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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60N
管理番号 1231938
審判番号 不服2010-12514  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-09 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2008- 60942号「車両用シート構造」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月 3日出願公開、特開2008-150044号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年7月31日に出願した特願平9-206831号の一部を平成19年8月6日に新たな特許出願とし、この新たな特許出願である特願2007-204264号の一部をさらに、平成20年3月11日に新たな特許出願としたものであって、平成22年3月4日付けで拒絶査定がされ(発送日:同年3月9日)、これに対し、同年6月9日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正(前置補正)がされたものである。

2.平成22年6月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年6月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
シートクッションとシートバックとからなるシートを、使用状態から、その後方の車体フロアに形成した収納凹部に移動させて収納可能とした車両用シート構造において、
上記シートは、車両前後方向に3列のシートを有するバン型若しくはワゴン型の車両における2列目シート後方の3列目のシートであり、
上記収納凹部は、シートクッション上にシートバックを折り畳んだ折り畳み状態のシートを、当該収納凹部の底面にシートクッションの底面が対面する収納状態で収納可能に形成され、
一端部が上記シートクッションの後側の部位に回転自在に連結される一方、他端部が上記収納凹部内の前端部にて車体側に回転自在に連結され、この車体側の連結位置の周りに回動されて上記折り畳み状態のシートを、後方に引くことで上下反転させることなく、上記収納状態に移動させるように、リンク部材が設けられており、
上記リンク部材は、上記シートの収納状態で当該リンク部材が収納凹部内に完全に収納される形状を有するとともに、該収納状態で該収納凹部内の前端部における当該リンク部材の他端部の連結位置に上記シートクッションの前端部が近接する長さに設定されていることを特徴とする車両用シート構造。」と補正された。

上記補正は、当該補正前の「上記使用状態からシートクッション上にシートバックを折り畳んだ折り畳み状態にして、上記収納凹部に収納可能なものであり」との記載と、「上記収納凹部の底面にシートクッションの底面が対面する収納状態」との記載とに基づいて、「収納凹部」について「上記収納凹部は、シートクッション上にシートバックを折り畳んだ折り畳み状態のシートを、当該収納凹部の底面にシートクッションの底面が対面する収納状態で収納可能に形成され」とし、
当該補正前の「上記収納状態では、上記リンク部材が収納凹部内に完全に収納されるとともに、該収納凹部内の前端部における当該リンク部材他端部の連結位置に上記シートクッションの前端部が近接するようにして、当該シートクッションが収納される」との記載に基づいて、「リンク部材」について「上記リンク部材は、上記シートの収納状態で当該リンク部材が収納凹部内に完全に収納される形状を有するとともに、該収納状態で該収納凹部内の前端部における当該リンク部材の他端部の連結位置に上記シートクッションの前端部が近接する長さに設定されている」としたものである。
これらは、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「収納凹部」及び「リンク部材」についてその構成を限定するものであって、この限定した事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されており、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例等及びその記載事項
原査定の平成21年9月3日付けの拒絶の理由に引用された実願平3-99102号(実開平5-40029号)のCD-ROM(以下「引用例1」という。)には、「シート収納構造」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(A)「図1はワゴン車の側面図を示し、このワゴン車はボンネット1内にエンジンEを収納し、フロア2下方に配置したドライブシャフト3を介してエンジンEの動力を後輪4側に伝達するように構成してある。
フロア2上には1列目のシート(フロントシート)6、2列目のシート(リヤシート)7、3列目のシート8を設け、フロア2のシート8の後方には凹部9を形成する。」(第5頁第3?8行)

(B)「図3は3列目のシート8の側面図を示し、この図に示すようにシート8は、シートクッション10とシートバック11とから成る。シートクッション10後部とシートバック11下部には夫々ブラケット13,14を固設してこれらのブラケット13,14を枢軸15を介して枢着し、シートバック11をシートクッション10に対して前方、即ち図2のA方向へ可倒に構成する。」(第5頁第12?16行)

(C)「又、シートクッション10の下面10aの前部には支持部18を揺動自在に設ける。」(第5頁第21?22行)

(D)「図3の実線はシート8の使用位置の状態を示し、この状態からシート8を凹部9に収納するには、まずシートバック11をA方向に揺動させシートクッション10に当接するまで倒す。続いてシートバック11をシートクッション10に当接させたままシートクッション10をB方向に揺動させ、シートバック11、及びシートクッション10を想像線で示すように凹部9内に収納し、最後に支持部18を折り畳む。」(第5頁第24?29行)

図面と共に、上記摘記事項(A)?(D)を総合すると、引用例1には、
「シートクッション10とシートバック11とから成るシート8を、使用位置の状態から、その後方のフロア2に形成した凹部9に揺動させて収納可能としたシート収納構造において、上記シート8は、1列目のシート6、2列目のシート7、3列目のシート8を有するワゴン車における2列目シート7後方の3列目のシートであり、
上記凹部9は、シートバック11をシートクッション10に当接させたままシートクッション10を揺動させて収納するようにされていることを特徴とするシート収納構造」に関する発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

