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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1231924
審判番号 不服2009-24304  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-08 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2002-223660「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日出願公開、特開2004- 57706〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年7月31日の出願であって、平成21年10月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成21年12月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、当審において、平成22年8月31日付で、平成21年12月8日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶の理由が通知され、これに対し平成22年11月5日付けで手続補正がされた。

2.本願発明
本願の請求項1に記載された発明は、平成22年11月5日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】光透過性を有する遊技盤と、
前記遊技盤の背面側に映像を表示させる表示手段と、
前記表示手段が表示する前記映像を制御する表示制御手段とを備え、
前記遊技盤は、当該遊技盤上に、
遊技球を前記遊技盤の正面側の遊技盤面に設けた遊技領域に案内するレールと、
前記遊技領域に設けられた、当たりを生起させるか否かを決定する抽選の結果、前記当たりを生起させることが決定され、前記当たりが生起された場合に開放される入賞口および前記入賞口へ向けて所定間隔で配列されると共に、該配列において他の部分よりも間隔が大きく開いている部分を有する複数の釘を含む盤面構造物を有し、
前記複数の釘の配列は、
該配列上を転動する遊技球のうち、前記他の部分よりも間隔が大きく開いている部分から下方に落下した遊技球については、該他の部分よりも間隔が大きく開いている部分を越えた遊技球と比較して、前記入賞口に入賞する可能性が低くなるように構成され、
前記表示制御手段は、
前記抽選の結果、前記当たりを生起させないことが決定された場合、
前記表示手段により所定キャラクタを前記複数の釘近傍に表示し、前記複数の釘の配列を階段ないし坂道に見立てて、その配列に沿って前記入賞口に向けて前記所定キャラクタを階段ないし坂道を下っているように移動させ、該所定キャラクタを前記複数の釘の配列における前記他の部分よりも間隔が大きく開いている部分から上下逆さまに表示し、下方に向かって落下するように移動表示させて前記入賞口に辿り着けない映像を演出表示することを特徴とする遊技機。」

3.引用文献
当審の拒絶の理由で引用された特開2000-116873号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【0020】図1は、本発明に係る弾球遊技機の一例のパチンコ遊技機1の正面図である。
パチンコ遊技機1の遊技盤には、遊技領域3が形成されている。パチンコ遊技機1には、遊技者が打球操作するための打球操作ハンドル28が設けられており、この打球操作ハンドル28を遊技者が操作することにより、上皿29内に貯留されているパチンコ玉を1個ずつ発射することができる。発射されたパチンコ玉は、区画レール2の間を通って遊技領域3内に導かれる。
【0021】遊技領域3の中央には、識別情報の一例となる特別図柄を可変表示させることが可能な可変表示装置4が設けられている。可変表示装置4の下方には、可変入賞球装置12が設けられている。この可変入賞球装置12は、ベース板23を遊技領域3に固定することにより取付けられている。可変入賞球装置12は、後述するソレノイド50が励磁されることにより開閉板22が開成して打玉が入賞可能な遊技者にとって有利となる第1の状態と、ソレノイド50が消磁されることにより開閉板22が閉成して打玉が入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態とに変化可能に構成されている。可変入賞球装置12には、遊技状態に応じて点灯または点滅表示する6個のLED24が設けられている。
【0022】可変表示装置4の表示領域は、表示専用領域5aと、障害釘等からなる障害部材80が設けられて遊技領域3と兼用されている兼用領域5bとに分かれている。この兼用領域5bでは、後述するように、図柄等を可変表示しながらも玉が流下可能に構成されている。」

