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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A23K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A23K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1232269
審判番号 不服2009-15301  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-21 
確定日 2011-02-16 
事件の表示 特願2004-545831「高齢ネコ科動物フード」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月 6日国際公開、WO2004/037011、平成18年 2月 2日国内公表、特表2006-503567〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,2003年10月11日(パリ条約による優先権主張2002年10月24日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,「高齢ネコ科動物フード」に関するものと認められる。
そして,本願は,平成21年4月17日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月21日に審判請求がなされたものである。

第2 原査定の拒絶の理由
一方,原査定の拒絶の理由は,概略以下のとおりである。

<理由1>(特許法第36条第4項第1号)
発明の詳細な説明には,請求項1-18に係る発明が,出願人が主張するような効果を奏することを裏付ける具体的データが全く開示されていない。

この点に関連して出願人は,発明の詳細な説明の【0036】?【0040】の記載によって十分に裏付けられている旨主張する。
しかし,実験データとしての記載は,「約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードを摂食するネコが,少なくとも約50%又はそれを超える食餌性タンパク質レベルを含有するフードを摂食しているネコより対応して低い除脂肪体重を有していることが決定された。」しかなく,実験が行われた条件や,その実験結果の具体的データが開示されていない。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1-18に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

<理由2>(特許法第36条第6項第1号)
出願人は,請求項1-18に係る発明は,除脂肪体重保護という課題を解決するものであると主張しているが,発明の詳細な説明には,請求項1-18に係る発明が徐脂肪体重保護の効果を奏することを裏付けるデータを開示していないので,請求項1-18に係る発明が,課題を解決するものであるか否か不明である。
よって,請求項1-18に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。

<理由3>(特許法第29条第2項)
請求項1?18に係る発明は,引用文献1及び2から当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 当審の判断
1.<理由1>について
(1)特許請求の範囲及び明細書の記載内容
平成20年2月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には,以下のとおりの記載がある。

(a)「【請求項1】
ネコ科動物に給餌されるフードであって,
フードの28%?35%の量のタンパク質を含有し,
フードの2.0%?3.5%の量のリジンを更に含有するフード。」

