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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F03B
管理番号 1232681
審判番号 不服2008-26178  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-10 
確定日 2011-02-23 
事件の表示 特願2000-538151「タービンホイール、及びそのようなホイールを備えたペルトン形タービン」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月30日国際公開、WO99/49213、平成14年 3月12日国内公表、特表2002-507696〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1999年3月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年3月23日、フランス国)を国際出願日とする出願であって、平成20年7月10日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに明細書についての補正がなされたものである。

2.平成20年10月10日付の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ホイールリム(1、51)、及び前記リムの周辺に配分された複数のバケット(2)を含むペルトン形タービンホイールであって、前記リムに固定されて前記バケットを収容するハウジング(7、8;57、58)を設けられたリング形状の少なくとも1つの環状円板(5、6;55、56)を含み、前記円板は、前記バケットによって前記リムへ伝達される作動力(F)の少なくとも一部分(F’)を吸収するように構成され、前記ハウジングの外側半径領域の場所に連続体を作り出す周辺帯域(9、10;59、60)を形成し、前記一つ又は複数の円板(5、6;55、56)が、前記ホイールの2つの隣り合ったバケット(2;52)を隔離するスペースを実質的に満たすようにそれぞれ構成されたスポーク(11、12)を設けられたことを特徴とするタービンホイール。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「周辺帯域」について「連続体を作り出す」との限定を付加するとともに、同じく「周辺帯域を形成する」態様について「一つ又は複数の円板が、ホイールの2つの隣り合ったバケットを隔離するスペースを実質的に満たすようにそれぞれ構成されたスポークを設けられた」態様に限定するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された英国特許第688577号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
イ.「The invention relates to hydraulic turbines of the Pelton wheel type wherein double buckets are arranged on the periphery of a runner disc and are impinged upon there by one or more tangential water jets. (1頁左欄9?14行)」
(和訳:本発明は、ランナーディスクの周辺に配置され1つ以上の接線方向の水流の影響を受ける対をなすバケットを有するペルトンホイール式水車に関する。)

ロ.「It is an object of the present invention to provide improvements in the buckets and in the manner of fixing the same to the runner wheel disc, both from the point of view of manufacture and of operation.(1頁左欄29?34行)」
(和訳:本発明の目的は、製造と動作の双方の観点から、バケット及びランナーホイールディスクにバケットを取り付ける方法の改良を提供することである。)

ハ.「According to a main feature of the invention the bucket shells are welded to plates forming part of the runner wheel disc intersecting said buckets and having cut-outs corresponding to the cross section of the buckets at these intersections whereby a substantial length of weld seam is attained. (1頁左欄35?42行)」
(和訳:本発明に関する主な特徴点によれば、バケットシェルは、ランナーホイールディスクの一部を形成するプレートに溶接される。ランナーホイールディスクは、前記バケットに交差しており、この交差点にバケットの断面に対応する切欠部を持っている。交差点では溶接線がかなりの長さに達している。)

ニ.「Fig. 1 is a diametrical part section along line B-B of Fig. 4 of a Pelton runner wheel according to the invention, placed in overhang;
Fig. 2 is a section along the line A-A of Fig. 1;
Fig. 3 is a diametrical part section along line B-B of Fig. 4of a Pelton runner wheel according to a modified embodiment of the invention, with the shaft passing through the runner wheel;
Fig. 4 is a part-side elevation in section along the line C-C of Fig. 1or Fig. 3.(1頁右欄65?77行)」
(和訳:図1は、本発明の、突出配置されたペルトンランナーホイールにおける図4のB-B線に沿った半径方向の部分断面図である。
図2は、図1のA-A線に沿った断面図である。
図3は、本発明の変形例の、シャフトがランナーホイールを貫通しているペルトンランナーホイールにおける図4のB-B線に沿った半径方向の部分断面図である。」
図4は、図1または図3のC-C線に沿った断面の部分側面図である。)

ホ.「The twin-bucket shells B are fitted into cut-outs K of steel plates P following the contour of the cross section of the shells approximately at their largest radial dimensions, and connected to them by weld seams S of considerable length whereby a satisfactory attachment is ensured.(1頁右欄78?85行)」
(和訳:対をなすバケットシェルBは、シェルの断面の略最大の半径寸法の輪郭に従ったスチールプレートPの切欠部Kに取り付けられており、十分な結合を確保すべく相当の長さの溶接線Sによって取り付けられる。)

