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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1232731
審判番号 不服2010-704  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-13 
確定日 2011-02-21 
事件の表示 特願2002-268912「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-105293〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成14年9月13日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成20年12月19日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成22年1月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成22年8月2日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年10月5日に回答書が提出されている。

第二.平成22年1月13日付の手続補正書についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年1月13日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、以下のとおりと認める。
「通常の第1の遊技状態と、該第1の遊技状態と異なる遊技状態で遊技者に有利な第2の遊技状態と、該第2の遊技状態を開始する契機と同時にある確率で付加される遊技状態で、遊技の進行に基づく限定された期間継続する普通図柄の抽選確率が異なる複数の第3の遊技状態とを有し、該第3の遊技状態中における遊技の進行結果に基づいて、前記複数の第3の遊技状態の中から現在の状態を含むいずれか1つを選択する状態選択手段を備えた遊技機において、
前記第3の遊技状態は、始動入賞口への遊技球の入賞機会を向上させるための普通図柄の抽選確率が異なることで電動役物の駆動状態を、少なくとも前記第1の遊技状態における状態よりも遊技者に有利とした状態であるとともに、前記第3の状態になってから、特別図柄が変動表示した回数が所定回数になった際に、前記複数の第3の遊技状態の中から現在の状態を含むいずれか1つを選択することを特徴とする遊技機。」

なお、平成22年1月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1には、「前記第3の状態」とあるが、「前記」が指す「第3の状態」がないから、「前記第3の遊技状態」の明らかな誤記として認定する。

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「複数の第3の遊技状態」に「普通図柄の抽選確率が異なる」点を付加して「複数の第3の遊技状態」を限定し、「電動役物の駆動状態」に対して「普通図柄の抽選確率が異なることで」を付加することで「電動役物の駆動状態」が「遊技者に有利とした状態である」原因について、特定したものであるから、請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001?87486号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
【0010】第1ルーチン(図4)において、通常確率状態で、大当り乱数Lが用いられ、大当りとなり、所定の大当り図柄選定乱数(たとえばi)により大当り図柄態様が特定される。この大当り図柄態様が確率変動図柄態様であると、次回の大当りとなるまで高確率の大当り乱数Hが選定され、第2ルーチン(図5)に移行する。第2ルーチン(図5)において、高確率状態下で、大当り乱数Hが用いられ、大当りとなると、変遷抽選パターンである図柄選定乱数f-g-hに従って、変動回数が50回となるまでは図柄選定乱数fが抽選され、変動回数が100回となるまでは図柄選定乱数gが抽選され、それ以降は図柄選定乱数hが抽選される。この大当り図柄態様が確率変動図柄態様であると、再び、高確率の大当り乱数Hが選定され、第2ルーチンに移行する。
