• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1232720
審判番号 不服2008-18510  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-22 
確定日 2011-02-22 
事件の表示 特願2003-520167「呼警報をカスタム化するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月20日国際公開、WO03/15380、平成16年12月16日国内公表、特表2004-537943〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年3月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,平成13年8月10日,オーストラリア国)を国際出願日とする出願であって,平成19年9月18日付け手続補正がなされが,平成20年4月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付で手続補正がなされたものである。

第2 補正について
[補正却下の決定の結論]
平成20年7月22日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正により,平成19年9月18日付け手続補正書に記された特許請求の範囲の請求項27である
「コンピュータ化システムにおいて,当該システムに関与するユーザが,前記システムに関与する通信端末に対して行う呼を通知するために用いる警報を,前記関与ユーザの好みに応じて決定することを可能とし,前記システムは,
a.少なくとも一部が警報表現および警報表現に関連付けられた呼を受信し,それに対して動作可能な,複数の通信端末と,
b.カスタム化警報サービス構成データを生成する構成ソフトウエアであって,前記構成データが,1つ以上の警報のディジタル・エンコード表現と,前記警報表現の所望の使用に関する補助情報とを含む,構成ソフトウエアと,
c.前記関与ユーザのカスタム化警報サービス構成データを格納するデータベースと,
d.前記関与ユーザが受信側通信端末に対して行う呼と共に用いる警報表現を選択する処理手段と,
e.警報表現を前記受信通信端末に伝達する手段と,
を含み,
前記選択した警報表現は,前記関与ユーザのカスタム化警報サービスの前記構成データに応じて選択される,コンピュータ化システム。」(以下,この請求項1に記載された発明を「本願発明」という。)は,
補正後の請求項25である
「コンピュータ化システムにおいて,当該システムに関与するユーザが,前記システムに関与する通信端末に対して行う呼を通知するために用いる警報を,前記関与ユーザの好みに応じて決定することを可能とし,前記システムは,
a.少なくとも一部が警報表現および警報表現に関連付けられた呼を受信し,それに対して動作可能な,複数の通信端末と,
b.カスタム化警報サービス構成データを生成する構成ソフトウエアであって,前記構成データが,1つ以上の警報のディジタル・エンコード表現と,前記関与ユーザまたは第1通信端末または第1通信サービスを特定する識別情報と,前記警報表現の所望の使用に関する補助情報とを含む,構成ソフトウエアと,
c.前記関与ユーザのカスタム化警報サービス構成データを格納するデータベースと,
d.前記関与ユーザが受信側通信端末に対して行う呼と共に用いる警報表現を選択する処理手段と,
e.前記選択した警報表現を前記受信通信端末に伝達する手段と,
を含み,
前記選択した警報表現は,前記関与ユーザのカスタム化警報サービスの前記構成データの前記識別情報と前記補助情報とに応じて選択される,コンピュータ化システム。」(以下,この請求項1に記載された発明を「補正発明」という。)と補正された。
なお,補正発明中の下線部は,補正された箇所である。

(2)開示・目的要件
本件補正によって,上記下線部が追加され,発明の構成がより具体化されたということができる。また,これらの構成は,本願の出願当初の発明の詳細な説明に開示された事項である。
したがって,本件補正は,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満足し,しかも,本件補正により,発明がより限定されたから,同改正附則第2条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。

