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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q |
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管理番号 | 1232331 |
審判番号 | 不服2009-146 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-05 |
確定日 | 2011-02-17 |
事件の表示 | 特願2005- 71077「情報管理システムおよび情報管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日出願公開、特開2006-254314〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成17年3月14日の出願であって、平成20年5月23日付けの拒絶の理由の通知に対して、同年7月22日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年11月26日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し平成21年1月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年7月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める。 「質問器と応答器との通信を利用して人や物品の管理を行う情報管理方法において、 人または物品に応答器を付し、 1個の質問器と複数の応答器との間でマルチキャリア通信を行い、 質問器と応答器との間の通信のデータ量があらかじめ決められている複数の所定量のそれぞれを越えた場合に変調レベルを1段階高くし、それぞれの前記所定量以下になった場合に変調レベルを1段階低くする ことを特徴とする情報管理方法。」 3.引用例の記載 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-27231号公報(平成11年1月29日出願公開。以下「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 A.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、直交周波数分割多重(OFDM)方式で信号を伝送する無線通信システムに関する。」(段落【0001】) B.「【0006】このマルチキャリア伝送方式の中の一つに直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式がある。このOFDM方式は、互いに直交する最小の間隔でサブキャリアを立てる方式であり、理論的には数ΜHzの伝送帯域中に数千本ものサブキャリアを立てることが可能であり、ユーザ数の増大に対応できる。また、大量のサブキャリアを立てることにより各サブキャリアの伝送レートを大幅に低下させることができ、しかも変復調時には、例えば高速逆フーリエ変換や高速フーリエ変換などの類似したアルゴリズムのディジタル信号処理を行って複数のサブキャリア信号を一括して変復調するため、これらディジタル信号処理部を一体化することもできる。したがって、このΟFDΜ方式は、高速に移動する移動体において利用する高速データ通信などに適した伝送方式であると言える。」(段落【0006】) C.「【0027】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。 【0028】図1は本発明に係る第1実施形態の無線通信システムの構成を示す図である。同図において、CSは基地局、PS1?ΡS3は無線端末である。これら無線端末PS1?PS3と基地局CSとの間では、それぞれ異なる帯域のΟFDM信号を用いて双方向の通信が行われる。 【0029】図2に示すように、基地局CSは、サブキャリア割当部1、OFDM送受信部2、アンテナ3、伝搬環境測定部4、設定制御部5、設定通知部6などから構成されている。サブキャリア割当部1は複数の無線端末PS1?PS3のうち、いずれか一つ、例えば無線端末PS1などからアクセス要求があった場合、自身が各無線端末PS1?