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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1232384 |
審判番号 | 不服2010-967 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-01-15 |
確定日 | 2011-02-17 |
事件の表示 | 特願2005-350313「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月21日出願公開、特開2007-151792〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一、手続きの経緯 本願は、平成17年12月5日の出願であって、平成21年8月3日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年9月29日付けで手続補正がなされ、同年10月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月15日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同日付け手続補正書によって明細書の一部が補正されたものである。 なお、当審において、同年8月2日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、同年10月1日に回答書が提出されている。 第二、平成22年1月15日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年1月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正前・後の本願発明 本件補正は、補正前(平成21年9月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲)の請求項1乃至3のうち、請求項1に記載された、 「 遊技領域を有する遊技機本体と、 該遊技機本体の遊技領域前面を覆うとともに開閉可能に配設された前枠と、 鍵を挿入し得る鍵穴を有するとともに、前記前枠を前記遊技機本体に対して施錠及び解錠し得る施錠手段と、 前記遊技機本体に付与された振動を検出する振動検出手段と、 前記振動検出手段による検出に基づき所定の報知を行う報知手段と、 を具備した遊技機において、 前記施錠手段の鍵穴への鍵の挿入状態を検知する鍵検知手段と、 該鍵検知手段にて鍵の挿入状態が検知されている間に限り、前記報知手段による報知を禁止する禁止手段と、 前記鍵検知手段による鍵の挿入状態の検知がなくなった時点からの経過時間を測定するタイマ手段と、 を備え、当該タイマ手段が所定時間の経過を測定するまで前記禁止手段による報知の禁止を継続させることを特徴とする遊技機。」を、 「 遊技領域を有する遊技機本体と、 該遊技機本体の遊技領域前面を覆うとともに開閉可能に配設された前枠と、 鍵を挿入し得る鍵穴を有するとともに、前記前枠を前記遊技機本体に対して施錠し、前記鍵穴に鍵を挿入した状態で回動操作して解錠し得る施錠手段と、 前記遊技機本体に付与された振動を検出する振動検出手段と、 前記振動検出手段による検出に基づき所定の報知を行う報知手段と、 を具備した遊技機において、 前記施錠手段の鍵穴への鍵の挿入状態を検知する鍵検知手段と、 該鍵検知手段にて鍵の挿入状態が検知されている間に限り、前記報知手段による報知を禁止する禁止手段と、 前記鍵検知手段による鍵の挿入状態の検知がなくなった時点からの経過時間を測定するタイマ手段と、 を備え、当該タイマ手段が所定時間の経過を測定するまで前記禁止手段による報知の禁止を継続させることを特徴とする遊技機。」と補正するものである(下線部は補正部分)。 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「施錠手段」について、「施錠及び解錠し得る」を「施錠し、(前記)鍵穴に鍵を挿入した状態で回動操作して解錠し得る」と限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (あ)刊行物に記載された発明 刊行物1;特開昭62-221380号公報 刊行物2;特開2005-204779号公報(平成17年8月4日公開) 原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された特開昭62-221380号公報(以下、「引用刊行物1」という。)において、 (1-1)公報第1頁右下欄第13行乃至第16行には「そこで、この発明の目的はパチンコ台への揺すり等の外力による不正行為を確実に検知でき、その継続的不正外力に対して種々の対処を行うことができるパチンコ機を提供するにある。」