ヘ.図1には、中心孔を有する円板形状と有さない円板形状の各プレートPがランナーディスクRに固定された構成が示され、図3には、中心孔を有する円板形状の2つのプレートPがランナーディスクRに固定された構成が示され、図4には、複数のバケットシェルBがランナーディスクRの周辺に配置された構成、及び、プレートPが2つの隣り合ったバケットシェルBの間にそれぞれ位置し外方に延出する外方延出部を設けた構成が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「ランナーディスクR、及び前記ランナーディスクRの周辺に配置された複数のバケットシェルBを含むペルトンランナーホイールであって、前記ランナーディスクRに固定されて前記バケットシェルBを取り付ける切欠部Kを設けられた中心孔を有する円板形状の1つまたは2つのプレートPを含み、前記1つまたは2つのプレートPが、前記ホイールの2つの隣り合ったバケットシェルBの間にそれぞれ位置し外方に延出する外方延出部を設けたペルトンランナーホイール。」

(2-2)
同じく、引用された仏国特許発明第704875号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、水車のランナーホイールに関し、図面と共に次の事項が記載されている。

イ.「Les fig.2 et 3 mont ont un mode ・・・d'une seule piece avec la roue;(2頁右欄74?85行)」
(和訳:図2と3は、本発明の構造的形状を示す垂直と水平の断面図である。図中で、ホイールと一体に成形されたバケットaは、ホイールの円周においてブレードの開口の両側にホイールに対し焼ばめされた2個のリングbによりそれぞれ互いに結合される。そこでは支持領域をできるだけ大きく得るために、ブレードaのリブcは引張り加工により広げられている。大きなサイズのブレードのためには、リングを焼ばめする代わりにホイールに一体に成形してもよい。)

ロ.図2には、ホイールの外周でバケットaの外側端に接する場所に、1つの連続するリングbを設けた構成、及び、ホイールの2つの隣り合ったバケットaを隔離するスペースにリブcが位置する構成が示されている。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者における「ランナーディスクR」は前者における「ホイールリム」に相当し、以下同様に、「ランナーディスクRの周辺に配置された」態様は「リムの周辺に配分された」態様に、「バケットシェルB」は「バケット」に、「ペルトンランナーホイール」は「ペルトン形タービンホイール」及び「タービンホイール」に、「バケットシェルBを取り付ける」態様は「バケットを収容する」態様に、「切欠部K」は「ハウジング」に、「中心孔を有する円板形状の1つまたは2つのプレートP」は「リング形状の少なくとも1つの環状円板」及び「円板」に、それぞれ相当している。

次に、後者のものは、「ペルトンランナーホイール」である以上、必然的に、プレートP(円板)において、バケットシェルB(バケット)によってランナーディスクR(リム)へ伝達される作動力が多少なりとも減衰を伴うことになるのは技術常識であるといえるから、前者のもののように、「円板は、バケットによってリムへ伝達される作動力の少なくとも一部分を吸収するように構成され」ているものと解される。

また、後者の「1つまたは2つのプレートP」は前者の「一つ又は複数の円板」に相当している。

さらに、後者の「バケットシェルBの間にそれぞれ位置し」た態様と前者の「バケットを隔離するスペースを実質的に満たすようにそれぞれ構成された」態様とは、「バケットを隔離するスペースに位置するようにそれぞれ構成された」との概念で共通し、後者の「外方に延出する外方延出部」は前者の「スポーク」に相当するから、結局、後者の「ホイールの2つの隣り合ったバケットシェルBの間にそれぞれ位置し外方に延出する外方延出部を設けた」態様と前者の「ホイールの2つの隣り合ったバケットを隔離するスペースを実質的に満たすようにそれぞれ構成されたスポークを設けられた」態様とは、「ホイールの2つの隣り合ったバケットを隔離するスペースに位置するようにそれぞれ構成されたスポークを設けられた」との概念で共通している。
したがって両者は、
[一致点]
「ホイールリム、及び前記リムの周辺に配分された複数のバケットを含むペルトン形タービンホイールであって、前記リムに固定されて前記バケットを収容するハウジングを設けられたリング形状の少なくとも1つの環状円板を含み、前記円板は、前記バケットによって前記リムへ伝達される作動力の少なくとも一部分を吸収するように構成され、前記一つ又は複数の円板が、前記ホイールの2つの隣り合ったバケットを隔離するスペースに位置するようにそれぞれ構成されたスポークを設けられたタービンホイール。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件補正発明は、「ハウジングの外側半径領域の場所に連続体を作り出す周辺帯域を形成し」ているのに対し、引用発明は、かかる「周辺帯域」を備えていない点。
[相違点2]
スポークがバケットを隔離するスペース「に位置する」態様に関し、本件補正発明は、該スペース「を実質的に満たすように」構成されているのに対し、引用発明は、かかる特定がなされていない点。