また、同じく拒絶の理由に引用された特開平5-208633号公報(以下「引用例2」という。)には、「格納式リアシート」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(E)「【従来の技術】出願人は先に格納操作が容易なリアシートを提案した(実願平2-120970号参照)。このリアシートは、図5に示すように両端をそれぞれフロアパネル1とシートクッション2に枢支結合したレッグ3を備えている。・・・(中略)・・・レッグ3を前方へ倒すと、リアシートが二点鎖線で示すようにフロアパネル1の凹部7に格納されるようになっている。」(第2頁第1欄第18?27行)

(F)「【実施例】図1に本発明の格納式リアシートを示す。このリアシートでは、レッグ3の一端は第1のピン10によってシートクッション2のフレーム2aに枢支結合してある。」(第2頁第2欄第1?4行)

(G)「その他の部材は図6の従来例と同様に構成してあるので、同一符号を付し説明を省略する。」(第2頁第2欄第29?30行)

(H)「【0008】このリアシートはこのように構成してあるので、格納は次のようにして行えばよい。まず、シートバック8を前方へ倒してシートクッション2に折り重ね、操作レバー6によってラッチ機構5のストライカ4に対する係合を解除する。次いで、レッグ3を前方へ倒し、シートクッション2を図1の二点鎖線で示すような前傾姿勢で凹部7に入れてから、スプリング13の付勢力が反転する位置までシートクッション2の後部を押し下げればよい。」(第2頁第2欄第31?39行)

(3)対比
(3-1)本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明でいう「シートクッション10」は、本願補正発明でいう「シートクッション」に相当し、以下同様に、「シートバック11」は「シートバック」に、「シート8」は「シート」に、「使用位置の状態」は「使用状態」に、「フロア2」は「車体フロア」に、「凹部9」は「収納凹部」に、「シート収納構造」は「車両用シート構造」に、「2列目シート7」は「2列目シート」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明におけるシートバック11及びシートクッション10の「揺動」はそれらの「移動」という概念に含まれること、同じく引用発明における「1列目のシート6、2列目のシート7、3列目のシート8」は摘記事項(A)の記載及び図1からみて、車両前後方向に並んだ3列のシートであること、同じく引用発明における「ワゴン車」は「バン型若しくはワゴン型の車両」に含まれることは、それぞれ明らかである。
また、引用発明において「シートバック11をシートクッション10に当接させた」状態は、本願補正発明において「シートクッション上にシートバックを折り畳んだ」状態であることは明らかであるから、引用発明において「凹部9は、シートバック11をシートクッション10に当接させたままシートクッション10を揺動させて収納するようにされている」ことは、本願補正発明でいう「収納凹部は、シートクッション上にシートバックを折り畳んだ折り畳み状態のシート」を「収納可能に形成され」ている点で共通する。

(3-2)上記の対比関係からみて、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「シートクッションとシートバックとから成るシートを、使用状態から、その後方の車体フロアに形成した収納凹部に移動させて収納可能とした車両用シート構造において、上記シートは、車両前後方向に3列のシートを有するバン型若しくはワゴン型の車両における2列目シート後方の3列目のシートであり、
上記収納凹部は、シートクッション上にシートバックを折り畳んだ折り畳み状態のシートを収納可能に形成されていることを特徴とする車両用シート構造」

[相違点1]
本願補正発明では、「上記収納凹部は、シートクッション上にシートバックを折り畳んだ折り畳み状態のシートを、当該収納凹部の底面にシートクッションの底面が対面する収納状態で収納可能に形成され、
一端部が上記シートクッションの後側の部位に回転自在に連結される一方、他端部が上記収納凹部内の前端部にて車体側に回転自在に連結され、この車体側の連結位置の周りに回動されて上記折り畳み状態のシートを、後方に引くことで上下反転させることなく、上記収納状態に移動させるように、リンク部材が設けられており、」とされているのに対して、引用発明では、シートバック11及びシートクッション10を揺動させることにより凹部9に収納しており、リンク部材が設けられていない点。

[相違点2]
本願補正発明では、「上記リンク部材は、上記シートの収納状態で当該リンク部材が収納凹部内に完全に収納される形状を有するとともに、該収納状態で該収納凹部内の前端部における当該リンク部材の他端部の連結位置に上記シートクッションの前端部が近接する長さに設定されている」のに対して、引用発明では、リンク部材が設けられていない点。

