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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1232242
審判番号 不服2008-3591  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2011-02-16 
事件の表示 特願2006- 60348「ユーザインタフェース提供方法及びネットワークシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日出願公開,特開2006-209791〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2001年7月21日(パリ条約による優先権主張 2000年7月21日,米国(US) 及び 2000年7月21日,米国(US))を国際出願日とする特願2002-514725号の一部を平成18年3月6日に新たな特許出願としたものであって,平成18年11月1日付け拒絶理由通知に対して,平成19年5月7日付けで手続補正がなされ,その後平成19年11月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成20年2月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年3月17日付けで手続補正がなされたものである。


第2 平成20年3月17日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年3月17日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[補正却下の決定の理由]
(1)本件補正後の請求項3に係る発明
本件補正により,少なくとも特許請求の範囲の請求項3は次のとおり補正された。

「遠隔アクセス装置に対するサービスを行うためのネットワークシステムにおいて,
通信媒体を経て相互接続される第1装置のローカルネットワークと,
(a)装置情報を含む情報を前記ローカルネットワークに現在接続された1つ以上の前記第1装置から獲得し,(b)前記1つ以上の第1装置それぞれの前記装置情報と関連する少なくとも1つの参照を含む最上位レベルユーザインタフェース叙述を生成すべく構成される少なくとも1つの前記第1装置内のユーザインタフェース叙述生成エージェントと,
前記遠隔アクセス装置と通信し,前記遠隔アクセス装置に前記最上位レベルユーザインタフェース叙述を伝送すべく構成される前記ローカルネットワークでのインタフェース装置と,を含み,
前記遠隔アクセス装置は,ローカルネットワークとのユーザ相互作用のために前記最上位レベルユーザインタフェース叙述に基づいて最上位レベルユーザインタフェースをディスプレイすべく構成され,
前記ローカルネットワークにより提供されるサービスと関連する前記ユーザインタフェース叙述内のそれぞれの参照は,前記ローカルネットワークでの前記装置の装置情報に対する少なくとも1つのハイパーテキストリンクを含み,
前記ユーザインタフェース叙述生成エージェントは,ユーザによる装置制御のための最上位レベルのユーザインタフェースページを独立的に生成し,
前記アクセス装置は前記最上位レベルユーザインタフェースを用いて前記第1装置によって生成及び貯蔵されている装置制御インタフェースディスクリプションを獲得できることを特徴とするユーザインタフェース提供方法。」

本件補正は,補正前の請求項3に記載された内容のうち,ユーザインタフェース叙述生成エージェントについての「ユーザインタフェース叙述を生成すべく構成される」を「最上位レベルユーザインタフェース叙述を生成すべく構成される」と限定し,インタフェース装置についての「前記ユーザインタフェース叙述を伝送すべく構成される」を「前記最上位レベルユーザインタフェース叙述を伝送すべく構成される」と限定し,遠隔アクセス装置についての「前記ユーザインタフェース叙述に基づいてユーザインタフェースをディスプレイすべく構成され」を「前記最上位レベルユーザインタフェース叙述に基づいて最上位レベルユーザインタフェースをディスプレイすべく構成され」と限定するとともに「前記アクセス装置は前記最上位レベルユーザインタフェースを用いて前記第1装置によって生成及び貯蔵されている装置制御インタフェースディスクリプションを獲得できること」という記載を追加してアクセス装置を限定し,さらに,補正前の「ネットワークシステム」を「ユーザインタフェース提供方法」へ変更するものである。
そして,本件補正後の上記請求項3に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)の「ユーザインタフェース提供方法」は,「ネットワークシステムにおいて」の「ユーザインタフェース提供方法」であるから,補正前の「ネットワークシステム」を「ユーザインタフェース提供方法」へ変更する補正事項は,特許請求の範囲を実質的に変更または拡張するものではなく(後述する「第2 (4)相違点についての判断」なお書きの指摘も参照。),本件補正は,全体として,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本願補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。


(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-187061号公報(平成11年(1999年)7月9日公開。以下,「刊行物」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(ア)「【0032】本発明は,上記事情を考慮してなされたもので,上記第1の問題点を解決するために,特定のネットワークに依存せず,統一的なサービス提供環境を実現することが可能な通信装置,サービス登録方法およびサービス提供方法を提供することを目的とする。
【0033】また,上記第2の問題点を解決するために,本発明は,アドレス体系の異なるネットワーク(例えば,IPv4とIPv6,プライベートアドレスとIPv4,プライベートアドレスとIPv6等)を相互接続した場合でも,各ネットワークにおいて提供されているサービスを他のネットワークからでもアクセス可能にする通信装置を提供することを目的とする。」(第7ページ第12欄第44行?第8ページ第13欄第5行)