ΡS3に割り当て可能な複数のサブキャリア信号のうち、無線端末PS1が通信する情報量に応じた数だけ無線端末PS1にサブキャリア信号を割り当てるものである。例えば通信する情報量が多い場合は複数のサブキャリア信号を割り当て、通信する情報量が少ない場合は1つだけを割り当てる。OFDM送受信部2は各無線端末PS1?PS3からの送信されたOFDM信号をアンテナ3を介して送受信するものである。伝搬環境測定部4は既知情報シンボルを受信したときまたはアクセス要求があったときの伝搬環境を測定するものである。設定制御部5はアクセス要求されたときに既に自身にアクセス中の無線端末の個数またはそのときの伝搬環境の少なくとも一つに基づいて、アクセス要求を行った無線端末との無線通信に用いる伝送帯域、占有帯域幅および変調方式のうち少なくとも一つの項目を制御する制御条件を決定するものである。設定通知部6は設定制御部5が決定した制御条件をアクセス要求を行った無線端末に返信(通知)するものである。 【0030】無線端末は、図3に示すように、OFDΜ送受信部7、設定制御部8およびアンテナ9などから構成されている。OFDΜ送受信部7は基地局CSから送信されたΟFDM信号をアンテナ3を介して送受信するものである。つまりOFDΜ送受信部は、送信する信号を時間信号に変換しアンテナ9から送信すると共に、アンテナ9で受信した信号をデータ系列に変換するものである。 【0031】上記基地局CSのOFDM送受信部2および無線端末PS1?PS3のΟFDM送受信部7は、図4に示すように、受信部10と送信部11とから構成されている。受信部10は受信処理部15、高速フーリエ変換部(FFT)16、復調部17を有している。受信処理部15は受信部10に入力された信号に対して周波数変換、A/D変換、同期の確立、ガードタイム除去などの受信処理を行うものである。高速フーリエ変換部(FFT)16は受信処理によって得られた時間信号を各サブキャリア信号に一括変換するものである。復調部17は各サブキャリア信号のうち、所望の信号のみをディジタルデータ系列に変換して出力するものである。また送信部11は変調部12、高速逆フーリエ変換部(IFFT)13、送信処理部14を有している。変調部12は送信部11への入力信号を変調し、サブキャリア信号を生成するものである。高速逆フーリエ変換部13はサブキャリア信号を時間信号に変換するものである。送信処理部14はガードタイムを付加、D/Α変換、周波数変換などの送信処理を行い出力するものである。なお基地局CSのΟFDM送受信部2と無線端末のOFDM送受信部7の構成は等しいが、OFDM送受信部7を構成する各部の設定は異なる場合がある。例えば送受信信号を一括処理できる伝送帯域幅などである。 【0032】以下、図5?図7を参照してこの第1実施形態の無線通信システムの動作を説明する。図5は基地局CSにより割り当てられる帯域(サブキャリア)を示す図、図6は基地局CSからいずれかの無線端末、例えば無線端末PS1などへ送信されるΟFDM信号の生成過程、つまり基地局CSが送信サブキャリア信号を生成してから無線端末PS1が受信サブキャリア信号を得るまでの様子を示す図、図7は無線端末PS1から基地局CSへ送信されるΟFDM信号の生成過程、つまり無線端末PS1で送信サブキャリア信号が生成されてから、基地局CSが受信サブキャリア信号を得るまでの様子を示す図である。 【0033】この第1実施形態の無線通信システムの場合、アンテナ3で受信した受信信号は、ΟFDM送受信部2によってサブキャリア信号に変換される。サブキャリア割当部1は、ΟFDM送受信部2によって得られたサブキャリア信号を、各無線端末に対応する信号に振り分ける。ここで、受信信号が例えば無線端末PS1からアクセス要求であった場合、基地局CSでは、伝搬環境測定部4が受信信号から伝搬環境を測定し、測定結果を設定制御部5に出力する。またサブキャリア割当部1は、通信を行う無線端末数を設定制御部5に出力する。設定制御部5では、伝搬環境や無線端末数などを基にして、各無線端末PS1?PS3との通信に使う帯域、サブキャリア変調方式などを決定(設定)し、OFDM送受信部2、サブキャリア割当部1を制御する。 【0034】サブキャリア割当部1は、図5に示すように、自身が割り当て可能な全帯域50の中から、空きチャネルの状態や情報量に応じて通信中の無線端末PS2の帯域52や無線端末PS3の帯域53とは異なる帯域51を割り当てる。