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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1232254
審判番号 不服2008-24151  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-19 
確定日 2011-02-16 
事件の表示 特願2005-338369「アンテナモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 8日出願公開、特開2007- 60612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成17年11月24日(特許法第43条の2第1項に規定するパリ条約の例による優先権主張2005年8月24日、米国)の出願であって、平成19年10月4日付けで拒絶理由が通知され、平成20年1月28日付けで拒絶理由が通知され、同年6月4日付けで手続補正がされたが、同年6月20日付けで拒絶査定され、これに対し、同年9月19日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「アンテナモジュールにおいて、
基板と、
該基板の一側に設けられた少なくとも一つの第1アンテナと、
該基板の別側に設けられた少なくとも一つの第2アンテナと、
を包含し、そのうち、各第1アンテナと各第2アンテナに輻射素子とフィード素子が設置され、該フィード素子の一端が該輻射素子に接続され、該フィード素子の別端が該基板の伝送線に接続されたことを特徴とする、アンテナモジュール。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「アンテナモジュールにおいて、
回路板と、
該回路板の一側に設けられた少なくとも一つの第1アンテナと、
該回路板の別側に設けられた少なくとも一つの第2アンテナと、
を包含し、そのうち、各第1アンテナと各第2アンテナに輻射素子とフィード素子が設けられ、該フィード素子がストリップ型或いは柱形フィード素子とされ、該フィード素子の一端が該輻射素子に接続され、該フィード素子の別端が該回路板の伝送線に接続されたことを特徴とする、アンテナモジュール。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「基板」に関し、「回路板」と下位概念に限定し、また、「設置され」に関し、「設けられ」と明りょうにし、また、「フィード素子」に関し、「該フィード素子がストリップ型或いは柱形フィード素子とされ」と限定を付加して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の平成20年1月28日付け拒絶理由に引用された特開平8-340211号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アレイアンテナに関し、特に水平面内で良好な指向特性が得られ、垂直面内ビームチルトが容易なアレイアンテナに関するものである。」(2頁1欄)