そこで,補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

(3)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-336121号公報(以下,「引用文献」という。)には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は遠隔通信ネットワークにおける画像伝送,そして特に,ビデオ電話またはターミナルに対して呼出しを掛けた時に静止画像を自動的に選択して伝送することに関する。」(第3頁)。
(イ)「【0010】
【発明の実施の形態】図1は中央局のスイッチ20および25を含んでいる従来の電話ネットワークの簡単化されたバージョンを示している。画面を備えていて,カメラ12,82をそれぞれ備え,また,そのカメラによって捕らえられた静止フレーム画像を格納するためのローカルな画像メモリ・ユニット14,84をそれぞれ備えているターミナル10および80がそれぞれスイッチ20および25に接続されている。要素12,14,82または84は必須ではない。
この説明で使われている「画像」は画面に表示できる任意のビジュアルな資料を意味する。
【0011】中央局内の交換回路または他の回路が呼出し側のターミナルおよび被呼出し側のターミナルを識別すると,利用できる径路が見つけられ,接続が2つのターミナル間で確立される。その後,リング音信号が発生されて被呼出し側のターミナルへ伝送される。両方のターミナルが画像通信機能を備えている場合,被呼出し側が応答すると,すぐに直接の画像接続が普通に確立される。しかし,本発明では2つのターミナル間での直接のビジュアル通信リンクが確立される必要はなく,被呼出し側のターミナルに対するビジュアル・リンクが確立されるだけでよいことに注意することが重要である。
【0012】本発明によると,少なくとも1つの画像プロセッサ60が図1のネットワーク内に含まれている。それがネットワーク内のどの場所にあるかは重要ではない。呼出し側のターミナルおよび被呼出し側のターミナル80をサービスするプロセッサ間でビジュアル通信リンクを確立できる限り,プロセッサ60はスタンドアローン・ユニットとして,あるいは中央局の1つの内部のいずれかに,ほとんどどの場所にでも置くことができる。プロセッサ60については以下にさらに詳細に説明される。
【0013】また,本発明によると,プロセッサ60にはあらかじめ選択されてディジタイズされた画像のデータベースを格納するための,画像記憶ユニット50が結合されている。記憶ユニット50はディスク・ドライブまたはディスク・サーバなどの通常の大容量記憶装置を使うことができ,その画像は任意の静止(ビデオなど)画像であってよい。
【0014】通常の動作においては,画像記憶ユニット50はプロセッサ60によってサービスされる顧客によってあらかじめ選択された画像のデータベースを含んでいる。例えば,各顧客は呼出し者を識別するために使うことができる「電話呼出しカードまたは挨拶用のカードとして,データベースの中に望みの画像をあらかじめ選択しておくことができる。さらに,企業の顧客の場合は呼出しが行なわれた時に,その企業の実体を識別するための会社のロゴまたは他の画像を格納しておくことができる。もちろん,企業の紹介スライド・ショーなどの2つ以上の画像も各顧客によって選択され,画像記憶ユニット50およびプロセッサ60の能力に応じてデータベース内に格納しておくことができる。画像は呼出しを掛ける前に,あるいはおそらく特定の呼出しが行なわれていない「オフピーク」の時間帯において,その顧客の指示によってデータベース内に記憶されることが予想されるが,顧客は将来使うために自分の画像を必要に応じて更新したい場合が予想される。
【0015】画像伝送システム(画像記憶装置50またはその他の装置を備えたプロセッサ60)は,画像を表す電子信号を発生して電子画像ファイルの中に記憶させる手段と密接に結合されているのが普通である。容易に利用できる1つのメカニズム(および関連のコーディングおよびプロトコル)はファクシミリ(FAX)である。白黒またはカラーのFAXのいずれも,電子画像ファイルを生成するために使うことができる。別のメカニズムは文書/画像のスキャナによって以前に生成されたファイルを送信するための電子メールである。例えば,顧客の従来の写真が顧客によって走査され(個人的あるいはサードパーティによって),その後,画像伝送システムに対して送信される。あるいは顧客は送信されるディジタイズされた画像(おそらく電子カメラによって発生された)に対する他のアレンジメントも可能である。
