• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47B
管理番号 1232477
審判番号 不服2009-1434  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-15 
確定日 2011-02-18 
事件の表示 平成11年特許願第 48908号「テーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月12日出願公開、特開2000-245538〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成11年2月25日に特許出願としたものであって、平成20年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成22年6月2日付けで、上記平成21年1月15日付けの手続補正について補正の却下の決定をするとともに拒絶理由を通知したところ平成22年8月3日付けで意見書が提出された。

2 本願発明
平成22年8月3日付けの意見書において、請求人は、当審においてなされた平成22年6月2日付け補正の却下の決定は不適法なものである旨、主張しているが、平成22年6月2日付け補正の却下の決定は、後述のとおり適法になされたものであり、本願の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明は、平成20年8月13日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】 天板の左右両側縁を、平面視で互いに平行な直線とし、天板の後縁を、前記側縁と直交するほぼ直線状とし、天板の前縁を、前記両側縁の前端同士を結ぶ仮想直線上の中央の境界点を境に平面視において点対称をなす、前方に凸出する円弧状の凸部と、後方に凹入する円弧状の凹部とにより構成し、前記凸部と凹部とを前記境界点で滑らかに連設するとともに、同一形状の天板を有する2個のテーブルを、その前縁同士を向かい合わせるように並べると、両天板の左右の両側縁が、それぞれ平面視において連続した直線となり、両天板を合わせた平面視の外周がほぼ方形をなし、かつ両天板の前縁全体が、互いに密接するようにしたことを特徴とするテーブル。」

3 引用刊行物
当審における拒絶理由で引用された刊行物は次のとおりである。
刊行物1:特開平9-299151公報
刊行物2:実願平3-28973号(実開平5-13234号)のCD-ROM
刊行物3:特開平10-286125号公報

(1)本願出願前に頒布された、上記刊行物1には、次の記載がある。
(1a)「【従来の技術】近時におけるテーブルの利用形態として、通常は個別に使用されているものを必要に応じ集合させることによって随時大型の会議テーブルを構成するようにしている例が少なくない。このような利用形態によれば、会議テーブル用の特殊な大型天板を導入する必要がなく、平素からそのような大型天板がオフィスの一角を占有するような不都合も解消することができる。
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の会議テーブルを構成する個々のテーブルの天板は、従来から単純な長方形状をなしており、天板を突き合わせた際に縁部同士が隙間なく密接に当接するようになっている。」(段落【0002】、【0003】)
(1b)「本発明の実施例を、図1?図13を参照して説明する。 図1?図4に示すテーブルAと、図5?図7に示すテーブルBとは、互いに種類が異なるものであり、別途独立に使用できるのは勿論のこと、必要に応じて随時組をなして使用することもできるように構成されたものである。以下、順を追って説明する。
先ず、図1?図4に示すテーブルAは、矩形に近い平面形状をなす天板1の各コーナー部を4本の脚21、22、23、24によって支持されている。」(段落【0008】、【0009】)
(1c)図8には、矩形に近い平面形状をなす天板1の前後の長縁側を向かい合わせて2個並べ、大型の会議テーブルを構成することが記載されている。

上記記載事項(1a)に記載されている、従来のテーブルの天板は、単純な長方形状をなしているのであるから、天板の左右両側縁は、平面視で互いに平行な直線、天板の後縁は、前記側縁と直交するほぼ直線状、天板の前縁は、前記両側縁の前端同士を結ぶ直線であり、テーブルが脚部により支持されていることは自明である。
また、大型の会議テーブルを構成するのに、同一形状の天板を有する2個のテーブルを、その前縁同士を向かい合わせるように並べるパターンは図8に記載されているように普通に行われているから、(1a)の記載事項及び当業者の技術常識によれば、刊行物1には、従来の技術として、以下の発明が記載されているものと認められる。
「単純な長方形状をなし、天板を支持する脚部を有し、かつ同一形状の天板を有する2個のテーブルを、その前縁同士を向かい合わせるように並べると、両天板の左右の両側縁が、それぞれ平面視において連続した直線となり、両天板を合わせた平面視の外周がほぼ方形をなし、かつ両天板の前縁全体が、互いに密接するようにしたテーブル。」(以下、「刊行物1記載の従来発明」という。)

