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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1232654
審判番号 不服2009-23849  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-03 
確定日 2011-02-25 
事件の表示 特願2005-169256「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月21日出願公開、特開2006-340895〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願の手続の経緯概要は以下のとおりである。
平成17年 6月 9日 出願
平成20年12月24日 拒絶理由通知
平成21年 2月27日 手続補正
平成21年 9月 1日 拒絶査定
平成21年12月 3日 拒絶査定不服審判請求、手続補正A
平成22年 5月 7日 審尋
平成22年 7月14日 回答書
平成22年 9月21日 補正却下(手続補正A)、拒絶理由通知
平成22年11月17日 手続補正

2.本願発明
本願の請求項1に記載された発明は、平成22年11月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「遊技盤上の遊技領域に配置され、図柄を変動表示する図柄変動表示装置と、該図柄変動表示装置の変動図柄が予め決められた図柄に揃って停止し特別遊技状態が発生したとき大入賞口を開放する可変入賞装置と、を備えたパチンコ遊技機において、
該可変入賞装置の大入賞口として第1大入賞口が遊技領域の右側に配置される一方、第2大入賞口が該遊技領域の中央下部に配置され、
前記遊技盤は、前記第1大入賞口の開放時、該遊技領域の右側に向けて発射された遊技球の略全てが該第1大入賞口に入賞するように構成され、
該第1大入賞口及び該第2大入賞口の開閉を制御する可変入賞制御手段が設けられ、
該可変入賞制御手段は、図柄変動時に特別遊技状態移行用の第1大当り図柄が該図柄変動表示装置で揃って停止したとき、後記第2大当り図柄の場合より多くの賞球を獲得可能な特別大当りとして該第1大入賞口を開放させ、特別遊技状態移行用の第2大当り図柄が該図柄変動表示装置で揃って停止したとき、前記第1大当り図柄の場合より少ない賞球を獲得可能な通常大当りとして該第2大入賞口を開放させるように制御し、該第1大入賞口と該第2大入賞口における開放時のラウンド数及び入賞時に払い出される賞球数が相違して設定され、
前記第1大入賞口の内部に、Vゾーン及びVゾーンに入賞した入賞球を検出するVゾーン検出器はなく、該第1大入賞口の内部に複数の入賞通路が設けられる一方、該各入賞通路に同じ機能を有した入賞球検出器が設けられたことを特徴とするパチンコ遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用文献
(1)引用文献1
当審の拒絶の理由で引用された「パチンコ攻略マガジン5月28日号、株式会社双葉社、平成17年5月28日発行、10-13頁」(以下、「引用文献1」という。)には、以下記載がある。
・記載事項1
10-13頁には「ぱちんこウルトラセブン」というパチンコ遊技機についての紹介記事が記載されており、10、11頁にはその遊技盤の写真が掲載されている。そして、11頁の右上の「767」を写した写真を考慮すると、その遊技盤の中央には、図柄を変動表示する図柄変動表示装置が配置されていることは明らかである。
・記載事項2
12頁の右上部には、「大当り」の記載から右側に向かって順に、7の図柄、「なら・・・」、右向き矢印、「ウルトラボーナス(15R)」と記載されている。また、「大当り」の記載から右側に向かって順に、1?6の図柄、「なら・・・」、右向き矢印、「レギュラーボーナス(7R)」と記載されている。以上の記載は、7の図柄で大当たりするとウルトラボーナス(15R)になり、1?6の図柄で大当たりするとレギュラーボーナス(7R)になることを表している。
・記載事項3
