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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02P
管理番号 1232336
審判番号 不服2009-8780  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-23 
確定日 2011-02-17 
事件の表示 特願2003-570460号「電動機制御方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月28日国際公開、WO03/71672〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う2003年(平成15年) 2月25日(優先日:2002年(平成14年) 2月25日、出願番号:特願2002-47546号)を国際出願日とする特許出願であって、平成21年 3月19日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として、同年 4月23日に本件審判請求がなされるとともに、同年 5月11日に手続補正(前置補正)がなされた。。
一方、当審において、平成22年 9月 3日付けで拒絶理由を通知し、これに対して、応答期間内である平成22年11月 4日に手続補正書とともに意見書が提出されたところである。
そして、この出願の請求項1?8に係る発明は、上記平成22年11月 4日に提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
周期的負荷(6)を駆動する電動機(5)の回転速度変動を抑制するように電動機(5)に印加する電圧または電流を制御する電動機制御方法において、少なくとも角加速度の基本波成分を検出し、出力トルク変動の基本波成分の位相が前記検出した角加速度の基本波成分の位相と略逆相になるように電動機(5)に印加する電圧または電流を制御することを特徴とする電動機制御方法。」

2.引用例とその記載事項
平成22年 9月 3日付け拒絶理由通知で引用した本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2001-37281号公報(以下「引用例」という。)には、「電動機のトルク制御装置」に関し、図面とともに以下の事項(ア)?(オ)が記載又は示されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮機、とくに負荷トルクの変動が大きい圧縮機を低振動、低騒音で運転することができる電動機のトルク制御装置に関する。」

(イ)「【0039】以下、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
(実施の形態1)以下、本発明の実施の形態1にかかる電動機のトルク制御装置について図面を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1にかかる電動機のトルク制御装置の構成を示すブロック図である。図1において、交流電源1からの入力を整流回路2で直流に整流された直流電圧は、インバータ3におけるスイッチング素子5a ?5f と環流ダイオード6a ?6f とが対になった回路により3相の交流電圧に変換され、それによりブラシレスDCモータである圧縮機モータ4が駆動される。
【0040】インバータ3において、電流センサ7a ?7b により検出された圧縮機モータ4の電流を用いて、圧縮機モータ4の回転子磁極位置を推定検出する回転子位置速度検出手段8により推定された回転子磁極位置の情報に基づいて、正弦波駆動回路9が圧縮機モータ4を駆動するためのドライブ信号をベースドライバ10に出力し、ベースドライバ10は、そのドライブ信号に従って、スイッチング素子5a ?5f を駆動するための信号を出力する。また、電流センサ7a ?7b により検出された圧縮機モータ4の電流を用いて、圧縮機モータ4の回転子の速度を推定検出する回転子位置速度検出手段8により推定された回転子の速度と、外部から与えられる目標速度との偏差の情報から、正弦波駆動回路9は回転子速度が目標速度となるように制御する。
【0041】トルク制御手段11において、回転子加速度検出手段12は、回転子位置速度検出手段8が出力する回転子速度を微分することにより回転子加速度を演算する。また、加速度制御手段13は、検出された回転子加速度と目標加速度とから、加速度が目標加速度となるように制御するためのトルク指令を正弦波駆動回路9に出力するとともに、起動時にはトルク補正量記憶手段14に記憶されたトルク指令の補正量を正弦波駆動回路9に出力したのち、所定時間後には目標加速度とするためのトルク指令を出力する。また、加速度制御手段13は、分圧抵抗15a と分圧抵抗15b とで分圧された信号に基づいて電源電圧検出手段16が検出した電源電圧の情報により、トルク指令に補正を加えて安定なトルク制御を実現している。」