と、 (1-2)公報第2頁左上欄第9行乃至左下欄第15行には「第1図及び第2図に示すように、パチンコ台の機枠1はその前面に前枠2が蝶番3を介して開閉可能に取付けられている。又、機枠2(審決注:「機枠1」の誤記と認める)の内面隅部には第1のマイクロスイッチ4が固設され、このマイクロスイッチ4はプランジャ4aが前方に突出し前枠2が閉状態にあるときプランジャ4aが押されオフ状態となり、反対に前枠2が開状態となるとプランジャ4aの押圧が解除されオンするようになっている。 前枠2には窓5が設けられ、その窓5の周縁には金枠6が取付けられている。この窓5にはガラス枠7が窓5の上方部を開閉可能に金枠6の一側縁に蝶着されている。 又、窓5には上皿支持板8が窓5の下方部を回転可能に金枠6の一側縁に蝶着されている。この上皿支持板8には打球機構にパチンコ球を供給するための球供給装置(図示しない)が設けられるとともに、上皿支持板8の前面には上皿9が配設され同上皿9に打球のためのパチンコ球が蓄積される。 窓5の上下の隅部には第2及び第3のマイクロスイッチ10,11がそれぞれ固設され、各マイクロスイッチ10,11はプランジャ10a,11aが前方に突出しガラス枠7及び上皿支持板8が閉状態にあるときプランジャ10a,11aが押されオフ状態となり、反対にガラス枠7及び上皿支持板8が開状態となるとプランジャ10a,11aの押圧が解除されオンするようになっている。 前枠2の窓5の下部には下皿12が配設され、この下皿12には前記上皿9の容量以上となったパチンコ球が蓄積されるようになっている。 この下皿12及び前記上皿11(審決注:「上皿9」の誤記と認める)には不正外力検出手段としての振動検出装置13がそれぞれ内蔵されている。その振動検出装置13は第3図及び第4図に示すように導電性の筒体14内に導電性の球15が吊下支持され、振動によりその球15が揺れ筒体14内面に接触すると電源16に接続されたリレー17が励磁されるようになっている。 又、前枠2の右の縦枠には警報ランプ18が設けられ、同警報ランプ18は不正行為によりパチンコ台に振動が発生したときに点灯するようになっている。又、その警報ランプ18の下方にはシリンダ錠19が設けられ、この錠19に鍵を差込み回動操作すると、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8のロック状態を解除することができるようになっている。」と、 (1-3)公報第3頁左上欄第17行乃至左下欄第7行には「又、リレーCR2には警報ランプ18及びパチンコ機の上方位置に設けられる警報ブザー21がそれぞれ並列に接続されている。従って、振動検出装置13のリレー接点17a,17bの閉動作に伴うリレー接点CR12の閉動作により警報ランプ18及び警報ブザー21に電源20が供給され、警報ランプ18が点灯するとともに警報ブザー21が鳴るようになっている。 ・・・よって、少なくとも一つのマイクロスイッチ4,10,11がオン、すなわち前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8のうち少なくとも1つが開状態となると、電源20がタイマTRに供給される。すると、前記タイマ接点TR1が瞬時に開く。従って、振動検出装置13の振動検出によりリレー接点17a,17bが閉じてもリレーCR1の励磁がなく振動検出装置13が無効化される。 又、逆にタイマTRの駆動状態から前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8の全てが閉じられ各マイクロスイッチ4,10,11が全てオフとなるとタイマTRへの電源20の供給が停止されタイマTRはタイマ接点TR1を一定時間経過後に閉じ、振動検出装置13の無効化が解除される。なお、このタイマTRの設定時間は前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8が全て閉じられた後その動作によるパチンコ台の振動が完全に減衰するまでの時間であり予め求められている。」と、 (1-4)公報第3頁左下欄第10行乃至第4頁左上欄第17行には「今、遊戯者がパチンコ台を揺すったり叩いたりすると上皿9及び下皿12に設けた振動検出装置13がその振動を検出しそのリレー接点17a,17bを閉じる。すると、リレーCR1が励磁され、その励磁によりそのリレー接点CR11が開き打球用モータMへの電源20の供給が停止され遊戯できない状態となる。又、同時にリレーCR1の励磁によりそのリレー接点CR12が閉じ警報ランプ18が点灯するとともに警報ブザー21が鳴り、管理者に不正行為が行なわれたことを知らせる。 ・・・ さらに、通常の遊戯状態において、保守点検の為に前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8の内一つでも開けられるとその開放を各マイクロスイッチ4,10,11が検出し同様に振動検出装置13を無効化させる。