また,本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
(b)「【技術分野】
【0001】
本発明は,一般的にペットフードに,より詳しくは高齢ペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢のペットは,よく世話されていることが多く,概して,高品質で,嗜好性が高く,かつ栄養的にバランスの取れたフードであって,典型的に食餌中に通常,約26重量%を超えるタンパク質を含んでいるものを食している。幸運なことに,獣医学の進歩と,良好な栄養上の利益が高齢ペットに利用可能であり,このようなペットはより長く生きる。しかしながら,正常な生物学的加齢過程のため,時間とともにこのようなペットは加齢を続け,生命維持に必要な除脂肪体重の許容できない部分を喪失する。このような除脂肪体重の喪失は,筋肉及び内部器官の早期の減少をもたらし,不可逆的であることもある。高齢ネコなどの老齢ペットは,若いネコよりも,こうした減少による感受性が高い。この望ましくない減少は,不適切なタンパク質が高齢ネコによりその食餌において摂食されている場合,例えば,高齢ネコの食事中のタンパク質レベルが低減している場合,そしてより顕著には食餌のタンパク質レベルが,約26重量%未満に低下する場合に悪化する。
【0003】
除脂肪体重は,ネコの生化学において極めて重要な役割を演じる。除脂肪体重は,タンパク質ターンオーバーのためのネコの体内の貯蔵庫として存在する(タンパク質は絶えず分解され,新たなタンパク質が生成される)。除脂肪体重は,したがって,ネコの生命に重要なタンパク質,例えば免疫グロブリン,ヘモグロビン,ホルモン及び酵素などをネコが合成するためにアミノ酸を提供する。除脂肪体重は,「消費する窒素の蓄え」を提供するため,除脂肪体重の低減がある場合には,ネコ科動物は,消費する窒素の蓄えが少なくなる。除脂肪体重は,筋肉及び骨を含む,体組織の成長及び維持に必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食餌性タンパク質の減少は,ネコ科動物の免疫機能の縮小と喪失を伴う。免疫系は,ネコ科動物の体内への抗原の侵入に対する主要な防衛の最前線である。免疫機能の縮小と喪失は,ネコに,抗原,細菌及びウイルスの体内への侵入に対する有効な防御ができなくなる可能性をもたらす。除脂肪体重の過度の喪失は,ネコ科動物の望ましくない高い有病率及び死亡率を伴う。」
(c)「【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの側面では,第1の食餌レベル(first dietary level)のタンパク質と,第1の食餌レベルのタンパク質より高い,第2の食餌レベルのタンパク質を含有するペットフードと同等の除脂肪体重保護を維持するのに有効な量の,補助量の少なくとも1種のアミノ酸とを含むペットフードが提供される。
・・・
【0008】
別な側面では,ネコ科動物のフードの一部として,補助量の少なくとも1種のアミノ酸を,約50%のタンパク質を含有する食餌で達成可能なものと同等のネコ科動物除脂肪体重保護を提供するのに有効な量で提供することを含む,ネコ科動物フードを製造するための方法が提供される。」
(d)「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ペットフード及び前記ペットフードを製造する方法の典型的な実施形態を以下に説明する。一実施形態においては,ペットは高齢のネコ科動物であり,ペットフードは,補助量の少なくとも1種のアミノ酸を,ペットの食餌中の低いタンパク質レベルを補うのに十分な量で含むネコ科動物フードである。一実施形態においては,アミノ酸は,リジン及び/又はシステインから選択される。さらに,前記補助量のアミノ酸は,免疫機能及び除脂肪体重を維持し,ネコ科動物に増進した健康利益を提供し,早期の加齢を遅延し,そして,高齢ネコ科動物の筋肉量を維持する。本明細書中には典型的な実施形態が記載されているが,ペットフード及び方法は,これらの特定の実施形態に限定されない。特に,押出成形のペットフードが詳細に説明されているが,以下に記載する発明は,焼いたドライフードだけでなく,缶詰フードにも適用可能であることを理解すべきである。」
(e)「【0024】
上記の通り,少なくとも1種の補助的なアミノ酸を押出成形されたフード産物に組み込むこと,及び/又は,フード産物を,少なくとも1種の補助的なアミノ酸で被覆することを含む方法が提供される。ネコ科動物は,少なくとも1種の補助的なアミノ酸を含有するフードを摂食し,そして,摂取後,補助的なアミノ酸は,ネコ科動物の胃腸管に,及び,その後の体内での免疫グロブリン,ヘモグロビン,ホルモン及び酵素などのタンパク質の合成に利用可能となる。
【0025】
ネコ科動物食餌に典型的に含まれるタンパク質の非限定的な具体例は,肉食動物により摂食される肉類に由来するものであり,ラム,ビーフ,チキン,シカ,ターキー,ブタ,バッファロー,バイソン及びダチョウなどが挙げられる。さらなるタンパク質源は,大豆,トウモロコシグルテンなどの植物性物質からのタンパク質,ホエイ及びカゼインなどの乳製品からのタンパク質を含む。ネコ科動物は,L-タウリン,メチオニン及びL-アルギニンなどの重要なアミノ酸を,その食料中に適切に供給されていると理解される。」
(f)「【0031】
ネコ科動物の胃腸系への食餌若しくは食料に用いられるリジン及びシステインの量は,ネコの種類,ネコの年齢,使用キャットフード,食餌中のタンパク質レベル,所望の除脂肪体重保護の程度,及びその他の因子を含む多数の因子に依存して変動する。
【0032】
一実施形態では,ネコ科動物の食餌の約0.50%から約0.75%までの範囲のシステインレベルが高齢ネコに給餌される。・・・
【0033】
さらに,若しくは代替的に,ネコ科動物の食餌の約2.0%から約3.5%までの範囲のリジンレベルが高齢ネコに給餌される。より具体的には,ネコ科動物の食餌の約2.7%から約3.1%までの範囲のリジンレベルが,高齢ネコに,このネコに対し有益な除脂肪体重保護を提供するために給餌される。さらに,ネコ科動物の食餌の食餌性タンパク質レベル約6.7%から約12.5%までの範囲のリジンレベルが高齢ネコに給餌される。
また,ネコ科動物の食餌の食餌性タンパク質レベル約9.0%から約11.0%までの範囲のリジンレベルが,高齢ネコに,有益な除脂肪体重保護を提供するために給餌される。」
(g)「【0040】
約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードを摂食するネコが,少なくとも約50%又はそれを超える食餌性タンパク質レベルを含有するフードを摂食しているネコより対応して低い除脂肪体重を有していることが決定された。50%又はそれを超えるタンパク質を摂食する,匹敵する年齢のネコに関するものより低い除脂肪体重を有するネコについては,フードに補助的なアミノ酸を添加するか,又はフードサプリメントを用いる。ネコが上記で説明したような補助的なアミノ酸を給餌された場合,除脂肪体重は,50%の食餌性タンパク質レベルを含有する食餌を給餌されているネコのものに対応するレベルに維持される。したがって,ネコには,増加した除脂肪体重保護が提供され,補助的なアミノ酸の使用は,除脂肪体重保護の減少の開始を遅延させるものと考えられる。典型的な実施形態では,リジン及び/又はシステインが,アミノ酸として用いられる。」