【0014】さらに本発明の第2手段は、大当りの図柄態様を選定するものであって、確率変動図柄態様の選定確率が異なる複数の図柄選定乱数を備えると共に、夫々異なった図柄選定乱数と、夫々異なった他の遊技価値要素とを組合わせてなる異なった種類の複合価値単位を系列化してなり、図柄表示装置の所定変動回数又は所定リーチ回数等の所定値消化毎に、系列順序に従って、有効となる複合価値単位が変遷する変遷抽選パターンを備え、大当りとなると、次回の大当りが確率変動図柄態様で当たる確率を、変遷抽選パターンの有効となる複合価値単位の図柄選定乱数により決定する又は決定する場合があることを特徴とするものである。
【0015】ここで、遊技価値要素とは、入賞に関係する要素、賞球に関係する要素、遊技継続に関係する要素、表示・音響に関係する要素等パチンコ遊技における価値あるすべての要素をいい、後述の遊技者に与えられる利得と関係する乱数以外にも、種々提案される。即ち、この手段の変遷抽選パターンは、実質的には図柄選定乱数を含むすべてのパターンをいう。
【0016】かかる第2手段は、第1手段にあっては、変遷抽選パターンが図柄選定乱数のみの組み合わせに係るものであるに比して、図柄選定乱数(f,g,h)だけで無く、他の遊技価値要素(α,β,γ)と組み合わせてなるものである。たとえば、複合価値単位をf*α,g*β,h*γとし、変遷抽選パターンを(f*α)-(g*β)-(h*γ)等としたものである。即ち、第2ルーチンにおいて、例えば変動回数が50回となるまでは図柄選定乱数fと遊技価値要素αとが抽選され、変動回数が100回となるまでは図柄選定乱数gが抽選され、それ以降は図柄選定乱数hが抽選されるとともに、その変動回数に対応して他の遊技価値要素(α,β,γ)も段階的に変化することとなる。
【0017】この複合価値単位の、図柄選定乱数と組合わされる他の遊技価値要素(α,β,γ)は、大当りとなる確率が異なる複数の大当り乱数(Hh ,Hm ,Hl )を備えた構成にあって、その大当り乱数(Hh ,Hm ,Hl )としても良い。即ち複合価値単位をf*Hh ,g*Hm ,h*Hl 等とし、変遷抽選パターンを(f*Hh )-(g*Hm )-(h*Hl )等としたものである。この場合には、第2ルーチンにおいて、始動口の球検知にともなって、例えば変動回数が50回となるまでは大当り乱数Hh が抽選され、変動回数が100回となるまでは大当り乱数Hm が抽選され、それ以降は大当り乱数Hl が抽選される。そして大当たりとなると、上述の様に図柄選定乱数(f,g,h)が順次有効となる。
【0018】すなわち、図柄選定乱数の種類により、確率変動図柄態様となる確率が定まるから、遊技者の利得と大きく関係する。一方、大当りになる確率が異なる複数の大当り乱数を設けた場合、該大当り乱数の種類も、遊技者の利得と大きく関係する。そこで、この二者を関連付けて適正な複合価値単位を構成して、遊技者の利得を調和あるものとしたり、さらに多様なものとすることができるものである。そして、この構成にあっても、図柄表示装置の所定変動回数又は所定リーチ回数等の所定値消化毎に、系列順序に従って、有効となる複合価値単位が変遷するようにしたものである。
【0019】ここで、この関連付けの態様として、上述の変遷抽選パターン(f*Hh )-(g*Hm )-(h*Hl )の様に、大当りとなると、確率変動図柄で当たる確率が高い程、大当りとなる確率が低くなる関係となるように、図柄選定乱数と、大当り乱数とを関連付けて複合価値単位を構成し、一方が利得の大きな乱数が選定された場合には、他方は利得の小さな乱数が選定されるようにして、過剰な利得が出現しないようにしたものが提案される。これにより、変動回数等の変遷に沿って変化するものの、全体として遊技機の出球率を安定させ、遊技場側の経営の安定化と、遊技者が安心して遊技できる機種を提供できる。尚、変遷抽選パターン(f*Hl )-(g*Hm )-(h*Hh )逆に高いときは高く、低いときは低く設定し、変動回数等の変遷に沿って、出球率の波が大きくなるよう制御しても良い。
【0020】また、複合価値単位の、図柄選定乱数と組合わされる他の遊技価値要素(α,β,γ)は、普通図柄表示装置の当たり図柄を選定するものであって、当たり図柄の選定確率が異なる複数の普通当たり乱数(Ph ,Pm ,Pl )を備えたものにあって、その普通当たり乱数(Ph ,Pm ,Pl )としても良い。即ち複合価値単位をf*Ph ,g*Pm ,h*Pl とし、変遷抽選パターンを(f*Ph )-(g*Pm )-(h*Pl )等としたものである。