(イ)「【0430】(第5の実施形態)図51は,本発明の第5の実施形態に係る通信システムの構成例を示したもので,第1のネットワーク(例えばIEEE1394バスで構成されるホームネットワーク)2010および第2のネットワーク(例えば公衆網2101上のインターネット)が,AV接続装置2201を介して相互接続されている。以下,第1のネットワーク2010をホームネットワーク2010,第2のネットワーク2101をインターネット2101と呼ぶ。また,ホームネットワーク2010に接続されている各端末装置はインターネット処理機能をもつ情報家電であるとする。
【0431】AV接続装置2201は,ホームネットワーク2010とインターネット2101とを接続するゲートウエイの役割を持ち,後述するように,ホームネットワークやインターネットの終端機能,ルータ機能,プロトコル変換機能,代理サーバ機能などを持つ。
【0432】ホームネットワーク2010を構成するIEEE1394バスには,パーソナルコンピュータ(PC)2001,プリンタ2002,DVDプレーヤ2003が接続されている。インターネット2101には,IP通信を行うことのできるIP端末2102が接続されている。もちろん,上記以外の端末装置がホームネットワーク2010,インターネット2101に接続されていてもよい。
【0433】図51において,全ての端末装置はインターネット端末,即ちIPアドレスを持ち,IP通信を行うことができる端末装置である。ただし,ホームネットワーク2010を構成するIEEE1394バスは,プライベートIPアドレス空間のアドレスで運用されており,インターネット2102はグローバルIPアドレス(例えばIPv4)空間で運用されている。IP端末2101のIPアドレスは「G.2」であるとする。一方,ホームネットワーク2010上の各装置のアドレスとしては,プライベートサブネットアドレス「P.0」を持ち,PC2001が「P.1」,プリンタ2002が「P.2」,DVDプレーヤ2003が「P.3」であるとする。
【0434】AV接続装置2201は,アドレス体系の異なるこれら2つのネットワークに接続されているので,2つの異なるアドレス体系のアドレスを有する。すなわち,ホームネットワーク2010側のIPアドレスが「P.254」で,インターネット2101側のIPアドレスが「G.1」であるとする。
【0435】図52は,AV接続装置2201の構成例を示したものである。AV接続装置2201は,ホームネットワーク2010を構成するIEEE1394バスと接続するためのインタフェースを司る1394インタフェース(I/F)2202,インターネット2101と接続するためのインタフェースを司るインターネットインタフェース(I/F)2205,インターネットパケットのルーチング処理や,グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスとの間のアドレス変換等を行うIP処理部2202,ホームネットワーク2010内のサービスを検出,収集し,これらサービスをインターネット2101側に対してホームページ処理部2204を通じて提示(広告)するサービスロケーション代理処理部2203,ホームネットワーク2010上の装置,サービスについて,インターネット2101側からの遠隔制御を行うことができるようなホームページを生成し,これを要求に応じて配送するホームページ処理部2204から構成される。」(第39ページ第75欄第43行?第40ページ第77欄第3行)

(ウ)「【0439】次に,図53に示すシーケンスを参照して,インターネット2101上のIP端末2102から,ホームネットワーク2010にアクセスし,例えばDVDプレーヤ2003の遠隔操作を行う場合を例にとり,AV接続装置2201の処理動作について説明する。
【0440】まず,AV接続装置2201のサービスロケーション代理処理部2203は,ホームネットワーク2010上のサービスロケーション情報を収集する(ステップS5001?ステップS5003)。サービスロケーション情報とは,ホームネットワーク2010上にどのようなサービスあるいは端末装置が存在しているかを示す情報である。サービスロケーション情報の収集を行う方法としては,いくつかの方法が考えられる。」(第40ページ第78欄第7?20行)

(エ)「【0441】ここでは,例えば,図12に示したようなサービスロケーションプロトコルを用いて,ホームネットワーク2010上のサービスロケーション情報を収集するものとする。」(第40ページ第78欄第29?32行)

(オ)「【0443】ここで収集されたホームネットワーク2010上で提供されているサービスに関する情報(より具体的には,ホームネットワーク2010上の端末装置のアドレスと当該装置により提供されるサービスのポート番号(RFC1340で規定))を基に,図54のフローチャートに示すような処理動作を行う。
【0444】AV接続装置2201は,ホームネットワーク2010の所有者(例えばAさんとする)宅にどのようなサービスや端末装置が存在するのかを説明するホームページをホームページ処理部2204にて作成する(ステップS5101?ステップS5102)。
【0445】このホームページは,例えば,図59に示すようなもので,インターネット2101上の任意の端末装置から,Aさん宅のURL(Uniform Resource Locator),すなわち,例えば「http://G.1」にアクセスすると表示されるホームページである。このホームページから,例えば,CGI(Common Gate Way)プログラムにより,Aさん宅に存在している各サービスや端末装置を操作することができるようなユーザインタフェースである。実際には,このホームページから,ホームネットワーク2010上の各端末装置に対してリンクが張られており,そのオブジェクトをクリックすると,次には各端末装置のホームページに接続され,各端末装置が提供する,その端末装置の操作スイッチ等を遠隔操作することが可能となるホームページが表示される仕組みになっている。
【0446】次に,サービスロケーション代理処理部2203は,先に収集されたサービス,あるいは端末装置のそれぞれについて,独自の論理多重識別子,すなわち,例えば,RFC1340で規定されているポート番号(ウエルノウンポート番号ではなく,動的に設定可能なポート番号)を割り当てていく(ステップS5104)。以下,ホームネットワーク2010上でもともと定めれれているポート番号を第1のポート番号と呼び,ホームネットワーク2010上のサービスに対しサービスロケーション代理処理部2203で独自に割り当てられるポート番号を,ホームネットワーク2010上でもともと定めれれているポート番号とは区別するために第2のポート番号と呼ぶ。」(第40ページ第78欄第50行?第41ページ第79欄第39行)