この開放状態から点検等の終了後、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8を全て閉じるとタイマTRにより一定時間経過後に振動検出装置13の無効化が解除される。・・・ このように本実施例のパチンコ機においては、遊戯中にパチンコ機を揺ったり叩いたりする不正行為が行なわれるとそれに伴うパチンコ台の振動を検出し打球用モータMへの電源20の供給を停止し遊戯できない状態にするとともに警報ランプ18及び警報ブザー21により管理者にその不正行為の発生を知らせることができる。・・・ 又、保守点検のために前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8を開けると振動検出装置13を無効化させる。よって、その開放時においては警報装置等の駆動が停止され通常の点検等を行なうことができる。 さらに、その保守点検が終了し前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8を全て閉じた後所定時間が経過しないとその無効化が解除されないので前枠2等を閉じた時の振動で振動検出装置13が作動することがない。・・・」と、 (1-5)公報第4頁右下欄第12行乃至第5頁左上欄第4行には「さらには、上記実施例では前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8のその開閉状態を検出するマイクロスイッチ4,10,11をそれぞれ設けたが、その内1つだけあるいは2つだけに開閉状態を検出するマイクロスイッチを設けてもよい。 又、上記実施例では前枠2,ガラス枠7及び上皿支持板8の開閉状態を検出するために閉状態で前枠2,ガラス枠7及び上皿支持板8にプランジャが押圧されるマイクロスイッチ4,10,11を使用したが、シリンダ錠19の解錠動作に基づいてオンオフする検出器を設け、錠19の解錠動作が行なわれたことを検出することにより不正外力検出装置を無効化してもよい。」と、それぞれ記載されている。 したがって、これらの記載をまとめると、引用刊行物1には、 「 パチンコ台の機枠1の前面に前枠2が開閉可能に取付けられ、 該機枠1の内面隅部には、前記前枠2が閉状態にあるときプランジャ4aが押されオフ状態となり、反対に前記前枠2が開状態となるとプランジャ4aの押圧が解除され前方に突出しオンするようになっている、第1のマイクロスイッチ4が固設され、 前記前枠2には窓5が設けられ、その窓5の周縁には金枠6が取付けられ、ガラス枠7がこの窓5の上方部を開閉可能に金枠6の一側縁に蝶着され、又、上皿支持板8がこの窓5の下方部を回転可能に金枠6の一側縁に蝶着され、この上皿支持板8の前面には上皿9が配設され、 前記窓5の上下の隅部には、前記ガラス枠7及び上皿支持板8が閉状態にあるときプランジャ10a,11aが押されオフ状態となり、反対に前記ガラス枠7及び上皿支持板8が開状態となるとプランジャ10a,11aの押圧が解除され前方に突出しオンするようになっている、第2及び第3のマイクロスイッチ10,11がそれぞれ固設され、 前記前枠2の窓5の下部には下皿12が配設され、 この下皿12及び前記上皿9には不正外力検出手段としての振動検出装置13がそれぞれ内蔵され、 又、前記前枠2の右の縦枠には、不正行為によりパチンコ台に振動が発生したときに点灯する警報ランプ18が設けられ、その警報ランプ18の下方には、鍵を差込み回動操作すると、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8のロック状態を解除することができるシリンダ錠19が設けられている、パチンコ機において、 (A)遊戯者がパチンコ台を揺すったり叩いたりすると上皿9及び下皿12に設けた振動検出装置13がその振動を検出しそのリレー接点17a,17bを閉じると、リレーCR1が励磁され、その励磁によりそのリレー接点CR11が開き、打球用モータMへの電源20の供給が停止され遊戯できない状態となり、又、同時にリレーCR1の励磁によりそのリレー接点CR12が閉じ警報ランプ18が点灯するとともにパチンコ機の上方位置に設けられる警報ブザー21が鳴り、管理者に不正行為が行なわれたことを知らせ、 (B)保守点検の為に前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8の内一つでも開けられるとその開放を各マイクロスイッチ4,10,11が検出しオンとなると、電源20がタイマTRに供給され、前記タイマ接点TR1が瞬時に開き、振動検出装置13の振動検出によりリレー接点17a,17bが閉じてもリレーCR1の励磁がなく振動検出装置13が無効化され、その開放時においては警報装置等の駆動が停止され通常の点検等を行なうことができ、 (B-1)この開放状態から点検等の終了後、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8の全てが閉じられ各マイクロスイッチ4,10,11が全てオフとなるとタイマTRへの電源20の供給が停止されタイマTRはタイマ接点TR1を、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8が全て閉じられた後その動作によるパチンコ台の振動が完全に減衰するまでの時間である一定時間経過後に閉じ、振動検出装置13の無効化が解除され、即ちその保守点検が終了し前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8を全て閉じた後所定時間が経過しないと振動検出装置13の無効化が解除されないので、前枠2等を閉じた時の振動で振動検出装置13が作動することがなく、 (C)前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8のその開閉状態を検出するマイクロスイッチ4,10,11をそれぞれ設けたが、その内1つだけあるいは2つだけに開閉状態を検出するマイクロスイッチを設けてもよく、 (D)前枠2,ガラス枠7及び上皿支持板8の開閉状態を検出するために閉状態で前枠2,ガラス枠7及び上皿支持板8にプランジャが押圧されるマイクロスイッチ4,10,11を使用したが、シリンダ錠19の解錠動作に基づいてオンオフする検出器を設け、錠19の解錠動作が行なわれたことを検出することにより不正外力検出装置を無効化してもよい、 パチンコ機。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2005-204779号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (2-1)「【0008】 本発明は上記課題を解決するためになされたもので、鍵を用いることなく開口枠扉を開けたり、本体部材を外枠から外した場合に、これを検出できる遊技機、遊技機の不正行為検出方法及びプログラム並びに記録媒体を提供することを目的とする。本発明により、不正行為を検出してエラー報知等を行い、もって不正行為を防止することを目的とする。」、 (2-2)「【0030】 この遊技機1は、外部的構造として、本体部2、枠部3、開口枠扉6、遊技盤8、球受皿付き扉5、球受皿13、回動式操作ハンドル16などを備えている。」、 (2-3)「【0032】 本体部2は、外枠3(審決注:「枠部3」の誤記と認める)の内部に備えられ、ヒンジ部27を介して外枠(審決注:「枠部」の誤記と認める)に回動自在に装着された縦長方形状の遊技機基軸体となる部材である。この本体部2は、枠状に形成されその内側に空間部を有している。 【0033】 開口枠扉6は、遊技機の前面側となる本体部2の前面に、ロック機能付きで且つ開閉自在となるように装着される。開口枠扉6は、枠状の部材61と、その内側の開口部に設けられたガラス又は樹脂等の透明部材62とを備えている。」、 (2-4)「【0037】 150は開口枠扉6と本体部2を施錠するための施錠機構(キーシリンダ)である。この内部に後述の第3のセンサ102が設けられる。 【0038】 図2において、100は遊技盤8の縁に設けられて開口枠扉6の開閉状態を検出する第1のセンサである。101bは枠部3に設けられた反射板である。反射板101bは本体部2の開閉状況を検出するための第2のセンサ101の構成要素である。」、 (2-5)「【0042】 100は開口枠扉6が本体部2から離れたことを検出する第1のセンサである。101は本体部2が枠部3から離れたことを検出する第2のセンサである。第1のセンサ100と第2のセンサ101は、例えばマイクロスイッチのような機械的な接触型センサや、発光素子と受光素子を備えるフォトインタラプタ、磁力で感応するリードスイッチのような非接触型センサである。 【0043】 102は施錠機構150に施錠を解除するための鍵がセットされていることを検出する第3のセンサである。施錠機構150は、例えばひとつのロック機構で本体部2と開口枠扉6の両方をロックするものであり、施錠機構150に鍵を挿入し、一方の側に回すと開口枠扉6のロックが解除され、他方の側に回すと本体部2のロックが解除される。施錠機構150は、例えばシリンダ状の機構(キーシリンダ)であり、この部分に第3のセンサ102が取り付けられ、鍵の挿入の有無を検出する(このような機能をもつキーシリンダは公知である)。・・・」、 (2-6)「【0048】 S1:第3のセンサ(キーシリンダユニット)102の出力を受信する。この出力は施錠機構150に内部に設けられたセンサの出力信号であり、施錠機構150に鍵が挿入されているときにその旨の信号を出力する。 【0049】 S2:上記出力に基づきキー(鍵)が挿入されているかどうか判定する。挿入されているとき(YES)はホールの管理者が開口枠扉6や本体部2を外そうとしていると考えられ、これは不正行為ではないので、S12:正常、警報なしとし、S1へ戻り監視を継続する。挿入されていないとき(NO)は不正行為の可能性があるから、S3以下のステップで不正行為かどうか判定を行う。」