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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1232018
審判番号 不服2008-26453  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-15 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2008- 16685「無線通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月22日出願公開、特開2008-118721〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年4月28日に出願した特願2003-123581号の一部を平成20年1月28日に新たな特許出願とした特願2008-16685号であって、平成20年9月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し平成20年10月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年11月14日付けで手続補正がされたものである。


第2.平成20年11月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年11月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
平成20年11月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成20年8月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
「 【請求項1】
狭域無線通信と広域無線通信の無線通信手段を有する無線通信端末において、
狭域無線通信と広域無線通信との接続切換を行なう切換手段と、
狭域無線通信を使用している場合、前記狭域無線通信が通信不能になる前に、広域無線通信への接続処理を開始する接続手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信端末。」を、

「 【請求項1】
狭域無線通信と広域無線通信の無線通信手段を有する無線通信端末において、
狭域無線通信と広域無線通信との接続切換を行なう切換手段と、
狭域無線通信を使用している場合、前記狭域無線通信が通信不能になる前に、広域無線通信への接続処理を当該端末から開始する接続手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信端末。」に補正するものである。

2.補正の目的
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「狭域無線通信を使用している場合、前記狭域無線通信が通信不能になる前に、広域無線通信への接続処理を開始する接続手段」について、接続処理を「当該端末から」開始するとの限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

3.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-199426号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(a)
「【0004】ところで、現在のディジタルセルラーシステムでは、音声通話だけではなく、データ通信のニーズも多い。こうしたデータ通信のニーズに対し、伝送レートの高速化が検討されている。
【0005】このような高速データ通信のトレンドに従い、データレートが高くなればなるほど、1つあたりの通信セルで処理すべき負荷も高くなり、かつ伝送のための周波数帯域を多く消費するため、必然的に使用周波数も高くせざるを得ず、電波の届く距離も短くなる。従って、セルのサイズが小さくなる。このような高速データ通信システムにおいては、既存の通信システムとの併用が考えられる。具体的には、後述する実施形態で詳述するように、高速ではあるがサービスエリアが狭くスポット的に配置された通信システム1と、低速では有るがサービスエリアが広く網羅的に配置された通信システム2とが並存することが考えられる。
【0006】そこで、本発明は、複数の通信システムを用い、通信システムを切り替えながら通信を行えるようにする無線通信システム、ネットワークおよび無線通信システムに用いられる移動端末を提供することを目的とする。」(第3頁右欄)

(b)
「【0022】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1に、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す。この無線通信システムは、通信システム1、2で構成されている。通信システム1は、例えばDSRC(Dedicated Short-Range Communication)や無線LANのように、高速で通信を行うことができるがサービスエリアが狭く離散的(スポット的)に通信を行うシステムであり、通信システム2は、携帯電話やPHSのように、比較的低速で通信を行うがサービスエリアが広く網羅的に通信を行う行うことができるシステムである。例えば、図2に示すように、通信システム1では、離散的に配置された狭域セル1-1、1-2、1-3、1-4、…において高速で通信が行われ、通信システム2では、網羅的に配置された広域セル2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、…において比較的低速で通信が行われる。
【0023】通信システム1における基地局BS1-1、BS1-2、BS1-3、…は、同一のサブネットワーク(サブネット1)に属し、サブネット1は、ゲートウェイGW1を介して、インターネットに接続されている。また、通信システム2における基地局BS2-1、BS2-2、BS2-3、…は、同一のサブネットワーク(サブネット2)に属し、サブネット2は、ゲートウェイGW2を介して、インターネットに接続されている。そして、移動端末20は、通信システム1、2のいずれかを用いて、インターネットを介しサーバにアクセスする。
【0024】また、移動端末20は、通信システム1にアクセス可能な移動局ネットワークインターフェースMS1と、通信システム2にアクセス可能な移動局ネットワークインターフェースMS2とを備え、通信システム1、2のうちのいずれか一方で通信を行うように構成されている。この場合、移動局ネットワークインターフェースMS1は、サブネット1のIP(インターネット)アドレスを用いてアクセスを行い、移動局ネットワークインターフェースMS2は、サブネット2のIPアドレスを用いてアクセスを行う。」(第5頁左欄?第5頁右欄)

