• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1232655
審判番号 不服2009-24290  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-08 
確定日 2011-02-25 
事件の表示 特願2004-131712「ゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日出願公開、特開2005- 58748〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年4月27日の出願であって、平成21年7月29日に手続補正がなされ、同年8月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正の却下の決定
〔結論〕
本件補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前に(下線は審決で付した。以下同じ。)、
「 【請求項1】
金属材料からなる第1のヘッド部材と、繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とが固着された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
前記第1のヘッド部材に設けられた第1の接合部と、第2のヘッド部材に設けられた第2の接合部とがヘッド内外で重ねられて固着されるとともに、
前記第1の接合部又は第2の接合部の一方に凸部が、第1の接合部又は第2の接合部の他方に前記凸部が嵌入する貫通孔からなる凹部が形成され、しかも
個々の凹部の面積の総和である凹部全面積S1は、該凹部がないとしたときの第1及び第2の接合部の全接着面積Sの20?70%であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第1のヘッド部材は、ボールを打球するフェース面を形成するフェース壁部を含むことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第2の接合部は、前記第1の接合部とヘッド内側で重なる内側片と、前記第1の接合部とヘッド外側で重なる外側片とを有する断面二股状部分を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1の接合部は、前記凹部が形成され、かつ前記第2の接合部は前記凸部が形成される請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第1のヘッド部材は、ボールを打球するフェース面を形成するフェース壁部と、ヘッド底面をなすソール壁部と、ヘッド側面をなすサイド壁部とを含み、かつヘッド上面に開口部を有してなり、
かつ前記第2のヘッド部材は、前記開口部に配されてクラウン部の一部を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記開口部の周囲に前記第1の接合部が連続して設けられるとともに、前記第2のヘッド部材の周囲に前記第2の接合部が連続して設けられることを特徴とする請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記第2のヘッド部材は、クラウン部を形成する基部と、該基部のフェース面側の縁を除いた縁で折れ曲がり前記サイド壁部に固着される垂下片とからなることを特徴とする請求項5又は6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第2の接合部は、前記基部と前記垂下片とに跨る接合部を含むことを特徴とする請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記凸部及び/又は凹部は、前記第2の接合部の前記基部と前記垂下片とに跨る接合部において、前記基部と前記垂下片との双方に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
重心高さが25?35mmかつ重心深度が35?43mmしかもヘッド体積が370?550cm^(3 )である請求項1乃至9のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
金属材料からなる第1のヘッド部材と、繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とが固着された中空構造のゴルフクラブヘッドを製造するゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
前記第2のヘッド部材が配される開口部が設けられるとともに、該開口部の周囲をなす第1の接合部に少なくとも一つの凹部が設けられた第1のヘッド部材を形成する工程と、
前記第1の接合部に前記開口部を覆う少なくとも1枚のプリプレグを貼り付けることにより中空部を有するヘッド基体を形成する工程と、
前記ヘッド基体を金型のキャビティの中で加熱するとともに、第1のヘッド部材の中空部へ挿入されたブラダーを膨張させることにより、前記プリプレグの少なくとも一部に前記第1の接合部の凹部の中に流れ込んで硬化した凸部を成形しかつ前記第1の接合部に固着させて第2のヘッド部材を形成する工程と、
前記ブラダーを収縮させて前記中空部から取り出す工程とを含むとともに、
前記第2のヘッド部材の樹脂含有率を20?42重量%としたことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記プリプレグは、前記第1の接合部の内面に、少なくとも一部が前記開口部にはみ出して貼り付けられる少なくとも1枚の内のプリプレグと、
前記内のプリプレグが貼り付けられた後、前記第1の接合部の外面に前記開口部を覆うように貼り付けられる少なくとも1枚の外のプリプレグとを含むことを特徴とする請求項11記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記内のプリプレグは、前記開口部を閉じる大きさを有することを特徴とする請求項12記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記内のプリプレグ及び/又は前記外のプリプレグは、接着剤を介して前記第1の接合部の前記内面及び/又は外面に貼り付けられることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第2のヘッド部材は、樹脂含有率が20?35重量%であることを特徴とする請求項11ないし14のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項16】
金属材料からなる第1のヘッド部材と、繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とが固着された中空構造のゴルフクラブヘッドを製造するゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
前記第2のヘッド部材が配される開口部が設けられるとともに、該開口部の周囲をなす第1の接合部に少なくとも一つの凹部が設けられた第1のヘッド部材を形成する工程と、
前記第1の接合部に前記開口部を覆う少なくとも1枚のプリプレグを貼り付けることにより中空部を有するヘッド基体を形成する工程と、
前記ヘッド基体を金型のキャビティの中で加熱するとともに、第1のヘッド部材の中空部へ挿入されたブラダーを膨張させることにより、前記プリプレグを成形しかつ前記第1の接合部に固着させて第2のヘッド部材を形成する工程と、
前記ブラダーを収縮させて前記中空部から取り出す工程とを含み、
前記プリプレグは、前記第1の接合部の内面に、少なくとも一部が前記開口部にはみ出して貼り付けられる少なくとも1枚の内のプリプレグと、
前記内のプリプレグが貼り付けられた後、前記第1の接合部の外面に前記開口部を覆うように貼り付けられる少なくとも1枚の外のプリプレグとを含むとともに、
前記内のプリプレグは、前記開口部の縁に沿って貼り付けられる複数のテープ状体又は中央に孔を設けたリング状体をなすことにより、前記開口部を完全に閉じないことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。」
とあったものを、

