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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1231970
審判番号 不服2007-30937  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2004- 68437「低級炭化水素の芳香族化触媒」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月22日出願公開、特開2005-254121〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,平成16年3月11日に出願した特許出願であって,平成19年4月6日付けで拒絶理由が通知され,同年6月11日に意見書及び手続補正書が提出され,同年7月11日付けで再度拒絶理由が通知され,同年9月18日に意見書及び手続補正書が提出され,同年10月10日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年12月17日付で手続補正書が提出されたものである。その後,平成22年4月5日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が通知されたが,請求人から何ら応答がなかった。

2.平成19年12月17日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年12月17日付付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正により,補正後の特許請求の範囲の請求項1は,平成19年9月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の
「【請求項1】
メタロシリケートにモリブデンとモリブデン以外の金属成分とを担持した後に,これを炭化処理する際に還元性ガスを混合して処理する低級炭化水素の芳香族化触媒の製造方法であって,
前記メタロシリケートにモリブデン成分と前記金属成分とを個別の担持工程で担持し,
この担持工程に供される前記金属成分の溶液は金属塩濃度として0.01?0.2mol/lに調製されること
を特徴とする低級炭化水素の芳香族化触媒の製造方法。」が
「【請求項1】
メタロシリケートにモリブデンとモリブデン以外の金属成分とを担持した後に,これを炭化処理する際に還元性ガスを混合して処理して得た低級炭化水素の芳香族化触媒あって,
前記メタロシリケートにモリブデン成分と前記金属成分とを個別の担持工程で担持し,
この担持工程に供される前記金属成分の溶液は金属塩濃度として0.01?0.2mol/lに調製されること
を特徴とする低級炭化水素の芳香族化触媒。」に補正された。

(2)上記補正は,補正前請求項1の「芳香族化触媒の製造方法」を「芳香族化触媒」にしようとするものであるが,かかる補正は,発明のカテゴリーを変更するものであり,補正前のいずれの請求項も「芳香族化触媒の製造方法」の発明であることから,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正並びに明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。
なお,請求人は,かかる点が指摘されている,特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋に対して何ら回答がなかったことは前述したとおりである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成19年12月17日付で提出された手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,平成19年9月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。

【請求項1】 メタロシリケートにモリブデンとモリブデン以外の金属成分とを担持した後に,これを炭化処理する際に還元性ガスを混合して処理する低級炭化水素の芳香族化触媒の製造方法であって,
前記メタロシリケートにモリブデン成分と前記金属成分とを個別の担持工程で担持し, この担持工程に供される前記金属成分の溶液は金属塩濃度として0.01?0.2mol/lに調製されること
を特徴とする低級炭化水素の芳香族化触媒の製造方法。