【0021】この構成は、当たり図柄の選定確率が異なる複数の普通当たり乱数を設けて、普通電動役物の解放頻度に変化を持たせるようにすると共に、上述の構成と同様に、遊技者の利得と大きく関連する普通当たり乱数と、確率変動図柄態様となる確率が定まる図柄選定乱数とを関連付けて適正な複合価値単位を構成し、その出現率を調整することにより、遊技者の利得を調和あるものとしたり、さらに多様なものとするものしたり、また、高確率中の出球率をゲージを調整することなく調整することができようにしたものである。この構成にあっても、図柄表示装置の所定変動回数又は所定リーチ回数等の所定値消化毎に、系列順序に従って、有効となる複合価値単位が変遷することとなる。
【0022】ここで、この関連付けの態様として、上述の変遷抽選パターン(f*Ph )-(g*Pm )-(h*Pl )の様に、大当りとなると、確率変動図柄で当たる確率が高い程、普通電動役物の当たり確率が低くなる関係となるように、図柄選定乱数と、普通当たり乱数とを関連付けて複合価値単位を構成し、次回の大当りが確率変動図柄態様で当たる確率と、次回の普通図柄表示装置の当たり図柄の表示確率とを、所定値消化毎に、系列順序に従って変遷するようにした構成が提案される。この構成にあっても、一方が利得の大きな乱数が選定された場合には、他方は利得の小さな乱数が選定されるようにして、過剰な利得が出現しないように調整され、遊技機の出球率を安定させ、遊技場側の経営の安定化と、遊技者が安心して遊技できる機種を提供できる。尚、逆に高いときは高く、低いときは低く設定し出球率の波を大きくするよう制御しても良い。
【0025】
【発明の実施の形態】添付図面について本発明の一実施例を説明する。図1は、パチンコ機の遊技盤1の正面図であって、その遊技領域3の中央には、図2で拡大して示すように装着ケース(図示せず)の前部に固定されたセンターケース4が配設され、該センターケース4内に液晶表示器、CRT表示器、ドットマトリックスまたは7セグメント指示器等からなる図柄表示装置6が設けられる。この図柄表示装置6には三つの図柄表示部A,B,Cが横方向に並んで表示される。この図柄表示部A,B,Cは、「0」?「9」,「Y」,「Z」等の数字及びアルファベット等からなる図柄が表示される。
【0029】普通図柄表示装置10の表示結果が、上述したような所定の当り状態の場合には、センターケース4の直下位置に配設した普通電動役物15の開閉翼片16,16が約1.5秒拡開して、球入口(始動領域)の開口度を拡開させ、球が入り易い状態に変換する。この普通電動役物15の球入口は、図柄表示装置6を駆動するための、始動領域となる。また、普通電動役物15内には、球検出構成を構成する光電スイッチ、リミットスイッチ等の始動領域通過検出スイッチ(図3参照)が備えられ、該始動スイッチによる球通過検知に伴って、図柄表示装置6の図柄表示部A,B,Cが変動表示し、所定の図柄を停止表示することとなる。
【0030】前記普通電動役物15のさらに下方には、中央部を特定領域25とする大入賞口23を備え、蓋体24をソレノイド(図3参照)により開閉制御することにより大入賞口23を開放状態と閉鎖状態のいずれかに変換する入賞装置22が配設されている。そして、後述する大当たり乱数L,Hにより抽出された乱数値が大当たりとなると、蓋体24が解放し、その開放状態で蓋体24上面が案内作用を生じて、大入賞口23へ遊技球を案内すると共に、中央の特定領域25に遊技球が入ると、連続開放作動を生ずる。
【0035】次に図柄表示装置6の作動につき説明する。始動口14を球が通過して、始動領域通過検出スイッチからの球検出信号が発生すると、特別図柄始動記憶数が4個未満であれば、記憶数に1個を追加した後、特別乱数Kを抽出して、一旦記憶装置RAMに格納する。
【0036】そして、特別図柄始動記憶数を一個消化して、図柄表示装置6が変動開始する。また、始動記憶数表示装置8は、該記憶数に対応して順次点灯すると共に、図柄表示装置6が変動を開始する都度、消灯されて、記憶数の減少が表示される。
【0037】そして、通常確率の場合には大当たり乱数Lを、高確率の場合には大当たり乱数Hを用いて、抽選値を判定し、所定の当り値の場合には、後述するように図柄選定乱数e,f,g,h,iから、あらかじめ定められている「1,1,1」、「2,2,2」、「3,3,3」、「4,4,4」等、数字又はアルファベット等からなる同一図柄の組み合わせよりなる当り図柄態様を選定して、図柄表示装置6を変動後に、図柄表示部A,B,Cを選定内容に基づいて、順次停止して表示する。そして、大当りとして、サウンドジュネレータ等の報知装置(図3参照)がファンファーレを鳴らすと共に、上述したように入賞装置22の大入賞口23を開放して、大当り態様を実行する。
