジュールに則り、再生=映画上映するのである。」

8 上記1ないし7から、引用例には、
「広告については依然としてフィルムにより配給され、予告編の上映や開始終了のアナウンスタイミング、広告の上映などを含めた上映単位全体での管理は従前のままであるという問題を解決するため、
どのコンテンツを何処のスクリーンに、どの順序で上映するか設定され、 アップロードマネージャで上映するための番組編集及び編成作業が行われ、
デジタルコンテンツデータの上映用コンテンツの編集及び編成した情報がサーバコマンダに送出され、
上映用コンテンツには、本編のコンテンツの他に、予告編、CM、案内、インフォメーション、始めのアナウンス、終わりのアナウンス、チャイム、BGMのコンテンツが含まれ、
設定された時間及び期間に、サーバコマンダが上映部に指示を出し、自動的に設定されている映画を上映パターン(編集)に従って上映することができ、
上映パターンは、ひとつの番組時間に対して、9種類の作品の種類をBGM、インフォメーション、CM・案内、チャイム、始めのアナウンス、CM・案内、予告編、本編、終りのアナウンス、BGM、という順序で実行するものであり、
サーバコマンダはインターフェースユニットに接続され、
サーバコマンダはコンテンツを上映するときのスケジュールに従ってシネマサーバからのコンテンツの送出の制御及び劇場での照明等の制御を司る、
アップロードマネージャ及びサーバコマンダ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

第3 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「『デジタルコンテンツデータの上映用コンテンツ』に含まれる『本編のコンテンツ』」、「『ひとつの番組に対して、』『BGM、インフォメーション、CM・案内、チャイム、始めのアナウンス、CM・案内、予告編、』『終りのアナウンス、BGM』『のコンテンツ』」、「9種類の作品の種類をBGM、インフォメーション、CM・案内、チャイム、始めのアナウンス、CM・案内、予告編、本編、終りのアナウンス、BGM、という順序」及び「コンテンツを上映するときのスケジュールに従ってシネマサーバからのコンテンツの送出の制御及び劇場での照明等の制御」は、それぞれ、本願発明1の「デジタル記録された本編コンテンツ」、「本編コンテンツと共に1幕を構成する各種のコンテンツ」、「前記本編コンテンツと前記各種コンテンツの再生順序」及び「前記本編コンテンツと前記各種のコンテンツを再生出力する場合の上映機器および劇場設備機器の機器設定」に相当する。

イ 引用発明は、「上映パターンは、ひとつの番組時間に対して、9種類の作品の種類をBGM、インフォメーション、CM・案内、チャイム、始めのアナウンス、CM・案内、予告編、本編、終りのアナウンス、BGM、という順序で実行するものであ」り、ひとつの番組時間に対して、9種類の作品の種類を所定順序で上映するためには、上映パターンは再生順序に加え、再生開始条件を設定していることは明らかである。よって、引用発明の「デジタルコンテンツデータの上映用コンテンツ」「には、本編のコンテンツの他に、予告編、CM、案内、インフォメーション、始めのアナウンス、終わりのアナウンス、チャイム、BGMのコンテンツが含まれ、」「上映パターン(編集)は、ひとつの番組時間に対して、9種類の作品の種類をBGM、インフォメーション、CM・案内、チャイム、始めのアナウンス、CM・案内、予告編、本編、終りのアナウンス、BGM、という順序で実行するものであ」る「上映用コンテンツの編集及び編成した情報」、「コンテンツを上映するときのスケジュールに従ってシネマサーバからのコンテンツの送出の制御及び劇場での照明等の制御」のデータは、本願発明1の「デジタル記録された本編コンテンツの指定、この本編コンテンツと共に1幕を構成する各種のコンテンツの指定、前記本編コンテンツと前記各種コンテンツの再生順序および再生開始条件、前記本編コンテンツと前記各種のコンテンツを再生出力する場合の上映機器および劇場設備機器の機器設定を1上映シーケンスデータ」に相当する。
加えて、引用発明の「アップロードマネージャ」は、「上映するための番組編集及び編成作業が行われ」ており、さらに、引用発明の「サーバコマンダ」は、「デジタルコンテンツデータの上映用コンテンツの編集及び編成した情報がサーバコマンダに送出され、」「コンテンツを上映するときのスケジュールに従ってシネマサーバからのコンテンツの送出の制御及び劇場での照明等の制御を司」っていることから、引用発明の「上映用コンテンツの編集及び編成した情報」と「コンテンツの送出の制御及び劇場での照明等の制御」のデータを入れておくことが可能な「サーバコマンダ」及び「アップロードマネージャ」は、本願発明1の「1上映シーケンスデータ」を「登録可能な制御シーケンス設定装置」に相当し、さらに、引用発明の「上映部に指示を出し、自動的に設定されている映画を上映パターン(編集)に従って上映することができ」る「サーバコマンダ」は、本願発明1の「制御シーケンス設定装置に登録された1上映シーケンスデータに基づいて制御対象機器に対する制御指示を」「出力するプログラム実行装置」に相当する。
また、引用発明の「アップロードマネージャ」及び「サーバコマンダ」は、本願発明1の制御シーケンス設定装置とプログラム実行装置とを備えた「シアターコントロール装置」に相当する。

ウ 引用発明の「本編のコンテンツ」を含む「上映用コンテンツ」は、「デジタルコンテンツデータ」であるので、「サーバコマンダが上映部に指示を出し、自動的に設定されている映画を上映パターン(編集)に従って上映することができ」る機器として、「少なくとも前記本編コンテンツの再生出力に関するデジタル機器が含められ」ることは明らかである。