(イ)「【0025】普通図柄表示器20はたとえば7セグメント表示器で構成されており、普通図柄と呼ばれる識別情報が可変表示される。この普通図柄表示器20の表示結果が予め定められた特定の識別情報(たとえば7)となれば、後述するソレノイド49が励磁されて、始動口9に設けられた左右1対の可動片14が所定期間だけ開成し、打玉がより始動入賞しやすい状態となる。この始動口9に入賞した始動入賞球は後述する始動球検出器34により検出され、その検出出力に基づいて可変表示装置4が可変開始される。
【0026】可変表示装置4は、たとえば画像表示可能なCRT表示機53(図3参照)で構成されており、特別図柄や所定のメッセージ、その他の画像を表示可能に構成されている。この可変表示装置4により、左特別図柄と中特別図柄と右特別図柄とが可変表示される。具体的には、各特別図柄が一斉に可変開始することにより、上から下に向かって複数種類の特別図柄からなる識別情報がスクロール表示される。なお、以降、左特別図柄、中特別図柄、右特別図柄を、それぞれ、左図柄、中図柄、右図柄と呼ぶ。
【0027】可変表示装置4により左図柄、中図柄、右図柄の可変表示が一斉に開始した後、パチンコ遊技機1内部の制御によって定められる所定の順序で各図柄が順次停止制御される。全ての図柄表示領域の図柄が完全に停止して可変表示装置4の表示結果が導出表示された段階で、その表示結果が予め定められた特定の特別図柄の組合せ(たとえば「777」などのぞろ目)となった場合には、いわゆる大当たりとなる。大当たりが発生すれば、可変入賞球装置12が第1の状態に制御され、開閉板22が傾動して打玉を可変入賞球装置12内へ入賞させることが可能となり、遊技状態が遊技者にとって有利な遊技状態となる。」

(ウ)「【0042】この種のパチンコ遊技機1では、大当たりを発生させるか否かの判定を基本回路45のRAM70内に構成された大当たり判定用カウンタのカウンタ値により定めている。この大当たり判定用カウンタのカウンタ値は、定期リセット回路39からリセットパルスが与えられるごと(たとえば2msecごと)に所定値範囲内で繰返し更新されている。基本回路45は、入力回路35から始動入賞信号が入力されてきたタイミングで大当たり判定用カウンタのカウンタ値を参照してそのカウンタ値が予め定められている当たり判定値であるか否かを判定し、当たり判定値である場合には、大当たりを発生させることを事前決定する。」

(エ)「【0047】CRT回路54は、基本回路45から出力される制御信号に従って、CRT表示機53を駆動制御するための回路である。CRT回路54からCRT表示機53に送信される信号の中には、コマンド信号としてのCD0?CD7と、表示制御通信トリガ信号(割込信号)であるINTとが含まれる。さらに、CRT回路54とCRT表示機53とを接続する信号線には、電源供給のための+5V線と、+12V線と、グランド信号線であるGND線とがある。基本回路45は、定期リセット回路39からの定期リセット信号が入力されたタイミングでCRT回路54を介してCRT表示機53の可変表示制御基板(サブ基板)216(図4参照)へ、割込信号(INT)と画像表示制御信号(コマンド信号CD0?CD7)とを出力する。」

(オ)「【0059】 図5は、可変表示装置4の前面側に障害ユニット85を組付ける組付方法を説明するための図である。
【0060】可変表示装置4の前面側には、外周部付近に係合片84,86が設けられている。一方、障害部材80が多数突設された障害ユニット85には、その外周部に係合溝83が形成されている。この係合溝83を前記係合片86に係合させた状態で図示矢印で示すように障害ユニット85をスライドさせて、係合溝83が係合片86と84の両者に係合するように組付ける。
【0061】この障害ユニット85を間違って逆の方向にして可変表示装置4の前面側に組付けようとした場合には、係合溝83と係合片86とが係合しないように構成されている。その結果、間違って逆の方向から組付けようとしても組付けられない。このように構成することにより、遊技場において、出玉率等の調整の目的で故意に障害ユニット85を逆の方向に組付ける行為も防止でき、本来の機能通り障害ユニットを用いることができる。
【0062】また、スライド方式により組付ける代わりに、可変表示装置4の前面側に障害ユニット85を嵌込む嵌込方式で組付けてもよい。その場合においても、障害ユニット85と可変表示装置4の前面側との形や係合状態などで上下や左右が逆の状態で組付けることができないように構成する。図中82は障害壁であり、障害部材80が設けられていない表示専用領域の周囲を囲んで設けられ、打玉が表示領域5a内に入らないようにしている。5bは、障害部材80が設けられている兼用領域である。この障害ユニット85は、樹脂製のプレートに樹脂製の障害部材80が一体成形されて構成されている。また、この障害部材80および障害壁82は透明であり、可変表示の妨げとならないように構成されている。」