(2)本願出願前に頒布された、上記刊行物2には、図7?9とともに、次の記載がある。
(2a)「 【産業上の利用分野】
本考案は、一般の事務作業とキーボード作業とを着座方向を変えて行えるようにした机に関するものである。」(段落【0001】)
(2b)「図7ないし図9は本考案の第3の実施例を示し、・・・一体の机21の天板22には、作業者の着座位置を含めて左側に事務作業用の事務作業部24を、作業者の着座位置からみて右側にキーボード作業用のキーボード作業部25を、互いに一体にそれぞれ構成している。この机21の天板22は、横幅が約1400mm、左端の奥行きが約700mm、右端の奥行きが約900mmとなっている。この天板22は、左端近傍が基準部26になっていて、事務作業部24は作業者の着座位置をほぼ中心として基準部26より奥側に円弧状に湾曲した凹曲部27となり、右端側で十分な幅を有して手前に突出した突出部28につながっていて、この突出部28は先の実施例の角突出部や角傾斜部に相当する部分を有している。ここで凹曲部27の奥行きは最短で約650mmになっている。
この机では、図9に示すように、机21の右奥角側に斜めにVDT11を設置し、突出部28から凹曲部27に向かう位置にキーボード12を設置すると、書類29を置いたりできる筆記スペースが確保できると共に、アームレストスペースが確保できる。・・・」(段落【0014】?【0015】)
(2c)図8には、次の図面が記載されている。


これらの記載によれば、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「天板の左右両側縁を、平面視で互いに平行な直線とし、天板の後縁を、前記側縁と直交するほぼ直線状とし、天板の前縁を、作業者の着座位置をほぼ中心として基準部26より奥側に円弧状に湾曲した凹曲部27と、手前に突出した突出部28により構成し、前記凹曲部27と突出部28とを滑らかに連結するようにしたテーブル。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

(3)本願出願前に頒布された、上記刊行物3には、次の記載がある。
(3a)「【請求項1】 円形部と該円形部の側縁から突出する突出部とにより天板を形成し、かつ前記突出部の一方の側縁に、前記円形部の周縁の曲率と同一曲率の凹入部を設けたことを特徴とする組み合わせ用テーブル。
・・・
【請求項4】 突出部の他方の側縁を、ほぼ前記円形部の周縁の接線をなす直線状としたことを特徴とする請求項1または2記載の組み合わせ用テーブル。
【請求項5】 突出部の先端を尖らせたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の組み合わせ用テーブル。」
(3b)「図7に示すように、本実施形態の組み合わせ用テーブル(20)の突出部(6)は長めに形成され、突出部(6)における凹入部(7)と反対側の側縁(21)は、円形部(4)の周縁(5)のほぼ接線をなす直線状に形成され、突出部(6)の先端は尖っている。
この組み合わせ用テーブル(20)も、第1の実施形態と同様に、同種の組み合わせ用テーブルと組み合わせて使用することができる。図8は、2個の組み合わせ用テーブル(20)(20)同士を組み合わせた使用例を示している。
この実施形態によれば、係合し合う突出部(6)と円形部(4)との間には、切り込状部が殆ど形成されなくなるので、天板(2)と天板(2)の間から、天板(2)上に載置された物体が落下するおそれはなくなる。また、第1の実施形態に比べて、係合凹部(7)が長くなり、円形部(4)と凹入部(7)の接触面積が増大するので、組み合わせ用テーブル(20)(20)同士が分離しにくくなる。
さらに、直線状に形成された突出部(6)の側縁(21)を、部屋の壁等に接触させることにより、組み合わせ用テーブル(20)を安定した状態で使用できるようになる。」(段落【0024】?【0027】)
(3c)図7には、次の図面が記載されている。