【0016】もちろん,従来のファクシミリまたは電子メールの任意のフォーマットを使って,画像データを画像伝送システムに送ることができ,そしてそのようなデータを転送されたフォーマットまたはいくつかの他のあらかじめ選択されたフォーマットで画像記憶装置50の中に保管しておくことができる
【0017】また,前に示されているように,画像のシーケンスを記憶しておいてスライド・ショーを提供することができるのと同様に,選択できる複数の画像を記憶しておいて,各ユーザが被呼出し側に提示する自分自身の画像をカスタマイズすることができる。画像の選択は呼出し側が制御信号を例えば,被呼出し側の番号シーケンスの最後に送ることによって行なわれる。そのシーケンスは,例えば,仕事の場合は「#9」,そしてそれ以外の場合は「#8」とすることができる。別の制御されたシーケンス,例えば,「#99」などによって,顧客はプロセッサ60がすべての画像の伝送をブロックできるように指定することができる。
【0018】データベース50の中に含まれるデータは画像データだけである必要はない。例えば,各画像に付随して,その画像に関連した個人の名前などのテキスト文字,電話番号または他の識別情報,あるいはビジュアルまたは音声での挨拶を関連付けておくことができる。さらに,呼出し接続時に被呼出し側の画面上に現われる広告のメッセージ,または他のいくつかの企業の「呼出しカード」タイプのメッセージを企業のロゴ画像に関連付けて入れておくことができる。そのようなメッセージを音声で入れておくこともできる。
【0019】プロセッサ60(図1)に戻って,この要素は,好ましい実施例においては,汎用のディジタル・コンピュータ,マイクロプロセッサまたはいくつかの機能を実行するディジタル信号プロセッサを含んでいる。先ず最初に,プロセッサ60は中央局20から到来する呼出しを検出した直後に,その特定の呼出し側のターミナル(この場合はターミナル10)を識別するユニークな信号を発生する。プロセッサは自動番号識別(ANI)または「呼出し者のID」の手段を使って,そのような決定を直接に行なうか,あるいはプロセッサ60は中央局20の中のANIユニットなどによってネットワーク内のどこかで発生された番号識別信号に応答して信号を発生することができる。
【0020】いずれの場合においても,プロセッサ60から発生された信号は,その特定の呼出し側のターミナルに関連付けられている,画像記憶ユニット50の中に格納されている顧客の画像データのアドレスを知るために使われる。そのような画像データは,その特定のターミナルにユニークであるか,あるいはいくつかのターミナルの間で共有されるようにすることができる。見つかると,そのデータがプロセッサ60によって画像記憶ユニットから読み出され,中央局20または25の中の交換回路によって被呼出し側のターミナル80に対して利用できる径路(ネットワーク・リンク)が確立されるとすぐに,被呼出し側のターミナル80に対してネットワークを通じて自動的に送信される。データは直接読み出されるか,あるいは受信側のターミナルおよびネットワークの機能によって変わるいくつかの方式で符号化される。プロセッサ60は画像の伝送を次のような呼出しシーケンスの中のいくつかの時点で開始するようにプログラムしておくことができる。
【0021】(1)被呼出し側のターミナルに対する利用できる径路が確立されるとすぐに(最初のリング音の前であってもよい);(2)最初のリング信号の伝送と同時に;(3)最初のリング信号の伝送の前後のいくつかの期間に;(4)受信側のターミナルにおけるオフフックの状態を検出するとすぐに(すなわち,応答された時に);あるいは(5)オフフックが検出された後,少し時間を置いて。
【0022】本発明の他の実施例が図2に示されている。図2の中で,従来の電話ネットワークの中央局20がネットワーク上での音声およびデータの伝送のための従来の電話交換回路35を含んでいる。複数の個々の顧客のビデオ電話,パーソナル・コンピュータまたは他の従来の音声/画像ターミナル10,80が中央局に接続されている。図1の場合と同様に,ターミナル10は呼出し側のターミナルであり,ターミナル80は被呼出し側のターミナルであると仮定されている。
【0023】呼出し側のターミナルと,被呼出し側のターミナルとの間の接続を確立するための音声/データ交換回路35および,中央局に入ってくる呼出しの特定の電話番号を識別するための自動番号識別(ANI)ユニット30が普通は中央局20の中にある。さらに,普通は,リング・ゼネレータ40が交換回路に結合されていて,交換回路が被呼出し側のターミナル80に対する接続を確立するとすぐに,従来のリング信号を発生する。