(ウ)「【0054】次に、この実施の形態における正弦波駆動回路9の動作について図面を参照しながら説明する。図3は、正弦波駆動回路9の1つの実施の形態の構成と動作とを示すブロック図である。図3において、まず、3相2相変換手段8aは、推定された回転子位置θを用いて、電流センサ7a ?7b により検出された電流iu 、iv から式(1)により電流iδと電流iγに変換される。
【0055】さらに、現在の速度と目標速度との偏差の情報から、速度を目標速度に追従するようにトルク指令が速度制御手段9aにより演算される。さらに、トルク制御手段11により演算されたトルク指令補正量が加算されたトルク指令に対し、現在の電流iδの偏差から電流δPI制御手段9bにより、一般的なPI制御により出力指令を求め、δ軸方向の出力とする。一方、現在の電流iγの偏差から電流γPI制御手段9cにより、一般的なPI制御により出力指令を求め、γ軸方向の出力とする。求められた2方向の出力VδとVγから、出力波形が正弦波となるように3相の出力電圧Vu、Vv、Vw が、推定された回転子の位置θを用いて一般的な2相3相変換手段9dにより式(7)により変換して求められる。
【0056】
【数7】 ・・・
【0057】さらに、電源電圧による補正を電源電圧補正手段9eにより行い、求められた3相出力電圧を実現するように、3相分の6つのスイッチング素子5a ?5f のオンオフを決定するゲート信号がゲート信号発生手段9fにより演算され、ベースドライバ10へ出力される。」

(エ)「【0058】次に、この実施の形態におけるトルク制御手段11の一例の動作について説明する。図4は、圧縮機モータ4の回転角度に対する負荷トルク、速度、検出速度、検出加速度、およびトルク指令補正量の変化の一例を示す波形図である。先に説明したように、圧縮機、とくに1ピストンロータリ圧縮機の負荷トルクは、その回転角度により大きく変動する。このような負荷トルク変動がある場合、回転子の速度は、図に示したように、負荷トルクが大になると低下し、逆に負荷トルクが小さいときには増加するというように変動する。一方、加速度は、負荷トルクと正反対の形で負荷トルクが大きいときには、加速度が低下するというように変動する。いま、圧縮機の振動を低下させたいのであるから、負荷トルクが必要な位置でインバータ3による出力トルクを最大にし、逆に負荷トルクが低い位置でインバータ3による出力トルクを低下させれば、トルクが釣り合って振動が低減される。
【0059】図5は、この実施の形態におけるトルク制御手段11の構成と動作を示すブロック図である。速度脈動を低減するのが目的であるので、速度変動を低減すればよいが、速度変動を低減するには、加速度成分を0にするようにトルクを制御すればよいことは明白である。そこで、まず、回転子加速度検出手段12は、回転子位置速度検出手段8により得られた速度を用いて、その値の変動を計算することにより回転子の加速度を演算する。さらに、目標である加速度0との偏差から加速度差を求める。トルク脈動は、回転子の回転に対してあるパターンを持つものであるので、制御も回転子の角度位置により切り替えることにより、制御遅れの影響を排除した制御が可能となる。」