【0039】ところで、上述の大当たり作動にあって、特別図柄の大当り図柄態様により、該大当り作動が終了した後の、次回大当たりとなる確率が選定される。本発明は、この確率が高確率となるか、低確率となるかの選定を、図柄選定乱数等を介して行ったことを要旨とするものであり、以下、本発明の第1構成(請求項1)につき詳細に説明する。
【0043】大当り乱数Hは、「0」,「1」,「2」?「629」,「630」の631通りで構成され、「7」,「47」,「87」,「127」,「167」,「207」,「247」,「287」,「327」,「367」,「407」,「447」,「487」,「527」,「567」,「607」の16通りが大当たりとなり、図柄選定乱数f,g,hのいずれかが選択される。この大当り乱数Hによる当たり確率は、1/39.4375であり、これが選定された状態を高確率状態という。
【0050】ここで図4で示す、第1ルーチンを更に詳しく説明する。第1ルーチンでは通常確率状態で、大当たり乱数Lが用いられ、「327」又は「7」で大当たりとなる。このとき「327」で大当たりとなると、大当たり図柄選定乱数eが用いられる。この大当たり図柄選定乱数eは表1でも明らかなように、すべてが通常図柄である。このため、高確率に移行することなく、かかる同じ通常図柄の組み合わせにより大当たり図柄態様が生成され、図柄表示装置6に表示されることとなり、大当たり作動後には、第1ルーチンに復帰する。「7」で大当たりとなると、大当たり図柄選定乱数iにより大当たり図柄態様が特定される。この大当たり図柄選定乱数iは、表1で明らかなように、すべてが確率変動図柄であるから、かかる抽選により、確率変動図柄態様が生成され、図柄表示装置6に表示される。そして、高確率の大当たり乱数Hが選定されて、第2ルーチンに移行する。
【0052】ここで図柄選定乱数f,g,hは、通常図柄も含まれるから、必ず確率変動図柄となることはなく、通常図柄が選定された場合には、次回には、第1ルーチンとなり大当たり乱数Lが用いられ、通常確率状態となる。
【0060】即ち上述の実施例は、大当たり乱数L,Hにより高確率と、低確率とに分別するものであるが、通常確率の大当たり乱数Lのほかに、高確率にあって、大当たりになる確率が異なる複数の大当たり乱数Hh ,Hm ,Hl を備え、これを、確率変動図柄態様になる確率が異なる複数の図柄選定乱数f,g,hとを関連させて複合価値単位を構成したものである。
【0061】ここで、大当り乱数Hh は、上述した大当り乱数Hを用いる。
【0062】また、大当り乱数Hm は「0」,「1」?「629」,「630」の631通りで構成され、「7」,「87」,「167」,「247」,「327」,「407」,「487」,「567」の8通りが大当たりとなり、この場合には既に抽選された変遷抽選パターンの系列に従って図柄選定乱数f,g,hのいずれかが選択される。これを中高確率状態(1/78.875)とする。
【0063】大当り乱数Hl も上述の631通りで構成され、「7」,「167」,「327」,「487」の4通りが大当りとなり、この場合にもは既に抽選された変遷抽選パターンの系列に従って図柄選定乱数f,g,hのいずれかが選択される。これを低高確率状態(1/157.75)とする。
【0066】この場合には、第2ルーチンにおいて、始動口の球検知にともなって、例えば変動回数が50回となるまでは大当り乱数Hh が抽選され、変動回数が100回となるまでは大当り乱数Hm が抽選され、それ以降は大当り乱数Hl が抽選される。そして大当たりとなると、上述の様に図柄選定乱数(f,g,h)が順次有効となる。
【0070】さらに、図13,14は、この遊技価値要素として、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Pl を用いた場合の実施例に係るものである。すなわち、普通図柄表示装置10の当たり図柄を選定するものであって、当たり図柄の選定確率が異なる複数の普通当たり乱数Ph ,Pm ,Pl を設け、これを図柄選定乱数(f,g,h)と組み合わせて、複合価値単位を構成し、この複数個の複合価値単位を系列的に組み合わせて、変遷抽選パターンを構成したものである。
【0071】ここで、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Pl は、いずれも「0」,「1」,「2」,「3」,「4」,「5」で構成され、普通当たり乱数Ph は、すべてが当たりとなり、普通当たり乱数Pm は、「2」,「5」のみがハズレとなり、普通当たり乱数Pl は、「1」,「3」,「5」がハズレとなる。
