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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 E03D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 E03D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 E03D
管理番号 1232487
審判番号 不服2009-22970  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-04 
確定日 2011-02-18 
事件の表示 特願2007-110999「究極のトイレ洗浄革命<洗いはオマカセ>」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月9日出願公開,特開2008-240499〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は,平成19年3月23日の出願であって,平成21年10月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月4日に審判請求がなされたものである。

第2.拒絶査定の要点
拒絶査定は,平成21年3月16日付け拒絶理由通知書に記載された理由に基づくものであり,
当該理由は,<理由1>乃至<理由3>からなるものであり,具体的には,以下のとおりである。

<理由1>
平成19年6月16日付けでした手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


出願人は,【0009】に「4 トイレットペ-パ-は壁に埋め込み型にして設置し,扉又は蓋をする。使用室の洗浄時に,湿気や埃などから守ることが出来,体が触れて床へ落ちて不衛生となることを激減できる。」との記載を加える補正を行ったが,当該記載は願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載も示唆もされていない。

<理由2>
この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1に係る発明は,物の発明であるのか,方法の発明であるのか明らかではなく,何についての発明であるのか明確でない。
(2)請求項1は,請求項全体にわたって文章が繋がっておらず,日本語として明確でない。
(3)請求項1には,「ウォシュレット」との記載があるが,当該記載は登録商標であり,技術用語として明確でない。
(4)請求項1には,「将来は携帯電話からも操作が出来る様にすることも可能である」と記載されているが,「将来は」とは,本発明の出願日以降の技術を参酌するものと解されるため,明確でない。
よって,請求項1に係る発明は明確でない。

<理由3>
この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


(1)洗浄室や使用室についての具体的な形状や構造が発明の詳細な説明に記載されておらず,例えば,どのような機構を用いれば回転するブラシを用いて便器を洗浄可能であるのか,どのような機構であれば洗浄室と使用室とで便器を移動させることができるのかといった点が,技術常識を参酌しても理解不能である。
(2)発明の詳細な説明には「ウォシュレット」との記載があるが,当該記載は登録商標である。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく,経済産業省令で定めるところにより記載されたものでもない。

第3.<理由1>についての当審の判断
平成19年6月16日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)は,補正前(願書に最初に添付した明細書を参照。)の【符号の説明】の記載に,
「4 トイレットペ-パ-は壁に埋め込み型にして設置し,扉又は蓋をする。
使用室の洗浄時に,湿気や埃などから守ることが出来,体が触れて床へ落ちて不衛生となることを激減できる。」との事項を付加するものある。

しかしながら,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)には,「トイレットペーパー」の設置について,なんら記載されていない。
そして,トイレットペーパーをトイレに設置することまでは,自明であるとしても,それを「壁に埋め込み型にして設置し,扉又は蓋をする」こと,及び,そのことにより奏せられる「使用室の洗浄時に,湿気や埃などから守ることが出来,体が触れて床へ落ちて不衛生となることを激減できる」との効果は,当初明細書等の記載から導き出せるものではない。
そうすると,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない。

なお,審判請求人は,平成21年5月13日付け意見書,及び,平成21年5月15日付け意見書(以下,両意見書を合わせて,単に「意見書」という。)において,「この件は新たに特願又は実用新案として再提出致します」と記載し,また,平成21年11月4日付け手続補正書(補正対象書類名:意見書)において,「実用新案登録請求として再提出」と記載しているが,
本件補正によって本願明細書に追加された新規事項は,削除されていないので,審判請求人の意見は採用できない。

よって,本願は,特許法第17条の2第3項の規定により,拒絶すべきものである。

第4.<理由2>についての当審の判断
1.本願特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。
「【請求項1】
洗浄室と使用室に分ける。
使用室に人が入るとセンサーが感知して洗浄室から洗浄済みの便器が出て来る
使用室の壁にはビデ,ウォシュレット,冷,温風機,消臭,音楽,緊急報知器などを設置,将来は携帯電話からも操作が出来る様にすることも可能である
床は蒸気洗浄,又は水で洗い流す方法
洗浄室では使用済の便器と汚物入れが戻ってきて,一回使用ごとに便器と汚物入れを洗浄,乾燥させる。傷を付けない柔らかな布などを使用してブラシが便座の縁から便器の中迄回転して洗浄する。
機械洗浄の為,蓋は不用である。そして便器本体に座る所を設置する方が丈夫である。」

2.判断
(1)<理由2>の(1)について
請求項1の記載は,「洗浄室」,「使用室」及び「便器」等の物についての記載と,「水で洗い流す方法」などの方法についての記載と,そのいずれとも判別できない記載が混在しており,全体として,物の発明なのか,方法の発明なのかが特定されず,特許を請求している発明がどのようなものか,そのカテゴリーが不明である。
したがって,本願の特許請求の範囲の記載は明確でない。