ロ.「【0013】
【実施例】以下実施例を示す添付図面によって詳細に説明する。図1は、アレイアンテナの一実施例としての無指向性アレイアンテナの分解斜視図であり、図2は図1のアレイアンテナの側面からみた部分断面図、図3は図1のアレイアンテナの正面からみた立面図である。
【0014】このアレイアンテナは、金属性導体地板1a,1b同士を対抗させ、両導体地板1a,1b間に絶縁板2a,2bで両面をはさまれたプリント基板3を挟んでいる。前記導体地板1a,1bの外面には、それぞれパッチアンテナ素子6a-6d,6a′-6d′を一定間隔ずつ離して配設している。前記プリント基板3には、片面上にパッチアンテナ素子6a-6d,6a′-6d′に給電するための配線であるストリップライン4,5が形成されている。ストリップライン4は、パッチアンテナ素子6a,6b,6a′,6b′に給電ピン7a,7bを通して信号を供給し、ストリップライン5は、パッチアンテナ素子6c,6d,6c′,6d′に給電ピン7c,7dを通して信号を供給する。したがって、給電ピン7a-7dは特許請求の範囲の短絡導体として機能するものである。
【0015】符号8は、パッチアンテナ素子6a-6d,6a′-6d′を導体地板1a,1bから一定距離離すための絶縁リングである。図4は、図3のA-A線断面図であり、給電ピン7aの両端に接続されたパッチアンテナ素子6a,6a′は、導体地板1a,1bから一定距離保たれている。給電ピン7aは、導体地板1a,1b、絶縁板2a,2b、プリント基板3を貫通する形で図示されているが、実際にはプリント基板3上のストリップライン4の部位4a(図5参照)及びパッチアンテナ素子6a,6a′に半田付けされている。しかし、給電ピン7aにねじを切ってパッチアンテナ素子6a,6a′をナットで締めつけるようにしてもよい。また、給電ピン7aを雄ねじ雌ねじで螺合可能な2つのピースに分け、ストリップライン4を両方から締めつけるようにしてもよい。なお、図4には、符号9で円筒が示されているが、これは、アンテナ全体を保護するレドームであって、図1-図3では図示を省略したものである。
【0016】前記のストリップライン4,5のプリントパターンは、図5に示すように、トリー状に形成されている。詳しくいうと、ストリップライン4の、等インピーダンスで枝分かれした先端は、給電ピン7aを半田付けする先端部4aと、給電ピン7bを半田付けする先端部4bとで構成され、ストリップライン5の、等インピーダンスで枝分かれした先端は、給電ピン7cを半田付けする先端部5cと、給電ピン7dを半田付けする先端部5dとで構成されている。なお、等インピーダンスで枝分かれさせる必要は必ずしもなく、非対称に枝分かれさせてもよい。枝分かれの仕方は、垂直方向の指向性をいかに実現するかに応じて決定される事項である。
【0017】ストリップライン4,5の基部は、可変ビームチルト特性を実現するためそれぞれ独立して配線され、それぞれの基端には、同軸ケーブル又は移相器を接続するためのコネクタ10が装着されている。なお、前記のストリップライン4,5は、導体地板1a,1bで挟まれた構造なので、ストリップライン4,5からの不要放射を防止することができる。
【0018】以上のような構成であるから、パッチアンテナ素子6a-6d,6a′-6d′のそれぞれがパッチ面を構成することになる。正面方向又は裏面方向からみたパッチ面をI1 ,I2 ,II1 ,II2 ということにすると(図2参照)、パッチ面I1 とI2 とが2段に構成され同一信号が供給されて、1つのサブアレイIを構成し、パッチ面II1 とII2 とが2段に構成され同一信号が供給されて、1つのサブアレイIIを構成している。
【0019】さらに、いずれかのサブアレイI,IIに可変移相器を接続し、2つのサブアレイI,IIの信号を分配器で合成することにより、可変ビームチルトアンテナを構成することができる。次に各部の材料、寸法を含む具体的な設計指針を示す。まず、導体地板1a,1bは、アルミニウムで形成され、肉厚は4.5mm、高さは700mmにとっている。この材料でこの厚みがあれば、基地アンテナや移動体アンテナとして直立させても十分な強度を得ることができる。また、その導電性のため接地すれば避雷導体としても使用することができる。
【0020】絶縁板2a,2bは、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡スチロール、発泡ウレタン等の合成樹脂の発泡体を用いることができる。基板3は、ポリイミド又はポリエステルをベースフィルムにし、それに銅箔を施したもので構成されたフレキシブル基板(FPC)である。パッチアンテナ素子6a-6d,6a′-6d′は、通常どおり真鍮又は銅の板で構成されている。
【0021】パッチアンテナ素子の幅をL2 、対向するパッチアンテナ素子間の距離をD、導体地板の幅をL1 とする(図4参照)。導体地板の幅L1 とパッチアンテナ素子の幅L2 との関係によって、パッチアンテナ素子一面の指向性が決定され、対向するパッチアンテナ素子間の距離Dによるアレイファクターの効果を含めて対向するパッチアンテナ素子二面の水平面合成指向性が決定される。
【0022】そして、この水平面合成指向性は前記対向するパッチアンテナ素子間の距離Dが相対的に大きくなれば、正面及び裏面方向の指向性が減少し、距離Dが相対的に小さくなれば、正面及び裏面方向の指向性が増大するという性質があり、前記パッチアンテナ素子一面の指向性と、この対向するパッチアンテナ素子間の距離Dとの選定により、対向するパッチアンテナ素子2面の水平面無指向性が得られる。」(3頁3欄?4頁6欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項イ.、ロ.の【0013】?【0015】の記載、図1乃至図4によれば、アレイアンテナは、金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)を有している。
また、前述の金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)の一側にパッチアンテナ素子(6a?6d)が設けられており、これらをその機能から、アンテナAと呼ぶことは任意である。
また、前述の金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)の別側にパッチアンテナ素子(6a′?6d′)が設けられており、これらをその機能から、アンテナBと呼ぶことは任意である。
また、各アンテナAと各アンテナBは、パッチアンテナ素子(6a?6d,6a′?6d′)と給電ピン(7a?7d)が設けられている。
また、前述の給電ピン(7a?7d)は、柱形であることが見て取れる。
また、前述の給電ピン(7a?7d)の両端は、前述のパッチアンテナ素子(6a?6d,6a′?6d′)に接続され、前述の給電ピン(7a?7d)の中間部は、前述の金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)のストリップライン(4)に接続されている。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「アレイアンテナにおいて、
金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)と、
該金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)の一側に設けられたアンテナAと、
該金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)の別側に設けられたアンテナBと、
を包含し、そのうち、各アンテナAと各アンテナBは、パッチアンテナ素子(6a?6d,6a′?6d′)と給電ピン(7a?7d)が設けられ、該給電ピン(7a?7d)は、柱形給電ピンとされ、該給電ピン(7a?7d)の両端が該パッチアンテナ素子(6a?6d,6a′?6d′)に接続され、該給電ピン(7a?7d)の中間部が該金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)のストリップライン(4)に接続されたアレイアンテナ。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)」と、補正後の発明の「回路板」とは、いずれも、「基板」という点で一致する。
b.引用発明の「アンテナA」、「アンテナB」、「パッチアンテナ素子(6a?6d,6a′?6d′)」、「給電ピン(7a?7d)」、及び「ストリップライン(4)」は、その機能において、補正後の発明の「第1アンテナ」、「第2アンテナ」、「輻射素子」、「フィード素子」、及び「伝送線」にそれぞれ相当する。
c.引用発明の「給電ピン(7a?7d)の両端」と、補正後の発明の「フィード素子の一端」とは、上記b.の対比を考慮すれば、いずれも、「フィード素子の端」である点で一致する。
d.引用発明の「給電ピン(7a?7d)の中間部」と、補正後の発明の「フィード素子の別端」とは、上記b.の対比を考慮すれば、いずれも、「フィード素子の接続部」である点で一致する。
e.引用発明の「アレイアンテナ」は、アンテナモジュールの一種である。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)

