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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1232753 |
審判番号 | 不服2008-21250 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-08-19 |
確定日 | 2011-02-24 |
事件の表示 | 特願2006-134773「ゲーム制御プログラム、ゲーム制御方法、ゲーム装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-301270〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願の手続の経緯は、概要次のとおりである。 特許出願 :平成18年 5月15日 拒絶理由通知(最初):平成20年 2月12日(起案日) 手続補正 :平成20年 4月18日 拒絶査定 :平成20年 7月15日(起案日) 拒絶査定不服審判請求:平成20年 8月19日 手続補正 :平成20年 8月19日 審尋 :平成21年 5月 1日(起案日) 回答書 :平成21年 7月 1日 拒絶理由通知(最初):平成22年 8月 4日(起案日) 手続補正 :平成22年 9月28日 第2 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年9月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 他のゲーム装置との間でオブジェクトを飛ばし合うゲームを制御するゲーム制御プログラムであって、 他のゲーム装置との間でデータの送受信を制御する機能と、 他のゲーム装置から自装置へ前記オブジェクトが飛ばされたことを示すデータを受信すると、前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示する機能と、 ユーザから前記オブジェクトを他のゲーム装置へ飛ばす指示を受け付ける機能と、 前記オブジェクトを飛ばす先のゲーム装置を選択する機能と、 少なくとも選択されたゲーム装置へ、前記オブジェクトの飛び先のゲーム装置を識別するためのデータと、前記オブジェクトの飛び方を示すデータとを送信する機能と、 前記オブジェクトの飛び先として選択可能なゲーム装置の一覧を表示するとともに、他のゲーム装置から前記オブジェクトの飛び先のゲーム装置を識別するためのデータを受信したときに、前記オブジェクトの飛び先が自装置ではない場合は、前記一覧の中で前記オブジェクトの飛び先のゲーム装置を識別可能に表示する機能と、をコンピュータに実現させ、 前記ゲームに参加している複数のゲーム装置のうち、あるゲーム装置の前記表示する機能が前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示しているとき、他のゲーム装置の前記表示する機能は前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示しないことを特徴とするゲーム制御プログラム。」 第3 引用例 (1)引用例1 平成22年8月4日付けの当審拒絶理由で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-181144号公報(以下「引用例1」という。公開日:平成15年7月2日)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 a.「【0008】以下の例では、モバイルゲーミングおよび移動電話機プラットホーム用のゲームコンテンツについて説明するが、本発明はモバイルゲーミングにのみ限定されるわけではなく、そのアプリケーションは任意の他の電子/ビデオゲームにおいても動作する。 【0009】モバイルゲーミングという言葉は、移動体通信において、電子ゲームのあらゆる態様について説明するのに用いられる。最近では、移動電話機が、予め電話機のメモリにプリインストールされた1またはそれ以上の電子ゲームに関連するコンテンツを有することも珍しくない。ゲームは移動電話機のプロセッサにより実行され、普段はディスプレイの使用に関与する電話機のユーザインタフェース(UI)や1またはそれ以上のキーを使用してプレイされる。ゲームをプレイするためには、エンドユーザは各種のメインメニューオプションを経由してゲームオプションに移動し、自分がプレイしたい特定の電子ゲームを選択する。移動電話機キーパッドのキーの中には、エンドユーザが、通常はゲームのソフトウェア制御下にあるそのゲームの他の機能に関係する、ゲームの予め決められた機能を制御できるように予め割り付けられているものもある。