(2)拒絶理由<理由1>に対する審判請求人の主張
また,審判請求人は,意見書及び審判請求書中にて,拒絶理由1(及び2)に対し,以下のように主張する。

(h)「しかしながら,本願の発明の詳細な説明中の段落[0040]では,
「約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードを摂食するネコが,少なくとも約50%又はそれを超える食餌性タンパク質レベルを含有するフードを摂食しているネコより対応して低い除脂肪体重を有していることが決定された。」
と記載され,更にこれに続いて,
「50%又はそれを超えるタンパク質を摂食する,匹敵する年齢のネコに関するものより低い除脂肪体重を有するネコについては,フードに補助的なアミノ酸を添加するか,又はフードサプリメントを用いる。ネコが上記で説明したような補助的なアミノ酸を給餌された場合,除脂肪体重は,50%の食餌性タンパク質レベルを含有する食餌を給餌されているネコのものに対応するレベルに維持される。したがって,ネコには,増加した除脂肪体重保護が提供され,補助的なアミノ酸の使用は,除脂肪体重保護の減少の開始を遅延させるものと考えられる。典型的な実施形態では,リジン及び/又はシステインが,アミノ酸として用いられる。」
と記載されています。
また,発明の詳細な説明中の段落[0036]?[0039]には,「ネコ科動物の除脂肪体重」を決定する方法が具体的に説明されています。
当業者であれば,これらの記載から,実際に,「約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードを摂食するネコ」について,「フードに補助的なアミノ酸を添加するか,又はフードサプリメントを用い」,その結果,「除脂肪体重は,50%の食餌性タンパク質レベルを含有する食餌を給餌されているネコのものに対応するレベルに維持され」たこと,を容易に認識することができます。また,「補助的なアミノ酸」が,発明の詳細な説明中の段落[0033]及び[0032]に記載された量の「リジン及び/又はシステイン」であることも明らかです。
また,当業者であれば,発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいて,本願発明が除脂肪体重保護の効果を奏することを容易に確認することができます。
したがいまして,本願発明が除脂肪体重保護の効果を奏することは発明の詳細な説明により十分に裏付けられているといえます。また,本願発明が除脂肪体重保護という課題を解決するものであることは明らかといえます。」(平成21年3月30日付け意見書2.(1)欄)

(i)「原査定では,除脂肪体重保護の効果について,これを裏付ける具体的な実験データの開示がない旨指摘されています。
しかしながら,除脂肪体重保護の効果を裏付ける実験データとしては,除脂肪体重が所定の基準レベルに維持されたという事実があれば十分であり,必ずしも数値データである必要はないと思われます。
この点,前述の通り,「約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードを摂食するネコ」の除脂肪体重が,「50%の食餌性タンパク質レベルを含有する食餌を給餌されているネコのものに対応するレベル」に維持されたという事実は,発明の詳細な説明の記載から明らかであり,そうである以上,除脂肪体重保護の効果を裏付ける具体的な実験データは開示されているといえます。」(審判請求書手続補正書3.(1)(b)欄)