つまり無線端末PS2、3とは異なるサブキャリア信号を必要な数だけ割り当てる。なお無線端末PS1と他の無線端末PS2、PS3とは、個々にサブキャリア変調方式、信号伝送帯域幅などが異なっていても良い。基地局CSと各無線端末PS1?ΡS3との通信に用いる信号伝送帯域間には、信号を送らないガード区間を存在させて、このガード区間によって各ユーザの信号がお互いに干渉することを防いでいる。 【0035】設定通知部6では、設定制御部5で設定された内容を、基地局CSと通信を行う無線端末PS1に対する設定通知信号に変換する。設定通知部6から出力された設定通知信号は、サブキャリア割当部1に入力され、サブキャリア割当部1によって、図5のように基地局CSの帯域中の各サブキャリアに割り当てられた信号と共に一括して時間信号に変換され、ΟFDM信号の一部を使ってアンテナ3から送信される。この設定通知信号は、例えば設定通知信号用の専用チャネルで伝送される。無線端末PS1にデータ伝送用のサブキャリアが割り当てられる前は、設定通知信号用の専用チャネルを用いて、基地局CSから無線端末PS1に向けて、基地局CSで設定したデータ伝送用サブキャリア、変調方式などを無線端末PS1に通知する設定通知信号を送信する。データ伝送用のサブキャリアが設定され、データの伝送が開始されてからは、例えば基地局CSはデータ伝送用に割り当てられたサブキャリアのうちのいずれかを用いて、OFDM信号中の他のデータ信号と共に設定通知信号を送信しても良く、また割り当てられたサブキャリアを用いて、定期的に設定通知信号用のΟFDMシンボルを伝送しても良い。 ここで、基地局CSから無線端末PS1に送信する信号の生成動作について詳細に説明する。 【0036】基地局CSでは、図6(a)に示すように、キャリア間隔ΔfのM本のサブキャリアを用いて信号を送信する。M本のサブキャリアには、干渉を防ぐためのガード区間も含まれる。このうち、無線端末PS1への信号伝送に使用できるサブキャリアは、信号を伝送しないガード区間も含めてm本である。無線端末PS1宛てのm本のサブキャリアを含むM本のサブキャリアは、高速逆フーリエ変換によって図6(b)のような時間方向の信号に変換され、ΟFDMの有効シンボルが生成される。生成された有効シンボルは、時間間隔1/MΔfのM個のサンプル値であり、ガードタイムを付加して送信処理部のD/Α変換によってΟFDMシンボルに変換される。図6(c)はD/A変換後のOFDMシンボルである。OFDMシンボルは無線周波数に変換され、送信される。 【0037】無線端末PS1がΟFDMシンボルを受信すると、基地局CSで無線端末PS1宛に送信したm本のサブキャリアの中心を中心周波数とするベースバンド信号に変換し、受信処理部15のΑ/D変換で受信信号のサンプル点が得た後、ガードタイムを除去する。このとき受信アナログ信号をサンプリングする間隔は、1/mΔfとなり、図6(d)のように基地局CSの高速逆フーリエ変換後に得られたサンプル値の間隔よりもM/m倍長くなる。つまり、無線端末ΡS1のサンプリング速度は、基地局CSの高速逆フーリエ変換部のサンプリング速度よりも遅くなる。無線端末ΡS1の高速フーリエ変換部は、ガードタイムを除去した後にm個のサンプル点を用いて高速フーリエ変換を行い、図6(e)に示すように、基地局CSで無線端末ΡS1宛てに割り当てたm本のサブキャリア信号を得ることができる。ΡS1はそれぞれのサブキャリアを復調することによってディジタルデータ系列を復調する。 【0038】無線端末PS1では、基地局CSから送信されてきた設定通知信号をアンテナ9を通じてOFDM送受信部7が受信すると、OFDM送受信部7では、受信部10に入力された受信信号を、受信処理部15で周波数変換、A/D変換、同期の確立、ガードタイム除去などの受信処理を行い時間信号を高速フーリエ変換部16へ出力する。高速フーリエ変換部16では、入力された時間信号をサブキャリア信号に一括変換し、復調部17でディジタルデータ系列、つまり設定通知信号に変換した後、設定制御部8に出力する。 【0039】設定制御部8では、入力された設定通知信号を基に、無線端末PS1自身の動作環境、つまり帯域やサブキャリア変調方式などの項目を設定し、以降、その動作環境で通信するようになる。 【0040】通信する信号、例えば音声などがOFDM送受信部7の送信部11へ入力されると、その入力信号は変調部12で変調され、サブキャリア信号が生成される。