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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1232022
審判番号 不服2008-27706  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-30 
確定日 2011-02-10 
事件の表示 特願2002-95451「バルブ駆動装置のシリーズ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月10日出願公開、特開2003-287155〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年3月29日の出願であって、その請求項1?4に係る発明は特許を受けることができないとして、平成20年9月17日付けで拒絶査定がされたところ、平成20年10月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1?4に係る発明は、平成19年8月10日付け、及び平成20年5月9日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
減速機を介して弁体を駆動可能に構成したバルブ駆動装置のシリーズにおいて、
前記減速機の減速機構の少なくとも一段を、入力軸と、該入力軸の周りで偏心揺動回転する外歯歯車と、該外歯歯車が内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の揺動成分と自転成分のうち揺動成分を吸収可能なキャリアとを備え、
前記内歯歯車又はキャリアのいずれか一方側が固定されると共に、他方側が前記弁体側と連結された偏心揺動内接噛合型の遊星歯車機構で構成し、且つ、
前記外歯歯車の前記偏心揺動回転の抵抗に差異を与えるための部材のみを異ならせ、該偏心揺動回転の抵抗に差異を与えるための部材以外の部材を、シリーズ中のバルブ駆動装置間で共用させながら、逆転防止機能性重視、回転効率性重視の少なくとも2種類のバルブ駆動装置を構成した
ことを特徴とするバルブ駆動装置のシリーズ。」

2.原審における拒絶の理由において引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明及びその記載事項
(1)刊行物1:特開2000-74162号公報
(2)刊行物2:特開平10-110789号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「同芯軸減速機及びこれを付設した弁装置」に関して、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「この発明は、入力軸と出力軸が同一軸心上にある同芯軸減速機及びこれを付設した弁装置に関するものである。」(第2頁第1欄第39?41行、段落【0001】参照)
(b)「この発明は、背高を低くし得るうえに、破損防止操作の信頼性が高い減速機とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために、この発明は、上述の同芯軸減速機において、そのケーシングと内歯歯車の間にトルクリミッタ機構を構成することとしたのである。このようにすれば、嵩高にならず、背高を極力抑えることができる。
そのトルクリミッタ機構には、上述の摩擦板方式も採用し得るが、凹凸面の噛み合い方式として、所要トルク以上の回転力でその噛み合いが外れて、トルク伝達を阻止する手段とし得る。このように噛み合いであると、操作設定値の変動もない。」(第2頁第2欄第38行?第3頁第3欄第1行、段落【0007】?【0009】参照)
(c)「この実施例は、図1に示す、バタフライ弁装置に係るものであり、その減速機Dを図2乃至図8に示す構成としたものである。
その減速機Dは、ケーシング1内に内歯歯車2をその軸心周りに回転可能及びその軸心方向に移動可能に設け、この内歯歯車2に遊星外歯歯車3を噛み合わせている。ここで、内歯歯車2の歯数をZ_(2)、外歯歯車3の歯数をZ_(3)とし、内歯歯車2が固定の状態で、外歯歯車3が一方向に公転すると、外歯歯車3は、公転数に対し(Z_(2)-Z_(3))/Z_(3)の回転数で逆方向に自転する。すなわち、(Z_(2)-Z_(3))/Z_(3)の減速比で回転する。
入力軸4と出力軸(弁軸)5は、内歯歯車2と同一軸心となって、ケーシング1内に導かれている。入力軸4は、軸受10によりケーシング1に回転自在に支持され、その先が偏心円部11となっている。この偏心円部11にベアリング12を介して外歯歯車3が嵌着されている。このため、入力軸4の回転により、外歯歯車3は内歯歯車2内を公転し、かつ、その歯数差で自転する。
出力軸5は、キー13を介して出力ボス14に一体にされており、その出力ボス14はブッシュ15を介してケーシング1に回転自在になっている。キー13の結合に代えて、スプライン結合とし得る。出力ボス14には、軸心周りにピン6が出力軸5に平行に立設され、このピン6は外歯歯車3の透孔7に導かれている。このため、図8に示すようなピン6に対する透孔7の偏心運動により、外歯歯車3の自転のみを、ピン6を介して出力ボス14(出力軸5)が伝達する。このようにして、入力軸4の回転が出力軸5に(Z_(2)-Z_(3))/Z_(3)の減速比で伝達される。なお、ピン6の位置及び径、透孔7の位置及び径は、偏心円部11の偏心量等に基づき、円滑な減速作用が行なわれるように適宜に選定する。」(第3頁第3欄第37行?第4欄第20行、段落【0014】?【0017】参照)