13頁上部の「ウルトラボーナスとレギュラーボーナスでは、出玉が倍以上異なる!!」との記載の下の左側には「右下アタッカーの周辺はこぼしが極端に生じにくい釘構成のため、ウルトラボーナス時は毎回ほぼ一定の出玉が得られる。」と記載されている。また、13頁上部の「ウルトラボーナスとレギュラーボーナスでは、出玉が倍以上異なる!!」との記載の下の中央から右側にかけて、「盤面右下のアタッカーが15R開放!(賞球14個)出玉約1750個」と記載されて、その記載から左に向け矢印が図示されるとともに、「盤面下部のアタッカーが7R開放!(賞球12個)出玉約700個」と記載されて、その記載から左に向け矢印が図示されている。
以上の記載及びパチンコ遊技機に関する常識によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「遊技盤の中央に配置され、図柄を変動表示する図柄変動表示装置と、該図柄変動表示装置の変動図柄が予め決められた図柄に揃って停止し大当りが発生したとき開放される盤面右下のアタッカー及び盤面下部のアタッカーと、を備えたパチンコ遊技機において、
右下アタッカーの周辺はこぼしが極端に生じにくい釘構成として、ウルトラボーナス時は毎回ほぼ一定の出玉が得られるようにし、
7の図柄が揃って大当たりすると盤面右下のアタッカーが賞球14個で15R開放される出玉約1750個のウルトラボーナスになり、1?6の図柄が揃って大当たりすると盤面下部のアタッカーが賞球12個で7R開放される出玉約700個のレギュラーボーナスになるパチンコ遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「大当り」は本願発明の「特別遊技状態」に相当する。
引用発明の「図柄変動表示装置」は、遊技盤の中央部に配置されているものであるが、この遊技盤中央部が遊技領域であることは自明であり、「遊技盤上の遊技領域に配置」されたものということができる。そして、引用発明の「盤面右下のアタッカー」及び「盤面下部のアタッカー」が「大入賞口」を有することは自明であり、その「大入賞口」はそれぞれ本願発明の「第1大入賞口」及び「第2大入賞口」に相当するものであって、入賞口が遊技領域に設けられることは自明である。また、「盤面右下のアタッカー」及び「盤面下部のアタッカー」は、大当たりが発生したとき「大入賞口」を開放するものであるから、あわせて本願発明の「可変入賞装置」に相当するものである。そうすると、引用発明は、本願発明の「遊技盤上の遊技領域に配置され、図柄を変動表示する図柄変動表示装置と、該図柄変動表示装置の変動図柄が予め決められた図柄に揃って停止し特別遊技状態が発生したとき大入賞口を開放する可変入賞装置と、を備えたパチンコ遊技機」及び「該可変入賞装置の大入賞口として第1大入賞口が遊技領域の右側に配置される一方、第2大入賞口が該遊技領域の中央下部に配置され」に相当する構成を実質的に具備するものである。
引用発明は、「右下アタッカーの周辺はこぼしが極端に生じにくい釘構成」となっているから、右下アタッカーが開放し、これを狙って遊技者が遊技領域の右側に遊技球を発射した場合には、遊技球の略全てが右下アタッカーに入賞するものと認められる。そうすると、引用発明は、本願発明の「前記遊技盤は、前記第1大入賞口の開放時、該遊技領域の右側に向けて発射された遊技球の略全てが該第1大入賞口に入賞するように構成され」に相当する構成を実質的に具備するものである。
引用発明は、「盤面右下のアタッカー」及び「盤面下部のアタッカー」を開閉させる以上、開閉を制御する可変入賞制御手段を当然具備するものであるから、本願発明の「該第1大入賞口及び該第2大入賞口の開閉を制御する可変入賞制御手段が設けられ」に相当する構成を実質的に具備するものである。
引用発明においては、7の図柄が揃って大当たりすると出玉約1750個のウルトラボーナスになるものであり、1?6の図柄が揃って大当たりすると出玉約700個のレギュラーボーナスになるものであるが、ウルトラボーナスはレギュラーボーナスに比較して出玉が多いものであるから、ウルトラボーナスとレギュラーボーナスは本願発明の「特別大当り」及び「通常大当り」に相当し、「7の図柄」及び「1?6の図柄」は本願発明の「第1大当り図柄」及び「第2大当り図柄」に相当する。そして、ウルトラボーナスは賞球14個で15ラウンドの開放が行われ、レギュラーボーナスは賞球12個で7ラウンドの開放が行われるから、両者は「開放時のラウンド数及び入賞時に払い出される賞球数が相違」するものである。そうすると、引用発明は、本願発明の「該可変入賞制御手段は、図柄変動時に特別遊技状態移行用の第1大当り図柄が該図柄変動表示装置で揃って停止したとき、後記第2大当り図柄の場合より多くの賞球を獲得可能な特別大当りとして該第1大入賞口を開放させ、特別遊技状態移行用の第2大当り図柄が該図柄変動表示装置で揃って停止したとき、前記第1大当り図柄の場合より少ない賞球を獲得可能な通常大当りとして該第2大入賞口を開放させるように制御し、該第1大入賞口と該第2大入賞口における開放時のラウンド数及び入賞時に払い出される賞球数が相違して設定され」に相当する構成を実質的に具備するものである。