サブキャリア信号は高速逆フーリエ変換部13によって時間信号に変換され、送信処理部14によって、ガードタイム付加、D/Α変換、周波数変換等の送信処理が行われた後に出力される。 【0041】ここで、無線端末PS1から基地局CSへ送信する信号の生成動作について説明する。 【0042】ΡS1では、図7(a)に示すように、キャリア間隔Δf´のm´本のサブキャリアを用いて信号を送信する。m´のサブキャリアには、干渉を防ぐためのガード区間も含まれる。ここで、無線端末PS1から基地局CSへ送信されるサブキャリアは、基地局CSからΡS1へ送信されるサブキャリアと同じものを時分割して用いても良いので、Δf´=Δfとしても良い。また送受信で全く同じサブキャリアを用いる場合は、m´=mとなる。 【0043】図7(a)は、無線端末PS1で生成されるサブキャリア信号である。各サブキャリア間隔はΔf´であり、ガード区間も含めてm´本のサブキャリアが存在する。サブキャリア信号はポイント数m´の高速逆フーリエ変換部(IFFT)13で高速逆フーリエ変換され、図7(b)のようなm´個のサンプル値で表される時間方向の離散信号に変換される。このときサンプル間隔は1/m´Δf´である。図7(b)の信号はD/A変換され、ガードタイムが付加され、図7(c)のようなOFDM送信シンボルに変換される。それぞれの無線端末では、シンボル長が等しいΟFDMシンボルが生成される。各無線端末PS1?PS3で生成されたΟFDMシンボルは、それぞれ異なる無線周波数に周波数変換され、基地局CSへ送信される。 【0044】基地局CSは、各無線端末PS1?PS3から送信されてきたOFDMシンボルを同時に受信するため、基地局CSで周波数変換によって得られる受信ベースバンド信号は、全ての無線端末PS1?PS3から送信されたΟFDMシンボルが周波数をずらして加算された形となり、図7(d)のようになる。基地局CSは、受信シンボルをA/D変換して、図7(e)の波形を得る。A/D変換のサンプリング速度は、1/M´Δf´であり、複数の無線端末PS1?PS3が異なる周波数を用いて基地局CSとの通信を行う場合は、M´>m´となる。つまり、基地局CSは、各無線端末PS1?PS3のサンプリング間隔よりも短い間隔でサンプリングを行う。言い換えれば、各無線端末PS1?PS3は基地局CSのサンプリング間隔よりも広い間隔でサンプリングを行う。 【0045】このように各無線端末PS1?PS3のサンプリング速度を基地局CSのサンプリング速度よりも低速にすることにより、各無線端末PS1?PS3のディジタル信号処理回路(高速逆フーリエ変換部(IFFT)13および高速フーリエ変換部(FFT)16など)の規模を基地局CSの規模よりも小さくできる。 【0046】こうして得られたM´個のサンプル値は、Μ´ポイントの高速フーリエ変換部(FFT)16によってΜ´本のサブキャリア信号へ変換される。変換されたサブキャリア信号には、図7(f)のように、無線端末PS1から送信されたm´本のサブキャリア信号が含まれている。したがって、図2の基地局CSのサブキャリア割当部1で、無線端末PS1から送信されたサブキャリア信号を取り出すことができる。 【0047】このようにこの第1実施形態の無線通信システムによれば、無線端末PS1から基地局CSにアクセス要求があった場合、基地局CSは自身が各無線端末PS1?PS3へ割り当て可能な全サブキャリア信号のうち、無線端末PS1の情報量に応じた数のサブキャリアを無線端末PS1に割り当て、割り当てたサブキャリア信号を一括して時間信号に変換し多重化を行い送信するので、各無線端末PS1?PS3のチャネルの空き状況や情報量に応じて効率良くサブキャリアを割り当てることができる。」(段落【0027】?【0047】) 以上の記載によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「直交周波数分割多重(OFDM)方式で信号を伝送する無線通信システムにおいて、 基地局CSと、無線端末PS1?PS3で構成され、 基地局CSと無線端末PS1?PS3との間では、それぞれ異なる帯域のΟFDM信号を用いて双方向の通信が行われ、 複数の無線端末PS1?PS3のうち、無線端末PS1からアクセス要求があった場合、基地局CSが各無線端末PS1?PS3に割り当て可能な複数のサブキャリア信号のうち、無線端末PS1が基地局CSと通信する情報量に応じた数だけ無線端末PS1にサブキャリア信号を割り当て、通信する情報量が多い場合は、複数のサブキャリア信号を割り当て、通信する情報量が少ない場合は、1つのサブキャリア信号だけを割り当てる 無線通信システム。」 