(c)
「【0026】図3に、移動端末20の具体的な構成を示す。移動端末20は、上記した移動局ネットワークインターフェースMS1、MS2を構成する通信機21a、21bと、通信機21a、21bと移動端末20内の各部との信号の送受を行うインターフェース22a、22bと、通信システム切替部23と、ネットワークドライバ24と、アプリケーション部25と、受信電力モニタ26と、通信品質評価部27と、制御部28とから構成されている。なお、移動端末20において、図では各部がブロック的な構成として示されているが、ハードウェアとして必然的に構成される部分以外は、コンピュータを用いて実現することができる。
【0027】通信システム切替部23は、制御部28からの待機/送受切替信号に基づいて、インターフェース22a、22bを介し、通信機21a、21bをそれぞれ送受信可能状態(アクティブな状態)、待機状態(アクティブでない状態のいずれかにする。ここで、待機状態とは、例えば、受信することはできるが送信することができないような状態をいう。なお、以下の説明では、通信機21a、21bの送受信可能状態を、通信システム1、2の送受信可能状態とし、通信機21a、21bの待機状態を、通信システム1、2の待機状態とする。
【0028】受信電力モニタ26は、通信機21a、21bの受信電力、すなわち通信システム1、2での受信電力をインターフェース22a、22bを介して検出する。通信品質評価部27は、ネットワークドライバ24から、通信機21a、21bのうち現在通信に使用されている通信機による通信品質の評価、すなわち通信システム1、2のうち現在通信に使用されている通信システムの通信品質の評価を行う。この通信品質の評価としては、例えばビットエラーレート(BER)を用いることができる。
【0029】アプリケーション部25は、Webブラウザ、電子メールなどのための種々のアプリケーションソフトからなり、これらのアプリケーションソフトによって通信が行われる。この場合、通信利用状況、すなわち送受信を実際に行っていることを示す情報が制御部28に通知される。
【0030】制御部28は、受信電力モニタ26の出力信号、通信品質評価部27の出力信号などによって、通信システム1、2のいずれか一方を送受信可能状態に、他方を待機状態にするように制御を行う。この制御処理を図4に示す。
【0031】まず、制御部28は、初期化処理として通信システム1、2を待機状態にする(ステップ101)。次に、受信電力モニタ26によって検出された通信システム1の受信電力に基づき、通信システム1で通信が可能か否かを判定する(ステップ102)。
【0032】移動端末20が狭域セル1-1、1-2、1-3、1-4、…のいずれかに位置し、通信システム1で通信が可能な場合には、通信システム1を送受信可能状態にする(ステップ103)。
【0033】次に、通信システム2が送受信可能状態になっているか否かを判定する(ステップ104)。最初にこのステップ104に到来したときには、初期化処理によって通信システム2が待機状態になっているため、その判定がNOになる。但し、その後の処理を経て、このステップ104に到来したとき、通信システム2が送受信可能状態になっていなければ、通信システム2を送受信可能状態にする(ステップ105)。
【0034】そして、通信システム1で通信を実施するようにネットワークドライバ24を制御する(ステップ106)。また、通信システム1で通信を実施しているときの通信品質の評価を通信品質評価部27から得(ステップ107)、その通信品質の評価に基づいて通信システム1での通信が維持可能であるか否かを判定する(ステップ108)。通信システム1での通信が維持可能である場合は、ステップ106からステップ108の処理を繰り返す。
【0035】また、移動端末20がそれまで位置していた狭域セルから移動し、通信システム1での通信が維持できなくなると、次に通信システム2を送受信可能状態にする(ステップ109)。
【0036】そして、通信システム1が送受信可能状態になっている場合(ステップ110の判定がYESの場合)には、通信システム1を待機状態にする(ステップ111)。続いて、通信システム2で通信を実施するようにネットワークドライバ24を制御する(ステップ112)。また、受信電力モニタ26から通信システム1での受信電力を得(ステップ113)、その受信電力に基づいて通信システム1で通信を開始することができるか否かを判定する(ステップ114)。通信システム1で通信を開始することができない場合は、ステップ112?ステップ114の処理を繰り返す。
【0037】その後、移動端末20が狭域セルのいずれかに再度入り、通信システム1で通信を開始することができることを判定すると、上記したステップ103以降の処理に移行し、通信システム1で通信を実施するようにする。
【0038】このような制御とすることにより、高速な通信システムを優先的に使用して、トータルの伝送効率を高めるとともに、使用していない通信システムを待機状態にすることにより、消費電力を抑制できる。」(第5頁右欄?第6頁右欄)

