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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M |
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管理番号 | 1232021 |
審判番号 | 不服2008-27308 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-27 |
確定日 | 2011-02-10 |
事件の表示 | 特願2006-286454「入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月 7日出願公開、特開2007-143129〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年10月20日(優先権主張平成17年10月21日)の出願であって、原審において平成20年10月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年10月27日に審判請求がなされたものであり、 当審において、平成22年9月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年11月10日付けで意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本件出願の請求項に係る発明は、平成20年4月10日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。 (本願発明) 「 複数のキーと、接触感知センサと、該接触感知センサ上をなぞられた形を記憶する記憶手段と、特定の機能の実行を禁止する禁止手段と、 前記禁止手段が特定の機能の実行を禁止している状態で、前記記憶手段に記憶されている形と同一の形が前記接触感知センサから入力されたと判定すると、前記特定の機能の実行を許可する許可手段と、制御手段と、を有する入力装置であり、 前記接触感知センサは、前記入力装置の筐体表面及び前記キー上面に配置され、前記制御手段は、前記接触感知センサの動作を有効とする際には、前記複数のキーの内、特定のキーの操作を無効にするよう制御することを特徴とする入力装置。」 3.引用例に記載された発明 A.当審で通知した拒絶理由に引用した、特開2001-134535公報(以下、「引用例1」という。)には、「端末装置および端末装置の起動方法」として、図面とともに以下の記載がある。 イ.「【請求項1】 入力ペンによる入力が行われるタブレットなどの位置入力部に入力された入力位置を検出する位置検出部と、この位置検出部により検出された入力位置に基づき、入力されたストロークを抽出するストローク抽出部とを備えた端末装置において、 パスワードの登録モードであるときには、ストローク抽出部により抽出されたストロークを、ストロークパスワードとして記憶するストロークパスワード格納部と、 パスワードの入力モードであるときには、ストローク抽出部により抽出されたストロークが、ストロークパスワード格納部に記憶されたストロークパスワードに一致するかどうかを判定するストローク一致判定部と、 ストローク一致判定部の判定結果が一致を示すときには機能を制限しない通常起動動作を行い、前記判定結果が不一致を示すときには、少なくとも一部の機能を制限した機能制限起動動作を行う起動制御部とを備えたことを特徴とする端末装置。」(2頁1欄) ロ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、入力ペンにより入力されるタブレット等のように、位置が入力される位置入力部を備えると共に、位置入力部に入力されたストロークが、記憶したストロークに一致するとき、起動時の機能制限を解除するように構成した端末装置、およびこの端末装置の起動方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】例えば、携帯端末装置等においても、秘密を守るため、パスワードによるロック機能が設けられる場合がある。このような構成では、予めパスワードが登録される。そして、システムを起動するときには、入力されたパスワードと、登録されたパスワードとが比較される。この比較において、入力されたパスワードが登録されたパスワードに一致する場合には、システムが起動され、一致しない場合には、システムが起動されない。また、パスワードの入力方法としては、キーボードによる入力や、ソフトキーボード等による入力などの方法が採用されている。」(2頁2欄) ハ.「【0024】図4は、本発明に係る端末装置の第1の実施形態の外観の概略を示す説明図であり、電池を電源とする携帯用のペン入力端末装置を示している。 【0025】図において、端末装置本体31には、例えばLCD等からなる表示器32が設けられている。