4.引用刊行物
(1)本願の出願日前に頒布された「特開平10-272366号公報 」(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1,以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項2】 モリブデン及びその化合物から選ばれた少なくとも一種と,亜鉛,ガリウム,コバルト,クロム,ランタン,ネオジム,サマリウム及びイットリウムからなる金属並びにそれらの金属の化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種と,メタロシリケートとからなる低級炭化水素の芳香族化触媒。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「【発明の属する技術分野】本発明は,天然ガス等の低級炭化水素含有ガスから化学工業,薬品類,プラスチック類などの化学製品の原料として有用であるベンゼン類及びナフタレン類を主成分とする芳香族炭化水素と高純度の水素ガスとを同時に効率的に製造することができる触媒と,該触媒の存在下に,低級炭化水素を高温接触反応に付して芳香族炭化水素を主成分とする芳香族化合物及び水素を製造する方法に関する。」(段落【0001】)
(ウ)「本発明の触媒である・・・低級炭化水素の芳香族化触媒は,以下の各方法で製造することができる。即ち,(1)メタロシリケートにまずモリブデンを担持させた後,第二成分を担持させる。(2)メタロシリケートにまず第二成分を担持させた後,モリブデンを担持させる。(3)メタロシリケートにモリブデンと第二成分を同時に担持させる。これらの方法の中では,(1)の方法が好ましい。」(段落【0019】)
(エ)「実施例3
HZSM-5にモリブデンを担持した触媒の調製方法:0.66gパラモリブデン酸アンモニウム塩を10mlの蒸留水に溶解し,HZSM-5(シリカ/アルミナ比=12)(表面積800m^(2)/g,細孔径=7Å)の粉末12gを加え,充分に攪拌しながら回転式減圧エバポレーターを用いて蒸発乾固して,パラモリブデン酸アンモニウムのHZSM-5担持体を得た。これを石英製反応管(1.2φ長さ30cmV字タイプ)に充填後,純酸素ガス流(40ml/分,1気圧)下,400℃で4時間焼成して薄草色粉末としてMo(3%)/HZSM-5を得た。
Mo(3%)/HZSM-5触媒に更にコバルト,ガリウム,亜鉛,クロムを担持した触媒の調製方法:硝酸コバルト0.072gを3mlの蒸留水に溶解し,さらに上記で調製したMo(3%)/HZSM-5触媒1.5gを加えた後,同様に蒸発乾固,焼成する事により,Mo(3%)/Co(1%)/HZSM-5触媒を調製した。同様にして,Mo(3%)/Ga(1.5%)/HZSM-5触媒,Mo(3%)/Zn(1%)/HZSM-5触媒及びMo(3%)/Cr(3%)/HZSM-5触媒を調製した。」(段落【0032】?【0033】)
(オ)「実施例4
実施例3で調製しMo(3%)/HZSM-5触媒に更にコバルト,ガリウム,亜鉛,クロムを担持した触媒を用いて実施例2と同様の方法でメタンの芳香族化反応を行った。反応開始後,200分経過後の結果を表2に示す。
比較例2
実施例4の比較例として6%のMoを担持したMo/HZSM-5触媒を用いて実施例2と同様の方法でメタンの芳香族化反応を行った。反応開始後,200分経過後の結果を表2に示す。」(段落【0034】)
(カ)【表2】(段落【0035】)には,「Mo(3%)/HZSM-5触媒に更にCo,Ga,Zn,Crを担持した触媒の反応成績」として,
「触媒担持 転化率 HC選択率 ・・・ 水素生成速度
(%) (%) (%) (nmol/g/sec)
Co(1%) 8.8 66 ・・・ 1860
Ga(1.5%) 4.3 93 ・・・ 1340
Zn(1%) 8.1 56 ・・・ 1690
Cr(3%) 8.5 57 ・・・ 1700
Mo(6%) 6.4 58 ・・・ 1480 」が記載されている。
(キ)「【発明の効果】本発明の触媒は,芳香族化反応の触媒としてきわめて優れた転化率,選択率を示す。また,本発明の触媒を使用した芳香族化方法により,メタン等の低級炭化水素から高付加価値のベンゼン,トルエン,キシレン及びナフタレン等の芳香族炭化水素及び水素を高活性,高収率で製造することが可能である。」(段落【0041】)

(2)本願の出願日前に頒布された「小島 綾一 外4名,メタンの脱水素芳香族化反応における水素添加効果とモリブデンカーバイド種触媒特性の研究,触媒,2004年3月10日,vol.46 No.2,第130-132頁」(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4,以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
(ア)「メタンの脱水素芳香族化反応による水素およびベンゼンの合成は,天然ガスの有効利用という観点から工業的に重要な反応である.当研究室ではこれまでに,この反応に対し高活性なMo/ZSM-5系触媒[1]・・・の開発に取り組んできた.Mo/ZSM-5系触媒では,Mo炭化物が活性種であり,活性化されたメタンがHZSM-5細孔内でベンゼンやナフタレンに選択的に転化することを報告した.・・・本発表討論では新たな方法として,反応ガス中に水素を微量添加すると反応中に析出した炭素を再活性化させて触媒を安定化させること[4,5],活性点となるMo炭化物について2種類(β-Mo_(2)C,α-MoC_(1-x))調製し活性種の構造と反応性の検討を行ったこと[6],さらに水素を添加した反応条件にて鉄族元素,白金族元素などの第二金属成分添加効果[7,8]を検討しさらなる触媒能の向上を行ったことを報告する.」(第130頁左欄「1.緒言」の項)
(イ)「Mo/ZSM-5系触媒の調製は以下の手順で行なった.アンモニウム型ZSM-5を,Moの担持量が6wt%となる量のモリブデン酸アンモニウム水溶液に含浸し,ロータリーエヴァポレーターで水を取り除き,120℃で一晩乾燥した.その後空気中550℃で8時間焼成し,熱分解によりMo酸化物を担持させた.また第二成分金属を添加する場合は,アンモニウム型ZSM-5を,モリブデン酸アンモニウム水溶液に含浸する際に同時に添加した.鉄族元素(Fe,Co,Ni)の場合は硝酸塩を使用し,・・・第二金属成分とMoのモル比は0.2:1とした.その後の乾燥,焼成条件はMo単独の場合と同様にした.」(第130頁左欄「2.1.触媒調製」の項)
(ウ)「このように調製した資料を石英製の反応管に充填し,前処理を施した.従来の方法では,空気中で550℃まで昇温,1時間維持したのち,9CH_(4)+Ar混合ガスに切り替え,圧力を0.3MPa,温度を650℃にして1時間維持することにより炭化処理を施した.このときMo酸化物から直接炭化することにより,HCP構造を持つβ-Mo_(2)Cが形成される.ここでは新しい処理方法として,CH_(4)+4H_(2)混合ガス流通下,常圧で700℃まで5℃/minで昇温,2時間維持してβ-Mo_(2)Cを合成する方法も用いた.また,Mo炭化物にはFCC構造を持つα-MoC_(1-x)も知られている.この場合,試料をC_(4)H_(10)+11H_(2)混合ガス流通下,常圧で350℃まで昇温,24時間維持することによりFCC構造を持つMoO_(X)H_(Y)C_(Z)に還元して[9],その後550℃まで再び5℃/minで昇温した段階で9CH_(4)+Ar混合ガスに切り替え,750℃まで昇温,10分間維持してα-MoC_(1-x)を合成した.炭化処理後の試料のXRDパターンをFigure1に示す.」(第130頁右欄「2.2.炭化処理」の項)
(エ)「さらに第二成分添加を検討するに当たり,まずここでは鉄族元素添加の代表としてCo添加の場合を検討した.結果をFigure6に示す.CH_(4)+4H_(2)ガスで前処理を施す(β-Mo_(2)Cの形成)と,ベンゼンの生成速度が増加したが,安定性は向上せず,24時間後にはCo無添加の触媒より低い活性を示した.これに対しC_(4)H_(10)+11H_(2)混合ガスで還元したのち炭化処理を施した場合(α-MoC_(1-x)の形成),活性の増加はβ-Mo_(2)Cの場合に比べ小さいが,24時間以内での失活が観察されず,触媒の安定性が大幅に向上した.前処理を変えることにより炭化物の相,Coとの混ざり方が変化し,触媒活性挙動に影響を与えると考察した.・・・」(第132頁左欄「3.3.触媒への第二金属成分添加効果」の項)