このように、エンドユーザが「コンピュータに対抗して」プレイしていると見なすことができる。さらに、2人(またはそれ以上)のプレイヤ同士が対抗でゲームをプレイするマルチプレイヤ・セッションでは、各エンドユーザ(プレイヤ)は自分の特定のゲームキャラクタを制御して、別のプレイヤと競い合う。 【0010】通常、移動電話機プラットフォーム上でプレイするように設計された電子ゲームは、移動電話機製造メーカまたはサードパーティのこともあるコンテンツプロバイダによって作成される。電子ゲームのゲームソフトウェアを実行する他のプラットフォームと同様に、移動電話機は、ゲームを記憶するためにメモリを使用し、ゲームを実行するためにプロセッサを使用する。電子ゲームは、例えば、ゲームキャラクタがゲームプレイ中にどのように対話するかを定義するライブラリ関数を呼び出すことによって、命令やルーチンを含むゲームの総合機能をゲームプレイに提供するゲームエンジンを含む。電子ゲームは、また、ゲームの背景を決める環境要因を設定するゲーミングパラメータを有する。また、ゲーミングパラメータにはゲームのキャラクタに関連するものがあり、これらはエンドユーザの制御下にあるゲームエンティティであり、例えば、スポーツゲームにおけるチーム、または戦闘ゲームにおける戦士など、ゲームプレイ中のエンドユーザが参加するものである。ゲームコンテンツでは、以上の要因の組合せにより、ゲームのルックアンドフィール、キャラクタ、目的、および動作規則が定義される。」 b.「【0013】本発明によるシステムの1つの形態を図2に示す。図2には、ソフトウェアが生成した3つのグラフィックエレメントを含む画面が示され、このゲームは “Bizzy”と名付けられている。第1のエレメントであるエレメント1は、ユーザの制御下にある‘スピナ’であり、第2のエレメントであるエレメント2‘ボール’に推進力を与え、その方向を変える役目を果たし、第2エレメントは、第3のエレメントであるエレメント3、ゲームランドスケープ上を運動する。ゲームBizzyをプレイする時のエンドユーザの目的は、スピナを制御して、1またはそれ以上のボール(2)をランドスケープ(3)の範囲内で永久に運動させ続けることである。エンドユーザは、スピナ(1)を使用して、ランドスケープ(3)の有界環境内でボール(2)に推進力を与える。このシステムは、ボール(2)がランドスケープ(3)に接触した時はいつでも跳ね返り、運動速度が落ちるように構成されている。スピナ(1)が画面上に位置し、動いているボール(2)に接触できるように、スピナ(1)の動きおよび位置決めを直接制御することにより、ボール(2)を運動させ続けることがエンドユーザの任務である。 【0014】スピナ(1)がボール(2)に接触すると、ボール(2)に推進力が注入され、同時にボール(2)の運動方向が変わる。すべてのボールが破裂すると、ゲームは終了する。特定の構成では、ボールがランドスケープの壁に接触する時はいつでも、第3エレメントにより失速し、したがって、ボールが、エンドユーザのスピナにより推進力を加えられることなく3度壁に当たった場合には、ボールが止まり、破裂するように、システムが動作する。この特定の構成では、図3に示すように、スピナがボールに接触する時はいつでも、ボールがスピナに付着し、270度回転して、最大の推進力で離れる。ボールが付着している間、エンドユーザはスピナを動かすことができない。このシステムは、ボールが破裂する度に、エンドユーザが失点するように動作する。」 c.「【0020】特定の形態では、本発明は、移動電話機に適した電子ゲームに実装され、本発明のこの形態では、画面上のスピナを制御するために、エンドユーザは、移動電話機のキーパッド上の一連のキーを含む、電話機のキー制御インタフェースを使用する。本発明のこの形態では、ゲームには1乃至9のすべての数字キーが使用される。キー1乃至4、および6乃至9は、スピナの8方向の動きを決定するのに使用され、キー5は、例えば、マルチプレイヤ参加ゲームにおいて、連続して次の人へ引き継ぐ時に使用される。他のゲーミングプラットフォームでプレイする場合、ゲームのコントローラ/ジョイスティックが使用され、この時、Dパッドが指向性運動を決定し、<Enter>キーがチャレンジゲーム中に入力を行う。」 d.「【0021】既述したように、本発明は、プレイヤが1人、または複数の動作モードに適合可能である。複数プレイヤモードには、プレイヤが2人だけのモード(ピアツーピア通信)と、2人のプレイヤまたはそれ以上のモード(1対多数のセッション)とが含まれる。複数プレイヤモードは、種々の方法で可能である。例えば、複数プレイヤによるゲームは、セルラネットワークなどのネットワーク、またはローカルエリアネットワーク(LAN)を介して実行できる。