【0024】図2の実施例によると,中央局の中にはディジタイズされた画像のデータベースを格納するための画像記憶ユニット50も含まれている。各顧客,すなわち,ターミナルに少なくとも1つの画像を割り当てることができる。そのような画像は顧客によってあらかじめ選択されるか,あるいは許容されている,あるいはあらかじめ承認された代替手段の組から選択することができる。また,記憶ユニット50は中央局の内部に物理的に存在する必要はなく,図1の中に示されているようにネットワーク内の任意の場所に置かれていてもよいことは理解されるべきである。
【0025】記憶ユニット50およびANIユニット30に対して,画像選択・リフレッシュ・ユニット55が結合されている。画像選択・リフレッシュ・ユニット55はハードウエアまたはソフトウエアの制御下での従来のテーブル・ルックアップまたは他のアドレッシング・デバイスであることが可能であり,その第1の機能はANIユニット30からの信号を受信した時に記憶ユニット50をアドレスすることであり,少なくとも1つのプロセッサ60の制御下で,ANIユニット30によって識別された電話番号に関連付けられている画像データの特定の部分を選択することである。
【0026】画像選択・リフレッシュ・ユニット55の二次的な機能は,ターミナル10において呼出し側からの信号を受信した時に,現在の,または「ライブ」の画像データが記憶ユニット50に書き込まれるようにすることである。そのようなデータは,例えば,会話中にカメラ12によって捕らえられた最近の静止フレーム画像を表すか,あるいは企業のプレゼンテーション中にスライド・ショーなどとしてあらかじめ選択された一連の画像の中の異なる画像を表示することができる。」(第3?5頁)。
(ウ)「【0034】本発明の他の実施例においては,図2の中のプロセッサ60とオプションのマルチプレクサ70との間に画像のポスト・プロセッサ(図には示されていない)を結合し,ネットワーク上の伝送に先立って他の画像処理機能を追加することができる。例えば,画像を変換または再フォーマットして,その時点で採用されている特定の伝送媒体に適合させることができる。さらに,プロセッサ60の制御下で,音声による挨拶,名前,電話番号またはビジュアルな挨拶などのデータをその画像に加えるか,あるいは画像から差し引くことができる。また,画像をリング信号と関連させて送ること,あるいは送られないようにすることもできる。【0035】本発明の利点の1つは呼出しシーケンスの中の非常に早い時期に呼出し側の画像を被呼出し側に対して表示するシステムの機能である。その画像は呼出し側のターミナルにおいて最初のリング音が聞こえるより前でも,呼出し側のターミナルに表示させることができる。代わりに,画像は最初のリングと同時に,それ以降のリングと同時に,リングが開始されてからあらかじめ定められた時間経過した後に,あるいは被呼出し側が応答した後に現われるようにすることができる。これによって,被呼出し側が特定の画像に依存する呼出しを画面に表示することができ,被呼出し側が呼出し側の個人の電話番号を記憶する必要がないようにすることができるので有利である。さらに,リングに先立って,あるいはリング中に画像伝送を開始することによって,被呼出し側がその呼出しに応答する時点までに,ネットワークのバンド幅が制限されている場合であっても,比較的高い解像度の画像を伝送し,被呼出し側のターミナルにおいて再構築することができるだけの十分な時間を得られる。
【0036】以上で,ターミナルまたはビデオ電話から入ってくる呼出しに応答して静止画像を選択して送信するためのシステム,そして呼出し側と被呼出し側との間のネットワーク・リンクの確立された直後にそのような画像を被呼出し側に送信するシステムが開示された。本発明は説明的な実施例を参照しながら説明されたが,もちろん,この分野の技術に熟達した人にとっては,明らかに他のアレンジメントも可能であることが理解される。例えば,画像記憶ユニット50は,利用できるメモリの量によって,ネットワーク内の任意の場所,あるいは被呼出し側のターミナル80の中,あるいは呼出し側のターミナル10の中にも置くことができようなローカルな記憶は頻繁に電話を掛けてくる相手の画像など,その特定のターミナルに対してカスタマイズされた画像のサブセットを格納することができる。」(第6?7頁)。