5.対比・判断
引用例1には,記載事項(ア)に「モリブデン及びその化合物から選ばれた少なくとも一種と,亜鉛,ガリウム,コバルト,クロム,ランタン,ネオジム,サマリウム及びイットリウムからなる金属並びにそれらの金属の化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種と,メタロシリケートとからなる低級炭化水素の芳香族化触媒。」が記載され,記載事項(ウ)に「本発明の触媒である・・・低級炭化水素の芳香族化触媒は,以下の各方法で製造することができる。即ち,(1)メタロシリケートにまずモリブデンを担持させた後,第二成分を担持させる。(2)メタロシリケートにまず第二成分を担持させた後,モリブデンを担持させる。(3)メタロシリケートにモリブデンと第二成分を同時に担持させる。これらの方法の中では,(1)の方法が好ましい。」と記載され,実施例として,記載事項(エ)に「HZSM-5にモリブデンを担持した触媒の調製方法・・・Mo(3%)/HZSM-5を得た。Mo(3%)/HZSM-5触媒に更にコバルト・・・を担持した触媒の調製方法:硝酸コバルト0.072gを3mlの蒸留水に溶解し,さらに上記で調製したMo(3%)/HZSM-5触媒1.5gを加えた後,同様に蒸発乾固,焼成する事により,Mo(3%)/Co(1%)/HZSM-5触媒を調製した。」ことが記載され,記載事項(カ)によれば,Mo(3%)/HZSM-5触媒に更にCoを担持した触媒が特に水素生成速度に優れていることが記載されている。
これらの記載事項を本願発明に則して整理すると,引用例1には「メタロシリケートであるHZSM-5に,まずモリブデンを担持させてMo(3%)/HZSM-5触媒を得た後,第二成分としてコバルトを担持させる低級炭化水素の芳香族化触媒の製造方法であって,第二成分の担持が硝酸コバルト0.072gを3mlの蒸留水に溶解し,Mo(3%)/HZSM-5触媒1.5gを加えて後,同様に蒸発乾固,焼成することにより行われる低級炭化水素の芳香族化触媒の製造方法」の発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

本願発明と引用例1発明を対比すると,
引用例1発明の「第二の成分のコバルト」は本願発明の「金属成分」であって,「モリブデン以外の金属成分」に相当し,引用例1発明の「メタロシリケートであるHZSM-5に,まずモリブデンを担持させてMo(3%)/HZSM-5触媒を得た後,第二成分としてコバルトを担持させる」ことは,メタロシリケートにモリブデン成分と前記金属成分とを個別の担持工程で担持させることに他ならない。
また,引用例1発明の「第二成分の担持」における「硝酸コバルト0.072gを3mlの蒸留水に溶解」は,硝酸コバルトの分子量が182.96(「化学大事典」共立出版株式会社「しょうさんコバルト」の項)であることにより「0.072g/3ml」をモル換算すると「0.13mol/l」であることから,「コバルト溶液の金属塩濃度は0.072g/3mlに調整」されているものといえることから,本願発明の「この担持工程に供される前記金属成分の溶液は金属塩濃度として0.01?0.2mol/lに調製されることと「0.13mol/lに調整」で一致している。
以上のことから,両者は,「メタロシリケートにモリブデンとモリブデン以外のコバルトとを担持した低級炭化水素の芳香族化触媒の製造方法であって,前記メタロシリケートにモリブデン成分と前記コバルトとを個別の担持工程で担持し,この担持工程に供される前記金属成分の溶液はコバルト塩濃度として0.13mol/lに調製される低級炭化水素の芳香族化触媒の製造方法。」で一致し,次の点で相違している。
相違点a:本願発明は,メタロシリケートにモリブデンとモリブデン以外の金属成分とを担持した「後に,これを炭化処理する際に還元性ガスを混合して処理する」のに対し,引用例1発明は,かかる処理は特定されていない点

