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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1231926
審判番号 不服2009-24799  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-15 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2008-286921「水耕栽培用培地及びそれを用いた屋上緑化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月20日出願公開、特開2010-110281〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年11月7日にされた出願であって、平成21年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月15日に審判請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成21年6月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項5に係る発明は次のとおりである。
「【請求項5】
植物を水耕栽培するための培地を備えた建物の屋上を緑化する屋上緑化装置であって、
前記培地には培養液タンクから培養液が供給されるとともに、当該培地において余剰となった培養液が前記培養液タンクに還流されており、
前記培地として、ゼオライトと軽石とを含むものを用いたことを特徴とする屋上緑化装置。」(以下、請求項5に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用刊行物記載の発明
刊行物1:特開平8-80130号公報(原査定の引用文献4)
刊行物2:実願平5-12905号(実開平6-70547号)のCD-ROM(原査定の引用文献1)

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物1には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 建物屋上や道路脇等の緑化を行なうにさいし,高さの低い側壁をもつ遮水槽を緑化を意図する面に施設し,この遮水槽内に多孔質培土を高々30cm若しくはそれ以下の厚みで敷き詰めると共にこの多孔質培土層内に給水パイプおよび排水パイプを施設することによって植栽ベットを構成し,通水性の底をもつ平板状のカゴ内に粒状多孔質資材を入れたうえこれに植物を植栽した植栽カゴカセットの必要数を前記の植栽ベットの上に載置し,前記の遮水槽の外に設置した貯水槽と前記の遮水槽とを通水配管して遮水槽内の水位レベルを所定の範囲に制御することを特徴とする屋上等の緑化法。」
(1b)「【0010】遮水槽の多孔質培土に植栽カゴカセットを載置すると,多孔質培土に保有されている養水分は毛細管現象によって植栽カゴカセットの通水底を通じてその上の粒状多孔質資材に吸い上げられる。また遮水槽の水位レベルの調節によって植栽カゴカセットに直接給水することもできる。このため,植栽カゴカセットが遮水槽に上置きされるだけで,植物に養水分がゆきわたる。」
(1c)「【0011】植栽ベットに装填する多孔質培土は,天然または人工の多孔質軽量資材例えばカヌマ土,細粒軽石,バーミキュライト,パーライト等を単独または複合して使用する。そのさい細粒の活性炭やゼオライトを混合することにより,水質の悪化を抑制することができる。・・・
【0012】植栽カゴカセットに装填する粒状多孔質資材,植栽ベットのものと同様に,天然または人工の多孔質細粒軽量資材例えばバーミキュライト,パーライト等の無機改良資材の造粒物,ピートモス等の有機改良資材を用いる。」
(1d)「【0022】図6は植栽ベット1の保水量の管理方法を説明するための略断面図であり,図7は同じく略平面図である。これらの図に示すように,植栽ベット1に近接して貯水槽15が設置され,この貯水槽15から植栽ベット1内に施設した給水パイプ7に制御弁16を介して水配管がなされている。また植栽ベット1内に施設した排水パイプ8がポンプ17を介して貯水槽15に接続されている。
【0023】貯水槽15には給水源18からポールタップ(図示しない)を介して適量の水が補給される。そして,制御弁16の開成により,貯水槽15内の水は多孔給水パイプ8から植栽ベット1内の多孔質培土6内に放出される。また,ポンプ17の駆動により,多孔質培土6内の水は多孔排水パイプ8を通じて貯水槽15に戻される。他方,降雨時のような系外の水が多量に植栽ベット1内に流入したときはポンプ19を稼動することにより過剰排水パイプ9を通じてベット1外に排出され,これは排水口20に放出される。なお,貯水槽15には養分タンク20から適宜養分が添加され,場合によっては肥料も添加される。」
(1e)「【0025】この制御は基本的にはタイマー駆動による間欠動作で行なう。すなわち,決められた制御動作時間帯において,下部水位センサー22が水面を検知すると制御弁16を開成して貯水槽18内の水を多孔質培土層内に流入させ,上部水位センサー21が水面を検知すると制御弁16を閉じ,ポンプ17を駆動して,多孔質培土層内の水を貯水槽18に戻す。これをタイマーにより所定の時間間隔で行なうことにより,多孔質培土層の全体が保水状態となる。そして,この保水状態にある多孔質培土6から植栽カゴカセット2内の粒状多孔質資材11に毛細管現象によって水分が適宜上昇する。」
これらの記載事項及び図面の記載によれば、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「植物を水耕栽培するための培地を備えた建物の屋上を緑化する屋上緑化装置であって、
前記培地には貯水槽15から培養液が供給されるとともに、当該培地において余剰となった培養液が前記貯水槽15に還流されており、
前記培地として、多孔質培土を用いた屋上緑化装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物2には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(2a)「【0014】
図1に示すように、本実施例の水耕栽培装置1は、ほぼ水平に延びる複数の長尺円筒状の栽培用ベッド9…を山形状に配して構成されている。・・・」
(2b)「【0016】
各栽培用ベッド9は、例えば塩化ビニール樹脂からなる円筒状のパイプにて形成されており、両端は、閉止蓋10・10によって密閉されている。なお、一方の閉止蓋10には、図示しない養液供給装置に接続される給液孔12…が設けられている。
【0017】
また、各栽培用ベッド9には、上部側に位置する面に、内部に貫通する円形の定植孔11…が長手方向に所定の間隔で複数設けられている。これら定植孔11…は、図2に示す円柱状の栽培床21を上方から挿入し得る大きさで形成されている。また、栽培用ベッド9は、栽培床21の長さよりもやや小さい径を有するパイプで形成され、これにより、挿入された栽培床21はその上端側が定植孔11の内周縁で支持され、ほぼ直立状態で保持されるようになっている。」
(2c)「【0018】
上記栽培床21は、例えば網目状のプラスチックや金網等から成る多孔性容器23内に、多孔性材料、例えば礫状の培地24を充填して構成されている。・・・培地24としては、径4mm以下の無機質の粒子であって、培養液22を毛管現象によって充分に吸い上げることができ、かつ、植物25の発根を妨げることがない微粒軽石、多孔性の火山岩の粉砕粒、ゼオライト、パーライト、木炭、コーラルサンド、ロックウール、海砂等が単独で、もしくは混合して用いられる。実験によれば、植物25を生育させる上で、微細な空孔を多数有する、径1?3mmの大きさの微粒軽石または多孔性の火山岩の粉砕粒が特に好ましい。微粒軽石としては、具体的には例えばパミスサンドがある。これら培地は毛管現象が大きく、養液が著しく上昇する。また、有機質の培地は養液に雑菌が発生して好ましくない。」