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「DSRC(Dedicated Short-Range Communication)や無線LANのように、高速で通信を行うことができるがサービスエリアが狭く離散的(スポット的)に通信を行う通信システム1にアクセス可能な移動局ネットワークインターフェースMS1を構成する通信機21aと、
携帯電話やPHSのように、比較的低速で通信を行うがサービスエリアが広く網羅的に通信を行うことができる通信システム2にアクセス可能な移動局ネットワークインターフェースMS2を構成する通信機21bとを備え、
通信システム切替部23は、制御部28からの待機/送受切替信号に基づいて、インターフェース22a、22bを介し、通信機21a、21bをそれぞれ送受信可能状態(アクティブな状態)、受信することはできるが送信することができないような状態(アクティブでない状態)のいずれかにし、
制御部28は、受信電力モニタ26の出力信号、通信品質評価部27の出力信号などによって、通信システム1、2のいずれか一方を送受信可能状態に、他方を待機状態にするように制御を行い、
通信システム1で通信を実施しているときの通信品質の評価を通信品質評価部27から得、その通信品質の評価に基づいて通信システム1での通信が維持可能であるか否かを判定し、
移動端末20がそれまで位置していた狭域セルから移動し、通信システム1での通信が維持できなくなると、次に通信システム2を送受信可能状態にして、通信システム1を待機状態にし、続いて、通信システム2で通信を実施するようにネットワークドライバ24を制御し、
その後、移動端末20が狭域セルのいずれかに再度入り、通信システム1で通信を開始することができることを判定すると、通信システム1で通信を実施するようにする移動端末20。」

4.対比
補正発明と引用発明との比較
引用発明の「通信システム1」は、サービスエリアが狭く離散的(スポット的)に通信を行うから、補正発明の「狭域無線通信」に相当する。

引用発明の「通信システム2」は、サービスエリアが広く網羅的に通信を行うことができるから、補正発明の「広域無線通信」に相当する。

引用発明の「通信システム1にアクセス可能な移動局ネットワークインターフェースMS1を構成する通信機21a」及び「通信システム2にアクセス可能な移動局ネットワークインターフェースMS2を構成する通信機21b」は、補正発明の狭域無線通信と広域無線通信の「無線通信手段」に相当する。

引用発明の「通信システム切替部23」及び「通信システム1、2のいずれか一方を送受信可能状態に、他方を待機状態にするように制御を行う制御部28」は、通信システム1、2のいずれか一方を送受信可能状態に、他方を待機状態にして通信の接続を切り替えているから、補正発明の「狭域無線通信と広域無線通信との接続切換を行なう切換手段」に相当する。

引用発明の「制御部28」は、移動端末20がそれまで位置していた狭域セルから移動し、通信システム1での通信が維持できなくなると、次に通信システム2を送受信可能状態にして、通信システム1を待機状態に制御して通信システム2で通信を実施するようにしているから、補正発明の「接続手段」と、狭域無線通信が維持できなくなると端末側から広域無線通信への接続処理を開始する点で共通している。

引用発明の「移動端末20」は、補正発明の「無線通信端末」に相当する。

したがって、補正発明と引用発明の一致点・相違点は以下のとおりである。

[一致点]
狭域無線通信と広域無線通信の無線通信手段を有する無線通信端末において、
狭域無線通信と広域無線通信との接続切換を行なう切換手段と、
狭域無線通信を使用している場合、広域無線通信への接続処理を当該端末から開始する接続手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信端末。

[相違点]
補正発明では、広域無線通信への接続処理を、狭域無線通信が通信不能になる前に開始するのに対し、引用発明では、通信システム1での通信が維持できなくなると、通信システム2で通信を実施しており、通信不能になる前に接続処理を行う記載がない点で相違している。

5.相違点の検討
無線通信システムの技術分野において、異なるアクセスネットワーク間で通信に途切れのないソフトハンドオフを行うことは周知技術(特表2002-534029号公報段落0014?0018の記載等参照)である。
したがって、引用発明の無線通信端末においても、通信するシステムを切り替えるハンドオフをソフトハンドオフとして、狭域無線通信が維持できなくなる前に広域無線通信と接続する構成とすることは当業者が容易に想到するものである。

また、補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

6.まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成20年11月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年8月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2.3.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.で検討した補正発明から「狭域無線通信を使用している場合、前記狭域無線通信が通信不能になる前に、広域無線通信への接続処理を当該端末から開始する接続手段」の限定事項である「当該端末から」開始するとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の限定を付加したものに相当する補正発明が、前記第2.5.に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-17 
結審通知日 2010-11-25 
審決日 2010-12-10 
出願番号 特願2008-16685(P2008-16685)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 寛人佐藤 聡史  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 鈴木 重幸
稲葉 和生
発明の名称 無線通信端末  

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