(カ)「【0067】図8,図9は、障害ユニット85が組付けられている可変表示装置4による可変表示動作の状態を説明するための画面図である。まず、図8の(a)に示すように、初めは可変表示装置4の表示状態が停止し、前回の停止図柄である1,2,3が表示された状態となっている。
【0068】この状態で、打玉の始動入賞に伴って(b)に示すように左,中,右の各図柄が一斉に可変開始される。次に(c)に示すように、まず左図柄が停止表示されて「3」が表示され、次に(d)に示すように、右図柄が停止表示されて「3」が表示される。この状態で中図柄に「3」が停止表示されれば、特定遊技状態(大当り)が発生する特定の表示態様となるのであり、この(d)の表示状態により、リーチ状態が成立したこととなる。
【0069】リーチ状態が成立すれば、(e)に示すように、中図柄表示領域に所定のキャラクタが登場して表示される。この中図柄表示領域は、前述したように、障害部材80が設けられていない表示専用領域5aであるために、図柄に比べて比較的微細な模様等からなるキャラクタが表示されたとしても、障害部材80が邪魔になってその微細な表示部分が見にくくなる不都合が防止できる。このキャラクタの登場により、遊技者にリーチが成立した旨を確実に認識させることができるとともに遊技者のリーチに対する期待感を効果的に盛り上げることができる。
【0070】次に、(f)に示すように、中図柄が再度可変表示され、(g)に示すように、一旦中図柄が停止表示される。その時点で中図柄として「4」が表示された場合に、(h)に示すように、キャラクタが左から右へ飛行する画像が表示される。
【0071】このキャラクタの飛行画像が表示されれば、図9(a)に示すように、中図柄がその縦軸を回転軸として回転する画像が表示される。この図柄回転表示は、回転しながら表示される図柄の種類が変化するものであり、たとえば(b)の時点では、中図柄として「2」が表示されながら回転する画像となっている。そして、この図柄回転表示が終了した段階で(c)に示すように中図柄として「3」が停止表示されれば、特定の表示態様としての「333」が表示され、以降特定遊技状態(大当り状態)が発生する。
【0072】また、障害部材80を、たとえば木や障害物などに見立てて、キャラクタを飛行表示あるいは移動表示させる際に、その木や障害物等を避けるように移動表示させてもよい。すなわち、障害部材80を可変表示装置4による表示の一部として有効利用するようにしてもよい。」

摘記した上記(ア)?(カ)の記載や図面等によれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「遊技領域3を設けた遊技盤と、
遊技領域3の中央には、前面側に透明な障害部材80が一体成形された樹脂プレートを備えた特別図柄を可変表示させることが可能な可変表示装置4と、
可変表示装置4を制御する表示制御基板と、
パチンコ玉を遊技領域3内に導く区画レール2と、
遊技領域3には、始動入賞信号が入力されてきたタイミングで大当たり判定用カウンタのカウンタ値を参照してそのカウンタ値が予め定められている当たり判定値であるか否かを判定し、当たり判定値である場合には大当たりを発生させることを事前決定し、可変表示装置4の表示結果が予め定められた特定の特別図柄の組合せとなった場合、可変入賞球装置12が第1の状態に制御され、開閉板22が傾動して打玉を入賞させることが可能となる可変入賞装置12および遊技領域3内には、可変表示領域に設けた障害釘等からなる障害部材80、風車19、通常の入賞口11,15が設けられ、
表示制御基板は、
リーチ状態が成立すれば中図柄表示領域に所定のキャラクタが登場して表示され、障害部材80を、障害物と見立てて、障害物を避けるように移動表示する画像が表示される遊技機。」