【0072】ここで、上述の構成にあって、図柄選定乱数f,g,hと、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Pl との複合価値単位の組み合わせとしては、大当たりとなると、図柄選定乱数の確率変動図柄で当たる確率が高い程、普通電動役物の当たり確率が低くなる関係となるように、図柄選定乱数と、普通当たり乱数とを関連させて抽選した構成とすることができる。この場合には、一方が利得の大きな乱数が選定された場合には、他方は利得の小さな乱数が選定されるようにして、過剰な利得が出現しないように調整され、遊技機の出球率を安定させ、遊技場側の経営の安定化と、遊技者が安心して遊技できることとなる。また、高確率中の出球率をゲージを調整することなく調整することができる。尚、逆に高いときは高く、低いときは低く設定し出球率の波を大きくするよう制御しても良い。
【0073】ここで、図13,14は、複数の変遷抽選パターンを備えた構成である。この変遷抽選パターンとしては、(f*Ph )-(g*Pm )-(h*Pl ),(h*Pl )-(g*Pm )-(f*Ph ),(h*Ph )-(g*Pm )-(f*Pl ),(f*Pl )-(g*Pm )-(h*Ph ),(f*Ph )-(g*Pm ),(h*Ph )-(g*Pm )等が提案される。即ち、図柄選定乱数(f,g,h)と、普通当たり乱数(Ph ,Pm ,Pl )の組み合わせからなる複合価値単位の種類、系列の順序,複合価値単位の数を変化させることにより、多数の変遷抽選パターンを形成することができ、これをパターン選定乱数Jにより抽選するようにすればよい。
【0074】ここで図13の第1ルーチンでパターン選定乱数Jが用いられて、変遷抽選パターンが選出され、始動口の球検知にともなって、例えば変動回数が50回となるまでは、抽選された変遷抽選パターンで指定された最初の普通当たり乱数Ph(例)が有効となって抽選され、変動回数が100回となるまでは普通当たり乱数Pm (例)が有効となり、それ以降は普通当たり乱数Pl (例)が有効となる。そして普通図柄作動ゲート(普通図柄始動領域)13,13に球が通過すると、有効となっている普通当たり乱数Ph ,Pm ,Pl により抽選され、当たり外れが決定され、その抽選結果に従って、普通図柄表示装置10に図柄が表示され、当たりの場合には普通電動役物15が駆動して、始動領域に球が入り易くなる。
【0075】そして図14の第2ルーチンで、大当たりとなると、抽選された変遷抽選パターンに沿って図柄選定乱数(f,g,h)が順次有効となる。その他の進行内容は図7,8と同じであり省略する。なお、この構成にあっても、変遷抽選パターンとともに、単一の複合価値単位f*Ph ,g*Pm ,h*Pl により集合を構成しても良い。
【0081】また、変遷抽選パターンに、複数の大当り乱数や普通当たり乱数を有する場合には、この相対程度についても表示するようにしても良い。さらには、変遷抽選パターン自体をランク付けして、その時点で有効な変遷抽選パターンを順次表示するようにしてもよい。

また、図13に図示された「始動ON」、「L」、「7?」、「327?」等について、図13、図14の実施形態を説明する段落【0072】には、「図柄選定乱数f,g,hと、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Pl との複合価値単位の組み合わせとしては、大当たりとなると、図柄選定乱数の確率変動図柄で当たる確率が高い程、普通電動役物の当たり確率が低くなる関係となるように、図柄選定乱数と、普通当たり乱数とを関連させて抽選した構成とすることができる。」と記載されており、特別図柄の図柄態様による同一図柄の組合せを「大当り」とし(段落【0037】参照)、普通図柄の表示内容については(請求項6、段落【0020】、【0026】、【0070】参照)単に「当たり」として区別していることから、段落【0072】の記載内容を合わせて考えると、図13の「始動ON」、「L」、「7?」、「327?」が特別図柄に関するものであることは明らかである。そうすると、「L」は「通常確率状態の大当り特別図柄乱数L」、「7?」及び「327?」は大当りか否かを決めるための乱数が「7」及び「327」であるか否かの判断を表しているものと認められる。また、「始動ON」については、パチンコ機の技術常識を勘案すれば、始動口14における遊技球の通過の検知であることは自明である。

摘記した上記の記載、図面、及び上記認定事項によれば、引用文献1には、