なお,審判請求人は,この点につき,意見書において,本願発明が「使用室【便室】と洗浄室に分けて洗浄室で便器を洗うと言う従来にない発案である布等の【繊維】と【ブラシ】を併用しメリーゴーランドの原理で洋式便器に覆い被せて水と洗剤を流し入れて洗うと言う物の発明」である旨の主張をしているが,本願の特許請求の範囲はその主張に沿った手続補正がされておらず,前記主張は,特許請求の範囲,明細書又は図面の記載に基づくものではなく(後述の「第5.(1)(a)」を参照。),採用できない。

(2)<理由2>の(2)について
請求項1には,文章として何を表現しようとしているのか不明確な記載がある。
すなわち,「一回使用ごとに便器と汚物入れを洗浄,乾燥させる」との記載は,洗浄,乾燥させるなんらかの装置があることを意味しているのか,或いは,洗浄,乾燥を人為的に行うことを意味しているのか明らかでないし,
同様に,「傷を付けない柔らかな布などを使用してブラシが便座の縁から便器の中迄回転して洗浄する」との記載も,布及びブラシを用いる装置又は人為的行為のいずれを意味しているのか明らかでない。
また,当該記載では,「布などを使用して」が,「ブラシが・・・洗浄する」にかかって,”ブラシが布などを使用して洗浄する”ことを意味するのか,単に「洗浄する」にかかって,”布などとブラシが共に洗浄する”ことを意味するのかも,明らかでない。
さらに,「一回使用ごとに便器と汚物入れを洗浄,乾燥させる。傷を付けない柔らかな布などを使用してブラシが便座の縁から便器の中迄回転して洗浄する。」との記載は,「便器と汚物入れの洗浄」の「洗浄」と「回転して洗浄」の「洗浄」が,同一の事項を指すのか否かも不明確で,結局,当該記載が如何なる事項を示しているのか特定できない。
したがって,本願の特許請求の範囲の記載は明確でない。

なお,審判請求人は,この点につき,意見書において,「使用室と洗浄室に分けて便器を洗浄する方法。・・・この要件の方法に対しての請求とさせて頂きます。」と主張しているが,本願の特許請求の範囲はその主張に沿った手続補正がされておらず,前記主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものではなく,採用できない。
また,審判請求人は,ここでは本願発明を「方法の発明」とすると主張しているが,先の主張では「物の発明」としており(上記「第4.2.(1)」を参照。),主張内容に矛盾があるから,その点においても,審判請求人の主張は採用できない。

(3)<理由2>の(3)について
請求項1の「ウォシュレット」は,登録商標であるから,技術用語として不適切である。
また,仮に,当該「ウォシュレット」が「温水洗浄便座」を指していると解して,
本願明細書の「ビデ,ウォシュレット等は使用室の壁に取り付け,リモコン操作をする。」(段落【0005】),「便器自体はシンプルにして,ビデ,ウォシュレット,温風冷風装置等を使用室の壁に取り付ける。」(段落【0007】),「【図2】・・・使用室の壁にビデ,ウォシュレット,室内温風冷風装置等を設置」(段落【0009】),及び,図面の記載をみても,
請求項1の「使用室の壁には・・・ウォシュレット・・・を設置」という記載における「ウォシュレット」なるものが,温水洗浄便座の操作装置等の一部を示すのか,或いは,温水洗浄便座の付属物を含めた全てを示すのか,さらに,全てとした場合には,便器との関係においてどのように構成されるのかを,特定することができない。
したがって,本願の特許請求の範囲の記載は明確でない。

なお,審判請求人は,この点につき,意見書において,「ウォシュレット機能と致します」と主張しているが,本願の特許請求の範囲はその主張に沿った手続補正がされていないうえ,
「ウォシュレット機能」なるものが,具体的に如何なる事物を指すのか不明確なため,前記主張は採用できない。

(4)<理由2>の(4)について
請求項1の「将来は携帯電話からも操作が出来る様にすることも可能である」との事項は,「将来は・・・可能である」との記載によって,本願発明に「携帯電話からも操作が出来る様にすること」を必須とするか否かが不明確である。
したがって,本願の特許請求の範囲の記載は明確でない。

なお,審判請求人は,この点につき,意見書において,「携帯電話からの操作は現に色々な物に対応する機能がすでにある為付随する物とします。」と主張しているが,そのような機能が公知であるとしても,本願発明がこのような機能を必須とするものであるか否かは,上述のとおり不明確であるので,前記主張は採用できない。

以上のとおり,本願の特許請求の範囲には,特許を受けようとする発明が明確に記載されていないので,本願は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって,本願は拒絶すべきである。

第5.<理由3>についての当審の判断
(1)<理由3>の(1)について
(a)本願明細書には,便器の洗浄に係る事項として,「用を足し終えると便座が洗浄室へ戻って便器ごと機械で洗浄,乾燥させる。」(段落【0001】),「本体に傷を付けない柔らかな布の様な素材を使用して,洗剤を一回につき適量抽出して両側面を洗い,ブラシが便座の縁から本体の中迄回転して洗浄する。」(段落【0002】),及び,「【図1】<洗浄室>便器を機械で洗浄後,温風が出て乾燥柔らかな布の素材で,本体を傷つけない様に洗う」(段落【0009】)との記載があるから,本願発明は,洗浄のための機械を有し,かつ洗浄は布の様な素材と回転するブラシによって行われるものであることは記載されているものの,布の様な素材とブラシを有すると推測される機械が,洗浄とそれに続く乾燥との関係において,具体的にどのような構成を有するものであるのかは,記載されていない。
したがって,本願明細書の発明の詳細な説明についての記載は,当業者が容易に発明を実施できる程度に明確かつ十分でない。