「 【請求項1】
金属材料からなる第1のヘッド部材と、繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とが固着された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
前記第1のヘッド部材に設けられた第1の接合部と、第2のヘッド部材に設けられた第2の接合部とがヘッド内外で重ねられて固着されるとともに、
前記第1の接合部又は第2の接合部の一方に凸部が、第1の接合部又は第2の接合部の他方に前記凸部が嵌入する貫通孔からなる凹部が形成され、
前記凹部の最大径Dは2.0?8.0mmであり、
個々の凹部の面積の総和である凹部全面積S1は、該凹部がないとしたときの第1及び第2の接合部の全接着面積Sの20?70%であり、しかも
前記第2のヘッド部材の樹脂含有率が20?42重量%であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第1のヘッド部材は、ボールを打球するフェース面を形成するフェース壁部を含むことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第2の接合部は、前記第1の接合部とヘッド内側で重なる内側片と、前記第1の接合部とヘッド外側で重なる外側片とを有する断面二股状部分を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1の接合部は、前記凹部が形成され、かつ前記第2の接合部は前記凸部が形成される請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第1のヘッド部材は、ボールを打球するフェース面を形成するフェース壁部と、ヘッド底面をなすソール壁部と、ヘッド側面をなすサイド壁部とを含み、かつヘッド上面に開口部を有してなり、
かつ前記第2のヘッド部材は、前記開口部に配されてクラウン部の一部を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記開口部の周囲に前記第1の接合部が連続して設けられるとともに、前記第2のヘッド部材の周囲に前記第2の接合部が連続して設けられることを特徴とする請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記第2のヘッド部材は、クラウン部を形成する基部と、該基部のフェース面側の縁を除いた縁で折れ曲がり前記サイド壁部に固着される垂下片とからなることを特徴とする請求項5又は6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第2の接合部は、前記基部と前記垂下片とに跨る接合部を含むことを特徴とする請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記凸部及び/又は凹部は、前記第2の接合部の前記基部と前記垂下片とに跨る接合部において、前記基部と前記垂下片との双方に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
重心高さが25?35mmかつ重心深度が35?43mmしかもヘッド体積が370?550cm^(3) である請求項1乃至9のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
金属材料からなる第1のヘッド部材と、繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とが固着された中空構造のゴルフクラブヘッドを製造するゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
前記第2のヘッド部材が配される開口部が設けられるとともに、該開口部の周囲をなす第1の接合部に少なくとも一つの貫通孔からなる凹部が設けられた第1のヘッド部材を形成する工程と、
前記第1の接合部に前記開口部を覆う少なくとも1枚のプリプレグを貼り付けることにより中空部を有するヘッド基体を形成する工程と、
前記ヘッド基体を金型のキャビティの中で加熱するとともに、第1のヘッド部材の中空部へ挿入されたブラダーを膨張させることにより、前記プリプレグの少なくとも一部に前記第1の接合部の凹部の中に流れ込んで硬化した凸部を成形しかつ前記第1の接合部に固着させて第2のヘッド部材を形成する工程と、
前記ブラダーを収縮させて前記中空部から取り出す工程とを含むとともに、
前記凹部の最大径Dは2.0?8.0mmであり、
個々の凹部の面積の総和である凹部全面積S1は、該凹部がないとしたときの第1及び第2の接合部の全接着面積Sの20?70%あり、しかも
前記第2のヘッド部材の樹脂含有率を20?42重量%としたことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記プリプレグは、前記第1の接合部の内面に、少なくとも一部が前記開口部にはみ出して貼り付けられる少なくとも1枚の内のプリプレグと、
前記内のプリプレグが貼り付けられた後、前記第1の接合部の外面に前記開口部を覆うように貼り付けられる少なくとも1枚の外のプリプレグとを含むことを特徴とする請求項11記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記内のプリプレグは、前記開口部を閉じる大きさを有することを特徴とする請求項12記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記内のプリプレグ及び/又は前記外のプリプレグは、接着剤を介して前記第1の接合部の前記内面及び/又は外面に貼り付けられることを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第2のヘッド部材は、樹脂含有率が20?35重量%であることを特徴とする請求項11ないし14のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。」
に補正するものである。