4.対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「基地局CS」と本願発明の「質問器」は、「第1の無線通信機器」である点で一致する。また、引用発明の「無線端末PS1?PS3」と本願発明の複数の「応答器」は、複数の「第2の無線通信機器」である点で一致する。 引用発明の無線通信システムは、基地局CSと無線端末PS1?PS3との通信を利用する方法を行っていることは明らかであるから、引用発明は、基地局CSと無線端末PS1?PS3との通信を利用する方法であるといえる。 引用発明において、OFDM方式は、マルチキャリア伝送方式の中の一つであるから、引用発明の「基地局CSと無線端末PS1?PS3との間では、それぞれ異なる帯域のΟFDM信号を用いて双方向の通信が行われ」る構成と本願発明の「1個の質問器と複数の応答器との間でマルチキャリア通信を行」う構成は、「1個の第1の無線通信機器と複数の第2の無線通信機器との間でマルチキャリア通信を行」う構成である点で一致する。 引用発明において、無線端末PS1が基地局CSと通信する情報量に応じた数だけ無線端末PS1にサブキャリア信号を割り当て、通信する情報量が多い場合は、複数のサブキャリア信号を割り当て、通信する情報量が少ない場合は、1つのサブキャリア信号だけを割り当てる構成は、あらかじめ決められている所定量の情報量を超えた場合に、複数のサブキャリア信号を割り当て、その所定量以下になった場合に1つのサブキャリア信号だけを割り当てる構成であるといえる。また、引用発明の「複数のサブキャリア信号を割り当て」る構成及び「1つのサブキャリア信号だけを割り当てる」構成と本願発明の「変調レベルを1段階高く」する構成及び「変調レベルを1段階低くする」構成は、「通信手法を変更する」構成である点で一致する。そうすると、引用発明の「無線端末PS1が基地局CSと通信する情報量に応じた数だけ無線端末PS1にサブキャリア信号を割り当て、通信する情報量が多い場合は、複数のサブキャリア信号を割り当て、通信する情報量が少ない場合は、1つのサブキャリア信号だけを割り当てる」構成と本願発明の「質問器と応答器との間の通信のデータ量があらかじめ決められている複数の所定量のそれぞれを越えた場合に変調レベルを1段階高くし、それぞれの前記所定量以下になった場合に変調レベルを1段階低くする」は、「第1の無線通信機器と第2の無線通信機器との間の通信のデータ量が所定量を越えた場合に通信手法を変更し、所定量以下になった場合に通信手法を変更する」構成である点で一致する。 すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「第1の無線通信機器と第2の無線通信機器との通信を利用する方法において、 1個の第1の無線通信機器と複数の第2の無線通信機器との間でマルチキャリア通信を行い、 第1の無線通信機器と第2の無線通信機器との間の通信のデータ量があらかじめ決められている所定量を越えた場合に通信手法を変更し、所定量以下になった場合に通信手法を変更する ことを特徴とする方法。」 一方、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本願発明では、第1の無線通信機器と第2の無線通信機器が、質問器と応答器であるのに対し、引用発明では、第1の無線通信機器と第2の無線通信機器が、基地局CSと無線端末PS1?PS3である点。 <相違点2> 本願発明では、人や物品の管理を行う情報管理方法であり、人または物品に応答器を付するのに対し、引用発明では、これらの構成について記載がない点。 <相違点3> 本願発明では、通信のデータ量があらかじめ決められている複数の所定量のそれぞれを越えた場合に変調レベルを1段階高くし、それぞれの前記所定量以下になった場合に変調レベルを1段階低くするのに対し、引用発明では、通信のデータ量が所定量を越えた場合に複数のサブキャリア信号を割り当て、所定量以下になった場合に1つのサブキャリア信号だけを割り当てる点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 <相違点1及び2についての検討> 無線通信技術において、複数の物品に応答器を付け、質問器と複数の応答器との無線通信により物品の管理を行う技術は、特開2003-78445号公報(特に、段落【0015】?