「アンテナモジュールにおいて、
基板と、
該基板の一側に設けられた少なくとも一つの第1アンテナと、
該基板の別側に設けられた少なくとも一つの第2アンテナと、
を包含し、そのうち、各第1アンテナと各第2アンテナに輻射素子とフィード素子が設けられ、該フィード素子がストリップ型或いは柱形フィード素子とされ、該フィード素子の端が該輻射素子に接続され、該フィード素子の接続部が該基板の伝送線に接続されたアンテナモジュール。」

(相違点1)

「基板」に関し、
補正後の発明は、「回路板」であるのに対し、引用発明は、「金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)」である点。

(相違点2)

フィード素子の「端」及び「接続部」に関し、
補正後の発明は、フィード素子の「一端」及び「別端」であるのに対し、引用発明は、給電ピン(7a?7d)の「両端」及び「中間部」である点。

そこで、まず、上記相違点1について検討する。
アンテナ一般において、基板に回路板を用いることは、例えば、特開2001-119238号公報(段落24、図1)に開示されているように周知であるから、引用発明の「金属性導体地板(1a,1b)、絶縁板(2a,2b)及びプリント基板(3)」に換えて、補正後の発明のように「回路板」とすることは当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点2について検討する。
アンテナにおいて、フィード素子の一端及び別端を用いることは、例えば、前述の特開2001-119238号公報(段落25、図1)に開示されているように周知であるから、補正後の発明のように「フィード素子の『一端』及び『別端』」とすることは当業者が容易に成し得ることである。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年9月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-15 
結審通知日 2010-09-21 
審決日 2010-10-04 
出願番号 特願2005-338369(P2005-338369)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸田 伸太郎  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 高野 洋
萩原 義則
発明の名称 アンテナモジュール  
代理人 白石 光男  
代理人 魚住 高博  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 湯田 浩一  
代理人 竹本 松司  
代理人 手島 直彦  

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