そこで,この相違点aについて検討すると,
引用例2には,記載事項(ア)によれば「メタンの脱水素芳香族化反応による水素およびベンゼンの合成反応に対し高活性なMo/ZSM-5系触媒では,Mo炭化物が活性種であり,活性化されたメタンがHZSM-5細孔内でベンゼンやナフタレンに選択的に転化する」ことが記載されているといえ,また,記載事項(ウ)に「・・・従来の方法では,空気中で550℃まで昇温,1時間維持したのち,9CH_(4)+Ar混合ガスに切り替え,圧力を0.3MPa,温度を650℃にして1時間維持することにより炭化処理を施した.このときMo酸化物から直接炭化することにより,HCP構造を持つβ-Mo_(2)Cが形成される・・・,CH_(4)+4H_(2)混合ガス流通下,常圧で700℃まで5℃/minで昇温,2時間維持してβ-Mo_(2)Cを合成する方法を用いた.また,Mo炭化物にはFCC構造を持つα-MoC_(1-x)も知られている.」,(エ)に「第二成分の鉄族元素添加の代表としてCo添加の場合・・・,CH_(4)+4H_(2)ガスで前処理を施す(β-Mo_(2)Cの形成)と,ベンゼンの生成速度が増加したが,安定性は向上せず,24時間後にはCo無添加の触媒より低い活性を示した.これに対しC_(4)H_(10)+11H_(2)混合ガスで還元したのち炭化処理を施した場合(α-MoC_(1-x)の形成),活性の増加はβ-Mo_(2)Cの場合に比べ小さいが,24時間以内での失活が観察されず,触媒の安定性が大幅に向上した」ことが記載されている。
これらの記載によれば,メタンの脱水素芳香族化反応による水素およびベンゼンの合成反応に対し高活性なMo/ZSM-5系触媒では,Mo炭化物が活性種であって,メタンを活性化することや,かかるMo炭化物は,空気中で550℃まで昇温,1時間維持したのち,9CH_(4)+Ar混合ガスに切り替え,圧力を0.3MPa,温度を650℃にして1時間維持することにより炭化処理を施したり,CH_(4)+4H_(2)混合ガス流通下,常圧で700℃まで5℃/minで昇温,2時間維持してβ-Mo_(2)Cを合成したりして得られること,さらに第二成分のCo添加の場合にCH_(4)+4H_(2)ガスで前処理を施す(β-Mo_(2)Cの形成)と,生成速度が増加したり,C_(4)H_(10)+11H_(2)混合ガスで還元したのち炭化処理を施した場合(α-MoC_(1-x)の形成)触媒の安定性が大幅に向上することが知られているといえる。
付言すれば,従来のMo/ZSM-5系触媒の炭化処理として「Journal of Catalysis,181,P.175-188(1999)」の第175頁左欄11?16行,第187頁右欄20?30行に,Mo/HZSM-5を炭化処理したMo_(2)Cが著しくメタンの脱水素芳香族化の活性を高めることが開示されている。

してみると,上記引用例2の技術的事項に照らせば,Mo及びCo担持触媒に炭化処理をすることに格別阻害要因も見当たらないことを勘案して,引用例1発明の「低級炭化水素の芳香族化触媒」を更に炭化処理してMoカーバイドを形成してメタンの芳香族化活性を高めようとすることは,当業者が容易に想起することであり,相違点aに係る本願発明の構成を導出することは当業者であれば格別困難なく為し得ることといえる。
そして,本願発明の特定事項を採ることによって奏する本願明細書記載の効果も引用例1,2の記載事項や従来技術に加え,順次触媒材料を担持させることで触媒の耐久性が向上することも普通に知られている(特開昭2001-334152の段落【0020】参照)ことから当業者が予測し得ることといえる。

6.むすび
したがって,本願発明は,引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-08 
結審通知日 2010-12-14 
審決日 2010-12-24 
出願番号 特願2004-68437(P2004-68437)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
P 1 8・ 56- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牟田 博一  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 小川 慶子
豊永 茂弘
発明の名称 低級炭化水素の芳香族化触媒  
代理人 鵜澤 英久  
代理人 橋本 剛  
代理人 橋本 剛  
代理人 鵜澤 英久  

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