「始動口14における遊技球の通過を検知した後に、大当り特別図柄乱数としてLを選択して、通常確率状態となり、大当りか否かを決めるための乱数が「7」であるか否かの判断を行い、「7」であれば確率変動図柄表示を行い、特別図柄の大当り図柄態様による大当り作動後、パターン選定乱数Jが用いられて、変遷抽選パターンが選出され、前記始動口14の球検知にともなって、例えば特別図柄の変動回数が50回となるまでは、抽選された変遷抽選パターンで指定された最初の普通当たり乱数Phが有効となって抽選され、特別図柄の変動回数が100回となるまでは普通当たり乱数Pm が有効となり、それ以降は普通当たり乱数Pl が有効となるものであって、
大当りとして、サウンドジュネレータ等の報知装置がファンファーレを鳴らすと共に、上述したように入賞装置22の大入賞口23を開放した大当り態様を実行するものであり、
普通当たり乱数Ph は、すべてが当たりとなり、普通当たり乱数Pm は、「2」,「5」のみがハズレとなり、普通当たり乱数Pl は、「1」,「3」,「5」がハズレであり、
そして、パターン選定乱数Jにより変遷抽選パターンが選出された後は、普通図柄作動ゲート(普通図柄始動領域)13,13に球が通過すると、有効となっている普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plのいずれかにより抽選されて当たり外れが決定され、その抽選結果に従って、普通図柄表示装置10に図柄が表示され、当たりの場合には普通電動役物15が駆動して、始動領域に球が入り易くなるものである、パチンコ機。」の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「通常確率状態」は、本願補正発明の「通常の第1の遊技状態」に相当し、以下同様に、
「大当りとして、サウンドジュネレータ等の報知装置がファンファーレを鳴らすと共に、上述したように入賞装置22の大入賞口23を開放した大当り態様」は「第2の遊技状態」に、
「普通当たり乱数Ph ,Pm ,Pl」は「普通図柄の抽選確率」に、
「パチンコ機」は「遊技機」に、
「始動口14」は「始動入賞口」に、
「球」及び「遊技球」は「遊技球」に、
「当たりの場合には普通電動役物15が駆動して、始動領域に球が入り易くなる」は、「始動入賞口への遊技球の入賞機会を向上させる」に、
「普通電動役物15」は「電動役物」に、各々相当する。

さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用発明の普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plについて、Phの場合にはハズレがなく、Pmの場合には「2」,「5」の2つがハズレ、Plの場合には「1」,「3」,「5」の3つがハズレであるから、Ph ,Pm ,Plは互いに異なるものである。
また、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plの順に普通当たり乱数が選択された場合には、Phは最初の変動から変動回数が50回となるまで継続し、その後、Pmで変動回数50回(最初の変動から100回)まで継続し、その後、Plが選択されるものである。
さらに、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plが選択されるのは、確率変動図柄表示後の大当り作動後であるから、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plの選択は、大当り作動開始の契機と同時ではないものの、少なくとも大当り作動開始を契機として行われるものといえる。
また、図13から、大当りとなっても非確率変動図柄表示の場合には、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plが選択されず、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plが新たに選択されるのは確率変動図柄表示の場合のみであることから、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plの選択は、大当りとなった場合にある確率で行われるものと認められる。
よって、Ph ,Pm ,Pl が継続されている期間は本願補正発明の「複数の第3の遊技状態」に相当し、引用発明と本願補正発明とは、「該第2の遊技状態を開始する契機にある確率で付加される遊技状態で、遊技の進行に基づく限定された期間継続する普通図柄の抽選確率が異なる複数の第3の遊技状態」で共通する。