なお,審判請求人は,この点につき,意見書において,「洗浄室では天井から布等【繊維】の速乾性のある繊維とその内側に便座の中を洗うブラシを取り付けその箇所から洗剤と水を流し入れて,メリーゴーランドの原理で回転させて便器に覆い被せて洗浄する。次に洗浄後は便器から布等を離して布等【繊維】だけを回転させて絞ってから便器と供に乾燥させる。」と主張しているが,当該主張は明細書又は図面の記載に基づくものではなく,採用できない。

(b)本願明細書には,洗浄室と使用室とで便器を移動させることに関して,「使用室と洗浄室に分ける。便器を出し入れ可能にして,その都度,洗浄して使用する使用室に入るとセンサーが人を感知して,洗浄室から便座が出て来る。用を足し終えると便座が洗浄室へ戻って便器ごと機械で洗浄,乾燥させる。」(段落【0001】)と記載されているのみで,図面を参酌しても,便器を移動させるための具体的な構成がまったく開示されていない。
また,トイレにおいては,給排水管の配管を必須とするところ,本願明細書には,便器の移動に対して,これらの管をどのように構成するかについても,まったく開示されていない。
したがって,本願明細書の発明の詳細な説明についての記載は,当業者が容易に発明を実施できる程度に明確かつ十分でない。

なお,審判請求人は,この点につき,意見書において,「使用室の床はニ段になっていて一段目が使用する場所で二段目の床に便器の後方面を取り付け車輪又はレールでスライド移動させて洗浄室へ移行する。」及び「便座の後方と洗浄室から排泄物を排出させる為の連結は伸縮性のある金属性のジャバラ,若しくはゴムタイヤなどの素材で出来た物を使用する。」と主張しているが,当該主張は明細書又は図面の記載に基づくものではなく,採用できない。

(2)<理由3>の(2)について
先にも述べたとおり,「ウォシュレット」は,登録商標であるから,技術用語として不適切である。
また,仮に,当該「ウォシュレット」が「温水洗浄便座」を指していると解しても,上記「第4.2.(3)」で検討したとおり,「ウォシュレット」なるものが,温水洗浄便座の操作装置等の一部を示すのか,或いは,温水洗浄便座の付属物を含めた全てを示すのか,さらに,全てとした場合には,便器との関係においてどのように構成されるのかを,特定することができない。
したがって,本願明細書の発明の詳細な説明についての記載は,当業者が容易に発明を実施できる程度に明確かつ十分でない。

なお,審判請求人は,この点につき,意見書において,「ウォシュレット機能と致します」と主張しているが,上記「第4.2.(3)」と同様の理由により採用できない。

以上のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明についての記載は,当業者が容易に発明を実施できる程度に明確かつ十分ではないので,本願は,特許法第36条第4項第1項の規定を満たしていない。
よって,本願は拒絶すべきものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから,この出願は,<理由1>乃至<理由3>のいずれによっても,拒絶すべきものである。


[附言事項]
本願の特許請求の範囲には,特許を受けようとする発明が明確に記載されていないので,物の発明か方法の発明かすら特定できないが,
そのいずれであったとしても,本願の特許請求の範囲に記載された各構成要件は,本願出願前に頒布されたいくつかの刊行物に記載されており,本願発明は,これら刊行物に記載された発明と周知技術から,当業者が容易に想到し得たものである。
すなわち,実用新案登録第2505370号公報には,「洗浄室と使用室に分ける」事項,「洗浄室から洗浄済みの便器が出て来る」事項,「洗浄室では使用済の便器が戻ってきて,一回使用ごとに便器を洗浄,乾燥させる。ブラシが便座の縁から便器の中迄回転して洗浄する」事項,及び,「機械洗浄の為,蓋は不用である。そして便器本体に座る所を設置する」事項が記載され,
特開平6-123126号公報には,「床は水で洗い流す方法」及び「汚物入れ」を清掃する事項が記載され,
特開2001-204087号公報には,「(ビデ,ウォシュレット,冷,温風機,消臭などが)携帯電話からも操作が出来る」事項が記載されている。
そして,「使用室に人が入ると感知するセンサー」及び「使用室の壁には消臭,音楽,緊急報知器などを設置」する事項は,周知技術である。
 
審理終結日 2010-11-29 
結審通知日 2010-12-07 
審決日 2010-12-22 
出願番号 特願2007-110999(P2007-110999)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (E03D)
P 1 8・ 561- Z (E03D)
P 1 8・ 536- Z (E03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩田 裕介鷲崎 亮  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
山本 忠博
発明の名称 究極のトイレ洗浄革命<洗いはオマカセ>  

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