(4)相違点に対する判断
[相違点1について]
例えば、引用文献2にも開示されているように、環状円板(「ホイール」が相当)の外周でバケットの外側端に接する場所に、連続体を作り出す周辺帯域(「1つの連続するリング」が相当)を一体に成形することで、バケットを確実に支持固定し得るようにすることは、水車のタービンホイールの分野における周知技術である。
引用発明において、バケットの確実な支持固定という課題(引用文献1の「ホ.」の記載事項参照)の下に上記周知技術を採用して、環状円板の外周でバケットの外側端に接する場所(即ち、バケットを収容するハウジングの外側半径領域の場所)に、連続体を作り出す周辺帯域を一体に成形することにより相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、上記周知技術の採用に際し、格別な技術的阻害要因が何等認められない以上、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

[相違点2について]
引用発明において、バケットを隔離するスペースに位置するスポークを、該スペースの全体形状に近づけるように広げる程、バケットに対する支持固定が強化されるであろうことは、当業者にとって自明のことである。
また、例えば、引用文献2にも開示されているように、バケットの支持領域を拡大するために、バケットを隔離するスペースに位置するスポーク(「リブc」が相当)を広げることは、水車のタービンホイールの分野における常套手段である。
そうすると、引用発明において、バケットの確実な支持固定という課題の下で、上記常套手段を踏まえ、スポークをさらに広げること、即ち、スポークがバケットを隔離するスペースを実質的に満たすように広げることで、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜改変し得る設計的事項にすぎない。

そして、本件補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は、平成20年10月10日付の審判請求書において、本件補正発明によれば、スラスト作動力Fを、スポークを介してスラスト作動力の部分F’に分配することができ、機械的応力が、バケットをリムへ取り付ける領域に集中せず、作動力の最適分布によってホイールの共振の危険度が実質的に低減されるとの効果を奏する旨主張している。
しかしながら、引用発明におけるバケットは、通常、弧状断面を有する(引用文献1の図4参照)ものといえるから、引用発明は、バケットが受けるスラスト作動力Fを、スポークを介してスラスト作動力の部分F’(本願の図3参照)に分配し得る構造を元来備えているものと解されるため、請求人の主張する上記効果は、引用発明に上記周知技術及び上記常套手段を組み合わせた構成のものが当然に有する効果であり、かつ、当業者が通常想定し得る範囲の効果にすぎない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成20年1月23日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ホイールリム(1、51)、及び前記リムの周辺に配分された複数のバケット(2)を含むペルトン形タービンホイールであって、前記リムに固定されて前記バケットを収容するハウジング(7、8;57、58)を設けられたリング形状の少なくとも1つの環状円板(5、6;55、56)を含み、前記円板は、前記バケットによって前記リムへ伝達される作動力(F)の少なくとも一部分(F’)を吸収するように構成され、前記ハウジングの外側半径領域の場所に周辺帯域(9、10;59、60)を形成することを特徴とするタービンホイール。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記「2.」で検討した本件補正発明から「周辺帯域」について「連続体を作り出す」との限定を省くとともに、同じく「周辺帯域を形成する」態様について「一つ又は複数の円板が、ホイールの2つの隣り合ったバケットを隔離するスペースを実質的に満たすようにそれぞれ構成されたスポークを設けられた」態様に限定する点を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は、前記「2.(3)」で挙げた相違点のうち、相違点1のみとなる。
したがって、前記「2.(4)」での検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-21 
結審通知日 2010-09-28 
審決日 2010-10-12 
出願番号 特願2000-538151(P2000-538151)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F03B)
P 1 8・ 121- Z (F03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 冨江 耕太郎
大河原 裕
発明の名称 タービンホイール、及びそのようなホイールを備えたペルトン形タービン  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  
代理人 大崎 勝真  
代理人 坪倉 道明  
代理人 渡邉 千尋  
代理人 川口 義雄  

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