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
減速機Dを介して弁Vの弁体を駆動可能に構成した同芯軸減速機を付設した弁装置において、
前記減速機Dの減速機構の少なくとも一段を、入力軸4と、該入力軸4の周りで偏心揺動回転する遊星外歯歯車3と、該遊星外歯歯車3が内接噛合する内歯歯車2と、前記遊星外歯歯車3の揺動成分と自転成分のうち揺動成分を吸収可能なピン6とを備え、
前記内歯歯車2が固定されると共に、前記ピン6が前記弁Vの弁体側と連結された偏心揺動内接噛合型の遊星歯車機構で構成した同芯軸減速機を付設した弁装置。

(刊行物2)
刊行物2には、「内接噛合遊星歯車構造」に関して、図面(特に、従来例である図8及び9の記載を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(d)「本発明は、構成部材の支持構造を簡素化した内接噛合遊星歯車構造に関する。」(第2頁第1欄第38及び39行、段落【0001】参照)
(e)「ここで『内ピン』には外歯歯車の内ピン孔との摺動抵抗を低減するためにその外周に内ローラを備えたものを含むものとする。むしろ、内ピンが内ローラを備えている方が本発明に係る軸受としての機能をより発揮することができ、好適である。」(第3頁第3欄第49行?第4欄第3行、段落【0020】参照)
(f)図8及び9の記載から、内ピン7にはその外周に内ローラ8を備えた構成が看取できる。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「減速機D」は本願発明の「減速機」に相当し、以下同様にして、「弁Vの弁体」は「弁体」に、「同芯軸減速機を付設した弁装置」は「バルブ駆動装置」に、「入力軸4」は「入力軸」に、「遊星外歯歯車3」は「外歯歯車」に、「内歯歯車2」は「内歯歯車」に、「ピン6」は「キャリア」に、それぞれ相当する。また、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された「いずれか一方側が・・・他方側が」の記載は選択的記載であって、いずれか1つの態様を包含していれば良いのであるから、両者は下記の一致点、及び相違点を有する。
<一致点>
減速機を介して弁体を駆動可能に構成したバルブ駆動装置において、
前記減速機の減速機構の少なくとも一段を、入力軸と、該入力軸の周りで偏心揺動回転する外歯歯車と、該外歯歯車が内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車の揺動成分と自転成分のうち揺動成分を吸収可能なキャリアとを備え、
前記内歯歯車又はキャリアのいずれか一方側が固定されると共に、他方側が前記弁体側と連結された偏心揺動内接噛合型の遊星歯車機構で構成したバルブ駆動装置。
(相違点)
本願発明は、「バルブ駆動装置のシリーズ」であって、「前記外歯歯車の前記偏心揺動回転の抵抗に差異を与えるための部材のみを異ならせ、該偏心揺動回転の抵抗に差異を与えるための部材以外の部材を、シリーズ中のバルブ駆動装置間で共用させながら、逆転防止機能性重視、回転効率性重視の少なくとも2種類のバルブ駆動装置を構成した」のに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。
そこで、上記相違点について検討をする。
(相違点について)
引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項は、内接噛合遊星歯車構造に関する技術分野に属する点で共通するものであって、刊行物2には、「ここで『内ピン』には外歯歯車の内ピン孔との摺動抵抗を低減するためにその外周に内ローラを備えたものを含むものとする。むしろ、内ピンが内ローラを備えている方が本発明に係る軸受としての機能をより発揮することができ、好適である。」(上記摘記事項(e)を参照)と記載され、また、図8及び9から、内ピン7にはその外周に内ローラ8を備えた構成が看取できる。
刊行物2の上記摘記事項(e)の記載からみて、内ピン7と外歯歯車5aの内ローラ孔6aとの摺動部に内ローラ8を備えたものと、内ローラ8を備えていないものとがあり、刊行物2の図8及び9に記載された内ローラ8を備えたものは、内ローラ8を備えていないものに比較すれば、摺動抵抗を低減することができることが記載又は示唆されている。
一方、内接噛合遊星歯車構造を備えた同芯軸減速機を付設した弁装置に関する刊行物1に記載されたものは、各図面の記載からみて、同芯軸減速機のピン6と遊星外歯歯車3の透孔7との摺動部に、内ローラが配置されていないことから、芯軸減速機に内ローラを備えたものに比較すれば、摺動抵抗を低減することができないことは明らかである。
また、引用発明の弁装置の減速機に、刊行物2に記載又は示唆された摺動抵抗が低い内ローラを備えた内接噛合遊星歯車構造を適用すれば、弁体の回転動作時に弁体の回転が円滑になるし、内ローラを備えていない引用発明の弁装置の減速機であれば、弁体の回転停止時に、相対的に弁体が配管路の流体から強い負荷を受けるため、弁体の逆方向への回転が防止されることは技術的に自明の事項である。
つまり、内ローラは、外歯歯車の偏心揺動回転の抵抗に差異を与えるための部材であるといえる。
一方、内接噛合遊星歯車構造を採用した増減速機をシリーズ化して、機能に差異を与える部材のみを異ならせ、それ以外の他の部材を共用することは、従来周知の技術手段(例えば、特開平5-296300号公報には、「本発明に係るシリーズにおいては、同一枠番内(同一サブシリーズ内)に、変速比、取合寸法、伝達容量は同一としながら、角度バックラッシが小さな低バックラッシタイプと、そうでない汎用タイプとの少なくとも2種類のタイプを用意するようにした。
