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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D04B
管理番号 1232130
審判番号 不服2009-10591  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-02 
確定日 2011-02-07 
事件の表示 特願2006-515620「編機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月23日国際公開、WO2004/111322、平成18年12月 7日国内公表、特表2006-527795〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年6月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年6月19日、スイス)を国際出願日とする出願であって、平成21年3月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年6月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。その後、平成21年9月2日付けで前置報告がなされ、当審においてその前置報告の内容に基づいて平成22年4月13日付けで審尋を通知したが、指定した期間内に請求人からは何らの回答もなかったものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成21年6月2日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は、以下のとおりである(以下、「本願発明」という。)。
「編針と、少なくとも1本のよこ糸(10)を少なくとも1つの編針に掛けるためであって、かつ1本のよこ糸としてのゴム糸(24)を1つの編針に掛けるための少なくとも1つのよこ糸バー(8)と、よこ糸用(10)の電動式給糸器(14)と、ゴム糸(24)用の電動式給糸器(22)と、テキスタイル材(26)用の取出し装置(28)と、製造しようとするテキスタイル材(26)用のパターンプログラムに基づいて編機を制御するための電子制御装置(36)とを備えた編機であって、前記制御装置(36)が、パターンプログラムから事前設定されるよこ糸バー(8)の行程に従って供給されるよこ糸(10)およびゴム糸(24)の送出し長を設定するために、制御手段を有しており、前記制御装置(36)が、少なくとも1回のよこ糸の挿入のために、少なくとも1本のよこ糸(10)または1本のゴム糸(24)の前記送出し長を調整可能な補正係数(K)を個別に重ね合わせるために、手動的に作動可能な補正装置(44)を有しており、ゴム糸(24)が、よこ糸(10)より下方の位置で前記糸バー(8)に供給されるように構成されていることを特徴とする編機。」

3.引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特公昭60-47379号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項及び引用発明が記載されている。

(1)「1 機械の幅の間隔を介して配設された2つの搬送装置と、連続する緯糸を一方の搬送装置から他方の搬送装置へと送り且つ再び戻す台車と、前記台車の運動に応じて駆動されて方向転換装置を介して緯糸を供給するローラ送り出し機構とを備えた経編機用マガジン緯糸給糸装置において、ローラ送り出し機構19の駆動が、その時々の時点の台車の速度と位置とを考慮して連続的に可変であることを特徴とする経編機用マガジン緯糸給糸装置。
・・・
3 台車の速度と位置とを示す信号S_(1)のための入力29を有する計算装置26をローラ送り出し機構19のその時々の時点の駆動速度を検出するために備えたことを特徴とする特許請求の範囲第1項または第2項に記載のマガジン緯糸給糸装置。
・・・
6 計算装置26が所望の糸の伸長のような補正値のための調整入力33を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項?第5項のいずれか1項に記載のマガジン緯糸給糸装置。」(特許請求の範囲参照)

(2)「第1図のマガジン緯糸給糸装置は図示しない経編機の前方において経編機と接続して配されている。二つの搬送装置1,2が経編機の幅と同じ間隔をおいて配設されている。これらの搬送装置は複数の取り付け具3,4を前後に有しており、平行に引張された緯糸を経編機の編針列に供給する。
台車6は、両搬送装置1,2の間において経路7上を二重矢印9により示す方向において、駆動装置8により往復運動可能である。前記台車は複数の案内素子10を具備し、これらの素子は糸群11の緯糸a?dを各1本ずつ案内する。前記の緯糸の糸群はローラよりなる方向転換装置12を介して送られる。台車6の駆動装置8は機械的カップリング13を介して経編機の主軸に連結されている。・・・
糸群11の糸はクリール17のスプール16から引き出される。この糸は、ローラ送り出し機構19に至る前に、ユニット18によって示される一般的な制動・伸長装置を通過する。前記送り出し機構は2つのローラ20,21を有する。これらのローラは、歯車22,23を介して互いに連続されており、制動可能な直流モータ24によって駆動される。従って、緯糸はローラ送り出し機構19によって予め与えられた速度によりスプール16から引き出された台車に供給される。
直流モータ24は調整部材25により速度を可変に制御される。この調整部材25は、記憶装置27を具備するディジタル計算装置26から命令を受け取る。台車6の一定の位置に関係付けられた値を入力28を介して前記記憶装置27に手動で入力することができる。計算装置26は入力29を有し、この入力を介して台車の速度と位置を示す信号S_(1)がインパルス発生器30から供給され、このインパルス発生器は主軸14の回転に対応してそれぞれ所定の回転角につき1つのインパルスを発生する。また第二の入力31を介して、インパルス発生器32からローラ21のその時々の時点の周速度を示す信号S_(2)が供給される。第三の入力33を介しては、例えば、所定の糸の伸長の調整のために補正値の入力が可能である。従って、計算装置26は、入力信号S_(1)と、前記信号によって伝達された台車の位置に対応する記憶装置27からの計算値と、前記信号S_(1)から推定される台車の速度と、また必要に応じては、補正値とから、ローラ送り出し機構19の駆動装置の目標値を算出する。この目標値は実際値S_(2)と比較され、これに応じてモータ24の駆動速度が変更される。このように計算機26は制御装置としても働く。」(第3頁左欄24行-同右欄34行参照)