また、エンドユーザの携帯電話機がブルートゥース対応である場合には、通信はブルートゥース手段により行われても良い。通信構成は、第1のエンドユーザの移動電話機がマスタ端末として働き、第2およびそれ以上のエンドユーザの移動電話機がスレーブ端末として働く、マスタ/スレーブ関係として設定しても良い。このマスタ/スレーブ構成では、第1のユーザの移動電話機が、ゲームプレイに関係するイベント、シーケンス、および命令を実行し、これらを他のエンドユーザの移動電話機に送信する。したがって、1人のエンドユーザが、複数のプレイヤのためにゲームをセットアップする。 【0022】ゲームは1度に1人のプレイヤしかプレイできず、他のプレイヤへと次々に引き継がれていく。システムは、プレイヤ列の次のプレイヤにゲームを渡すために、プレイヤがゲームを凍結する(すなわち、ゲームプレイ中のある瞬間でゲームを止める)ことができるランドスケープ環境のウィンドウ機能(図2の4)を提供する。すなわち、このウィンドウ機能は、ランドスケープ境界縁部における裂け目によって与えられ、次のプレイヤのランドスケープへの通路を表すウィンドウである。このウィンドウは、ランドスケープの1またはそれ以上の壁(北側、東側、または西側の壁の1つ)沿いを動くように構成しても良い。あるプレイヤが、ボールをウィンドウからなんとかして送り出せば、そのゲーム状態が一時停止し、そのプレイヤの移動電話機はそのゲーム状態を次のプレイヤに連鎖的に送る。したがって、彼の競争相手の列における次プレイヤは、送られてきたボールと一緒に、前のプレイヤのプレイエリアにおけるゲーム状態を受取り、その状態がこの競争相手のランドスケープに受け継がれる。 【0023】便宜的に、プレイヤが2人の場合のマッチモードとチャレンジモードとを考えてみる。マッチモードはプレイヤが2人のみである。両プレイヤは、同じゲーム(ボールの数が同じで、ランドスケープが1つの同じウィンドウを有する)を開始する。ゲームが進行すると、プレイヤが1人のゲームと同様、(ある得点または時間を超えると)他のボールも出現する。 【0024】あるプレイヤが自分のボールの1つをウィンドウから送ると、そのボールは自分の画面から消え、相手の画面に現れる。このようにしてプレイヤが自分のボールを一掃すると、それに代わる別のボールを受け取り、彼はプレイし続ける。性能上およびグラフィカルな理由から、画面に表示可能なボールの数には最大値があり、1つのボールがあるプレイヤのマシンに入ってくると、この最大数に達する(最大数プラス1になる)場合、入ってくる時、そのボールはウィンドウのところで破裂する。 【0025】チャレンジモードでは、多数のプレイヤ(2人以上)がローカルエリアネットワークにおいて連続した鎖を形成する。ゲームホストがゲームを開始すると、全プレイヤが同じランドスケープを持つが、ホストだけがボールを持っている。連鎖中の、ホストの次の人は、プレイ中のホストの画面にボーナスを追加する機械を有する。ホストは、ボールが破裂するか、またはボールがウィンドウを通過するかのどちらかが起こるまで、プレイし続ける。 【0026】ボールを破裂させた場合、その責任があるプレイヤは命を1つ失い、もしそれが彼の最後の命である場合には、そのゲームは終了する。ボールが破裂すると、連鎖中の次の人にゲームが引き渡される。ゲームを引き渡された人たちは、新しいボールでゲームを開始し、プレイし続ける。ボールがウィンドウを通過した場合にも、ゲームは次のプレイヤに渡される。この時、ゲームの状態はそのまま引き渡されるので、ボールの動き、および出現するボーナスの数は、ボールが引き渡される以前と同様である。 【0027】また、ゲームのプレイヤが、そのゲームプレイ中に機能を動的に追加する機会もある。プレイヤがその状況を制御できなくなり、対処しているボールが破裂すると、彼はプレイヤの連鎖から外される。ゲームにおいてボールが破裂すると、ゲームは自動的に一時停止し、そのプレイヤの移動電話機が、自動的にその停止中のゲームを、連鎖中の次の人に送信するように、システムはゲームプレイを制御する。ゲームは、プレイヤが1人だけになるか、または、ホストプレイヤが脱落すると、終了する。」 e.図2?3には、ゲームの画面が示されている。 〔摘記事項からの認定事項〕 上記摘記事項d.の【0024】の記載において、あるプレイヤがボールをウィンドウから送ると、そのボールは自分の画面から消え、相手の画面に現れるというボールの表示制御に関する事項は「マッチモード」に関するものであるが、技術常識からして、当該ボールの表示制御は「チャレンジモード」でも同様に行われるものと認められる。 また、上記【0024】の記載において、ウィンドウから送られたボールが画面に現れることを「1つのボールがあるプレイヤのマシンに入ってくる」と表現しているが、この点も「マッチモード」と「チャレンジモード」とで共通する事項であると認められる。 