(2)上記(1)の特許請求の範囲についての補正は、本件補正前の請求項1及び11の発明特定事項である「凹部」について「最大径Dは2.0?8.0mm」との限定、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「第2のヘッド部材」について「樹脂含有率が20?42重量%」との限定、及び、本件補正前の請求項11の発明特定事項である「凹部」について「貫通孔からなる」及び「個々の凹部の面積の総和である凹部全面積S1は、該凹部がないとしたときの第1及び第2の接合部の全接着面積Sの20?70%」との限定をするとともに、本件補正前の請求項16を削除したものである。

したがって、本件補正後の特許請求の範囲に係る補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除及び同第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-205055号公報(以下「引用例」という。)」には、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】 金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドであって、前記金属製の外殻部材の接合部の両面に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を接着したことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】 前記金属製の外殻部材の接合部の肉厚を端部に向けて徐々に薄くした請求項1に記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】 前記金属製の外殻部材の接合部に複数の切り欠きを設けた請求項1に記載の中空ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】 前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設けた請求項1に記載の中空ゴルフクラブヘッド。」

(2)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高めることを可能にした中空ゴルフクラブヘッドを提供することにある。」

(3)「【0017】図5(a),(b)の接合形態では、金属製の外殻部材11の接合部11aの両面に繊維強化プラスチック製の外殻部材21の接合部21aを分岐させて接着し、かつ金属製の外殻部材11の接合部11aに貫通穴13を設けている。そのため、外殻部材21の繊維強化プラスチックは貫通穴13の中にも被着する。上記接合形態によれば、両面接着と穴加工により接着面積が大きくなるため、ゴルフクラブヘッドとして十分な耐久性が得られる。」

(4)上記(1)、上記(3)及び図1ないし図5の記載から、金属製の外殻部材の接合部(11a)と繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部(21a)とがヘッド本体(1)の内外で重ねられて接着されていることが見て取れる。

(5)上記(1)ないし(4)から、引用例には、
「金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドであって、
金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高めることを目的として、
前記金属製の外殻部材の接合部と前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部とがヘッド本体の内外で重ねられて接着し、前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、外殻部材の繊維強化プラスチックは貫通穴の中にも被着し、両面接着と穴加工により接着面積が大きくなるため、ゴルフクラブヘッドとして十分な耐久性が得られた、中空ゴルフクラブヘッド。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「金属製の外殻部材」、「繊維強化プラスチック製の外殻部材」、「中空ゴルフクラブヘッド」、「金属製の外殻部材の接合部」、「繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部」、「ヘッド本体の内外で重ねられて」、「接着」及び「金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け」は、それぞれ、本願補正発明の「金属材料からなる第1のヘッド部材」、「繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材」、「中空構造のゴルフクラブヘッド」、「第1のヘッド部材に設けられた第1の接合部」、「第2のヘッド部材に設けられた第2の接合部」、「ヘッド内外で重ねられて」、「固着」及び「『第1の接合部』『の他方に前記凸部が嵌入する貫通孔からなる凹部が形成され』」に相当する。

(2)引用発明では「外殻部材の繊維強化プラスチックは貫通穴の中にも被着」していることから、外殻部材の繊維強化プラスチックの貫通穴の中に被着している部分は凸部になっているものと認められる。
してみれば、引用発明の「外殻部材の繊維強化プラスチックは貫通穴の中にも被着し」ている部分は、本願補正発明の「第2の接合部の一方に凸部」 に相当する。

(3)上記(1)及び(2)からみて、本願補正発明と引用発明とは、
「金属材料からなる第1のヘッド部材と、繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とが固着された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
前記第1のヘッド部材に設けられた第1の接合部と、第2のヘッド部材に設けられた第2の接合部とがヘッド内外で重ねられて固着されるとともに、
前記第2の接合部の一方に凸部が、第1の接合部の他方に前記凸部が嵌入する貫通孔からなる凹部が形成されているゴルフクラブヘッド。」である点で一致し、
次の相違点で相違する。