(3)当審の判断
本願明細書の記載によれば,本願発明の課題は,高齢のネコ科動物においては,食餌中のタンパク質レベルが低減すると,筋肉及び骨を含む,体組織の成長及び維持に必要な除脂肪体重が減少し,免疫機能の縮小と喪失が生じるとの問題点があったことから,タンパク質レベルが低い食餌に,リジン又はシステインの少なくとも1つを補助アミノ酸として添加することにより,除脂肪体重を維持しようとするものと認められる。
しかし,明細書の段落【0040】には,約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードに補助的なアミノ酸を添加するか,又はフードサプリメントを用いると,除脂肪体重は,50%の食餌性タンパク質レベルを含有する食餌を給餌されているネコのものに対応するレベルに維持されることが記載されているが,約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードに添加する補助的なアミノ酸の添加量は規定されていない。
また,段落【0033】には,一実施形態として,ネコ科動物の食餌の約2.0%から約3.5%までの範囲のリジンを高齢ネコに給餌することが記載されているが,段落【0031】には,リジンの量は,ネコの種類,ネコの年齢,使用キャットフード,食餌中のタンパク質レベル,所望の除脂肪体重保護の程度に依存して変動すると記載されており,どのような場合に,約2.0%から約3.5%までの範囲のリジンを添加することで,どの程度,除脂肪体重が維持されるかは示されていない。
その他にも,約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードに,さらに食餌の約2.0%から約3.5%までの範囲のリジンを含有させた餌をネコ科動物に給餌した実施例は記載されていない。

したがって,本願の発明の詳細な説明は,当業者が本願の請求項1に係る発明を実施できる程度に,明確かつ十分に記載されたものではない。

上記のとおり,本願の発明の詳細な説明には,約28?35%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードに,さらに食餌の約2.0%から約3.5%までの範囲のリジンを含有させた餌を高齢ネコ科動物に給餌すると,50%の食餌性タンパク質レベルを含有するフードを給餌されているネコと同程度の除脂肪体重が維持できることは記載されていないから,このような事実が,発明の詳細な説明の記載から明らかであるとも,発明の詳細な説明に,本願の請求項1に係る発明が除脂肪体重保護の効果を奏することを裏付ける具体的な実験データが開示されているともいえない。また,「ネコ科動物の除脂肪体重」を決定する一般的な方法が説明されていることをもって,当業者が本願の請求項1に係る発明が上記のような除脂肪体重保護の効果を奏することを容易に認識することができるとも,その効果を容易に確認することができるともいえない。
よって,上記出願人の主張(h)(i)は認められない。

(4)「<理由1>について」のむすび
したがって,本願は,特許法第36条第4項第1号の規定により,特許を受けることができない。

2.<理由2>について
上記「1.<理由1>について」で検討したとおり,本願の発明の詳細な説明には,「約28?35%の量の食餌性タンパク質を含有し,さらに食餌の約2.0%から約3.5%までの範囲のリジンを含有させたネコ科動物のフード」は具体的に記載されておらず,このようなフードが,課題を解決できることも示されていない。

よって,本願の請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

したがって,本願は,特許法第36条第6項第1号の規定により,特許を受けることができない。

3.<理由3>について
(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,第3.1.(1)(a)に記載のとおりである。

(2)刊行物に記載された発明
刊行物1:1.Martin J. Fettman et al.,Effect of dietary cysteine on blood sulfur amino acid,glutathione, and malondialdehyde concentration in cats,American Journal of Veterinary Research,1999年,Vol.60, No.3,328-333
刊行物2:TEETER, R.G. et al.,Methionine and Cystine Requirements of the Cat,Journal of Nutrition,1978年

(2-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である,上記刊行物1には,概略,以下の記載がある。