〔引用例1に記載された発明の認定〕 上記摘記事項a.?e.及び認定事項から、引用例1には、 「複数のプレイヤの移動電話機でゲームが行われ、 複数のプレイヤによるゲームは、セルラネットワークなどのネットワーク、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはブルートゥースを介して実行され、 ボールが移動電話機の画面上を運動しており、 ボールの動きはスピナとの接触により制御され、 あるプレイヤが自分のボールをウィンドウから送ると、そのボールは自分の画面から消え、相手のプレイヤのマシンにボールが入って、相手の画面に現れ、 チャレンジモードでは、2人以上の多数のプレイヤが連続した鎖を形成し、 連鎖中の前の人のボールがウィンドウを通過させると、ゲームは次のプレイヤに渡され、 キー1乃至4および6乃至9はスピナの8方向の動きを決定するのに使用され、スピナはボールに推進力を与え、その方向を変える役目を果たし、 移動電話機のプロセッサにより実行されるゲームのソフトウェア。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (2)引用例2 平成22年8月4日付けの当審拒絶理由で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-102275号公報(以下「引用例2」という。公開日:平成18年4月20日)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 f.「【0004】 一般にこのようなパズルゲームはプレーヤが単独で行うものが多いが、対戦型ゲームとしても実現されている。この対戦型のパズルゲームは、例えば、あるプレイヤにおける積み上げた物体の配列が所定の状態の場合に、対戦しているプレイヤにおける物体の配列に何らかの作用を与えるなどによりその対戦しているプレイヤのゲーム状況を追いつめていくことで、プレイヤ同士に対戦感を与えるものである。 【特許文献1】特開平12-183675号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、このような従来の対戦型パズルゲームでは、複数のプレーヤで対戦している場合に攻撃相手を選択することはできず、対戦のおもしろみに欠けるという課題があった。 【0006】 本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、対戦型パズルゲーム装置について、従来構成とは異なる構成を採用し、プレイヤーに対して今までにない斬新で操作性のよい通信相手選択インターフェースを備えた画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体を提供することにある。」 g.「【0053】 1.構成 図1に本実施形態のゲームシステム(画像生成システム)の機能ブロック図の例を示す。なお本実施形態のゲームシステムは図1や図2の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。 【0054】 操作部160は、プレーヤが操作データを入力するためのものであり、その機能は、レバー、方向指示キー、或いはボタンなどにより実現できる。 ・・・(中略)・・・ 【0058】 タッチパネルディスプレイ(第1のディスプレイ)190は、プレーヤがゲーム操作を行ったり、本実施形態により生成された画像を表示出力するためのものである。 ・・・(中略)・・・ 【0061】 タッチパネルディスプレイへの接触により攻撃あいての選択を行うことができる。 ・・・(中略)・・・ 【0066】 処理部100(プロセッサ)は、操作部160からの操作データやプログラムなどに基づいて、ゲーム演算処理、画像生成処理、或いは音生成処理などを行う。この処理部100は記憶部170をワーク領域として各種処理を行う。処理部100の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。 【0067】 処理部100は、ゲーム演算部110、画像生成部130、音生成部140を含む。 【0068】 ゲーム演算部110は、ゲーム画像やゲーム音を生成するためのゲーム演算処理を行う。ここでゲーム演算処理としては、ゲームの内容やゲームモードを決定する処理、ゲーム開始条件が満たされた場合にゲームを開始する処理、ゲームを進行させる処理、ゲームプレイにより変化するゲームパラメータ(ゲーム結果)を演算する処理、或いはゲーム終了条件が満たされた場合にゲームを終了する処理などがある。 