、 (2-7)「【0059】 図5の処理の要点を図6に示す。図6は各センサの出力に応じた判定結果を示す判定テーブルである。この判定テーブルを用いて判定を行ってもよい。キー検出があれば正常とみなし、警報を出力しない。キー検出がなくても本体部2、開口枠扉6が開いていなければ正常とみなし、警報を出力しない(これは通常の使用状態である)。キー検出がなく、開口枠扉6のみが開いていれば警告程度のエラーと判定し、必要に応じて電源を断にする。キー検出がなく、本体部2が開いていれば、開口枠扉6の状態にかかわらず重大エラーと判定する。」、 (2-8)「【0064】 発明の実施の形態1によれば、開口枠扉が開放したら信号を発生するセンサと、本体部が外されたらそれを検出するセンサと、施錠機構にカギが挿入されている場合にキー挿入信号を発生するセンサとを備え、キー挿入信号が入力されていない場合に不正行為検出信号をホールコンピュータへ出力したりエラー報知を行う。これにより不正行為を検出することができる。」。 したがって、これらの記載をまとめると、引用刊行物2には、 「 枠部3の内部に回動自在に装着され、枠状に形成される本体部2と、遊技機の前面側となる本体部2の前面に、ロック機能付きで且つ開閉自在となるように装着される開口枠扉6、などを備えている遊技機1において、 遊技盤8の縁に、開口枠扉6が本体部2から離れたことを検出する第1のセンサ100が設けられ、 枠部3に、本体部2が枠部3から離れたことを検出する第2のセンサ101が設けられ、 鍵を挿入し、一方の側に回すと開口枠扉6のロックが解除され、他方の側に回すと本体部2のロックが解除される施錠機構150の内部には、鍵の挿入の有無を検出する第3のセンサ102が設けられ、 鍵が挿入されているときはホールの管理者が開口枠扉6や本体部2を外そうとしていると考えられ、警報なしとし、 鍵を用いることなく開口枠扉を開けたり、本体部材を外枠から外した場合に、これを検出してエラー報知等を行い、もって不正行為を防止することを目的とする、遊技機。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (い)本願補正発明1と引用発明1との比較・検討 (い-1)引用発明1の「機枠1」は、本願補正発明1の「遊技領域を有する遊技機本体」に相当し、以下同様に、「前面」は「前面」に、「開閉可能に取付けられ」は「開閉可能に配設され」に、「前枠2」は「前枠」に、「鍵」は「鍵」に、「シリンダ錠19」は「施錠手段」に、「振動検出装置13」は「振動検出手段」に、「警報ランプ18」及び「警報ブザー21」は「報知手段」に、「パチンコ機」は「遊技機」に、それぞれ相当する。 (い-2)引用発明1の「前枠2」は、「機枠1の前面に開閉可能に取付けられ」るものであるから、引用刊行物1の第1図の記載や、遊技機における枠体間の開閉構造を考慮すれば、引用発明1は本願補正発明1の「(該)遊技機本体の遊技領域前面を覆うとともに開閉可能に配設された前枠」に相当する技術事項を有しているといえる。 (い-3)引用発明1の「シリンダ錠19」は、「前枠2の右の縦枠に設けられる警報ランプ18の下方に設けられている」、即ち「前枠2に設けられている」もので、「鍵を差込み回動操作すると、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8のロック状態を解除することができる」ものであるから、遊技機における枠体間の開閉構造、及び「鍵及びシリンダ錠」の構造に係る技術常識を併せて考慮すれば、引用発明1は本願補正発明1の「鍵を挿入し得る鍵穴を有するとともに、(前記)前枠を(前記)遊技機本体に対して施錠し、前記鍵穴に鍵を挿入した状態で回動操作して解錠し得る施錠手段」に相当する技術事項を有しているといえる。 (い-4)引用発明1の「振動検出装置13」は、「遊戯者がパチンコ台を揺すったり叩いたりすると」、「その振動を検出」するものであるから、引用発明1は本願補正発明1の「遊技機本体に付与された振動を検出する振動検出手段」に相当する技術事項を有しているといえる。 (い-5)引用発明1は、「振動検出装置13がその振動を検出しそのリレー接点17a,17bを閉じると、リレーCR1が励磁され、その励磁によりそのリレー接点CR12が閉じ警報ランプ18が点灯するとともにパチンコ機の上方位置に設けられる警報ブザー21が鳴り、管理者に不正行為が行なわれたことを知らせ」るものであるから、引用発明1は本願補正発明1の「振動検出手段による検出に基づき所定の報知を行う報知手段」に相当する技術事項を有しているといえる。 (い-6)引用発明1の「シリンダ錠19の解錠動作に基づいてオンオフする検出器を設け、錠19の解錠動作が行なわれたことを検出することにより不正外力検出装置を無効化」する技術事項について検討する。 (a)引用発明1の「シリンダ錠19」は「鍵を差込み回動操作すると、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8のロック状態を解除することができる」ものであり、当該鍵が鍵穴に挿入されるものであることは技術常識であるから、引用発明1の「シリンダ錠19の解錠動作」は「シリンダ錠19の鍵穴に鍵を差込み回動操作する」ことであると認められる。そうすると、「シリンダ錠19の解錠動作に基づいてオンオフする検出器を設け」た、引用発明1は、本願補正発明1の「施錠手段の鍵穴への鍵の挿入状態を検知する鍵検知手段」と比較して「施錠手段の鍵穴に対する鍵の状態を検知する鍵状態検知手段」において一致する。 (b)引用発明1の「不正外力検出装置を無効化」するとの技術事項が「振動検出装置13の無効化」を意味することは引用刊行物1の記載から明らかである。そして、当該「無効化」は「シリンダ錠19の解錠動作が行なわれたことを検出することにより」、即ちシリンダ錠19の鍵穴に鍵を差込み回動操作が行なわれたことを検出することにより行われ、当該「無効化」が実行されると警報装置等の駆動が停止されるものであるから、引用発明1は、本願補正発明1の「(該)鍵検知手段にて鍵の挿入状態が検知されている間に限り、(前記)報知手段による報知を禁止する禁止手段」と比較して「鍵の状態の検知に基づいて、(前記)報知手段による報知を禁止する禁止手段」において一致している。 (い-7)引用発明1の「この開放状態から点検等の終了後、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8の全てが閉じられ各マイクロスイッチ4,10,11が全てオフとなるとタイマTRへの電源20の供給が停止されタイマTRはタイマ接点TR1を、前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8が全て閉じられた後その動作によるパチンコ台の振動が完全に減衰するまでの時間である一定時間経過後に閉じ、振動検出装置13の無効化が解除され、即ちその保守点検が終了し前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8を全て閉じた後所定時間が経過しないと振動検出装置13の無効化が解除されない」の技術事項について、「前枠2,ガラス枠7,上皿支持板8のその開閉状態を検出するマイクロスイッチ4,10,11をそれぞれ設けたが、その内1つだけに開閉状態を検出するマイクロスイッチを設けてもよく」との事項に基づいて検討すると、引用発明1は、「前枠2が閉じられマイクロスイッチ4がオフとなるとタイマTRはタイマ接点TR1を、前枠2が閉じられた後の一定時間経過後に閉じ、振動検出装置13の無効化が解除され」るものである。そうすると、引用発明1は本願補正発明1の「(前記)鍵検知手段による鍵の挿入状態の検知がなくなった時点からの経過時間を測定するタイマ手段と、を備え、当該タイマ手段が所定時間の経過を測定するまで(前記)禁止手段による報知の禁止を継続させる」の技術事項と比較して「所定時間の経過をするまで(前記)禁止手段による報知の禁止を継続させる報知禁止継続手段と、を備え、」において一致している。 したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 一致点 遊技領域を有する遊技機本体と、 該遊技機本体の遊技領域前面を覆うとともに開閉可能に配設された前枠と、 鍵を挿入し得る鍵穴を有するとともに、前記前枠を前記遊技機本体に対して施錠し、前記鍵穴に鍵を挿入した状態で回動操作して解錠し得る施錠手段と、 前記遊技機本体に付与された振動を検出する振動検出手段と、 前記振動検出手段による検出に基づき所定の報知を行う報知手段と、 を具備した遊技機において、 前記施錠手段の鍵穴に対する鍵の状態を検知する鍵状態検知手段と、 鍵の状態の検知に基づいて、前記報知手段による報知を禁止する禁止手段と、 所定時間の経過をするまで前記禁止手段による報知の禁止を継続させる報知禁止継続手段と、を備えた、遊技機。 相違点1 鍵状態検知手段が、本願補正発明1では、施錠手段の鍵穴への鍵の挿入状態を検知する鍵検知手段であるのに対し、引用発明1では、シリンダ錠19の鍵穴に鍵を差込み回動操作が行なわれたことを検出するものである点。 相違点2 報知手段による報知を禁止する禁止手段が、本願補正発明1では、鍵検知手段にて鍵の挿入状態が検知されている間に限り、作動し報知を禁止するのに対し、引用発明1では、シリンダ錠19の鍵穴に鍵を差込み回動操作が行なわれたことを検出することにより、作動し報知を禁止する点。 相違点3 報知禁止継続手段は、本願補正発明1では、鍵検知手段による鍵の挿入状態の検知がなくなった時点からの経過時間を測定するタイマ手段が所定時間の経過を測定するまで禁止手段による報知の禁止を継続させるのに対し、引用発明1では、前枠2が閉じられた後の所定時間が経過するまで報知の禁止を継続させる点。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点1及び2について 相違点1及び2は密接に関連しているのでまとめて検討する。 