(カ)「【0448】AV接続装置2201のグローバルユニークIPアドレスと,ホームネットワーク2010上で提供される各サービスに割り当てられた第2のポート番号と,ホームネットワーク2010上の当該サービスに対する論理多重識別子としての第1のポート番号と,当該サービスを提供する装置のプライベートIPアドレスとの対応関係は,アドレス・ポート番号対応テーブル2207に登録される(ステップS5105)。」(第41ページ第80欄第4?11行)

(キ)「【0450】例えば,DVDプレーヤ2003の場合,ホームネットワーク2010内でのDVDプレーヤのサービス(IPアドレス(プライベートIPアドレス)=P.3,第1のポート番号=80でDVDプレーヤにより提供されるhttpサービスであると,サービスロケーションプロトコルにより解釈される)には,インターネット2101側に対しては,AV接続装置2201のグローバルIPアドレス「G.1」で第2のポート番号「2000」が割当てられている。
【0451】このようなアドレス・ポート番号変換テーブル2207の作成が,Aさん宅のサービスの各々について行われる。この各々について,Aさん宅のホームページへの記述が行われる。
【0452】Aさん宅の全てのサービスについて,テーブル2207への登録が終わった時点で,アドレス・ポート番号変換テーブル2207の作成,及びAさん宅のホームページの作成が終了する(ステップS5106)。
【0453】さて,作成されたアドレス・ポート番号変換テーブル2207は,AV接続装置2201内をIPパケットが通過する際,IPアドレスとポート番号の変換処理を行う際に用いられる。図58を参照して,アドレス・ポート番号変換テーブル2207を用いた,IPアドレスとポート番号の変換処理について具体的に説明する。例えばインターネット2101側から宛先IPアドレスが「G.1」,宛先ポート番号が「2000」であるようなIPパケットは,テーブル2207を参照することにより,宛先IPアドレスが「P.3」,宛先ポート番号が「80」であるようなIPパケットに変換されて,ホームネットワーク2010側に送出される。逆に,ホームネットワーク110側から送信元IPアドレスが「P.3」,送信元ポート番号が「80」であるようなIPパケットは,送信元IPアドレスが「G.1」,送信元ポート番号が「2000」であるようなIPパケットに変換されて,インターネット2101に送出される。
【0454】さて,この様なアドレス・ポート番号変換テーブル2207,及びAさん宅のホームページの作成を終了したAV接続装置2201は,このホームページをAさん宅のホームページとしてインターネット2101上に公開する(図59参照)。」(第41ページ第80欄第22行?第42ページ第81欄第12行)

(ク)「【0455】次に,インターネット2101上のIP端末2102のユーザが,Aさん宅のDVDプレーヤ2003の遠隔操作を行う場合について説明する。」(第42ページ第81欄第13?15行)

(ケ)「【0457】まず,IP端末2102はAV接続装置2201に対して,Aさん宅のホームページの送付を要求するため,認証手続きを行う(図53のステップS5004)。」(第42ページ第81欄第22?25行)

(コ)「【0459】次に,IP端末2102は,AV接続装置104に対して,Aさん宅のホームページの送付を要求する(ステップS5005)。パケットフィルタ2208で当該ホームページの送付要求のパケットのソースアドレスがパケットフィルタテーブル2209に登録されているか否かをチェックし(ステップS5006),当該ソースアドレスがパケットフィルタテーブル2209に登録されている場合に限り,当該パケットはホームページ処理部2204に渡され,当該要求に応じて,ホームページ処理部2204は,IP端末2102に対して,Aさん宅のホームページの送付を行う(ステップS5007)。
【0460】ここで送付されるホームページには,図59に示したように,ホームネットワーク2010上のDVDプレーヤ2003,プリンタ2002,PC2001のそれぞれのホームページへのリンクが付いている。例えば,図59のホームページ上の「DVDプレーヤ」という文字あるいは絵にはDVDプレーヤ2003へリンクされている。実際のリンク先のアドレスはAV接続装置2201のグローバルIPアドレス「G.1」の第2のポート番号「2000」となっており,形式上は,AV接続装置2201がホームネットワーク2010上の装置へアクセスするための代理サーバとなっている。これは,もちろん,IP端末2102からは認識されていない。しかしながら,代理サーバ処理とは違い,実際にAV接続装置2201が行う処理は,後述のようにIPマスカレード処理,即ちIPアドレスとポート番号の変換処理である。
【0461】さて,IP端末2102のユーザは,DVDプレーヤ2003の遠隔操作をするべく,DVDプレーヤのホームページの送出要求を送出する。例えば,図59に示したホームページ上の「DVDプレーヤ」という文字あるいは絵をクリックすることにより,DVDプレーヤのホームページの送出要求のIPパケットが送出される。このパケットの宛先は,宛先IPアドレスが「G.1」,宛先ポート番号が「2000」である(ステップS5008)。」(第42ページ第81欄第34行?第82欄第20行)

