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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1232649
審判番号 不服2008-15074  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-16 
確定日 2011-02-25 
事件の表示 特願2000-306326号「電気外科装置用旋回システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年6月12日出願公開、特開2001-157684号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年10月5日(パリ条約による優先権主張 1999年10月5日 (US)アメリカ合衆国)を出願日とする出願であって、平成20年3月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、さらに、当審において平成22年5月17日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年8月20日付けで明細書の手続補正がなされるとともに意見書が提出されたものであり、その請求項1に係る発明は、平成22年8月20日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「近位端および遠位端を備えた細長い可撓性チューブを有し、該チューブには少なくとも1つの孔が設けられており、
加圧されたイオン化可能ガスを1リットル/分よりも大きい流量で前記細長い可撓性チューブの近位端に供給する供給源と、
加圧されたイオン化可能ガスが前記孔から出る前に前記イオン化可能ガスをイオン化するための少なくとも1つの電極と、
層流中で移動し、かつ前記細長い可撓性チューブ中を流れる前記イオン化可能ガスに非層流特性を付与すべく構成された可動流体攪拌器とを更に有することを特徴とする組織を凝固させる電気外科装置。」

2.引用例の記載事項
当審における拒絶理由で引用した米国特許第5720745号明細書(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(a)明細書第4欄第11から13行
「FIGS. 2 to 4 show three different embodiments of the tube 2 in FIG. 1. In all three embodiments the tube 2 consists out of flexible material. 」
『図2ないし4は、図1におけるチューブ2の3つの異なった具体例を示している。3つすべての具体例において、チューブ2は、可撓性材料から成っている。』(『』内は、当審による仮訳。)

(b)明細書第4欄第32から33行
「In FIGS. 2 to 4 the electrode 8, 21 is fixed at the distal end of the tube 2, which electrode serves for ionizing the gas.」
『図2ないし4の電極8、21は、チューブ2の出口端に設けられ、電極は、ガスをイオン化している。』

(c)明細書第6欄第13から15行
「FIGS. 16 to 19 show different and presently preferred embodiments of the exit openings 9 at the distal end of tube 2.」
『図16ないし19は、チューブ2の末端出口9のより好ましい異なる具体例を示している。』

(d)明細書第6欄第58から66行
「In the case of the invention which allows endoscopic use in the gastrointestinal tract, rather low flow rates of e.g. about 1 1/min or even lower flow rates are sufficient, in order that the rather small space between the electrode 8 (FIG. 2) or electrode 23 (FIG. 15), respectively, and the tissue 18 to be coagulated is completely filled by an argon cloud as shown in FIG. 20 and in order to remove air, but not in order to perform a substantial mechanical action to fluid at the tissue.」
『本発明は胃腸管において内視鏡を使用する場合に適用され、流量は約1リットル/分以下で十分であり、凝固される組織と電極8(図2)や電極23(図15)との間に形成された比較的小さな空間は、図20に示されているように、アルゴンガスによって完全に満たされて空気を追い出すものの、アルゴンガスは組織の体液に何ら機械的作用を加えるものではない。』

(e)明細書第7欄第61から64行
「The proximal end of the tube 2 is connected with the gas supply conduit 3 to a valve 32 and an argon reservoir 31, which is preferably a pressurized gas cylinder filled with argon. 」
『チューブ2の基端は、ガス供給導管3と弁32とアルゴンリザーバ31に接続され、アルゴンリザーバ31は、アルゴンガスが充填された圧縮ガスシリンダであることが望ましい。』

(f)明細書第8欄第61行から同第9欄第4行
「In the embodiment as shown in FIG. 17 a cylindrical end piece 20 with a helical notch 26 is shaped in such a manner, that the exiting gas jet is provided with a spin, which (like a conical exit opening) hinders producing of a too sharp laminar gas jet.
In the embodiment shown in FIG. 18 the end piece 20 does not only have a conical or diverging end portion 25, but in the surface of the diffusor 25 additionally a number of notches 27 in a configuration shown in FIGS. 18 and 19 are formed, which notches cause swirling in the border zones and also additionally produce spin. 」
『図17に示された具体例における筒状の末端部20の螺旋状ノッチ26は、(末端出口が円錐形であるかのように)出口ガスジェットに旋回を付与し、はっきりした層流ガスジェットが形成されるのを妨げるものである。
図18に示された具体例における末端部20は、単なる円錐形や、広がる末端領域25ではなく、図18、19に示されているように、拡散部25の表面に更に複数のノッチ27が設けられ、これらのノッチは、縁部で渦巻きを付与し、さらに旋回を付与するものである。』

(g)Fig.2ないし4、15ないし18には、「細長いチューブ2」が図示されている

(h)上記(b)で示した「図2ないし4の電極8、21は、チューブ2の出口端に設けられ、電極は、ガスをイオン化している。」との記載、同(e)で示した「チューブ2の基端は、ガス供給導管3と弁32とアルゴンリザーバ31に接続され、アルゴンリザーバ31は、アルゴンガスが充填された圧縮ガスシリンダであることが望ましい。」との記載および同(f)で示した「図17に示された具体例における筒状の末端部20の螺旋状ノッチ26は、(末端出口が円錐形であるかのように)出口ガスジェットに旋回を与え、はっきりした層流ガスジェットが形成されるのを妨げるものである。・・・」との記載からして、チューブ2の内部を加圧された層流のイオン化可能ガスが流れ、イオン化されたガスがチューブ2よりジェットとして出ることが示されているので、引用例には、「チューブ2の内部を加圧された層流のイオン化可能ガスが流れる」ことが記載されているに等しい。