引用発明2には「鍵の挿入の有無を検出する第3のセンサ102が設けられ、鍵が挿入されているときはホールの管理者が開口枠扉6や本体部2を外そうとしていると考えられ、警報なしと」する「遊技機」が示されている。そして、引用発明1及び引用発明2は「異常状態の検出時における異常の報知の有無を、鍵の状態により区別する遊技機」において共通しているから、「シリンダ錠19の解錠動作が行なわれたことを検出することにより不正外力検出装置を無効化」する引用発明1の「シリンダ錠19の解錠動作」に替えて「鍵が挿入されているときは警報なしと」する引用発明2の「鍵の挿入」を適用し、当該相違点1及び2に係る本願補正発明1を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。 相違点3について 引用発明2には「鍵の挿入の有無を検出する第3のセンサ102が設けられ、鍵が挿入されているときは警報なしと」する報知技術、即ち「鍵検知手段による鍵の挿入状態の検知がなくなった時点まで禁止手段による報知の禁止を継続させる」報知技術が示されている。また、前枠を開放し保守点検などを行った後、当該保守点検を終了するための作業として、前枠の閉鎖後に、鍵を施錠方向に回転させるなどの施錠動作、及び鍵穴からの鍵の抜き取り動作が遅滞なく行われることは、ごく普通に行われている作業手順と認められ、「前枠の閉鎖後」と「鍵の抜き取り」時との間に作業手順上、時間的な大きな差異は認められない。そうすると、引用発明1及び引用発明2は「異常状態の検出時における異常の報知を、鍵の状態により行わない場合がある遊技機」において共通しているから、引用発明1の「タイマTRはタイマ接点TR1を、前枠2が閉じられた後の一定時間経過後に閉じ、振動検出装置13の無効化が解除され」る技術に、引用発明2の「鍵の挿入状態の検知がなくなった時点まで報知の禁止を継続させる報知技術」を適用する際に「前枠が閉じられた」時点を「鍵の挿入状態の検知がなくなった時点」として、上記相違点3に係る本願補正発明1を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、引用発明1は、「警報装置等の駆動が停止され通常の点検等を行なうことができ」る、即ち「誤報知を回避することができ」るものであるから、本願補正発明1が格別の効果を奏するものとは認められない。 したがって、本願補正発明1は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (う)補正却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第三、本願発明について 平成22年1月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、上記平成21年9月29日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、前記「第二、[理由](1)補正前・後の本願発明」に補正前として記載したとおりである。 (ア)刊行物に記載された発明 原査定の拒絶理由に引用された引用刊行物1(特開昭62-221380号公報)及び引用刊行物2(特開2005-204779号公報)に記載された事項は前記「第二、[理由](2)(あ)刊行物に記載された発明」に記載された事項と同様であるから、援用する。 (イ)本願発明1と引用発明1との対比・判断 本願補正発明1は、前記「第二、[理由](1)補正前・後の本願発明」で検討したように、本願発明を特定するために必要な事項である「施錠手段」について、「施錠及び解錠し得る」を「施錠し、(前記)鍵穴に鍵を挿入した状態で回動操作して解錠し得る」と限定するものである。 そうすると、本願補正発明1は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するものであって、その本願補正発明1が、前記「第二、[理由](2)(い)本願補正発明1と引用発明1との比較・検討」に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ)むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-21 |
結審通知日 | 2010-12-22 |
審決日 | 2011-01-05 |
出願番号 | 特願2005-350313(P2005-350313) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 増嶌 稔 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
井上 昌宏 川島 陵司 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 越川 隆夫 |