(サ)「【0462】このIPパケットをAV接続装置2201が受信したときの処理動作,すなわち,図53のステップS5009?ステップS5010までのパケットフィルタリング及びアドレス・ポート番号変換処理について図56に示すフローチャートを参照して説明する。
【0463】AV接続装置2201は,受信したIPパケットの宛先アドレスを参照して自分宛てであることを確認すると(ステップS5201),まず,パケットフィルタテーブル2209を参照してパケットフィルタリング処理を行う(ステップS5202)。当該パケットのソースアドレスがパケットフィルタテーブル2209に登録されていれば,次に,当該パケットの宛先IPアドレスと宛先ポート番号との組がアドレス・ポート番号変換テーブル2207に登録されているか否かをチェックする(ステップS5203)。登録されていれば,アドレス・ポート番号変換テーブル2207に従って,当該宛先IPアドレス及び宛先ポート番号を,対応するホームネットワーク側のIPアドレス(プライベートIPアドレス)及び第1のポート番号に差し替え(ステップS5204),ホームネットワーク2010へ当該IPパケットを送出する(ステップS5205)。この様にして,グローバルIPアドレスおよび第2のポート番号から,プライベートアドレスおよび第1のポート番号へのアドレス変換が行われる。」(第42ページ第82欄第21?44行)

(シ)「【0465】図53の説明に戻り,アドレス・ポート番号変換処理(IPマスカレード処理)が施されて,ホームネットワーク2010側へ送出されたIPパケットは,DVDプレーヤ2003に到達し(ステップS5011),DVDプレーヤ2003はIP端末2102のグローバルIPアドレスを宛先アドレスとしてDVDプレーヤ2003のホームページを送付する。その際のIPパケットの送信元IPアドレスはプライベートIPアドレス「P.3」,送信元ポート番号は第1のポート番号「80」である(ステップS5012)。」(第42ページ第82欄第49行?第43ページ第83欄第8行)

(ス)「【0468】図53の説明に戻り,アドレス・ポート番号変換処理(IPマスカレード処理)が施されて,インターネット2101側へ送出されたIPパケットは,IP端末2102に到達し(ステップS5014),IP端末2102にDVDプレーヤ2003のホームページが表示され,この画面を使って,IP端末2102のユーザはDVDプレーヤ2003の遠隔操作を行うことになる。」(第43ページ第83欄第32?39行)


したがって,刊行物には,以下の発明(以下,「刊行物記載発明」という。)が記載されていると認められる。

「ホームネットワーク2010およびインターネット2101が,AV接続装置2201を介して相互接続されている通信システムであって,
ホームネットワーク2010を構成するIEEE1394バスには,パーソナルコンピュータ(PC)2001,プリンタ2002,DVDプレーヤ2003と,これら以外の端末装置が接続され,
インターネット2101には,IP通信を行うことのできるIP端末2102と,これ以外の端末装置が接続され,
インターネット2101上のIP端末2102から,ホームネットワーク2010にアクセスし,例えばDVDプレーヤ2003の遠隔操作を行う場合に,
まず,AV接続装置2201のサービスロケーション代理処理部2203は,ホームネットワーク2010上のサービスロケーション情報,すなわちホームネットワーク2010上にどのようなサービスあるいは端末装置が存在しているかを示す情報を収集し(ステップS5001?ステップS5003),
ここで収集されたホームネットワーク2010上で提供されているサービスに関する情報(より具体的には,ホームネットワーク2010上の端末装置のアドレスと当該装置により提供されるサービスのポート番号(RFC1340で規定))を基に,AV接続装置2201は,ホームネットワーク2010の所有者(以下,単に「所有者」という。)宅にどのようなサービスや端末装置が存在するのかを説明するホームページをホームページ処理部2204にて作成し(ステップS5101?ステップS5102),
このホームページ(図59)は,インターネット2101上の任意の端末装置から,所有者宅のURL,すなわち,「http://G.1」にアクセスすると表示されるホームページであり,このホームページから,例えば,CGIプログラムにより,所有者宅に存在している各サービスや端末装置を操作することができるようなユーザインタフェースであり,実際には,このホームページから,ホームネットワーク2010上の各端末装置に対してリンクが張られており,そのオブジェクトをクリックすると,次には各端末装置のホームページに接続され,各端末装置が提供する,その端末装置の操作スイッチ等を遠隔操作することが可能となるホームページが表示される仕組みになっており,
次に,サービスロケーション代理処理部2203は,先に収集されたサービス,あるいは端末装置のそれぞれについて,独自の論理多重識別子,すなわち,例えば,RFC1340で規定されているポート番号を割り当ててゆき(ステップS5104),AV接続装置2201のグローバルユニークIPアドレスと,ホームネットワーク2010上のサービスに対しサービスロケーション代理処理部2203で独自に割り当てられた第2のポート番号と,ホームネットワーク2010上でもともと定められている第1のポート番号と,当該サービスを提供する装置のプライベートIPアドレスとの対応関係は,アドレス・ポート番号対応テーブル2207に登録され(ステップS5105),
DVDプレーヤ2003の場合,ホームネットワーク2010内でのDVDプレーヤのサービス(IPアドレス(プライベートIPアドレス)=P.3,第1のポート番号=80でDVDプレーヤにより提供されるhttpサービスであると,サービスロケーションプロトコルにより解釈される)には,インターネット2101側に対しては,AV接続装置2201のグローバルIPアドレス「G.1」で第2のポート番号「2000」が割当てられており,
このようなアドレス・ポート番号変換テーブル2207の作成が,所有者宅のサービスの各々について行われ,この各々について,所有者宅のホームページへの記述が行われ,この様なアドレス・ポート番号変換テーブル2207,及び所有者宅のホームページの作成を終了したAV接続装置2201は,このホームページ(図59)を所有者宅のホームページとしてインターネット2101上に公開し,
次に,インターネット2101上のIP端末2102は,AV接続装置104に対して,所有者宅のホームページの送付を要求し(ステップS5005),
当該要求に応じて,ホームページ処理部2204は,IP端末2102に対して,所有者宅のホームページの送付を行い(ステップS5007),ここで送付されるホームページ(図59)には,ホームネットワーク2010上のDVDプレーヤ2003,プリンタ2002,PC2001のそれぞれのホームページへのリンクが付いており,
IP端末2102のユーザは,DVDプレーヤ2003の遠隔操作をするべく,DVDプレーヤのホームページの送出要求を送出し,例えば,ホームページ(図59)上の「DVDプレーヤ」という文字あるいは絵をクリックすることにより,DVDプレーヤのホームページの送出要求のIPパケットが送出され,このパケットの宛先は,宛先IPアドレスが「G.1」,宛先ポート番号が「2000」であり(ステップS5008),
AV接続装置2201は,受信したIPパケットの宛先アドレスを参照して自分宛てであることを確認し(ステップS5201),当該パケットの宛先IPアドレスと宛先ポート番号との組がアドレス・ポート番号変換テーブル2207に登録されていれば,グローバルIPアドレスおよび第2のポート番号から,プライベートアドレスおよび第1のポート番号へのアドレス変換を行い,
アドレス・ポート番号変換処理が施されて,ホームネットワーク2010側へ送出されたIPパケットは,DVDプレーヤ2003に到達し(ステップS5011),DVDプレーヤ2003はIP端末2102のグローバルIPアドレスを宛先アドレスとしてDVDプレーヤ2003のホームページを送付し,
アドレス・ポート番号変換処理が施されて,インターネット2101側へ送出されたIPパケットは,IP端末2102に到達し(ステップS5014),IP端末2102にDVDプレーヤ2003のホームページが表示され,この画面を使って,IP端末2102のユーザはDVDプレーヤ2003の遠隔操作を行うことになる,
通信システム。」