(2)引用発明と本願発明との対比
引用発明の「可変表示装置4」は本願発明の「表示手段」に相当し、以下同様に、
「表示制御基板」は「表示制御手段」に、
「パチンコ玉」は「遊技球」に、
「区画レール2」は「レール」に、
「始動入賞信号が入力されてきたタイミングで大当たり判定用カウンタのカウンタ値を参照してそのカウンタ値が予め定められている当たり判定値であるか否かを判定」は「当たりを生起させるか否かを決定する抽選」に、
「当たり判定値である場合には大当たりを発生させることを事前決定し、可変表示装置4の表示結果が予め定められた特定の特別図柄の組合せとなった場合」は「前記当たりを生起させることが決定され、前記当たりが生起された場合」に、
「開放」は「開閉板22が傾動」に、
「可変入賞装置12」は「入賞口」に、
「障害部材80」は「複数の釘」に、
「障害部材80、風車19、通常の入賞口11,15」は「盤面構造物」に、
「所定のキャラクタ」は「所定キャラクタ」に、
「画像が表示される」は「映像を演出表示する」に、
それぞれ相当する。

以上を総合すると、両者は、
「遊技盤と、
前記遊技盤の背面側に映像を表示させる表示手段と、
前記表示手段が表示する前記映像を制御する表示制御手段とを備え、
前記遊技盤は、当該遊技盤上に、
遊技球を前記遊技盤の正面側の遊技盤面に設けた遊技領域に案内するレールと、
前記遊技領域に設けられた、当たりを生起させるか否かを決定する抽選の結果、前記当たりを生起させることが決定され、前記当たりが生起された場合に開放される入賞口および複数の釘を含む盤面構造物を有し、
前記表示制御手段は、
前記表示手段により所定キャラクタを表示し、移動表示させて映像を演出表示することを特徴とする遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、遊技盤が光透過性を有しているのに対して、引用発明では、遊技領域3の中央に設けられた可変表示装置4の前面にだけ透明な樹脂プレートを備えている点。

<相違点2>
本願発明では、入賞口へ向けて所定間隔で配列されると共に、該配列において他の部分よりも間隔が大きく開いている部分を有する複数の釘を備えており、前記複数の釘の配列は、該配列上を転動する遊技球のうち、前記他の部分よりも間隔が大きく開いている部分から下方に落下した遊技球については、該他の部分よりも間隔が大きく開いている部分を越えた遊技球と比較して、前記入賞口に入賞する可能性が低くなるように構成されているのに対して、引用文献には、可変表示装置4の前面の障害部材80については記載されているものの、その他の釘については、図1での記載並びに段落0064及び図6の障害釘198との記載だけで、遊技盤面上の障害釘の配置について詳細な記載がない点。

<相違点3>
本願発明では、表示手段により所定キャラクタを複数の釘近傍に表示し、複数の釘の配列を階段ないし坂道に見立てて、その配列に沿って入賞口に向けて所定キャラクタを階段ないし坂道を下っているように移動させ、該所定キャラクタを複数の釘の配列における他の部分よりも間隔が大きく開いている部分から上下逆さまに表示し、下方に向かって落下するように移動表示させて入賞口に辿り着けない映像を演出表示しているのに対して、引用発明では、大当り状態が発生するかしないかに関わらず、リーチ状態が成立すれば中図柄表示領域に所定のキャラクタが登場して表示され、障害部材80を、障害物と見立てて、障害物を避けるように移動表示する画像が表示される点。

4.判断
<相違点1>について
遊技盤を光透過性のものとすることは、遊技機の分野において、例えば、実願平5-56685号(実開平7-24381号)のCD-ROM(特に、段落0008、段落0009)、特開平7-185074号公報(特に、段落0034)、原審の拒絶の理由(平成20年8月5日付)で引用文献1として引用された特開平10-137390号公報(特に、段落0025?段落0029)に記載されているように周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
そして、遊技機の分野において、遊技領域における表示領域を広くしたいという課題が、上記した各周知例にも記載されているとおり周知の課題であって、引用文献の段落0004にも記載されているように引用発明も当該課題を備えていることから、引用発明に上記周知技術1を採用して、可変表示装置4の前面にだけ透明な樹脂プレートを備えていることに代え、遊技盤を光透過性のものとして、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>について
入賞口へ向けて所定間隔で配列されると共に、該配列において他の部分よりも間隔が大きく開いている部分を有する複数の釘を備えることは、遊技機の分野において、例えば、特開平7-222849号公報(特に、図1)に記載されているように周知技術(以下「周知技術2」という。)であり、該配列の場合に、該配列上を転動する遊技球のうち、前記他の部分よりも間隔が大きく開いている部分から下方に落下した遊技球については、該他の部分よりも間隔が大きく開いている部分を越えた遊技球と比較して、前記入賞口に入賞する可能性が低いことは明らかである。
そして、引用発明においても、明記はされていないが複数の釘が配置されていることは明らかであるため、上記周知技術2を採用して、本願発明の相違点2に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