相違点1:本願補正発明においては、「凹部の最大径Dは2.0?8.0mmであり、個々の凹部の面積の総和である凹部全面積S1は、該凹部がないとしたときの第1及び第2の接合部の全接着面積Sの20?70%であ」るのに対して、引用発明においては、貫通穴の最大径の値及び貫通穴の面積の総和と貫通穴がないとしたときの金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材の全接着面積との割合が明らかでない点。

相違点2:本願補正発明においては、「第2のヘッド部材の樹脂含有率が20?42重量%である」のに対し、引用発明においては、繊維強化プラスチック製の外殻部材の樹脂含有率が明らかでない点。

4 判断
(1)相違点1について
ア 引用発明は、金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高めることを目的としており、両面接着と穴加工により接着面積が大きくなるため、ゴルフクラブヘッドとして十分な耐久性が得られるものであるから、接合強度を高め十分な耐久性を得るため、貫通穴の最大径の値、及び、貫通穴の面積の総和と貫通穴がないとしたときの金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材の全接着面積との割合の最適値を求めることは、当業者が実験等に基づいて適宜なし得たことである。

イ 本願明細書の【0089】ないし【0096】には、実施例A1及びA2、参考例A1ないしA3が記載され、前記実施例及び参考例は全て、貫通孔からなる凹部の直径が3.0mmであることから、貫通孔からなる凹部の最大径を2.0?8.0mmとすることに、臨界的な意義を有するものとは認められない。
また、本願明細書の【0097】ないし【0099】には、参考例B4が記載され、個々の凹部の面積の総和である凹部全面積S1は、該凹部がないとしたときの第1及び第2の接合部の全接着面積Sの10%であるものの耐久性で損傷なしであることから、個々の凹部の面積の総和である凹部全面積S1は、該凹部がないとしたときの第1及び第2の接合部の全接着面積Sの20?70%とすることに、臨界的な意義を有するものとは認められない。

ウ 上記ア及びイからして、引用発明において、貫通穴の最大径を2.0?8.0mmの範囲内のものを選択すること、貫通穴の面積の総和が、貫通穴がないとしたときの金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材の全接着面積の20?70%の範囲内のものを選択することは、当業者が容易になし得たことにすぎない。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
ア 通孔を有する部材の通孔に樹脂を通す強化繊維樹脂において、樹脂含有率が32重量%のものは、本願出願前に周知である(例.特開平1-320146号公報(実施例及び第3図参照。)及び特開平2-32843号公報(実施例及び第3図参照。)、以下「周知技術」という。)。

イ 本願明細書の【0086】には、「各プリプレグPi、Poにおいて、マトリックス樹脂の樹脂含有率が小さすぎると、上述のようなマトリックス樹脂の流れ込み等を円滑に行うことができず、逆に樹脂含有率が大きすぎても繊維強化樹脂の強度が不足しやすい。」と記載されている。
そして、引用発明おいても、外殻部材の繊維強化プラスチックの貫通穴の中に被着している部分、すなわち、凸状とするため樹脂の流れ込みを円滑にする必要があり、かつ、引用発明はゴルフクラブヘッドとして十分な耐久性が得られたこととしているから、繊維強化プラスチックは強度を保つため樹脂の含有率が大きすぎないようにしているものと認められる。

ウ 本願明細書の【0089】ないし【0099】には、実施例A1及びA2、実施例B1ないしB12、参考例A1ないしA3、参考例B1ないしB4、比較例A1、比較例B1及びB2が記載され、前記実施例、参考例及び比較例は全て、第2のヘッド部材の樹脂含有率が20?42重量%であることから、第2のヘッド部材の樹脂含有率が20?42重量%とすることに、臨界的な意義を有するものとは認められない。

エ さらに、本願明細書段落【0091】にも挙げられているように樹脂含有率が20?42重量%の繊維強化樹脂は、市販されている。

オ 上記アないしエからして、引用発明において、流動性と耐久性とを考慮し繊維強化プラスチック製の外殻部材の樹脂含有率を20?42重量%の範囲内のものを選択することは、当業者が容易になし得たことにすぎない。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(3)効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できたものである。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年7月29日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」で、本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明において、その発明を特定するために必要な事項である「凹部」について「最大径Dは2.0?8.0mm」との限定、及び、その発明を特定するために必要な事項である「第2のヘッド部材」について「樹脂含有率が20?42重量%」との限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕4」に記載したとおり、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-16 
結審通知日 2010-12-21 
審決日 2011-01-05 
出願番号 特願2004-131712(P2004-131712)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 星野 浩一
野村 伸雄
発明の名称 ゴルフクラブヘッド  
代理人 住友 慎太郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