(3)本願補正発明と刊行物記載発明との対比

刊行物記載発明の「IP端末2102」は,インターネット2101上から,ホームネットワーク2010にアクセスし,例えばDVDプレーヤ2003の遠隔操作を行うものであるから,本願補正発明の「遠隔アクセス装置」に相当する。

刊行物記載発明のパーソナルコンピュータ(PC)2001,プリンタ2002,DVDプレーヤ2003と,これら以外の端末装置である「ホームネットワーク2010上の各端末装置」,及びIEEE1394バスに各端末装置が接続されて構成される「ホームネットワーク2010」は,それぞれ本願補正発明の「第1装置」,及び「通信媒体を経て相互接続される第1装置のローカルネットワーク」に相当する。

刊行物記載発明の「サービスロケーション情報」は,ホームネットワーク2010上の端末装置のアドレスと当該装置により提供されるサービスのポート番号を含んでいるから,本願補正発明の「装置情報」に相当し,刊行物記載発明のサービスロケーション代理処理部2203がホームネットワーク2010上のサービスロケーション情報を収集することは,本願補正発明の「(a)装置情報を含む情報を前記ローカルネットワークに現在接続された1つ以上の前記第1装置から獲得」することに相当する。
刊行物記載発明のホームページ処理部2204が行うホームページの作成が,HTML文書(本願補正発明の「ユーザインタフェース叙述」に相当する。)の生成を伴うことは明らかであり,また,作成されたホームページ(図59)からホームネットワーク2010上の各端末装置に対して張られている「リンク」は,そのオブジェクトをクリックすると,次には各端末装置のホームページに接続されるから,本願補正発明の「前記1つ以上の第1装置それぞれの前記装置情報と関連する少なくとも1つの参照」に相当し,さらに,当該ホームページ(図59)は,ユーザインタフェースであり,ホームネットワーク2010の所有者宅のURLにアクセスすると最初に表示されるものと解され,各端末装置のホームページの上位ページ,すなわち本願補正発明の「最上位レベルユーザインタフェース」に相当するといえるから,刊行物記載発明の「ホームページ処理部2204」がホームページ(図59)を作成することは,本願補正発明の「(b)前記1つ以上の第1装置それぞれの前記装置情報と関連する少なくとも1つの参照を含む最上位レベルユーザインタフェース叙述を生成す」ることに相当する。
したがって,サービスロケーション代理処理部2203及びホームページ処理部2204を有する刊行物記載発明の「AV接続装置2201」は,本願補正発明の「ユーザインタフェース叙述生成エージェント」と,「(a)装置情報を含む情報を前記ローカルネットワークに現在接続された1つ以上の前記第1装置から獲得し,(b)前記1つ以上の第1装置それぞれの前記装置情報と関連する少なくとも1つの参照を含む最上位レベルユーザインタフェース叙述を生成すべく構成される」「ユーザインタフェース叙述生成エージェント」である点で,一致する。

刊行物記載発明のAV接続装置2201が作成するホームページ(図59)は,リンクのオブジェクトをクリックすると,次には各端末装置のホームページに接続され,各端末装置を遠隔操作することが可能となっているから,刊行物記載発明のAV接続装置2201がホームページ(図59)を作成することは,本願補正発明の「前記ユーザインタフェース叙述生成エージェントは,ユーザによる装置制御のための最上位レベルのユーザインタフェースページを独立的に生成し,」と,「前記ユーザインタフェース叙述生成エージェントは,ユーザによる装置制御のための最上位レベルのユーザインタフェースページを」「生成し,」の点で共通する。