以上の記載によると、引用例1には、
「機械の幅の間隔を介して配設された2つの搬送装置と、連続する緯糸を一方の搬送装置から他方の搬送装置へと送り且つ再び戻す台車6と、前記台車6の運動に応じて駆動されて方向転換装置を介して緯糸を供給するローラ送り出し機構19とからなる経編機用マガジン緯糸給糸装置を備えた経編機であって、
前記各搬送装置は複数の取り付け具3,4を前後に有しており、平行に引張された緯糸を経編機の編針列に供給し、
前記台車6の速度と位置とを示す信号S_(1)のための入力29を有する計算装置26をローラ送り出し機構19のその時々の時点の駆動速度を検出するために備え、計算装置26が所望の糸の伸長のような補正値のための調整入力33を有し、ローラ送り出し機構19の駆動が、その時々の時点の台車6の速度と位置とを考慮して連続的に可変である経編機用マガジン緯糸給糸装置を備えた経編機。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明1の「緯糸」、「ローラ送り出し機構19」、「計算装置26」及び「経編機」は、それぞれ本願発明の「よこ糸」、「電動式給糸器」、「電子制御装置」及び「編機」に相当し、
また、引用発明の「台車6」と本願発明の「よこ糸バー」とは、よこ糸を編針に掛けるためによこ糸を案内する「よこ糸案内部材」である限りでは一致し、
引用発明は、計算装置26が所望の糸の伸長のような補正値のための調整入力33を有することから、本願発明のよこ糸の送出し長を調整するための「補正装置」を備えているものと認められることより、両者は、
「編針と、少なくとも1本のよこ糸を少なくとも1つの編針に掛けるための少なくとも1つのよこ糸案内部材と、よこ糸用の電動式給糸器と、製造しようとするテキスタイル材用の編機を制御するための電子制御装置とを備えた編機であって、前記制御装置が、よこ糸案内部材の行程に従って供給されるよこ糸の送出し長を設定するために、制御手段を有しており、前記制御装置が、少なくとも1回のよこ糸の挿入のために、少なくとも1本のよこ糸の前記送出し長を調整するための補正装置を有する経編機。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;本願発明では、よこ糸案内部材が、よこ糸バーであるのに対し、引用発明では、台車である点。

相違点2;本願発明では、テキスタイル材用の取出し装置を備えているのに対し、引用発明では、そのような取出し装置を備えていることが特定されていない点。

相違点3;本願発明では、1本のよこ糸としてゴム糸を有し、該ゴム糸は他のよこ糸より下方の位置で供給されているのに対し、引用発明では、緯糸としてゴム糸を備えていることが特定されていない点。

相違点4;本願発明では、制御装置が、テキスタイル材用のパターンプログラムに基づいて編機を制御し、供給されるよこ糸の送出し長が、パターンプログラムから事前設定され、また、補正装置でのよこ糸の送出し長の調整が、補正係数を個別に重ね合わせ、手動的に作動可能であるのに対し、引用発明では、計算装置26が、そのようなパターンプログラムを備えているか否か明確でなく、また、補正値のための補正入力が、補正係数を個別に重ね合わせているか否か、手動的に作動可能か否かも明確でない点。

5.判断
上記各相違点について検討すると、
・相違点1について
編針に掛けるためによこ糸を案内するのに、よこ糸バーを用いることは、本願出願前周知の技術(例えば、特表2001-511488号公報、特開平5-195392号公報参照)であるので、
引用発明の台車に換え、上記周知のよこ糸バーを用いることにより、上記相違点1の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
編機において、編まれた編物を取出す装置を設けることは、例を挙げるまでもなく本願出願前周知の技術であるので、
引用発明において、編まれた編物を取出す装置を設け、上記相違点2の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点3について
編機において、緯糸にゴム糸を用いることは周知の技術(例えば、特開平5-195392号公報、特開昭51-23353号公報参照)であり、また、該ゴム糸を供給する位置は、設計上適宜に決めうる事項と認められるので、
引用発明において、1本の緯糸としてゴム糸を備え、また、該ゴム糸を他の緯糸より下方の位置で供給し、上記相違点3の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点4について
編機を、制御装置により編物のパターンプログラムに基づいて制御することは、本願出願前周知の技術(例えば、特表平11-513446号公報、特開平5-230744号公報参照)であり、また、補正のために補正係数を用いること、補正係数を個別に重ね合わせること、さらには、補正装置を手動的に作動可能となすことは、いずれも当業者が設計上適宜になす程度のことと認められることより、
引用発明において、計算装置26がパターンプログラムに基づいて経編機を制御するようになし、また、補正値のための補正入力において、個別に重ね合わせる補正係数を用い、さらに、補正装置を手動的に作動可能となし、上記相違点4の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-13 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-09-28 
出願番号 特願2006-515620(P2006-515620)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 谷治 和文
熊倉 強
発明の名称 編機  
代理人 有原 幸一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  

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