【0017】、【0034】及び図5参照。)及び特開平8-228166号公報(特に、段落【0002】?【0007】、図5及び図6参照。)に記載されているように、本願出願前周知である。したがって、引用発明において、当該周知技術を適用して、基地局CSと無線端末PS1?ΡS3を質問器と複数の応答器にし、また、質問器と応答器との通信を利用して人や物品の管理を行う情報管理方法とし、さらに、人または物品に応答器を付するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 <相違点3についての検討> 上記3.摘記Cには、「伝搬環境や無線端末数などを基にして、各無線端末PS1?PS3との通信に使う帯域、サブキャリア変調方式などを決定(設定)し」(段落【0033】)及び「無線端末PS1と他の無線端末PS2、PS3とは、個々にサブキャリア変調方式、信号伝送帯域幅などが異なっていても良い。」との記載があることから、引用例には、無線端末PS1?PS3の個々において、ある条件を基にして、変調方式を設定できる示唆がなされているといえる。 また、無線通信技術において、1シンボル当りのデータ数の異なる変調方式を3つ以上備え、通信のデータ量の大きさに基づいて1シンボル当りのデータ数が異なる変調方式の中から1つの変調方式が選択される技術、すなわち、通信のデータ量が大きいほど1シンボル当りのデータ数の多い変調方式が選択され、通信のデータ量が小さいほど1シンボル当りのデータ数の少ない変調方式が選択される技術は、特開2003-8496号公報(特に、段落【0038】、【0047】及び【0053】参照。)及び特開2004-200923号公報(特に、段落【0025】?【0030】及び図2参照。)に記載されているように、本願出願前周知である。さらに、選択される変調方式を3つ以上備える場合、変調方式を変更するしきい値となる「所定量」が複数設けられることは、明らかである。そして、本願明細書には、「変調レベルとは、データで変調されるキャリアの変調方式が、4相位相変調、8相位相変調、16QAM等のように、1シンボル当りのデータ数の程度を示す。変調レベルが高いほど、狭い帯域で多くのデータを送信できる。」(段落【0014】)と記載されているから、1シンボル当りのデータ数の多い変調方式は、変調レベルが高く、1シンボル当りのデータ数の少ない変調方式は、変調レベルが低いといえる。 したがって、引用発明において、上記引用例の示唆と当該周知技術を適用して、サブキャリア信号の割当数に代えて、変調レベルを変更するようにし、通信のデータ量があらかじめ決められている複数の所定量のそれぞれを越えた場合に変調レベルを1段階高くし、それぞれの前記所定量以下になった場合に変調レベルを1段階低くするように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 また、本願発明の構成によって生じる効果も、引用発明、引用例の示唆及び周知技術から当業者が予測できる程度のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、引用例の示唆及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例の示唆及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について論及するまでもなく、本願は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-15 |
結審通知日 | 2010-12-21 |
審決日 | 2011-01-05 |
出願番号 | 特願2005-71077(P2005-71077) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丹治 彰、小河 誠巳 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
中野 裕二 安久 司郎 |
発明の名称 | 情報管理システムおよび情報管理方法 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 木村 明隆 |
代理人 | 浅井 俊雄 |