以上によれば、本願発明と引用発明は、
「遊技盤上の遊技領域に配置され、図柄を変動表示する図柄変動表示装置と、該図柄変動表示装置の変動図柄が予め決められた図柄に揃って停止し特別遊技状態が発生したとき大入賞口を開放する可変入賞装置と、を備えたパチンコ遊技機において、
該可変入賞装置の大入賞口として第1大入賞口が遊技領域の右側に配置される一方、第2大入賞口が該遊技領域の中央下部に配置され、
前記遊技盤は、前記第1大入賞口の開放時、該遊技領域の右側に向けて発射された遊技球の略全てが該第1大入賞口に入賞するように構成され、
該第1大入賞口及び該第2大入賞口の開閉を制御する可変入賞制御手段が設けられ、
該可変入賞制御手段は、図柄変動時に特別遊技状態移行用の第1大当り図柄が該図柄変動表示装置で揃って停止したとき、後記第2大当り図柄の場合より多くの賞球を獲得可能な特別大当りとして該第1大入賞口を開放させ、特別遊技状態移行用の第2大当り図柄が該図柄変動表示装置で揃って停止したとき、前記第1大当り図柄の場合より少ない賞球を獲得可能な通常大当りとして該第2大入賞口を開放させるように制御し、該第1大入賞口と該第2大入賞口における開放時のラウンド数及び入賞時に払い出される賞球数が相違して設定された、パチンコ遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
第1大入賞口の内部に、本願発明ではVゾーン及びVゾーンに入賞した入賞球を検出するVゾーン検出器がないのに対し、引用発明はかかる構成を有するか不明な点。
<相違点2>
本願発明では、第1大入賞口の内部に複数の入賞通路が設けられる一方、該各入賞通路に同じ機能を有した入賞球検出器が設けられるのに対し、引用発明はかかる構成を有するか不明な点。

5.判断
(1)相違点1について
2004年7月に大きな規則改正が行われ、これ以前は設けることが必要であった大入賞口におけるVゾーンが撤廃されたことは当業者であれば当然知っていることであって、大入賞口にVゾーンを設けないことは本願出願前に周知な技術手段と認められる。例えば、周知例である「パチンコ必勝ガイド2005 1・16号,平成17年1月16日発行,株式会社白夜書房,60?61頁,平成16年12月27日情報研修館受入れ)の60頁上部には、「主な変更点 ○Vゾーンの撤廃→パンクすることがない」と記載されている。
そうすると、引用発明の盤面右下のアタッカーの大入賞口において上記周知技術を採用し、相違点1にかかる本願発明の構成をすることは、当業者であれば想到容易である。
(2)相違点2について
当審の拒絶の理由で引用された特開2003-10432号公報(以下、「引用文献2」という。段落0012参照。)には、大入賞口の内部に、通常入賞口21b、21b(複数の入賞通路)を設け、それぞれに入賞球検出器22(各入賞通路に同じ機能を有する入賞検出器)を設けることが記載されている。
そうすると、引用発明の大入賞口の構成として上記引用文献2に記載された技術事項を適用し、相違点2にかかる本願発明の構成をすることは、当業者であれば想到容易である。
そして、本願発明の効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-16 
結審通知日 2010-12-21 
審決日 2011-01-05 
出願番号 特願2005-169256(P2005-169256)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順安久 司郎  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 井上 昌宏
吉村 尚
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 江間 路子  
代理人 村松 孝哉  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 上田 千織  

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