また、表示器32の表面には、入力ペン34を用いて位置の入力を行うためのタブレット(位置入力部)2が設けられている。 【0026】図1は、第1の実施形態の電気的構成を示すブロック線図である。位置検出部3は、入力ペン34によってタブレット2に入力された入力位置を座標として検出するブロックとなっている。そして、検出した座標を、ストローク検出部4、ストロークパスワード格納部7、およびストローク一致判定部8に送出する。 【0027】ストローク検出部4は、入力ペン34がタブレット2に接触したときの位置と、入力ペン34がタブレット2から離れたときの位置とから、入力ペン34による入力がストロークであることを検出し、ストローク抽出部6に知らせる。 【0028】ストローク抽出部6は、ストローク検出部4からストロークを検出したことの知らせを受け取ると、ストローク検出部4を介して導かれた位置検出部3の出力に基づき、ストロークの抽出を行う。 【0029】すなわち、ストローク抽出部6は、入力ペン34がタブレット2に接触した状態において、入力ペン34がタブレット2上を移動した軌跡を求めることにより、入力されたストロークを抽出する。そして、抽出したストロークを、パスワード制御部5とストローク一致判定部8とに送出する。 【0030】パスワード制御部5は、パスワードの登録モードとなっているときには、ストローク抽出部6において抽出されたストロークを、ストロークパスワード格納部7に記憶させる。また、このとき、位置検出部3により検出されたストロークの入力位置を示すストローク入力位置情報(例えば、タブレット2の右上部分においてストロークが入力された、あるいはタブレット2の中央部分においてストロークが入力された、といったような、ストロークの入力位置に関する情報)を、併せて記憶させる。 【0031】ストロークパスワード格納部7は、パスワードの登録モード時には、ストローク抽出部6によって抽出され、パスワード制御部5を介して導かれたストロークを、ストロークパスワードとして内部に記憶する。また、位置検出部3より検出されたストローク入力位置情報を併せて記憶する。 【0032】また、ストロークパスワード格納部7は、パスワードの入力モードとなっているときには、記憶していたストロークパスワードとストローク入力位置情報とをストローク一致判定部8に送出する。 【0033】ストローク一致判定部8は、パスワードの入力モードとなっているときには、ストローク抽出部6により抽出されたストロークが、ストロークパスワード格納部7から送出されるストロークパスワードに一致するかどうかを判定するためのブロックとなっている。また、このとき、位置検出部3より検出されたストローク入力位置情報と、ストロークパスワード格納部7から送出されるストローク入力位置情報とが一致するかどうかを、併せて判定する。そして、ストロークとストローク入力位置情報との双方が一致するときには、一致を示す出力を起動制御部9に送出する。 【0034】システム起動検知部11は、システムの起動を検知するためのブロックとなっている。このため、例えば、電源のオンキーが操作されるかどうかを常時調べる。そして、電源のオンキーが操作されたことを検出したときには、ストローク一致判定部8と時間計測部10とに、システムが起動されたことを知らせる。 【0035】時間計測部10は、システムが起動されたときには、所定時間の計時を開始するブロックとなっている。そして、計時を終了したときには、所定時間を経過したことを、ストローク一致判定部8に知らせる。 【0036】起動制御部9は、ストローク一致判定部8の判定結果が一致を示すときには、機能を制限しない通常起動動作を行うブロックとなっている。また、ストローク一致判定部8の判定結果が不一致を示すときには、少なくとも一部の機能を制限した機能制限起動動作を行う。 【0037】なお、位置検出部3、ストローク検出部4、パスワード制御部5、ストローク抽出部6、ストローク一致判定部8、および起動制御部9は、CPU、ROM、RAM、および周辺回路等からなるハードウエア上で、ROMに格納されたプログラムを実行するCPUによって構成されたブロックとなっている。」(4頁5欄?5頁7欄) 上記引用例1の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 上記引用例1記載の「端末装置」は、上記イ.、ハ.および引用例1の図1、図4からも明らかなように、 「タブレット」などの入力部に入力された、入力ペンがタブレット上を移動した軌跡である「ストローク」を抽出する「ストローク抽出部」を備えたものであって、 「パスワードの登録モードであるときには、ストローク抽出部により抽出されたストロークを、ストロークパスワードとして記憶するストロークパスワード格納部」と、 「パスワードの入力モードであるときには、ストローク抽出部により抽出されたストロークが、ストロークパスワード格納部に記憶されたストロークパスワードに一致するかどうかを判定するストローク一致判定部」とを有してなり、 「ストローク一致判定部の判定結果が一致を示すときには機能を制限しない通常起動動作を行い、前記判定結果が不一致を示すときには、少なくとも一部の機能を制限した機能制限起動動作を行う起動制御部」を備えたものである。 したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。 (引用発明1) 「タブレットなどの入力部に入力されたストロークを抽出するストローク抽出部と、 パスワードの登録モードであるときには、ストローク抽出部により抽出されたストロークを、ストロークパスワードとして記憶するストロークパスワード格納部と、 パスワードの入力モードであるときには、ストローク抽出部により抽出されたストロークが、ストロークパスワード格納部に記憶されたストロークパスワードに一致するかどうかを判定するストローク一致判定部と、 ストローク一致判定部の判定結果が一致を示すときには機能を制限しない通常起動動作を行い、前記判定結果が不一致を示すときには、少なくとも一部の機能を制限した機能制限起動動作を行う起動制御部と、 を有する端末装置。」 B.また、当審で通知した拒絶理由に引用した、特開2001-333166公報(以下、「引用例2」という。)には、「文字入力装置及び文字入力方法」として、図面とともに以下の記載がある。 イ.「【請求項1】 携帯用電子機器に設けられる複数の操作ボタンからなるボタン入力部と、上記各操作ボタンの表面にそれぞれ設けられる手書き文字入力用の接触検知センサとを具備したことを特徴とする文字入力装置。 【請求項2】 携帯用電子機器に設けられる複数の操作ボタンからなるボタン入力部と、上記各操作ボタンの表面及び上記ボタン入力部の周囲の筐体に設けられる手書き文字入力用の接触検知センサとを具備したことを特徴とする文字入力装置。」(2頁1欄) ロ.「【0015】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。 (第1実施形態)図1及び図2は本発明の第1実施形態に係る文字入力装置を携帯電話機に実施した場合の例を示したもので、図1は携帯電話機の外観構成を示す正面図、図2は内部の回路構成を示すブロック図である。 【0016】図1において、11は携帯電話機本体で、上端部にアンテナ12が設けられ、前面の上部に液晶表示パネル等を用いた表示部13が設けられる。更に、上記携帯電話機本体11の前面には、表示部13の下方に例えばカーソルボタン、メニューボタン等のファンクションボタン14及びボタン入力部15が設けられる。このボタン入力部15は、「テンキー(0?9)」、「*」、「#」等の操作ボタンの他、電話を掛けるときの電話開始ボタン、誤入力をクリアするクリアボタン、電話終了ボタンあるいは電話帳等、例えば「3×5」の15個の操作ボタン群からなっている。そして、上記ボタン入力部15の各操作ボタンの表面には、手書き入力を検知するための、例えば透明電極等を用いた接触検知センサ16が設けられる。この場合、各操作ボタンに設けられる接触検知センサ16は、それぞれ複数例えば4つのエリアに細分化して座標数を増加させている。上記接触検知センサ16は、ボタン入力部15の操作ボタン上をユーザが指でなぞったときに、その接触を検知して携帯電話機本体11内の文字認識処理部に出力する。 【0017】上記携帯電話機本体11内には、詳細を後述するように手書き文字を認識するための認識辞書が設けられており、上記接触検知センサ16からの入力情報に基づいて手書き文字を認識するように構成されている。また、上記ファンクションボタン14は、例えばメニューボタンあるいは特定のボタンの操作によって手書きによる文字入力モードを選択できる機能を備えている。」(3頁3?4欄) ハ.「【0018】次に、上記携帯電話機本体11内に設けられる情報処理回路の構成について、図2を参照して説明する。図2において、21はCPUで、このCPU21には、内部バス22を介して無線による送受信部23、ROM24、RAM25、認識辞書26、表示部13、ボタン入力部15、接触検知センサ16、マイク27、及びスピーカ28が接続される。 【0019】CPU21は、内部バス22により各部と接続されて全体の制御を司るもので、ROM24に記憶されたソフトウェア・プログラムを実行することにより各種の機能を実現する。 【0020】送受信部23は、アンテナ12に接続され、相手機器と無線通信により基地局を介して送受信処理を行なう。ROM24は、CPU21を動作させるためのプログラム及び各種初期データを格納するための読み込み専用のメモリ装置であり、手書き入力文字の自動認識処理を含む各種の機能を実現するためのプログラムが格納されている。 【0021】RAM25は、CPU21による読み書き可能なメモリ装置であり、各種データを一時的に記憶させる作業領域として使用される。認識辞書26は、接触検知センサ16により検知されたデータに対し、書き順、ストローク、入力位置等から文字を認識するための辞書であり、ROM等のメモリに格納される。