【0069】 またゲーム演算部110は、操作部160やタッチパネルディスプレイ190からの入力情報やプログラム等に基づきに基づき、ゲーム空間内で前記プレーヤキャラクタの位置/動作を演算し、ゲーム空間内でプレーヤキャラクタが移動/動作するゲーム演算を行うもので、表示制御部112、移動・動作処理部114、ゲーム情報受け取り処理部116、ゲーム情報送信処理部118、対戦相手情報表示制御処理部120、攻撃相手特定処理部122,攻撃情報生成処理部124、攻撃情報送信処理部126,ダメージ演算部128を含む。なおこれらの一部を省略する構成としてもよい。 【0070】 表示制御部112は、タッチパネルディスプレイ190やディスプレイ191に表示される画像(オブジェクト)の表示制御を行う。具体的には、表示すべきオブジェクト(キャラクタ、標的、車、ボール、アイテム、建物、樹木、柱、壁、マップ)を発生させたり、オブジェクトの表示や表示位置を指示したり、オブジェクトを消滅させたりするなどの表示制御を行う。即ち発生したオブジェクトをオブジェクトリストに登録したり、オブジェクトリストを画像生成部130等に転送したり、消滅したオブジェクトをオブジェクトリストから削除したりするなどの表示制御を行う。 【0071】 また表示制御部112は、入力情報等により、プレーヤキャラクタやオブジェクトの移動や動作が発生した場合に、発生した移動や動作の画像をタッチパネルディスプレイ190、ディスプレイ191に表示するための制御を行う。 【0072】 移動制御部114は、ゲームフィールド(ゲーム空間、2次元又は3次元のオブジェクト空間)でオブジェクト(2次元又は3次元のオブジェクト)を移動させるための処理を行う。即ち操作部160やタッチパネルディスプレイ190を用いてプレーヤが入力した操作データや、プログラム(移動アルゴリズム)や、各種データ(オブジェクトリスト)などに基づいて、オブジェクトを移動させる処理を行う。更に具体的には、オブジェクトの移動情報(位置、回転角度、速度、或いは加速度)を、1フレーム(1/60秒)毎に順次求める処理を行う。また移動制御部(動作制御部)111は、オブジェクトを動作させるための処理も行うことができる。即ち操作部160やタッチパネルディスプレイ190を用いてプレーヤが入力した操作データや、プログラム(動作アルゴリズム)や、各種データ(モーションデータ、アニメーションデータ)などに基づいて、オブジェクトを動作(モーション、アニメーション)させる処理を行う。更に具体的には、オブジェクトの動作情報(各パーツオブジェクトの位置、回転角度、或いは形状)を、1フレーム(1/60秒)毎に順次求める処理を行う。なおフレームは、オブジェクトの移動制御処理や動作制御処理や画像生成処理を行う時間の単位である。 【0073】 ゲーム情報受け取り処理部116は、ネットワークを介して受信した他のゲームシステムのゲーム状況を表すゲーム情報データを受け取るために必要な処理を行う。 【0074】 ゲーム情報送信処理部118は、自己ゲームシステムのゲーム状況を表すゲーム情報をネットワークを介して他のゲームシステムに送信するためために必要な処理を行う。 【0075】 対戦相手情報表示制御処理部120は、他のゲームシステムから受信したゲーム情報に基づき、他のプレーヤのゲーム情報を対戦相手情報表示画像(通信相手情報表示画像の一例)として表示部に表示するための表示制御を行う。 【0076】 攻撃相手特定処理部122は、前記タッチパネルによって検出された接触位置と前記対戦相手情報表示画像の表示位置に基づき選択された攻撃相手(影響相手の一例)を特定する処理を行う。 【0077】 攻撃情報生成処理部124は、所定のタイミングで選択された攻撃相手(影響情報の一例)に影響を与えるための攻撃情報を生成する処理を行う。 【0078】 攻撃情報送信処理部126は、選択された攻撃相手に対応したゲームシステムに前記攻撃情報を送信するための処理を行う。 【0079】 ダメージ(影響の一例)演算部128は、自機が攻撃対象(影響対象の一例)となっている攻撃情報を受け取ると、攻撃情報に基づき所定のゲームパラメータの値を変更する処理を行う。 【0080】 また対戦相手情報表示制御処理部120は、ゲーム情報に含まれたゲーム画像情報に基づき他のプレーヤのゲームシステムに表示されているゲーム画像又はそのゲーム画像を簡易化した画像を前記対戦相手情報表示画像として表示するための表示制御を行うようにしてもよい。 【0081】 またゲーム情報に含まれた攻撃相手選択情報に基づき他のゲームシステムの攻撃相手選択情報が表示された前記対戦相手情報表示画像を表示するための表示制御を行うようにしてもよい。 【0082】 またゲーム情報に含まれたゲームパラメータ情報に基づき他のゲームシステムのゲームパラメータ情報が表示された前記対戦相手情報表示画像を表示するための表示制御を行うようにしてもよい。 