各タイプの相手機械に対する取合寸法は同一に設定されているため、例えばケーシングやフランジ部等の大型部品を共用化でき、2種類以上のタイプを備えても共通部品を非常に多くすることができるため、コストはそれほど上昇させずに済ませることができる。
又、ユーザは、只単に低バックラッシタイプか汎用タイプかの違いがあるだけで、両者は変速比、取合寸法、伝達容量に関して共通の各種諸元を有しているため、用途に合せて、即ち汎用コンベアを実現するために用いるのか、あるいは制御用コンベアを実現するために用いるのかに応じて減速機を選択すればよく、取扱い(使用方法)等は極めて分り易いものとなっている。」(第5頁第7欄第6?23行、段落【0040】?【0042】参照)と記載されている。)にすぎないし、弁装置の各種用途に対応できように、バルブ駆動装置をシリーズ化することは、当業者が普通に採用する常套手段にすぎない。
ちなみに、審判請求人は、平成18年9月1日付けの意見書において、「バルブ駆動装置を提供しているメーカーは、営業上当然にさまざまな種類、さまざまな特性、あるいはさまざまな容量の駆動装置をユーザに提供する必要があります。この場合、全てのバルブ駆動装置を、独立して設計・製造していたのでは全体としてのコストが上昇してしまうのは必至であり、単品としてのバルブ駆動装置のコスト低減が限界に近づいている現状においては、複数の(異なる種類の)バルブ駆動装置間において、互いの構成部品を如何に共用させるかが全体としてのコスト低減を決定づける極めて大きなファクタとなっているといっても過言ではありません。」(「(2)本願発明」「2-2」の項を参照)と述べている。
してみれば、引用発明の同芯軸減速機を付設した弁装置に、上記刊行物2に記載された発明、及び従来周知の技術手段を適用することにより、外歯歯車の偏心揺動回転の抵抗に差異を与えるための部材のみを異ならせ、偏心揺動回転の抵抗に差異を与えるための部材以外の部材を、シリーズ中のバルブ駆動装置間で共用させながら、逆転防止機能性重視、回転効率性重視の少なくとも2種類のバルブ駆動装置を構成して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。

本願発明が奏する効果についてみても、引用発明、刊行物2に記載された発明及び従来周知の技術手段が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明、並びに従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「要すれば、
『単体』の装置に関する開示しかなく、『逆転防止機能』を求める用途と、『高い回転効率』を求める用途とに適した2種類のバルブ駆動装置を製造する必要があるという課題や、製造に当たって両駆動装置の部品をできるだけ共用化するといった課題について全く開示も示唆もしていない引用文献1?3(審決注:引用文献1及び3は、それぞれ本審決の刊行物1及び2に対応する。以下同様。)に基づいて、
『特定の減速構造の特定の部材の回転抵抗の違いだけで差別化する』という従来なかった発想の構築原理に基づいて、大半の部品を共用化しながら双方の用途に対応できるバルブ駆動装置の合理的なシリーズを構築することを可能とした本願発明が容易に想到されることはあり得ない、と言わざるを得ない。」(「(F)引用文献1?3での『本願発明の課題の欠落』」の項参照)と本願発明が奏する作用効果について主張している。
しかしながら、上記(相違点について)において記載したように、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明、並びに従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、審判請求人が主張する本願発明が奏する上記の作用効果は、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものにすぎず、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものとは異なる、相乗的で予想外の作用効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の上記主張は採用することができない。

4.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1及び2に記載された発明、並びに従来周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2?4に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-14 
結審通知日 2010-09-21 
審決日 2010-12-24 
出願番号 特願2002-95451(P2002-95451)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋刈間 宏信  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
藤村 聖子
発明の名称 バルブ駆動装置のシリーズ  
代理人 高矢 諭  
代理人 牧野 剛博  
代理人 松山 圭佑  
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