<相違点3>について
請求項1の「階段ないし坂道に見立てて」及び「階段ないし坂道を下っているように」で特定しようとする技術的事項は必ずしも明確ではないが、明細書の段落0017、段落0018を参照すると、キャラクタCを、斜めに配列された釘に沿って移動させることにより、階段ないし坂道を下っているように遊技者が見える、という程度の意味であり、見る側の主観に依存する特定事項であるが、キャラクタが斜めに配列された釘に沿って移動すると、遊技者には、そのように見えることがあるという程度の意味であるとして検討をする。
遊技機の分野において、抽選の結果、当たりを生起させないことが決定された場合、その予告映像を演出表示することは、例えば、特開平7-222849号公報(特に、段落0030、段落0044)、特開2000-296222号公報(特に、段落0013)、特開平9-155028号公報(特に、段落0023)に記載されているように周知技術(以下「周知技術3」という。)である。
そして、遊技機の演出の態様を具体的にどのような態様とするかは、当業者が演出効果等を勘案して適宜決定し得る事項に過ぎないことであり、演出として、所定の箇所から落下することで遊技者にとって望ましくない状態であることを表現することは、例えば、1985年に発売されたスーパーマリオブラザーズの演出にも見られるとおり、従来より広く知られた周知の表現であって、落下する際の表現としてキャラクタを上下逆さまに表示することは、例えば、特開2002-95829号公報(特に、段落0077?段落0080、図9)に記載されているように周知の表現である。
ここで、引用文献の段落0072には、遊技領域における障害部材80と関連して所定のキャラクタを移動表示することが記載されていることから、障害部材80と関連して何らかの演出をすることは当業者が容易に想起し得ることであり、引用発明において、上記周知技術3を採用して、抽選結果の予告映像を演出表示する際に、抽選の結果、当たりを生起させないことが決定された場合という遊技者にとって望ましくない状態が発生した時には、上記した落下の演出として、所定のキャラクタに、「<相違点2>について」で検討した複数の釘と関連する演出表示として、複数の釘を階段ないし坂道に見立てて、その配列に沿って入賞口に向けて所定キャラクタを階段ないし坂道を下っているように移動させ、所定キャラクタを複数の釘の配列における他の部分よりも間隔が大きく開いている部分から上下逆さまに表示し、下方に向かって移動表示させて入賞口に辿り着けない映像を演出表示することは、上述した各周知の表現の存在を勘案すれば格別の困難性はなく、本願発明の相違点3に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知技術1?3から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、審判請求人は平成22年11月5日付けの意見書において「特に、本発明では、当たり抽選に落選した場合の所定キャラクタの移動経路が、複数の釘の配列上を転動する遊技球のうち入賞口に入賞する可能性が低くなる遊技球の経路(流れ)と一致しているため、所定キャラクタが入賞口に辿り着かないこと、ひいては、当たり抽選に落選したことを遊技者に対して強く印象付けることが可能となります。」と主張しているものの、上述したとおり、演出として、所定の箇所から落下することで遊技者にとって望ましくない状態であることを表現することは、従来より広く知られたことであるため、キャラクタが落下することによって、当たり抽選に落選したことを遊技者に対して強く印象付けることが可能であり、「当たり抽選に落選した場合の所定キャラクタの移動経路」と「入賞口に入賞する可能性が低くなる遊技球の経路(流れ)」とが一致していることによる効果が格別なものとは認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-09 
結審通知日 2010-12-14 
審決日 2010-12-28 
出願番号 特願2002-223660(P2002-223660)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 剛史  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 澤田 真治
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 内藤 嘉昭  
代理人 森 哲也  
代理人 田中 秀▲てつ▼  

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