【0083】 またゲーム情報に含まれたゲーム情報に含まれた成績情報に基づき、他のゲームシステムの成績情報が表示された前記対戦相手情報表示画像を表示するための表示制御を行うようにしてもよい。 【0084】 またゲーム情報に含まれた順位情報に基づき、他のゲームシステムの順位情報が表示された前記対戦相手情報表示画像を表示するための表示制御を行うようにしてもよい。 【0085】 また選択された攻撃相手の対戦相手情報表示画像を他の対戦相手情報表示画像と区別可能に強調表示するように表示制御を行うようにしてもよい。 【0086】 画像生成部130は、処理部100で行われる種々の処理(ゲーム処理)の結果に基づいて描画処理を行い、これにより画像を生成し、タッチパネルディスプレイ190やディスプレイ191に出力する。この場合、画像生成部130が生成する画像は、いわゆる2次元画像であってもよいし、3次元画像であってもよい。そして3次元画像を生成する場合には、まず、座標変換(ワールド座標変換、カメラ座標変換)、クリッピング処理、或いは透視変換等のジオメトリ処理が行われ、その処理結果に基づいて、描画データ(プリミティブ面の頂点の位置座標、テクスチャ座標、色データ、法線ベクトル或いはα値等)が作成される。そして、この描画データ(プリミティブ面データ)に基づいて、透視変換後(ジオメトリ処理後)のオブジェクト(1又は複数プリミティブ面)を描画バッファ172(フレームバッファ、中間バッファなどのピクセル単位で画像情報を記憶できるバッファ。VRAM)に描画する。これにより、オブジェクト空間内において仮想カメラ(所与の視点)から見える画像が生成される。 【0087】 音生成部140は、処理部100で行われる種々の処理の結果に基づいて音処理を行い、BGM、効果音、又は音声などのゲーム音を生成し、音出力部192に出力する。 【0088】 なお、本実施形態の画像生成システムは、1人のプレーヤのみがプレイできるシングルプレーヤモード専用のシステムにしてもよいし、複数のプレーヤがプレイできるマルチプレーヤモードも備えるシステムにしてもよい。また複数のプレーヤがプレイする場合に、これらの複数のプレーヤに提供するゲーム画像やゲーム音を、1つの端末を用いて生成してもよいし、ネットワーク(伝送ライン、通信回線)などで接続された複数の端末(ゲーム機、携帯電話)を用いて分散処理により生成してもよい。 【0089】 なお、本実施形態のゲームシステムは、1人のプレーヤのみがプレイできるシングルプレーヤモード専用のシステムにしてもよいし、複数のプレーヤがプレイできるマルチプレーヤモードも備えるシステムにしてもよい。また複数のプレーヤがプレイする場合に、これらの複数のプレーヤに提供するゲーム画像やゲーム音を、1つの端末を用いて生成してもよいし、ネットワーク(伝送ライン、通信回線)などで接続された複数の端末(ゲーム機、携帯電話)を用いて分散処理により生成してもよい。」 h.「【0103】 2.本実施形態の手法 次に本実施形態の手法について図面を用いて説明する。なお以下では、プレーヤキャラクタが落下してくるブロックを避けながら、ゲーム空間内のブロックを掘り、所定のブロックを掘ると、対戦相手情報表示画像で選択した対戦相手にダメージを与えることができるゲームなどに本発明を適用した場合について説明するが、本実施形態を適用できるゲームはこのようなゲームに限定されない。 【0104】 図4(A)の主ゲーム画像には、ゲームの進行に沿って変化するゲーム空間の画像350とプレーヤキャラクタの体力表示360が含まれる。 【0105】 ゲーム空間の画像350には例えばプレーヤが操作するプレーヤキャラクタPCHや、ブロック等のオブジェクトOB等のからなるゲーム空間がゲーム画像として表示される。 【0106】 本実施の形態では2次元のゲーム空間内に複数のブロックOB(ゲーム要素の一例)が配置されており、プレーヤキャラクタは、ブロックの配置されていないエリアを移動可能になっている。プレーヤは所定の入力コマンドを入力することによりゲーム空間内でプレーヤキャラクタを移動させ、プレーヤキャラクタに隣接するブロック(上下左右に隣接する位置にあるブロック)を掘ることで、当該ブロック又は当該ブロックとグループ化された近隣ブロック群を消去させることができる。 【0107】 そして所定のブロックを掘ると、対戦相手情報表示画像で選択した対戦相手にダメージ(例えば対戦相手のプレーヤキャラクタの体力を減少させる)を与えることができる ここでこのブロックの消滅により、他のブロックが落下する場合がある(ブロックの再配置)。かかる場合に落下ブロックがプレーヤキャラクタにヒットすると、プレーヤキャラクタはダメージを受ける。従って落下してくるブロックに当たらないようにプレーヤキャラクタを移動させることが必要となる。 