上記(a)および(h)の記載事項および図示内容より、引用例には、
「基端および出口端を備えた細長い可撓性チューブ2を有し、該チューブ2には末端出口が設けられており、
加圧されたイオン化可能ガスを1リットル/分以下の流量で前記細長い可撓性チューブ2の基端に供給する『ガス供給導管3と弁32とアルゴンリザーバ31を有する手段』と、
加圧されたイオン化可能ガスが前記末端出口から出る前に前記イオン化可能ガスをイオン化するための電極8、21、23と、
前記細長い可撓性チューブ中を流れる層流の前記イオン化可能ガスに旋回を付与するノッチ26、27とを更に有する、組織を凝固させる装置。」の発明が開示されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「基端」、「出口端」、「チューブ2」、「末端出口」、「『ガス供給導管3と弁32とアルゴンリザーバ31を有する手段』」、「電極8、21、23」、「旋回を付与する」、「組織を凝固させる装置」は、
本願発明の「近位端」、「遠位端」、「チューブ」、「少なくとも1つの孔」、「供給源」、「少なくとも1つの電極」、「非層流特性を付与すべく構成された」、「組織を凝固させる電気外科装置」にそれぞれ相当する。

○引用例記載の発明の「1リットル/分以下の流量」と、本願発明の「1リットル/分よりも大きい流量」とは、「所定の流量」という点で共通する。

○引用例記載の発明の「ノッチ26、27」と、本願発明の「可動流体攪拌器」とは、「流体攪拌器」という点で共通する。

上記より、引用例記載の発明は、
「近位端および遠位端を備えた細長い可撓性チューブを有し、該チューブには少なくとも1つの孔が設けられており、
加圧されたイオン化可能ガスを所定の流量で前記細長い可撓性チューブの近位端に供給する供給源と、
加圧されたイオン化可能ガスが前記孔から出る前に前記イオン化可能ガスをイオン化するための少なくとも1つの電極と、
前記細長い可撓性チューブ中を流れる前記イオン化可能ガスに非層流特性を付与すべく構成された流体攪拌器とを更に有する、組織を凝固させる電気外科装置。」に相当し、この点において両者は一致し、以下の点で相違している。

◇相違点1
本願発明では、「層流中で移動し、かつ」加圧されたイオン化可能ガス(層流)に非層流特性を付与すべく構成された「可動流体攪拌器」であるのに対して、
引用例記載の発明では、加圧されたイオン化可能ガス(層流)に非層流特性を付与すべく構成された流体攪拌器(ノッチ26、27)であるものの、「層流中で移動し、かつ」・・・「可動流体攪拌器」ではない点。

◇相違点2
本願発明では、加圧されたイオン化可能ガスを「1リットル/分よりも大きい流量」で供給しているのに対して、
引用例記載の発明では、「1リットル/分以下の流量」で供給している点。

上記両相違点について検討する。
◆相違点1について
一般に、「層流中で移動(回転)し、かつ」層流に非層流特性を付与すべく構成された「可動流体攪拌器(回転スクリューまたは回転ファン)」自体、本願優先権主張日前に周知の事項(例えば、特開平7-136895号公報の特に【0009】、【図2】および【図3】参照)であり、また、引用例記載の発明と本願優先権主張日前に周知の事項とは、層流に非層流特性を付与すべく構成された流体攪拌器という点で共通している。
さらに、層流が加圧されたものであるかどうかに関わらず、流れがある以上、「可動流体攪拌器(回転スクリューまたは回転ファン)」が回転する(非層流特性を付与する)ことは当然の事項である。
そうすると、引用例記載の発明の「加圧されたイオン化可能ガス(層流)に非層流特性を付与すべく構成された流体攪拌器(ノッチ26、27)」について、上記周知の事項を適用することで、「層流中で移動(回転)し、かつ」加圧されたイオン化可能ガス(層流)に非層流特性を付与すべく構成された「可動流体攪拌器(回転スクリューまたは回転ファン)」にすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明および本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

◆相違点2について
本願の当初明細書および図面には、「【0010】・・・また、加圧されたイオン化可能ガスの供給によって、1リットル/分以上のガス流量を制御するようにも考案されている。」との記載があるものの、1リットル/分の流量に臨界的意義あることの根拠を示す記載および図示があるとはいえず、また、引用例記載の発明において、加圧されたイオン化可能ガスを「1リットル/分以下の流量」で供給する際、非層流特性(広がりなど)の程度等によっては、組織の体液に何ら機械的作用を加えることなく、「1リットル/分を僅かでも超える流量」で供給しようとすることは、当業者であれば十分に想起し得ることである。
したがって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明の作用効果は、引用例記載の発明および本願優先権主張日前に周知の事項から当業者であれば十分に予測し得ることである。

よって、本願発明は、引用例記載の発明および本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明および本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし9に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-29 
結審通知日 2010-09-30 
審決日 2010-10-13 
出願番号 特願2000-306326(P2000-306326)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神山 茂樹  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 岩田 洋一
豊永 茂弘
発明の名称 電気外科装置用旋回システム  
代理人 西島 孝喜  
代理人 村社 厚夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 小川 信夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  

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