(オ)「【0064】図7中のグラフ(1)およびグラフ(2)は、本発明の電動機のトルク制御装置により得られた制御結果の一例を示す波形図である。図7中のグラフ(1)は、トルク制御を実施しない場合の圧縮機振動加速度、トルク指令、モータ電流、および検出回転子加速度の推移の一例を示す。このように、トルク指令一定とするトルク制御なしの場合には、圧縮機の負荷トルクの脈動の影響を受けて回転子加速度も変動し、それにより圧縮機の振動が大きくなっている。図7中のグラフ(2)は、トルク制御を実施した場合の実験結果の一例を示す。このように、検出した回転子加速度に応じてトルク指令を操作することにより、圧縮機の負荷トルクの大きなところではモータ出力のトルク指令を増加させ、負荷トルクの小さなところではモータ出力のトルクを低下させることにより、振動レベルが低下している。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「圧縮機を運転する圧縮機モータ4の速度変動を低減するように圧縮機モータ4への求められた3相出力電圧を実現するように正弦波駆動回路9を動作する制御方法において、負荷トルクと正反対の形で負荷トルクが大きいときは低下するように変動する圧縮機モータ4の回転子の加速度を検出し、検出した回転子加速度に応じて正弦波駆動回路9へのトルク指令を操作することにより、圧縮機の負荷トルクの大きなところではモータ出力のトルク指令を増加させ、負荷トルクの小さなところではモータ出力のトルクを低下させる制御方法。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「圧縮機」の負荷トルクは回転角度によって変動するから、引用発明の「圧縮機」は本願発明の「周期的負荷」に相当し、引用発明の「圧縮機モータ4」は本願発明の「電動機」に相当する。
また、引用発明の「圧縮機を運転する圧縮機モータ4の速度変動を低減するように圧縮機モータ4への求められた3相出力電圧を実現するように正弦波駆動回路9を動作する制御方法」は、本願発明の「周期的負荷を駆動する電動機の回転速度変動を抑制するように電動機に印加する電圧または電流を制御する電動機制御方法」に相当する。
次に、本願発明の「少なくとも角加速度の基本波成分を検出」する態様と、引用発明の「圧縮機モータ4の回転子の加速度を検出」する態様とは、「少なくとも角加速度を検出」するという概念で共通する。
そして、本願発明の「出力トルク変動の基本波成分の位相が検出した角加速度の基本波成分の位相と略逆相になるように電動機に印加する電圧または電流を制御する」態様と、引用発明の「負荷トルクと正反対の形で負荷トルクが大きいときは低下するように変動する」「検出した回転子加速度に応じて正弦波駆動回路9へのトルク指令を操作することにより、圧縮機の負荷トルクの大きなところではモータ出力のトルク指令を増加させ、負荷トルクの小さなところではモータ出力のトルクを低下させる」態様とは、引用発明の「正弦波駆動回路9」は「圧縮機モータ4への求められた3相出力電圧を実現するように」動作されるものであるから、「出力トルク変動の位相が検出した角加速度の位相と略逆相となるように電動機に印加する電圧または電流を制御する」概念で共通する。
そうすると、両者は、
「周期的負荷を駆動する電動機の回転速度変動を抑制するように電動機に印加する電圧または電流を制御する電動機制御方法において、少なくとも角加速度を検出し、出力トルク変動の位相が検出した角加速度の位相と略逆相となるように電動機に印加する電圧または電流を制御する電動機制御方法」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

<相違点>
少なくとも角加速度を検出し、出力トルク変動の位相が検出した角加速度の位相と略逆相となるように電動機に印加する電圧または電流を制御するものにおいて、本願発明では、角加速度の「基本波成分」を検出し、出力トルク変動の「基本波成分」の位相が検出した角加速度の「基本波成分」と略逆位相となるように制御するのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

4.相違点の検討・当審の判断
周期的にトルク変動、速度変動するモータ(電動機)のトルクリップルを押え、速度リップルを除去するのに際して、信号の基本波成分の逆相の補正信号を加えることは、本願の優先権主張の日前に周知の技術である(必要があれば、平成22年 9月 3日付け拒絶理由通知において周知例として示した特開平1-218380号公報の第5ページ右上欄第19行?左下欄第7行、同ページ右下欄第9行?第6ページ左上欄第8行、第5図を参照のこと。)。
してみれば、引用発明の「検出した角加速度」信号に上記周知技術を適用して、「検出した角加速度信号の基本波成分の逆相の補正信号を加える」ものとし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、上記相違点を備える本願発明の作用効果について検討してみても、引用発明及び上記周知技術から予測されるものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、平成22年11月 4日に提出した意見書において、上記周知例の「信号の基本波成分」は、「加速度信号」の基本波成分でなく、「速度信号」の基本波成分であり、引用発明の「加速度成分」に基づいて種々の補正量を求める技術に対して、上記周知例の「速度成分」の基本波と逆相の補正信号を求める技術を適用しようにも、適用できない旨の主張をしている。
しかしながら、引用発明、上記周知例のいずれも、周期的に変動するモータ(電動機)のトルク変動を抑制するという課題で共通している上に、「角加速度信号」と「速度信号」はいずれもモータのトルク変動を表すものであるから、引用発明が「角加速度」信号であるのに対して、上記周知例は「速度信号の基本波成分」であることが、引用発明の「検出した角加速度」信号に上記周知技術を適用して、「検出した角加速度信号の基本波成分の逆相の補正信号を加える」ものとすることを妨げる阻害要因になるものとは認められない。
よって、審判請求人の上記主張は、採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-17 
結審通知日 2010-12-21 
審決日 2011-01-05 
出願番号 特願2003-570460(P2003-570460)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天坂 康種  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 藤井 昇
槙原 進
発明の名称 電動機制御方法およびその装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 福市 朋弘  

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