上記摘記事項によれば,全体は「プロセッサ」を利用したシステムであるから,コンピュータ化システムと称することができ,「#8」「#9」「#99」等の指定がユーザの好みによっていることは明らかであり,「画像」を指定することはカスタム化ということができ,それらはカスタム化画像サービスであって,ソフトウェアで動作することも自明である。また,呼出し側ターミナルを第1ターミナルと称することは任意であり,前記カスタム化画像サービスが画像のディジタル・エンコード表現と,前記関与ユーザまたは第1ターミナルまたは第1ターミナルサービスを特定する識別情報と,前記画像表現の所望の使用に関する補助情報とを含むことは,例示されている「ファクシミリ(FAX)」がディジタル・エンコード表現であり,「#8」「#9」「#99」を表す情報を画像表現の所望の使用に関する補助情報と称することができることからして,自明である。また,「#8」「#9」「#99」等の指定には画像表現を選択する処理手段が備わっている。

したがって,引用文献には,
「コンピュータ化システムにおいて,当該システムに関与するユーザが,前記システムに関与するターミナルに対して行う呼を通知するために用いる画像を,前記関与ユーザの好みに応じて決定することを可能とし,前記システムは,
a.少なくとも一部が画像表現および画像表現に関連付けられた呼を受信し,それに対して動作可能な,複数のターミナルと,
b.カスタム化画像サービス構成データを生成する構成ソフトウエアであって,前記構成データが,1つ以上の画像のディジタル・エンコード表現と,前記関与ユーザまたは第1ターミナルまたは第1通信サービスを特定する識別情報と,前記画像表現の所望の使用に関する補助情報とを含む,構成ソフトウエアと,
c.前記関与ユーザのカスタム化画像サービス構成データを格納する画像記憶装置と,
d.前記関与ユーザが受信側ターミナルに対して行う呼と共に用いる画像表現を選択する処理手段と,
e.前記選択した画像表現を前記受信ターミナルに伝達する手段と,
を含み,
前記選択した画像表現は,前記関与ユーザのカスタム化画像サービスの前記構成データの前記識別情報と前記補助情報とに応じて選択される,コンピュータ化システム。」(以下,「引用発明」という。)が開示されている。

(4)対比
そこで,補正発明と引用発明とを比較する。
・引用発明の「ターミナル」は,当然通信用であるから,補正発明の「通信端末」と実質的に相違しない。
・引用発明の「画像」は呼出し者を識別するために報知するものであり,一方,補正発明の「警報」も報知の一種である。
・引用発明の「画像記憶装置」は画像のデータベースとなるものである。

したがって,両者は,
「コンピュータ化システムにおいて,当該システムに関与するユーザが,前記システムに関与する通信端末に対して行う呼を通知するために用いる報知を,前記関与ユーザの好みに応じて決定することを可能とし,前記システムは,
a.少なくとも一部が報知表現および報知表現に関連付けられた呼を受信し,それに対して動作可能な,複数の通信端末と,
b.カスタム化報知サービス構成データを生成する構成ソフトウエアであって,前記構成データが,1つ以上の報知のディジタル・エンコード表現と,前記関与ユーザまたは第1通信端末または第1通信サービスを特定する識別情報と,前記報知表現の所望の使用に関する補助情報とを含む,構成ソフトウエアと,
c.前記関与ユーザのカスタム化報知サービス構成データを格納するデータベースと,
d.前記関与ユーザが受信側通信端末に対して行う呼と共に用いる報知表現を選択する処理手段と,
e.前記選択した報知表現を前記受信通信端末に伝達する手段と,
を含み,
前記選択した報知表現は,前記関与ユーザのカスタム化報知サービスの前記構成データの前記識別情報と前記補助情報とに応じて選択される,コンピュータ化システム。」の点で一致し,ただ,「報知」に関して,補正発明が「警報」であるのに対して,引用発明は「画像」である点でのみ相違する。

(5)判断
そこで,上記相違点について検討する。
引用文献についての摘記事項(イ)の段落【0018】には,「画像データだけである必要はない。・・・個人の名前などのテキスト文字,電話番号または他の識別情報,あるいはビジュアルまたは音声での挨拶を関連付けておくことができる。・・・広告のメッセージ,・・・企業の「呼出しカード」タイプのメッセージ・・・企業のロゴ画像・・・メッセージを音声で入れておくこともできる。」と記載されており,画像以外への適用もし示唆されているから,引用発明中の「画像」を警報と変更する程度のことは単なる設計的変更にすぎない。

そして,補正発明に関する作用・効果も,引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

してみると,補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)平成20年7月22日けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項25に係る発明は,平成19年9月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項27に記載された事項により特定される,上記「第2 補正について」の項中の「(1)本件補正」の冒頭に記載した「本願発明」のとおりである。

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項は,上記「第2 補正について」の項中の「(3)引用文献」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は,前記「第2 補正について」の項の「(2)開示・目的要件」で検討したように,上記補正発明から当該補正に係る下線部の構成を省いたものであるから,本願発明の構成要件にさらに限定要件である下線部の構成を付加したものに相当する補正発明が,上記「第2 補正について」の項中の「(5)判断」に記載したとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本願発明に関する作用・効果も,引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-22 
結審通知日 2010-09-24 
審決日 2010-10-13 
出願番号 特願2003-520167(P2003-520167)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 勝広  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 松元 伸次
新川 圭二
発明の名称 呼警報をカスタム化するシステムおよび方法  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  
代理人 中西 基晴  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