b.普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plの選択は、変動回数に基づいて行われるものであるから、遊技の進行結果に基づいて行われているものといえる。
さらに、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plの相互の切り換えによる選択は、現在選択されている普通当たり乱数から、別の普通当たり乱数へ切り換えられているので、「現在の状態を含むいずれか1つを選択する」点は別にして、引用発明と本願補正発明とは、「該第3の遊技状態中における遊技の進行結果に基づいて、前記複数の第3の遊技状態の中からいずれか1つを選択する状態選択手段」を備えている点で共通する。

以上を総合すると、両者は、
「通常の第1の遊技状態と、該第1の遊技状態と異なる遊技状態で遊技者に有利な第2の遊技状態と、該第2の遊技状態を開始する契機にある確率で付加される遊技状態で、遊技の進行に基づく限定された期間継続する普通図柄の抽選確率が異なる複数の第3の遊技状態とを有し、該第3の遊技状態中における遊技の進行結果に基づいて、前記複数の第3の遊技状態の中からいずれか1つを選択する状態選択手段を備えた遊技機において、
前記第3の遊技状態は、始動入賞口への遊技球の入賞機会を向上させるための普通図柄の抽選確率が異なるとともに、前記第3の状態になってから、特別図柄が変動表示した回数が所定回数になった際に、前記複数の第3の遊技状態の中からいずれか1つを選択する、遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「複数の第3の遊技状態」に関して、本願補正発明では、「該第2の遊技状態を開始する契機と同時に」行われるのに対し、引用発明では、大当り作動が終了した後に行われる点。
[相違点2]
本願補正発明では、「前記第3の遊技状態は、始動入賞口への遊技球の入賞機会を向上させるための普通図柄の抽選確率が異なることで電動役物の駆動状態を、少なくとも前記第1の遊技状態における状態よりも遊技者に有利とした状態」であるのに対し、引用発明では、確率変動図柄表示を行った後に選択される普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plはそれぞれ異なっているものの、通常確率状態での普通当たり乱数よりも遊技者に有利とした状態であるか否かが不明である点。
[相違点3]
本願補正発明では、「前記複数の第3の遊技状態の中から現在の状態を含むいずれか1つを選択する状態選択手段」を備え、「前記第3の状態になってから、特別図柄が変動表示した回数が所定回数になった際に、前記複数の第3の遊技状態の中から現在の状態を含むいずれか1つを選択する」のに対し、引用発明では、大当り作動後、パターン選定乱数Jが用いられて、特別図柄の変動回数が50回となるまで、若しくは100回となるまで、それ以降に有効となる普通当たり乱数が必ず変化するように変遷抽選パターンが選出される点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
確変の開始時期を大当り遊技開始と同時とすることは、従来例を挙げるまでもなく周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
よって、引用発明に周知技術1を適用し、最初の普通当たり乱数Phが有効となる時期を大当り作動時として、相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって想到容易である。
[相違点2について]
相違点2については、要約すれば、引用発明では、通常確率状態での普通当たり乱数が不明であるから、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plが、通常確率状態での普通当たり乱数よりも当たりになり易く設定されているかどうかが不明である点で相違するものである。
しかし、引用文献1の段落【0059】?【0059】には、第2ルーチンでの高確率状態で、特別図柄の大当り乱数Hh、Hm、Hlのいずれか1つを選択する実施の形態が記載されており、当該実施の形態の第2ルーチンは図4等から分かるように、確率変動図柄による大当り後に作動するものであって、当該大当り乱数Hh、Hm、Hlは、通常確率状態Lよりも、大当りとなる確率が高く設定されている(特に、段落【0042】、?【0043】、【0059】?【0063】参照)ものである。