3 対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「貯水槽1」は、本願発明の「培養液タンク」に相当するから、両者は、
「植物を水耕栽培するための培地を備えた建物の屋上を緑化する屋上緑化装置であって、
前記培地には培養液タンクから培養液が供給されるとともに、当該培地において余剰となった培養液が前記培養液タンクに還流されている
屋上緑化装置。」
の点で一致し、下記の点で相違している。
〈相違点〉
培土が、本願発明では、「ゼオライトと軽石を含むもの」であるのに対し、刊行物1記載の発明では、「多孔質培土」であるが、このようなものに限定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
刊行物1には、多孔質培土の例として、「軽石」等の粒状多孔質資材に「ゼオライト」等の細粒を混合して使用することが記載されており(記載事項(1c)参照)、また刊行物2には、水耕栽培するための培地として、無機質の粒子である「軽石」や「ゼオライト」等を単独、または混合して使用することが記載されており(記載事項(2c)参照)、「軽石」や「ゼオライト」は、水耕栽培の培地として公知である。
さらに、「ゼオライト」が、肥料成分を吸着する作用を有し、周囲の肥料濃度が低下すると吸着した肥料成分を放出し肥料濃度を調整する作用を奏することは、原査定の拒絶理由で引用された特許第2773817号公報の他、特開平5-176642号公報の段落【0015】に記載されているように周知であり、また「軽石」は軽量であり、毛管現象が大きいことが知られている(記載事項(2c)参照)。
そうすると、刊行物1記載の発明において、培地として、肥料成分を吸着し、肥料濃度を調整する作用を奏する「ゼオライト」と、軽量で、毛管現象が大きい「軽石」を含むものを用いることは当業者が適宜になしうることであり、その効果も予測できることである。
したがって、本願発明は、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-02 
結審通知日 2010-12-07 
審決日 2010-12-20 
出願番号 特願2008-286921(P2008-286921)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 圭伸  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 草野 顕子
伊波 猛
発明の名称 水耕栽培用培地及びそれを用いた屋上緑化装置  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 一色国際特許業務法人  

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