表示部13は、カラーあるいは白黒の液晶表示パネルにより構成され、表示コントローラ(図示せず)の制御のもとで各種情報を表示する。マイク27及びスピーカ28は、ユーザによる通話時において、音声入力、音声出力を行なう。 【0022】次に上記実施形態における文字入力及び文字認識処理について説明する。電話を掛ける際のダイヤル番号は、ボタン入力部15のテンキーを押すことによって対応する数値が入力される。 【0023】そして、英文字、かな文字を入力する場合には、メニューボタンあるいは特定のボタン操作によって手書きによる文字入力モードを指定する。この文字入力モードが指定されたことは、表示部13におけるモード表示によって確認することができる。この状態で、ユーザは図3に示すように、入力したい文字(数字・かな・カナ・英字)のイメージ通りに指を使用してボタン入力部15におけるボタン群の上をなぞる。図3(a)は「A」の文字、同図(b)は「た」の文字を入力した場合の例であり、31は指先の軌跡を示している。 【0024】上記指先の軌跡31は、接触検知センサ16により検知され、その入力座標がCPU21へ送られる。CPU21は、接触検知センサ16からの入力座標により、書き順、ストローク、入力値位置等に基づき認識辞書26を参照して文字認識処理を行ない、その認識結果を表示部13上のカーソル32で示されている位置に表示する。このときカーソル32は、隣の桁に移動して次の文字入力位置を指示する。」(3頁4欄?4頁5欄) ニ.「【0033】なお、上記各実施形態では、ボタン入力部15、43に設けた操作ボタンの表面に接触検知センサ設けた場合について示したが、更に、ボタン入力部の周囲の筐体にも接触検知センサを設けて検知エリアを増加するようにしても良い。このように検知エリアを増加することにより、入力文字の認識率を向上することができる。」(4頁6欄) 上記引用例2の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 上記引用例2記載の「文字入力装置」は、上記イ.、ロ.、ニ.および引用例2の図1?3、5からも明らかなように、 「複数の操作ボタンからなるボタン入力部」と、「各操作ボタンの表面及びボタン入力部の周囲の筐体に設けられる手書き文字入力用の接触検知センサ」とを具備したものであって、「特定のボタンの操作によって手書きによる文字入力モードを選択できる機能を備えている」ものである。 したがって、上記引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。 (引用発明2) 「複数の操作ボタンからなるボタン入力部と、各操作ボタンの表面及びボタン入力部の周囲の筐体に設けられる手書き文字入力用の接触検知センサとを具備したものであって、特定のボタンの操作によって手書きによる文字入力モードを選択できる機能を備えている文字入力装置」 4.対比・判断 本願発明と上記引用発明1を対比する。 まず、引用発明1の「端末装置」は、「タブレットなどの入力部」を備えるから「入力装置」であって、 該「タブレット」は「接触感知センサ」であるのは技術常識であるが、引用例1のハ.【0027】に、「ストローク検出部4は、入力ペン34がタブレット2に接触したときの位置と、入力ペン34がタブレット2から離れたときの位置とから、入力ペン34による入力がストロークであることを検出し、ストローク抽出部6に知らせる。」とあるように、「ストローク」すなわち「接触感知センサ上をなぞられた形」を検出・抽出するものであって、引用発明1の「ストロークパスワード格納部」は、「接触感知センサ上をなぞられた形を記憶する記憶手段」である。 また、引用発明1の「起動制御部」は、「判定結果が不一致を示すときには、少なくとも一部の機能を制限した機能制限起動動作を行う」のであるから、「特定の機能の実行を禁止する禁止手段」ということができ、 更に、「ストローク抽出部により抽出されたストロークが、ストロークパスワード格納部に記憶されたストロークパスワードに一致するかどうかを判定」し、「ストローク一致判定部の判定結果が一致を示すときには機能を制限しない通常起動動作を行う」のであるから、「前記記憶手段に記憶されている形と同一の形が前記接触感知センサから入力されたと判定すると、前記特定の機能の実行を許可する許可手段」にあたり、これらの制御を行う「制御手段」でもある。 したがって、両者は以下の点で一致し、また相違している。 (一致点) 「接触感知センサと、該接触感知センサ上をなぞられた形を記憶する記憶手段と、特定の機能の実行を禁止する禁止手段と、 前記記憶手段に記憶されている形と同一の形が前記接触感知センサから入力されたと判定すると、前記特定の機能の実行を許可する許可手段と、制御手段と 、を有する入力装置」 (相違点1) 「入力装置」に関し、本願発明は「複数のキー」を有するのに対し、引用発明では有しない点、 及びこれに関連して、本願発明では「前記接触感知センサは、前記入力装置の筐体表面及び前記キー上面に配置」されるのに対し、引用発明はそのような構成はない点。 (相違点2) 「判定」が、本願発明では「前記禁止手段が特定の機能の実行を禁止している状態」で行われるのに対し、引用発明ではそのような構成はない点。 (相違点3) 「制御手段」に関し、本願発明では「前記制御手段は、前記接触感知センサの動作を有効とする際には、前記複数のキーの内、特定のキーの操作を無効にするよう制御する」のに対し、引用発明ではそのような構成はない点。 まず、上記相違点1の「入力装置」に関し、「複数のキー」を有し、「接触感知センサは、前記入力装置の筐体表面及び前記キー上面に配置」される点について検討する。 そもそも入力装置を有する種々の電子機器において、入力手段としてタブレットやタッチパネルのような「接触感知センサ」以外に、通常のボタンやキーなどの入力手段も併設するのは周知慣用のこと(例えば、特開2004-185164号公報図1、特開平9-114150号公報図6,7、特開平6-149467号公報図1等を参照)であるが、 引用発明2にあるように、 「複数の操作ボタンからなるボタン入力部と、各操作ボタンの表面及びボタン入力部の周囲の筐体に設けられる手書き文字入力用の接触検知センサとを具備したものであって、特定のボタンの操作によって手書きによる文字入力モードを選択できる機能を備えている文字入力装置」も公知のものである。 ここで、上記引用発明2の「複数の操作ボタンからなるボタン入力部」は「複数のキー」であり、「ボタン入力部の周囲の筐体」とは「入力装置の筐体表面」であり、「各操作ボタンの表面」とは「キー上面」であるから、引用発明2を同様な入力装置である引用発明1に組み合わせて入力手段を拡張し、「複数のキー」を有し、「入力装置の筐体表面及び前記キー上面に配置」された「接触感知センサ」を有する「入力装置」とすることになんら困難はなく、相違点1は当業者であれば容易に想到し得たものである。 ついで、上記相違点2の「判定」が、「禁止手段が特定の機能の実行を禁止している状態」で行われる点について検討する。 引用発明1のパスワードのストローク一致判定は、その結果に応じた起動制御が行われるものであるから、当然、端末装置が起動する以前の段階において行われるものであり、その段階においては通常、「(例えばパスワード入力などの)特定の機能以外の機能」の実行は禁止されている状態にあることは、技術常識である。 本願発明においては「特定の機能」に具体的限定は無いのであるから、前述の「特定の機能以外の機能」を「特定の機能」と称することは適宜のことに過ぎず、そのための禁止手段を前記一致点に認定した「禁止手段」となすことも同様である。 したがって、相違点2も格別のものではない。 最後に、相違点3の「前記制御手段は、前記接触感知センサの動作を有効とする際には、前記複数のキーの内、特定のキーの操作を無効にするよう制御する」点に関して検討する。 そもそも、複数の入力手段が併設された入力装置において、入力モードに応じて一部の入力手段を無効化するようなことは、前述の周知例にもある(例えば、特開2004-185164号公報の【0024】、特開平9-114150号公報【0031】、特開平6-149467号公報【請求項2】を参照)ことであるが、 引用例2には特に明記はないものの、引用発明2の構成において「各操作ボタンの表面及びボタン入力部の周囲の筐体に設けられる手書き文字入力用の接触検知センサ」を用いて手書き文字入力を行う際には、文字をなぞる指が「各操作ボタンの表面」を通過するのであるから、接触圧の加減によってはボタンが押し下げられることになるのは自明なことであって、この時に該ボタンによるキー入力が有効となっていては、入力が混乱してしまうのは明らかであるから、該ボタンによるキー入力操作は「無効」とされるのは当然のことである。 したがって、引用発明2を引用発明1に組み合わせた構成においても同様であり、「複数のキーの内、特定のキーの操作を無効にする」ことも必要に応じ適宜なし得る設計事項であるから、結局、相違点3も格別のことではない。 そして、本願発明の効果も上記引用発明および周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであり、当審の拒絶理由通知に対する意見書における審判請求人の主張も、これらの認定を覆すものではない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1,2および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-08 |
結審通知日 | 2010-12-14 |
審決日 | 2010-12-27 |
出願番号 | 特願2006-286454(P2006-286454) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西脇 博志 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
宮田 繁仁 萩原 義則 |
発明の名称 | 入力装置 |
代理人 | ▲角▼谷 浩 |
代理人 | ▲角▼谷 浩 |