刊行物記載発明の「AV接続装置2201」は,IP端末2102から所有者宅のホームページ(図59)の送付を要求されると,当該要求に応答じてホームページ処理部2204からIP端末2102に対して,所有者宅のホームページ(図59),実質的には当該ホームページ(図59)を表示するためのHTML文書,の送付を行うから,本願補正発明の「前記遠隔アクセス装置と通信し,前記遠隔アクセス装置に前記最上位レベルユーザインタフェース叙述を伝送すべく構成される前記ローカルネットワークでのインタフェース装置」に相当する。

刊行物記載発明のIP端末2102が,AV接続装置2201からホームページ(図59)を送付され,またユーザがホームネットワーク2010にアクセスし,例えばDVDプレーヤ2003を遠隔操作するために,ホームページ(図59)上の「DVDプレーヤ」という文字あるいは絵をクリック可能に構成されていることは,ホームページ(図59)をディスプレイすることを示しているから,本願補正発明の「前記遠隔アクセス装置は,ローカルネットワークとのユーザ相互作用のために前記最上位レベルユーザインタフェース叙述に基づいて最上位レベルユーザインタフェースをディスプレイすべく構成され」ていることに相当する。

本件補正発明の「ディスクリプション」という用語は,本願明細書段落【0141】の「UI叙述生成エージェント(UIDGA:UI Description Generation Agent)」との記載から,「叙述」と同義であると解されるところ,刊行物記載発明のDVDプレーヤのホームページは,DVDプレーヤという装置を制御するためのユーザインタフェースであるから,刊行物記載発明のIP端末が,ホームページ(図59)上のクリック操作に応じてDVDプレーヤのホームページ送出要求を送出し,その応答として,DVDプレーヤ2003からDVDプレーヤのホームページ,実質的にはDVDプレーヤのホームページを表示するためのHTML文書,を受信することは,本願補正発明の「前記アクセス装置は前記最上位レベルユーザインタフェースを用いて前記第1装置によって生成及び貯蔵されている装置制御インタフェースディスクリプションを獲得できること」と,「前記アクセス装置は前記最上位レベルユーザインタフェースを用いて前記第1装置によって」「貯蔵されている装置制御インタフェースディスクリプションを獲得できる」点で一致する。

刊行物記載発明では,ホームページ(図59)上の「DVDプレーヤ」という文字あるいは絵をクリックすることにより,IPアドレスが「G.1」,ポート番号が「2000」である宛先に対して,DVDプレーヤのホームページの送出要求のIPパケットが送出されるから,前記「DVDプレーヤ」という文字あるいは絵は,ホームページから,ホームネットワーク2010上の各端末装置に対してリンクが張られたオブジェクトの1つである。
そして,前記「DVDプレーヤ」という文字あるいは絵,及びIPパケットの宛先であるIPアドレス「G.1」,ポート番号「2000」は,所有者宅のホームページを表示するためのHTML文書内に,ハイパーテキストリンクを含む参照として記述が行われるものと解され,ポート番号「2000」は,ホームネットワーク2010内でのDVDプレーヤのサービスに割り当てられたものである。
したがって,刊行物記載発明において当然生成されるといえるHTML文書内の参照が,DVDプレーヤに対応するポート番号「2000」に対するハイパーテキストリンクを含むことは,本願補正発明の「前記ローカルネットワークにより提供されるサービスと関連する前記ユーザインタフェース叙述内のそれぞれの参照は,前記ローカルネットワークでの前記装置の装置情報に対する少なくとも1つのハイパーテキストリンクを含み,」と,「前記ローカルネットワークにより提供されるサービスと関連する前記ユーザインタフェース叙述内のそれぞれの参照は,前記ローカルネットワークでの前記装置の装置情報と対応する情報に対する少なくとも1つのハイパーテキストリンクを含み,」の点において一致する。

そして刊行物記載発明は,ホームネットワーク2010の所有者宅にどのようなサービスや端末装置が存在するのかを説明するホームページ(図59)や,DVDプレーヤのホームページをIP端末2102へ送付し,IP端末2102からインターネットを介してDVDプレーヤ2003を遠隔操作することを可能とするから,「遠隔アクセス装置に対するサービスを行うためのネットワークシステムにおいて」の「ユーザインタフェース提供方法」に関するものである。


したがって,本願補正発明と刊行物記載発明は,以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「遠隔アクセス装置に対するサービスを行うためのネットワークシステムにおいて,
通信媒体を経て相互接続される第1装置のローカルネットワークと,
(a)装置情報を含む情報を前記ローカルネットワークに現在接続された1つ以上の前記第1装置から獲得し,(b)前記1つ以上の第1装置それぞれの前記装置情報と関連する少なくとも1つの参照を含む最上位レベルユーザインタフェース叙述を生成すべく構成されるユーザインタフェース叙述生成エージェントと,
前記遠隔アクセス装置と通信し,前記遠隔アクセス装置に前記最上位レベルユーザインタフェース叙述を伝送すべく構成される前記ローカルネットワークでのインタフェース装置と,を含み,
前記遠隔アクセス装置は,ローカルネットワークとのユーザ相互作用のために前記最上位レベルユーザインタフェース叙述に基づいて最上位レベルユーザインタフェースをディスプレイすべく構成され,
前記ローカルネットワークにより提供されるサービスと関連する前記ユーザインタフェース叙述内のそれぞれの参照は,前記ローカルネットワークでの前記装置の装置情報と対応する情報に対する少なくとも1つのハイパーテキストリンクを含み,
前記ユーザインタフェース叙述生成エージェントは,ユーザによる装置制御のための最上位レベルのユーザインタフェースページを生成し,
前記アクセス装置は前記最上位レベルユーザインタフェースを用いて前記第1装置によって貯蔵されている装置制御インタフェースディスクリプションを獲得できることを特徴とするユーザインタフェース提供方法。」