(1a)「Experimental design-...Cats were housed in their home environment,were fed only the assigned experimental diet, and were purposely not fed any treats or allowed access to any human foods during the study....Dietary ingredient composition(Table 1)was similar for all 3 diets, other than alanine,cysteine,and sucrose content; proximate analyses(Table 2) were performed by use of standard methods.」(329頁左欄下から29?8行)
(概略
実験状況-・・・ネコは居住環境に収容され,決められた実験食のみを給餌され,他のおやつや人間の食べ物は意図的に与えられなかった。・・・餌の原料組成(表1)は,アラニン,システイン,スクロースを除いて3群とも同様である。近接分析(表2)は周知の方法で行った。)
(1b)329頁Table2には,研究に使用された餌に,100gあたりで33.99gの粗タンパク質が含有されていたことが示されている。
(1c)330頁Table 3には,研究に使用された餌のアミノ酸組成が示され,リジンが餌100g中1.08gまたは1.11gであったことが示されている。

上記記載事項(1a)?(1c)の記載からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。

「ネコに給餌される餌であって,
餌の33.99%の量のタンパク質を含有する餌。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(3)対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明を対比する。
刊行物1記載の発明の「ネコ」,「餌」は,本願発明の「ネコ科動物」,「フード」に相当する。
また,33.99%は,28%?35%の間に含まれる値であるから,「餌の33.99%の量のタンパク質」は,「フードの28?35%の量のタンパク質」に相当する。

よって,本願発明と刊行物1記載の発明とは,
「ネコ科動物に給餌される餌であって,フードの28%?35%の量のタンパク質を含有するフード。」の点で一致し,以下の相違点を有する。

相違点
本願発明は,フードの2.0%から3.5%の量のリジンを更に含有するものであるのに対し,刊行物1記載の発明は,フードのタンパク質中に1%程度のリジンを含有しているものの,フードの2.0%から3.5%の量のリジンを更に含有するものではない点。

上記相違点について検討する。
栄養補助の目的でペットフードにリジン等のアミノ酸を1種類以上添加することは,周知技術である(例えば,特開平10-276685号公報【0011】【0012】)。
ネコにとってもリジンが必須アミノ酸であることを考慮すれば,刊行物1記載のフードにリジンを更に含有させることは,当業者が容易になし得ることである。

本願発明は,フードに更に添加するリジンの量を「2.0%から3.5%」としているが,この量は,原査定で引用した刊行物2(293頁TABLE1)に,フードにフードの2.8%の量のリジンを含有させることが記載されるように,ネコに給餌するフードのリジンの量として特異な値ではない。
してみると,刊行物1記載の発明において,フードに更にリジンを2.0%から3.5%含有させることは,当業者が容易になし得ることである。

そして,リジンを更に含有させないフードに比して,リジンを更に含有させたフードの方が,リジンの作用として周知の,体組織の修復,免疫力向上等に優れることは,当業者が予測し得ることである。

なお,除脂肪体重を「50%の食餌性タンパク質レベルを含有する食餌を給餌されているネコのものに対応するレベルに維持する」との効果は,上記第3.1.で検討したように,本願の請求項1に係る,28?35%のタンパク質を含有し,更にリジンを2.0%から3.5%含有させたフードが奏する効果であることが本願の発明の詳細な説明によって裏付けられているとは認められないから,本願発明が奏する特有の効果とは認められない。

(4)「<理由3>について」のむすび
したがって,本願発明は,刊行物1,2記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 むすび
したがって,本願は,特許法第36条第6項第1号,同第4項第1号の規定により特許を受けることができないものである。
また,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-07 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-10-04 
出願番号 特願2004-545831(P2004-545831)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A23K)
P 1 8・ 536- Z (A23K)
P 1 8・ 121- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
土屋 真理子
発明の名称 高齢ネコ科動物フード  
代理人 池田 成人  
代理人 城戸 博兒  
代理人 清水 義憲  
代理人 池田 正人  
代理人 黒川 朋也  
代理人 長谷川 芳樹  

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