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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B |
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管理番号 | 1232270 |
審判番号 | 不服2009-15979 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-08-31 |
確定日 | 2011-02-16 |
事件の表示 | 特願2006- 85280「圧電性単結晶からなるウェーハ基板の研磨方法及びこれによって得られる圧電性単結晶からなるウェーハ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日出願公開、特開2007-260793〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成18年3月27日の特許出願であって、同20年8月20日付で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同20年10月9日に意見書と共に手続補正書が提出されたが、同21年5月27日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、同21年8月31日に本件審判の請求がされると共に特許請求の範囲と明細書について再度手続補正書が提出されたものである。その後、当審の平成22年6月21日付審尋に対して同年8月23日に回答書が提出された。 2.平成21年8月31日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年8月31日付の手続補正を却下する。 [理由] 2.1 補正の内容の概要 平成21年8月31日付の手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をすると共にそれに関連して発明の名称及び発明の詳細な説明の一部について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を、補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (1)補正前 「円筒研削済みの単結晶インゴットをスライスする段階と、上記スライスしたウェーハをラップする段階と、上記ラップウェーハをセラミック上で真空吸着により保持して表面側を平面研削する段階と、上記平面研削されたウェーハをセラミック上で真空吸着により保持して表面側を研磨する段階と、を含んで構成される圧電性結晶からなるウェーハ基板の研磨方法。」 (2)補正後 「円筒研削済みの単結晶インゴットをスライスする段階と、上記スライスしたウェーハの両面をラップする段階と、上記ラップウェーハをセラミック上で真空吸着により保持して表面側を平面研削する段階と、上記平面研削されたウェーハをセラミック上で真空吸着により保持して表面側を1?10μmの量のみ研磨する段階と、を含んで構成される圧電性結晶からなるウェーハ基板の製造方法。」 2.2 補正の適否 本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、「ウェーハ基板の研磨方法」を「ウェーハ基板の製造方法」と補正すると共にラップする段階のウェーハについて「ウェーハの両面をラップする」という事項を付加し、研磨する段階の研磨量について「1?10μmの量のみ」という事項を付加するものであって、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 2.3 補正発明 補正発明は、本件補正により補正された明細書の記載からみて、上記2.1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 2.4 刊行物に記載された発明(事項) これに対して、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-184726号公報(以下「刊行物1」という。)、及び原査定の際に「ウェーハの平面研削・研磨に用いるウェーハ保持部材をセラミック吸着チャックとすることは、慣用手段に過ぎない」として例示された中の一つである特開2005-279789号公報(以下「刊行物2」という。)の記載内容はそれぞれ以下のとおりである。 2.4.1 刊行物1 (ア)刊行物1の記載 刊行物1には以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、タンタル酸リチウム単結晶材料やニオブ酸リチウム単結晶材料の如き化合物半導体結晶よりなる硬脆材料基板用研磨剤に関する。本発明の研磨剤は研磨速度が高く、研磨された硬脆材料基板は、外観が良好である。 【0002】 【従来の技術】テレビの中間周波数フィルタや共振器等のエレクトロニクス部品として、圧電体における圧電効果により発生する弾性表面波を利用した弾性表面波デバイスが利用されている。この弾性表面波デバイスを構成する圧電体基板(ウエハ)の材料として、タンタル酸リチウム単結晶材料やニオブ酸リチウム単結晶材料の如き化合物半導体結晶よりなる硬脆材料が使用される。 【0003】化合物半導体結晶のインゴットは、ワイヤーソウやスライスマシンで薄い板状に切断され、両面をラップ加工された後、電極が写真印刷される面側を3000番のグリーンカーボン砥石を用い、片面ラップ加工し、さらにこのラップ加工面を研磨剤が供給されているウレタン定盤に押圧しつつ、定盤を回転、またはウエハと定盤の双方を回転しつつ、加工変質層除去のために15?20μmの厚さを研磨加工して取り除き、傷(スクラッチ)のない、表面が平坦な鏡面仕上の基板としている。」 (イ)刊行物1記載の発明 化合物半導体結晶のインゴットをワイヤーソウやスライスマシンで薄い板状に切断することを「スライスする」と呼び、スライスされたものを「ウエハ」と呼ぶことは当業者間の常識であるから、刊行物1に記載された事項を技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。 「単結晶インゴットをスライスする段階と、上記スライスしたウエハの両面をラップする段階と、両面がラップ加工された後、電極が写真印刷される面側を砥石を用いて片面ラップ加工する段階と、このラップ加工面を15?20μmの厚さ研磨する段階と、を含んで構成される圧電性結晶からなるウエハ基板の製造方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) 2.4.2 刊行物2 (ア)刊行物2の記載 刊行物2には以下の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、半導体ウエハ等の被吸着体の研磨処理を行うために用いられる研削・研磨用真空チャックに関する。」 「【0016】以下、本発明の研削・研磨用真空チャックについて図面を参照しながら説明する。図1(a)は、本発明の研削・研磨用真空チャックの実施形態の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA-A線断面図である。図1に示したように、研削・研磨用真空チャック10は、空気が透過する吸着部12a?12dと、空気の透過を遮断する環状隔壁層16a?16cとからなる吸着板18を備えている。吸着板18は、半導体ウエハ(被吸着体)15を吸着、保持するための保持面18aと、保持面18aの反対面の空気を吸引するための吸引面18bとを有している。また、吸着板18は、直径の異なる2枚の円板が積み重ねられ一体化した形状(ツバ付き円板状)を有している。 【0017】ここで、吸着部12a?12dのそれぞれには、保持面18aと吸引面18bとが形成されており、この保持面から吸引面に至る全ての部分が、多孔質セラミックスにより連続的に構成されている。また、環状隔壁層16a?16cは、吸着板18と同心で円環状に形成されている。環状隔壁層16a?16cは、非酸化物系セラミックス粉末が配合されたガラスにより形成されている。なお、吸着板18を構成するツバ付きドーナツ状の吸着部12dは、被吸着体を吸着する機能を有さないため、実質的には吸着部に該当しないが、被吸着体を吸着する機能を有する他の吸着部12a?12cと同様、多孔質セラミックスからなるものであるため、便宜的に吸着部12dということとする。 【0018】また、吸着板18の下部には、図示しない真空ポンプ等の真空装置に空気吸引部が接続された保持台20が等間隔に設置された4本のボルト22を用いて固定されている。なお、ボルトの数は4本に限定されるわけではなく、通常、4?12本程度である。 また、保持台20には、吸着板18の吸引面18bに接する部分に溝14a?14cが形成された空気吸引部13a?13cが設けられている。また、吸着板の下面であって、最外周の環状隔壁層16cの外側の部分には、空気不透過層17が形成されている。なお、空気不透過層17は、必ずしも形成する必要はなく、必要に応じて形成すればよい。 従って、研削・研磨用真空チャック10は、空気吸引部13a?13c及び真空ポンプ(図示せず)により、吸着部12a?12c内の空気を吸引するように構成されている。 【0019】このような実施形態の研削・研磨用真空チャック10では、空気吸引部13a?13c及び真空ポンプ(図示せず)より、多孔質セラミックスからなる吸着部12a?12c内の空気を吸引し、被吸着体を吸着、保持することができる。(以下略)。」 (イ)刊行物2記載の事項 これらの記載から、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。 「半導体ウエハを研削ないし研磨するに当たって、当該ウエハをセラミック上で真空吸着により保持すること。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。) 2.5 対比 補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると以下のとおりである。 後者の「ウエハ」が前者の「ウェーハ」に相当することは明白である。 また、後者において「両面がラップ加工された後、電極が写真印刷される面側を砥石を用い片面ラップ加工する」ことが、両面がラップ加工されたウェーハ、すなわち、ラップウェーハを、何らかの保持手段によって電極が写真印刷される面側が表面側となるように保持して、その表面側を砥石を用いて平面に片面ラップ加工することを意味することは明らかであり、しかも、「ラップ加工」は「研削加工」の一種であるから、後者の「片面ラップ加工する段階」は、ラップウェーハを保持手段により保持して表面側を平面研削する段階であるという限りで、前者の「平面研削する段階」と共通している。 また、後者の「研磨する段階」は、平面研削されたウェーハを保持手段により保持して表面側を所定の量だけ研磨する段階であるという限りで、補正発明の「研磨する段階」と共通している。 そうしてみると、補正発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点で一致しているということができる。 <一致点> 「単結晶インゴットをスライスする段階と、上記スライスしたウェーハの両面をラップする段階と、上記ラップウェーハを保持手段により保持して表面側を平面研削する段階と、上記平面研削されたウェーハを保持手段により保持して表面側を所定の量だけ研磨する段階と、を含んで構成される圧電性結晶からなるウェーハ基板の製造方法。」である点。 そして、補正発明と刊行物1記載の発明とは、以下の3点で相違している。 <相違点1> スライスされる単結晶インゴットが、前者では円筒研削済みであるのに対して、後者ではこのような特定がない点。 <相違点2> 平面研削する段階及び研磨する段階において、前者ではウェーハをセラミック上で真空吸着により保持しているのに対して、後者ではこのような特定がない点。 <相違点3> 研磨する段階において、前者では1?10μmの量のみ研磨しているのに対して、後者では15?20μm研磨している点。 2.6 相違点の検討 2.6.1 相違点1について ウェーハ基板の製造おいて、単結晶インゴットをスライスする前に円筒研削しておくことは、特に例示するまでもなく従来周知の技術であり、スライスされる単結晶インゴットを円筒研削済みのものとすることに格別の困難性はない。 2.6.2 相違点2について 上記2.4.2(イ)に例示したとおり、刊行物2にウエハ、すなわち、ウェーハを研削ないし研磨するに当たって、当該ウェーハをセラミック上で真空吸着により保持することが記載されているように、相違点2に係る発明特定事項は従来周知であるから、このことを刊行物1記載の発明に適用して補正発明のように構成することに格別の困難性はない。 2.6.3 相違点3について 研磨する段階における研磨量をどの程度とするかは、当審の審尋においてその旨指摘しているように、加工材質や研磨前の加工変質層の深さのほかに、研磨前のスクラッチの状態や平坦度等の様々な条件を加味して決定される事項であり、1?10μmの量のみ研磨することに格別の困難性はない。 2.6.4 補正発明の効果について 補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び上記従来周知の技術事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。 2.6.5 まとめ したがって、補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、当審の審尋に対する平成22年8月23日付回答書で、請求人は補正発明を刊行物1記載の発明と比較して以下のように主張しているので、ここで検討する。 <請求人の主張> 「一方、本願発明は、高平坦度のウェーハを製造する方法であり、製造フロー自体は引用文献1と同じですが、平面研削工程では、 ・ラップウェーハをセラミックス上で真空吸着すること、 ・使用する砥石は、段落[0029]に示すように、メタルボンド材で作成されたものであること、つまりダイヤモンド砥石を使うこと、 ・研削量を段落[0030]に示すように、5?15μmとすること、という特徴を有しています。 そして、これらの特徴に加えて、段落【0030】に示すように、研磨量を1?10μmとすることで、面ダレが生じない鏡面に仕上げることができます。 すなわち、本発明では、ラップウェーハを剛性が強いセラミックチャックに真空吸着することで、研削時の力で変形することなく、平坦度の高い面が得られ、また、使用する砥石をダイヤモンド砥石、その中でもメタルボンドとすることで研削時に砥石形状を維持しながら研削を行うことができ、さらに、剛性の強いセラミックスプレートと合わせて使用することで、ラップウェーハを堅く固定できるので、ビビリなどが生じ難く、結果として加工歪が浅くなり、研磨量も引用文献1に記載の発明とは大きく異なる1?10μmと極めて小さくすることで、高平坦度なウェーハが得られます。」(回答書第2ページ第28行?第3ページ第17行参照。) <当審の判断> しかしながら、使用する砥石をメタルボンド材で作成されたダイヤモンド砥石とすること、及び、研削量を5?15μmとすることは、いずれも請求項1において特定された事項ではない。また、ウェーハをセラミックチャックに吸着して保持することは刊行物2に例示されるように周知の技術であり、セラミックチャックの剛性の高さと、その効果も周知のものであるから、請求人の上記主張は採用することができない。 2.7 むすび よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本件出願の発明について 3.1 本件出願の発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、平成20年10月9日付手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記2.1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 3.2 刊行物 これに対して、原査定の際に引用された刊行物及びその記載内容は、上記2.4に示したとおりである。 3.3 対比・検討 本件発明は、上記2.2で検討した補正発明から、実質上、ラップする段階のウェーハについて「ウェーハの両面をラップする」という限定と、研磨する段階の研磨量について「1?10μmの量のみ」という限定を削除したものである。 そうすると、本件発明を構成する事項のすべてを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が上記2.6.5で示したとおり、刊行物1記載の発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。 . |
審理終結日 | 2010-10-25 |
結審通知日 | 2010-11-16 |
審決日 | 2010-11-29 |
出願番号 | 特願2006-85280(P2006-85280) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B24B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 卓行 |
特許庁審判長 |
豊原 邦雄 |
特許庁審判官 |
千葉 成就 遠藤 秀明 |
発明の名称 | 圧電性単結晶からなるウェーハ基板の研磨方法及びこれによって得られる圧電性単結晶からなるウェーハ |
代理人 | 荒井 鐘司 |
代理人 | 河野 尚孝 |
代理人 | 嶋崎 英一郎 |