4 対比、判断
請求項1に係る発明と刊行物1記載の従来発明とを対比すると、刊行物1記載の従来発明において、「単純な長方形の天板」は、短い左右の側縁と長い前後の縁を有しており、「天板の左右の両側縁を、平面視で互いに平行な直線とし、前後の縁の一方を向かい合わせるように並べると、両天板の左右の両側縁が、それぞれ平面視において連続した直線となる」ものといえるから、両者は、
「天板の左右の両側縁を、平面視で互いに平行な直線とした同一形状の天板を有する2個のテーブルを、その前後の縁の一方を向かい合わせるように並べると、両天板の左右の両側縁が、それぞれ平面視において連続した直線となり、両天板を合わせた平面視の外周がほぼ方形をなし、かつ両天板の向かい合わせた縁全体が、互いに密接するようにしたテーブル。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点1>
天板の前縁を、請求項1に係る発明では、両側縁の前端同士を結ぶ仮想直線上の中央の境界点を境に平面視において点対称をなす、前方に凸出する円弧状の凸部と、後方に凹入する円弧状の凹部とにより構成し、凸部と凹部とを前記境界点で滑らかに連設し、前縁を向かい合わせるように並べると、両天板の向かい合わせた前縁全体が、互いに密接するのに対し、刊行物1記載の従来発明では、両側縁の前後がいずれも直線で構成されている点。

上記相違点1について検討する。
刊行物2記載の発明には、事務作業と、キーボード作業用を行うために、前縁に後方に凹入する円弧状の凹部と、前方に突出する突出部とを設け、円弧状の凹部と滑らかに連結したテーブルが示されている。
そうすると、刊行物1記載の従来発明において、テーブルの天板を、単独では事務作業と、キーボード作業を行うことのできるように、刊行物2記載の発明のような前縁に円弧状の凹部と、前方突出部を有するものとすることは、当業者が容易に想到しうることである。
そして、刊行物3には、円弧状の凹部と突出部を有するテーブルを、2個向かい合わせるように並べ、両接触面を、全体が互いに密接するように、前方に凸出する円弧状の凸部と、後方に凹入する円弧状の凹入部とにより構成し、円弧状の凸部と凹入部とを滑らかに連設することが記載され、このように構成することにより、係合凹部が長くなり、円弧状の凸部と凹入部の接触面積が増大するので、組み合わせ用テーブル同士が分離しにくくなる効果があることが記載されている。
そうすると、刊行物1記載の従来発明において、事務作業と、キーボード作業を行うために、刊行物2記載の発明に基いて当業者が容易に想到しうる、前縁に円弧状の凹部と、前方に凸出する凸部とを設けたテーブルを組み合わせる際に、組合わせたテーブル同士を分離しにくくするために、凹部と凸部のある前縁側を向かい合わせて、両天板の前縁全体が、互いに密接するように連接しようとすることは当業者が容易に想到しうることであり、そのために天板の前縁を、両側縁の前端同士を結ぶ仮想直線上の中央の境界点を境に平面視において点対称をなす、前方に凸出する円弧状の凸部と、後方に凹入する円弧状の凹部とにより構成することは、刊行物3記載の発明に基いて当業者が容易に想到しうることである。

そして、請求項1に係る発明の効果は、刊行物1ないし3記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができないから、請求項1に係る発明は、刊行物1ないし3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 平成22年6月2日付け補正の却下の決定の適法性について
平成22年8月3日付けの意見書において、請求人は、当審においてなされた平成22年6月2日付け補正の却下の決定(以下、「本件決定」という。)は不適法なものである旨主張しているが、本件決定は、以下のとおり適法になされたものである。

(1)本件決定の理由の概要
本件決定の理由は、平成21年1月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるが、補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきである、というものである。