<相違点1>
ユーザインタフェース叙述生成エージェントについて,本願補正発明では「少なくとも1つの前記第1装置内の」ものであり,また,最上位レベルのユーザインタフェースページを「独立的に」生成するのに対して,刊行物記載発明ではAV接続装置内のものであって,端末装置内のものとは記載されておらず,また,最上位レベルのユーザインタフェースページを「独立的に」生成するとは記載されていない点。

<相違点2>
ハイパーテキストリンクについて,本願補正発明では「前記ローカルネットワークでの前記装置の装置情報に対する」ものであるのに対して,刊行物記載発明では,前記ローカルネットワークでの前記装置の装置情報と間接的に対応するIPアドレス「G.1」,ポート番号「2000」に対するものであって,ローカルネットワークでの装置の装置情報,すなわちプライベートIPアドレス=P.3,第1のポート番号=80,に対するものではない点。

<相違点3>
装置制御インタフェースディスクリプションについて,本願補正発明では第1装置によって「生成及び」貯蔵されているのに対して,刊行物記載発明では,ホームネットワーク2010上の各端末装置に貯蔵はされているものの「生成」されるとは記載されてない点。


(4)相違点についての判断
<相違点1について>
バスあるいはネットワークに現在接続された1つ以上の機器から機器情報を含む情報を獲得し,機器の一覧又はリストを生成する主体を,当該バスあるいはネットワークに現在接続された機器のうち少なくとも1つ,とすることは,周知(特開平10-240666号公報には「前記第一の接続情報機器が,選択された前記第二の接続情報機器に対して前記機種名データを送信するよう要求し,前記表示手段が,受信した機種名データを文字,記号,絵あるいはアイコン等で視覚的に表示し,」(第5ページ第7欄第8?11行),「接続する機器全てに自己情報メモリ313,接続機器メモリ308,通信ペアメモリ309を持たせることにより,どの機器からも他の機器を操作できるようにする。」(第1ページ【解決手段】第6?9行)と記載され,特開平11-55756号公報には,「セレクタ4はネットワークに接続されている全ての機器を監視し,要求があればネットワークに接続されている全ての機器を対象にしてリストを作成する。」(第4ページ第6欄第29?32行),「このようなセレクタ4は,サーバAとしてある機器内もしくは単独の機器としてネットワークに接続されているが,ある機器がネットワークに接続されている他の機器の情報を取得できればその目的を達成するので,このセレクタ4は,単独で存在するのではなく,このような機能を各機器が持つという方法もひとつの手段として考えられる。」(第4ページ第6欄第39?45行)と記載され,特開平11-88865号公報には,「このバス1に接続される各家電機器は,ユーザが直接対話する表示画面とブラウザ機能とを有するクライアントユニットと,サーバ機能を有するサーバユニットとに分けられる。」(第3ページ第3欄第3?6行),「なお,基本的にクライアントユニットはこのシステム内で唯一のものではなく,どのクライアントユニットから操作を行っても同じ内容の操作を行うことができる。」(第4ページ第5欄第17?20行),「クライアントユニットであるホームNC5を起動すると,まずネットワークに接続されているサーバユニットを検索する(ステップ101)。そして,ユーザがリモコンのボタン押下などによる要求を出すことにより,図7に示すようなサーバユニットの一覧表をPDPディスプレイ装置6の表示画面に表示する(ステップ102)。」(第4ページ第5欄第27?33行)と記載されている。)である。
また,前記特開平10-240666号公報に「接続機器のうち任意の一台を操作することにより,リモートで他の機器の制御を行うことのできる機能を持つ機器に関するものである。」(第5ページ第7欄第44?47行)と記載され,さらに図15の画面1301には「接続機器状況」を記載され,「図15の画面1301はこの時の画面表示の例を示している。…(中略)…このとき,コントロール機器(自分自身)をわかりやすくするために他の接続機器と別の色を用いて表示するようにしてもよい。」(第11ページ第19欄第11?19行)と記載されているように,バスあるいはネットワークに接続された接続機器のうち,リモートで他の機器の制御を行うことのできる機能を持った任意の一台において接続機器状況の画面をグラフィック表示する際,接続機器状況の画面のデザインを,該任意の一台において独自に,すなわち「独立的に」生成するようにしてもよいことは,当業者にとって明らかなことである。
したがって,刊行物記載発明に周知技術を適用することによって,AV接続装置2201のサービスロケーション代理処理部2203及びホームページ処理部2204を,AV接続装置2201以外の,少なくとも1つのホームネットワーク2010上の各端末装置内に設けるとともに,各端末装置において最上位レベルのユーザインタフェースページを「独立的に」生成する構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