そして、確率変動図柄による大当り後に、普通図柄の抽選確率を通常の遊技状態よりも高めることで、遊技者に有利とした状態とすることは、例えば、特開平10?258164号公報(特に、段落【0079】?【0102】、図14A、B、図15参照)、特開2000?140300号公報(特に、段落【0008】?【0018】に記載されているように周知の技術(以下「周知技術2」という。)であり、さらに、引用文献1には、上で述べたように、確率変動図柄による大当り後は、通常の遊技状態での大当り確率よりも高くすることが記載されており、また、普通当たり乱数Phは当り確率100%であるから、通常確率状態での普通当たり乱数よりも高い確率に設定されていることは明らかである。
よって、引用発明に周知技術2を適用し、確率変動図柄による大当り後に選択される普通当たり乱数Pm ,Plを通常確率状態時よりも高く設定することは、当業者にとって格別な困難性はない。
[相違点3について]
確率変動図柄による大当り後に、複数の状態の中から現在の状態を含むいずれか1つを選択することは、例えば、特開2002?253797号公報(特に、段落【0074】?【0079】、図11参照)、特開2001?104585号公報(特に、段落【0037】、【0055】、【0080】、【0100】?【0128】、図15、図16、図23?32参照)、特開2002?95830号公報(特に、段落【0057】?【0062】参照)に記載されているように周知の技術(以下「周知技術3」という。)であり、周知技術3を引用発明に適用して、普通当たり乱数Ph ,Pm ,Plの選択を、現在の状態を含むいずれか1つを選択する構成に変えることは、当業者にとって容易になし得ることである。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1?3に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。

本願補正発明は、引用発明及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成22年1月13日付の手続補正書は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年12月19日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される。以下のとおりのものである。
「通常の第1の遊技状態と、該第1の遊技状態と異なる遊技状態で遊技者に有利な第2の遊技状態と、該第2の遊技状態を開始する契機と同時にある確率で付加される遊技状態で、遊技の進行に基づく限定された期間継続する複数の第3の遊技状態とを有し、該第3の遊技状態中における遊技の進行結果に基づいて、前記複数の第3の遊技状態の中から現在の状態を含むいずれか1つを選択する状態選択手段を備えた遊技機において、
前記第3の遊技状態は、始動入賞口への遊技球の入賞機会を向上させるための電動役物の駆動状態を、少なくとも前記第1の遊技状態におけるよりも遊技者に有利とした状態であるとともに、前記第3の状態になってから、特別図柄が変動表示した回数が所定回数になった際に、前記複数の第3の遊技状態の中から現在の状態を含むいずれか1つを選択することを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、「複数の第3の遊技状態」における「普通図柄の抽選確率が異なる」点を削除し、「電動役物の駆動状態」における「普通図柄の抽選確率が異なることで」を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件の一部を下位概念化するとともに複雑化したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-22 
結審通知日 2010-12-24 
審決日 2011-01-05 
出願番号 特願2002-268912(P2002-268912)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 綾子  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 谷 義一  
復代理人 堀田 誠  
代理人 阿部 和夫  

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