(2)補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、平成21年1月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(補正部分に下線付与。)。
「天板の左右両側縁を、平面視で互いに平行な直線とし、天板の後縁を、前記側縁と直交するほぼ直線状とし、天板の前縁を、前記両側縁の前端同士を結ぶ仮想直線上の中央の境界点を境に平面視において点対称をなす、前方に凸出する円弧状の凸部と、後方に凹入する円弧状の凹部とにより構成し、前記凸部と凹部とを前記境界点で滑らかに連設するとともに、天板の4隅を、互いに隣接するもの同士の間がすべて開放するようにした4本の脚支柱により支持し、この左右における各前後の脚支柱を前後方向に延びる脚フレームにより連結し、さらにこの左右の脚フレームの中間部を左右方向を向く連結杆により結合し、かつ同一形状の天板を有する2個のテーブルを、その前縁同士を向かい合わせるように並べると、両天板の左右の両側縁が、それぞれ平面視において連続した直線となり、両天板を合わせた平面視の外周がほぼ方形をなし、かつ両天板の前縁全体が、互いに密接するようにしたことを特徴とするテーブル。」

(3)引用刊行物
刊行物1:特開平9-299151公報
刊行物2:実願平3-28973号(実開平5-13234号)のCD-ROM
刊行物3:特開平10-286125号公報
刊行物4:実願昭49-8014号(実開昭50-99002号)のマイクロフイルム

上記刊行物1?3の記載事項は、上記「3 (1)?(3)」記載のとおりである。
また、刊行物4の実用新案登録請求の範囲には、次の記載がある。
「帯状金属板で門形に形成する一対の脚フレームと、帯状金属板の両端を直角に折曲げコ字形に形成する一対の框フレームとを備え、上記脚フレームには左右の脚を連絡する連絡枠部内側面にそれぞれ左右一対のボルトを植設するとともに、上記框フレームの各両端折曲部には上記ボルトを通す透孔を穿って上配各折曲部を上記連絡枠部の各内側面に当接せしめたのち、上記ボルトにナットを締付け、脚フレームと框フレーム相互を連結枠組せしめると共に上記框フレームには耳金具を設けて該耳金具を介し脚フレーム上に載置する天板をネジ止め固定するようにしたテーブルの構造。」

(4)対比、判断について
補正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、両者は、上記「4」で挙げた相違点1の他に次の点で相違する。
<相違点2>
脚部が、請求項1に係る発明では、天板の4隅を、互いに隣接するもの同士の間がすべて開放するようにした4本の脚支柱と、この左右における各前後の脚支柱を連結する前後方向に延びる脚フレーム及び、この左右の脚フレームの中間部を結合する左右方向を向く連結杆であるのに対し、刊行物1記載の従来発明では、脚部の構成が不明な点

相違点1については、上記「4」で検討したとおり、刊行物1記載の従来技術に刊行物2、3に記載された発明を適用して当業者が容易になしうることである。
上記相違点2について検討すると、刊行物1の図1に示されるように、複数連結することを意図した会議用テーブルにおいて、天板の4隅を、互いに隣接するもの同士の間がすべて開放するようにした4本の脚支柱により支持することは従来周知であり、刊行物1記載の従来発明において脚支柱を、天板の4隅を互いに隣接するもの同士の間がすべて開放するようにした4本の脚支柱とすることは、当業者が容易になしうることである。
そして、刊行物4には、長方形のテーブルの脚部として、左右における各前後の脚支柱を前後方向に延びる脚フレームにより連結し(門形の脚フレーム)、さらにこの左右の脚フレームの中間部を左右方向を向く連結杆(框フレーム)により結合した4本の脚支柱により天板の4箇所を、互いに隣接する脚支柱同士の間がすべて開放するように支持したものが記載されており、刊行物1記載の従来発明の天板を4本の脚支柱で支持する際に、刊行物4記載の発明を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
また、補正発明全体の効果は、刊行物1ないし4記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができないから、補正発明は、刊行物1ないし4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 むすび
以上のとおり、本件決定は適法になされたものであり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1ないし3記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-30 
結審通知日 2010-12-07 
審決日 2010-12-21 
出願番号 特願平11-48908
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 山本 忠博
宮崎 恭
発明の名称 テーブル  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 森 浩之  
代理人 中馬 典嗣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