<相違点2について>
刊行物記載発明は,「本発明は,アドレス体系の異なるネットワーク(例えば,IPv4とIPv6,プライベートアドレスとIPv4,プライベートアドレスとIPv6等)を相互接続した場合でも,各ネットワークにおいて提供されているサービスを他のネットワークからでもアクセス可能にする通信装置を提供する」(上記「(2) (ア)」の段落【0033】を参照。)ために,プライベートIPアドレス及びグローバルIPアドレス間でのアドレス変換を行うものであって,アドレス体系が同一のネットワークを相互接続した場合に他のネットワークからサービスをアクセス可能とすることは,当然要求されているといえるから,刊行物記載発明において,ホームネットワーク2010上の各端末装置それぞれに,インターネット2101上のIP端末2102から直接指定可能なグローバルIPアドレスを割り当て,ハイパーテキストリンクを「前記ローカルネットワークでの前記装置の装置情報に対する」ものとすることは,当業者にとって容易である。

<相違点3について>
ホームページを提供する装置がCGIプログラム等によってホームページを作成することは周知技術であるから,刊行物記載発明において,ホームネットワーク2010上の各端末装置のホームページ,実質的には各端末装置のホームページを表示するためのHTML文書(本願補正発明の「装置制御インタフェースディスクリプション」に相当),がホームネットワーク2010上の各端末装置によって「生成及び」貯蔵される構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。


また,本願補正発明のように構成したことによる効果も,刊行物記載発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって,本願補正発明は,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


なお,請求人は,平成20年5月1日付け手続補正により補正された審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】欄において,「平成20年3月17日付け手続補正書における請求項3において,該請求項の末尾を「ネットワークシステム」と記載すべきところ,誤って「ユーザインタフェース提供方法」と記載してしまいました。請求項3は,平成19年5月7日付け手続補正書において,「ネットワークシステム」として記載されており,誤記であることは明白なものと思料します。」と主張している。
しかしながら,本件補正発明の末尾が「ユーザインタフェース提供方法」と記載された結果,本件補正発明が明りょうでないものとなったとはいえず,本願補正発明はそれ自体明確であって,当該記載が明らかな誤記ということはできないから,本件補正発明を上記「第2 (1)本件補正後の請求項3に係る発明」に記載したとおり認定した。
(なお,仮に本件補正発明の末尾が「ネットワークシステム」であるとしても,当該ネットワークシステムと,本件補正発明(ネットワークシステムにおけるユーザインタフェース提供方法)とは,単に発明の属するカテゴリーが相違するものであって,実質的な技術的事項は相違しないから,本件補正発明の末尾を「ネットワークシステム」に変更した発明もまた,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。)


(5)まとめ
本願補正発明は,上記「(4)相違点についての判断」で示したとおり,特許出願の際独立して特許を受けることができないから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明・刊行物

平成20年3月17日付け手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項3に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年5月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「遠隔アクセス装置に対するサービスを行うためのネットワークシステムにおいて,
通信媒体を経て相互接続される第1装置のローカルネットワークと,
(a)装置情報を含む情報を前記ローカルネットワークに現在接続された1つ以上の前記第1装置から獲得し,(b)前記1つ以上の第1装置それぞれの前記装置情報と関連する少なくとも1つの参照を含むユーザインタフェース叙述を生成すべく構成される少なくとも1つの前記第1装置内のユーザインタフェース叙述生成エージェントと,
前記遠隔アクセス装置と通信し,前記遠隔アクセス装置に前記ユーザインタフェース叙述を伝送すべく構成される前記ローカルネットワークでのインタフェース装置と,を含み,
前記遠隔アクセス装置は,ローカルネットワークとのユーザ相互作用のために前記ユーザインタフェース叙述に基づいてユーザインタフェースをディスプレイすべく構成され,
前記ローカルネットワークにより提供されるサービスと関連する前記ユーザインタフェース叙述内のそれぞれの参照は,前記ローカルネットワークでの前記装置の装置情報に対する少なくとも1つのハイパーテキストリンクを含み,
前記ユーザインタフェース叙述生成エージェントは,ユーザによる装置制御のための最上位レベルのユーザインタフェースページを独立的に生成することを特徴とするネットワークシステム。」


また,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物に関する記載事項は,前記「第2 (2)刊行物」に記載したとおりである。


第4 当審の判断

本願発明は,前記「第2 平成20年3月17日付け手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明において,ユーザインタフェース叙述生成エージェントについての「ユーザインタフェース叙述を生成すべく構成される」を「最上位レベルユーザインタフェース叙述を生成すべく構成される」とした限定を解除し,インタフェース装置についての「前記ユーザインタフェース叙述を伝送すべく構成される」を「前記最上位レベルユーザインタフェース叙述を伝送すべく構成される」とした限定を解除し,遠隔アクセス装置についての「前記ユーザインタフェース叙述に基づいてユーザインタフェースをディスプレイすべく構成され」を「前記最上位レベルユーザインタフェース叙述に基づいて最上位レベルユーザインタフェースをディスプレイすべく構成され」とした限定を解除するとともに「前記アクセス装置は前記最上位レベルユーザインタフェースを用いて前記第1装置によって生成及び貯蔵されている装置制御インタフェースディスクリプションを獲得できること」という記載の追加によるアクセス装置の限定を解除し,さらに,本件補正前の「ネットワークシステム」から「ユーザインタフェース提供方法」への変更を取り消したものである。

そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 (4)相違点についての判断」に記載したとおり,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび

以上のとおり,本願発明は,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-15 
結審通知日 2010-09-21 
審決日 2010-10-04 
出願番号 特願2006-60348(P2006-60348)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千本 潤介  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 清水 稔
圓道 浩史
発明の名称 ユーザインタフェース提供方法及びネットワークシステム  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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