(4)当審の判断
上記各相違点について検討する。

[相違点1]について
引用例2には、図面と共に摘記事項(E)?(H)を総合すると、一端部がシートクッション2の前側の部位に回転自在に連結される一方、他端部が収納凹部(凹部7)内の後側にて車体側に回転自在に連結され、この車体側の連結位置の周りに回動されて折り畳み状態のシート(リアシート)を、前方に引くことで上下反転させることなく、上記収納(格納)状態に移動させるようにしたリンク部材(レッグ3)と、当該リンク部材(レッグ3)を利用したシート(リアシート)の収納(格納)方法が記載され、さらに、折り畳み状態のシート(リアシート)を、上下反転させることなく、収納凹部(凹部7)の底面にシートクッション2の底面が対面する収納(格納)状態で収納(格納)することも記載されているものと認められる。
そして、引用発明と引用例2とはシートを収納凹部に収納するという機能において共通するものであるから、引用発明における揺動によるシートの収納方法に代えて引用例2のリンク部材を利用したシートの収納方法を採用することに、格別の技術的困難性は認められない。
また、引用例2におけるシートの収納方法は、折り畳み状態のシート(リアシート)を前方に引くことで収納(格納)するものであるが、引用発明はシートの後方に収納するものであるから、引用発明への適用にあたり収納方向を入れ替えることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。さらに、この収納方法の作用・効果を損なわない範囲でリンク部材の連結位置を変更することも当業者が適宜なし得る設計変更であるから、収納凹部(凹部7)内の端部にリンク部材(レッグ3)の他端部を連結することも当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。したがって、リンク部材の一端部をシートクッションの後側の部位に連結し、他端部を収納凹部内の前端部にて連結し、後方に引くようにしてシートの後方に収納するようにして、上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(なお、下線部は当審において加入した。)

[相違点2]について
上記相違点1についての検討において示したように、引用例2には、リンク部材(レッグ3)を利用したシート(リアシート)の収納(格納)方法が記載されている。また、引用例2の図1を特に参照すると、リンク部材(レッグ3)は収納凹部(凹部7)内に完全に収納(格納)されるものと認められ、また、収納(格納)状態においてリンク部材(レッグ3)の他端部の連結位置にシートクッション(シートクッション2)の後端部が近接しているものと認められる。したがって、引用例2におけるシートの収納方法を引用発明に適用して収納方向を入れ替えるにあたり、リンク部材の形状及び長さを適宜設定し、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、上記相違点1及び2を併せ備える本願補正発明の作用・効果について検討しても、引用発明及び引用例2に記載の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は審判請求書において、引用例2においては、リンク部材の一端部とシートクッションとの連結位置が、シートクッションの前端部に対してフレーム部材の長さ分だけ車両後側にオフセットされている旨の主張をしているが、本願補正発明においてはリンク部材の「一端部が上記シートクッションの後側の部位に」連結されることとなっており、シートクッションの端部に連結されるとまでは限定されていないから、上記主張は本願補正発明の記載に基づかない主張である。また、リンク部材の連結態様については、周知例(例えば、実願昭54-102349号(実開昭56-21238号)のマイクロフィルム、実願昭55-26317号(実開昭56-127144号)のマイクロフィルム等)も参照されたい。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

3.本願発明について
平成22年6月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成21年11月9日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定されるものと認められるが、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
シートクッションとシートバックとからなるシートを、使用状態から、その後方の車体フロアに形成した収納凹部に移動させて収納可能とした車両用シート構造において、
上記シートは、車両前後方向に3列のシートを有するバン型若しくはワゴン型の車両における2列目シート後方の3列目のシートであって、上記使用状態からシートクッション上にシートバックを折り畳んだ折り畳み状態にして、上記収納凹部に収納可能なものであり、
一端部が上記シートクッションの後側の部位に回転自在に連結される一方、他端部が上記収納凹部内の前端部にて車体側に回転自在に連結され、この車体側の連結位置の周りに回動されて上記折り畳み状態のシートを、後方に引くことで上下に反転させることなく、上記収納凹部の底面にシートクッションの底面が対面する収納状態に移動させるように、リンク部材が設けられており、
上記収納状態では、上記リンク部材が収納凹部内に完全に収納されるとともに、該収納凹部内の前端部における当該リンク部材他端部の連結位置に上記シートクッションの前端部が近接するようにして、当該シートクッションが収納される
ことを特徴とする車両用シート構造」

(1)引用例等及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記2.(2)において記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、上記2.で検討した如く、引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-01 
結審通知日 2010-12-07 
審決日 2010-12-21 
出願番号 特願2008-60942(P2008-60942)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60N)
P 1 8・ 575- Z (B60N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大谷 光司  
特許庁審判長 林 浩
特許庁審判官 小関 峰夫
田口 傑
発明の名称 車両用シート構造  
代理人 二宮 克也  
代理人 福本 康二  
代理人 原田 智雄  
代理人 関 啓  
代理人 間脇 八蔵  
代理人 嶋田 高久  
代理人 川北 憲司  
代理人 井関 勝守  
代理人 岡澤 祥平  
代理人 竹内 祐二  
代理人 松永 裕吉  
代理人 杉浦 靖也  
代理人 長谷川 雅典  
代理人 岩下 嗣也  
代理人 前田 亮  
代理人 前田 弘  
代理人 今江 克実  
代理人 竹内 宏  
代理人 河部 大輔  

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