エ 上記アないしウからみて、本願発明1と引用発明とは、
「デジタル記録された本編コンテンツの指定、この本編コンテンツと共に1幕を構成する各種のコンテンツの指定、前記本編コンテンツと前記各種コンテンツの再生順序および再生開始条件、前記本編コンテンツと前記各種のコンテンツを再生出力する場合の上映機器および劇場設備機器の機器設定を1上映シーケンスデータとして登録可能な制御シーケンス設定装置と、
前記制御シーケンス設定装置に登録された1上映シーケンスデータに基づいて制御対象機器に対する制御指示を出力するプログラム実行装置とを備え、
前記上映機器には、少なくとも前記本編コンテンツの再生出力に関するデジタル機器が含められるシアターコントロール装置。」である点で一致し、本願発明1と引用発明とは、次の相違点1及び2で相違する。

相違点1:
本願発明1においては、上映機器には少なくとも本編コンテンツの再生出力に関するデジタル機器と別途に、各種のコンテンツに対応した再生出力に関する機器が選択的に含められるのに対し、引用発明においては、上映機器には少なくとも本編のコンテンツの再生出力に関するデジタル機器と別途に、各種のコンテンツに対応した再生出力に関する機器が選択的に含められるのか明らかでない点。

相違点2:
本願発明1においては、制御対象機器に対する制御指示を制御インターフェースを介して出力しているのに対し、引用発明においては、サーバコマンダはインターフェースユニットに接続されているものの、インターフェースユニットを介して制御対象機器に対する制御指示を出力しているのか明らかでない点。

(2)判断
上記相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について
引用発明は、どのコンテンツを何処のスクリーンに、どの順序で上映するか設定されていることから、少なくとも本編のコンテンツの再生出力に関するデジタル機器と別途に、別のスクリーンに上映する各種コンテンツに対応した再生出力に関する機器を上映機器として選択的に含むようになすことは、当業者が適宜設定することにすぎず、よって、上記相違点1に係る本願発明1の構成となすことは、当業者が適宜設定する事項にすぎない。

イ 相違点2について
引用発明においては、サーバコマンダはインターフェースユニットに接続されており、加えて、設定された時間及び期間に、サーバコマンダが上映部に指示を出し、自動的に設定されている映画を上映パターン(編集)に従って上映することができることから、制御対象機器に対する制御指示をインターフェースユニットを介して出力するようになすことは、当業者が適宜設定することにすぎず、よって、上記相違点2に係る本願発明1の構成となすことは、当業者が適宜設定する事項にすぎない。

ウ 効果について
本願発明1の奏する効果は、引用発明から当業者が予測することができた程度のものである。

エ まとめ
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明とを対比する。
本願発明2は、上記1で検討した本願発明1のシアターコントロール装置において、「前記1上映シーケンスデータに前記上映機器としてフィルム映写機の指定を登録可能とし、前記制御インターフェースにフィルム映写機を接続可能と」限定するものである。
よって、本願発明2と引用発明とは、上記1(1)エの相違点1及び2に加え、さらに、次の相違点3で相違する。

相違点3:
本願発明2においては、1上映シーケンスデータに、上映機器としてフィルム映写機の指定を登録可能とし、制御インターフェースにフィルム映写機を接続可能としたのに対し、引用発明においては、フィルム映写機を備えているのか明らかでない点。

(2)判断
上記相違点1及び2については、上記1(2)に記載したとおり、当業者が引用発明に基づいて適宜設定する事項にすぎないので、上記相違点3について検討する。
ア 引用発明では、広告については依然としてフィルムにより配給される点についても考慮されており、また、フィルムをデジタル化せずに上映する場合に上映機器としてフィルム映写機を用いることは明らかである。

イ 引用例の図6の上映パターンを示す説明図には、35mm映写機が見て取れる。

ウ 上記ア及びイからして、広告などフィルムにより配給されデジタル化されていない媒体をフィルム映写機を用い映写しなければならない場合には、上映機器としてフィルム映写機を用いるものと認められる。

エ 引用発明は、設定された時間及び期間に、サーバコマンダが上映部に指示を出し、自動的に設定されている映画を上映パターン(編集)に従って上映することができるものであること、サーバコマンダは劇場での照明等の各種機器の制御を司ることができること、及び、上記ウから、サーバコマンダが上映部に指示を出し、各種機器を制御し自動的に上映するため、サーバコマンダに登録可能なひとつの番組に対応した各種データに、上映機器としてフィルム映写機の指定を登録可能とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。

オ また、上記1(2)イで検討したように制御対象機器に対する制御指示をインターフェースユニットを介して出力するようになすことは、当業者が適宜設定することであること、及び、上記ウから、インターフェースユニットにフィルム映写機をも接続可能とすることも、当業者が適宜設定する事項にすぎない。

カ 上記エ及びオからして、引用発明において、サーバコマンダに登録可能なひとつの番組に対応した各種データに、上映機器としてフィルム映写機の指定を登録可能とし、インターフェースユニットにフィルム映写機を接続可能とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎず、よって、上記相違点3に係る本願発明2の構成となすことは、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。

キ 効果について
本願発明2の奏する効果は、引用発明から当業者が予測することができた程度のものである。

ク まとめ
したがって、本願発明2は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-10 
結審通知日 2010-12-14 
審決日 2010-12-27 
出願番号 特願2006-91845(P2006-91845)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順安久 司郎井海田 隆  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 野村 伸雄
鈴木 秀幹
発明の名称 シアターコントロール装置およびシアターコントロールシステム  
代理人 鎌田 文二  
代理人 田川 孝由  

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