【0108】 なおプレーヤキャラクタの体力は、ゲームパラメータの一つであり、例えば時間の進行や受けたダメージやブロックへのヒットや「ブロックを掘る動作」等の所定の条件に対応して減少し、所定の値(例えば0)になるとプレーヤキャラクタは移動/動作ができなくなるようにしてもよい。 【0109】 このように本実施の形態のゲームは、ゲーム空間内でプレーヤキャラクタPCHを移動させながら所定の動作(ブロックOBを掘る動作)を行わせることで、プレーヤキャラクタPCHと所定の位置関係にあるブロック(オブジェクト)OBの消去とそれに伴うブロック(オブジェクト)OBの配置の再構成制御(例えば下のブロックOBが消去してその上にあったブロックが落下する制御等)を行い、所定のブロックを掘ると、対戦相手情報表示画像で選択した対戦相手にダメージを与える所定のブロックを掘ることで対戦相手情報表示画像で選択した対戦相手にダメージを与え、落下してくるブロックにヒットしないようにプレーヤキャラクタPCHがブロックを掘り進むゲームである。 【0110】 図4(B)の380-1?380-4は、ネットワークを介して接続され、対戦を行っている他のゲームシステムの対戦相手情報表示画像である。例えば5台のゲームシステムが図4(B)のように接続されている場合、自機がP0(図3の50-0)であるとすると、他のゲームシステム(図3の50-1?50-4)のゲーム状況を表す画像が対戦相手情報表示画像380-1?380-4として表示される。 【0111】 各対戦相手情報表示画像380-1?380-4は、ネットワークを介して他のゲームシステムから受け取ったゲーム状況(ゲームの有利不利、成績、ゲーム空間の状態等)を表すゲーム情報(ゲームパラメータ、表示部に表示されている画像情報)に基づき生成(再生)される。 【0112】 プレーヤはタッチパネルディスプレイに表示された対戦相手情報表示画像380-1?380-4の中から所望の対戦相手の画像をタッチすることで、攻撃相手として選択することができる。」 i.「【0132】 図7は、タッチパネルディスプレイに表示される対戦相手情報表示画像の他の一例である。 【0133】 430-1?430-4は、ネットワークで接続された他のゲームシステム(対戦相手のゲームシステム)において選択されている攻撃相手の情報(攻撃相手選択情報)である。他のゲームシステムからの選択している攻撃相手を特定するための情報(攻撃相手選択情報)を受け取り、対戦相手の選択している攻撃相手の情報が表示された画像を対戦相手情報表示画像として表示するようにしてもよい。 【0134】 例えば430-1は対戦相手P1は、P0(プレーヤ)を攻撃相手として選択していることをしめしており、430-2は対戦相手P2は、P3を攻撃相手として選択していることをしめしており、430-3は対戦相手P3は、P1を攻撃相手として選択していることをしめしており、430-4は対戦相手P4は、P0(プレーヤ)を攻撃相手として選択していることをしめしている。 【0135】 このようにすると、プレーヤは対戦相手が誰を狙っているかを参考にしながら(例えば自分を攻撃相手として選択している対戦相手を攻撃相手として選択する等)、攻撃相手の決定や変更を行うことができるので、よりゲーム性の高く、駆け引き等も楽しめるゲームを提供することができる。」 j.「【0188】 また本発明は、魔法シューティングゲーム、ロールプレイングゲーム、通常シューティングゲーム、アクションゲーム、スポーツゲーム、音楽ゲーム、料理ゲーム等の種々のゲームに適用できる。また本発明は、業務用ゲームシステム、家庭用ゲームシステム、携帯型ゲームシステム、多数のプレーヤが参加する大型アトラクション、シミュレータ、マルチメディア端末、ゲーム画像を生成するシステムボード、携帯電話等の種々のゲームシステムに適用できる。」 k.図1には、ゲームシステムの機能ブロック図が示されている。 l.図7には、対戦相手情報表示画像を表示するゲーム画像が示されている。 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 <対応関係A> 引用発明の「ボール」、「「ゲームのソフトウェア」が実行される「移動電話機」」、「プレイヤ」及び「「移動電話機のプロセッサ」を含む「ソフトウェア」を実行するための手段」は、それぞれ本願発明の「オブジェクト」、「ゲーム装置」、「ユーザ」及び「コンピュータ」に相当する。 <対応関係B> 引用発明の「ゲームのソフトウェア」は、複数のプレイヤの移動電話機の間での「ボール」のやりとり(送ったり、送られたり)を制御するものであるから、本願発明の「他のゲーム装置との間でオブジェクトを飛ばし合うゲームを制御するゲーム制御プログラム」に相当する。 <対応関係C> 引用発明の「ゲームのソフトウェア」により移動電話機が制御されて複数のプレイヤの移動電話機の間でボールのやりとりがされることは、技術常識を踏まえると、ボールに対応するデータのやりとりをしているといえるから、本願発明の「他のゲーム装置との間でデータの送受信を制御する機能」を「コンピュータに実現させ」ることに相当する。 <対応関係D> 引用発明の「「ゲームのソフトウェア」により移動電話機が制御されて、あるプレイヤから「ボール」が送られて相手の画面に現れる、すなわち、相手の移動電話機の画面に画面上を運動する「ボール」が現れること」は、技術常識を踏まえると、そのような表示を行うためのデータがあるプレイヤの移動電話機から送信され相手の移動電話機で受信されて、受信されたデータに応じてそのような表示が行われているといえるから、本願発明の「「他のゲーム装置から自装置へ前記オブジェクトが飛ばされたことを示すデータを受信すると、前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示する機能」を「コンピュータに実現させ」ること」に相当する。 <対応関係E> 引用発明の「「ゲームのソフトウェア」により移動電話機が制御されて、あるプレイヤが「ボール」を「ウィンドウ」から相手のプレイヤのマシンに送るために、「スピナ」の動きを「キー1乃至4および6乃至9」からの入力により決定し、その動きに基づいて「ボール」の挙動が決定されること」は、本願発明の「「ユーザから前記オブジェクトを他のゲーム装置へ飛ばす指示を受け付ける機能」を「コンピュータに実現させ」ること」に相当する。 <対応関係F> 引用発明の「「ゲームのソフトウェア」により移動電話機が制御されて、あるプレイヤから「ボール」が送られて相手の画面に現れる、すなわち、相手の移動電話機の画面上を運動する「ボール」が現れること」は、技術常識を踏まえると、そのような表示を行うためのデータがあるプレイヤの移動電話機から送信され相手の移動電話機で受信されて、受信されたデータに応じてそのような表示が行われているといえるから、引用発明の上記事項と本願発明の「「少なくとも選択されたゲーム装置へ、前記オブジェクトの飛び先のゲーム装置を識別するためのデータと、前記オブジェクトの飛び方を示すデータとを送信する機能」を「コンピュータに実現させ」ること」とは、「オブジェクトを飛ばす先のゲーム装置へ、前記オブジェクトを飛ばしたことに関するデータを送信する機能」を「コンピュータに実現させ」る点で共通する。 <対応関係G> 引用発明の「あるプレイヤの「ボール」が「ウィンドウ」から相手のプレイヤに送られると、その「ボール」は自分の画面から消え、ゲームが相手のプレイヤに渡されるということ」は、次のプレイヤ等の他のプレイヤの移動電話機の画面上に「ボール」が表示されている間はあるプレイヤの移動電話機の画面上には「ボール」の運動は表示されないということを意味しているから、本願発明の「「前記ゲームに参加している複数のゲーム装置のうち、あるゲーム装置の前記表示する機能が前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示しているとき、他のゲーム装置の前記表示する機能は前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示しない」こと」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「他のゲーム装置との間でオブジェクトを飛ばし合うゲームを制御するゲーム制御プログラムであって、 他のゲーム装置との間でデータの送受信を制御する機能と、 他のゲーム装置から自装置へ前記オブジェクトが飛ばされたことを示すデータを受信すると、前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示する機能と、 ユーザから前記オブジェクトを他のゲーム装置へ飛ばす指示を受け付ける機能と、 オブジェクトを飛ばす先のゲーム装置へ、前記オブジェクトを飛ばしたことに関するデータを送信する機能と、をコンピュータに実現させ、 前記ゲームに参加している複数のゲーム装置のうち、あるゲーム装置の前記表示する機能が前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示しているとき、他のゲーム装置の前記表示する機能は前記オブジェクトが飛んでいる様子を表示しないゲーム制御プログラム。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) オブジェクトを飛ばす先のゲーム装置の決定に関して、本願発明では、「オブジェクトを飛ばす先のゲーム装置を選択する機能」をコンピュータに実現させることによって決定しているのに対して、引用発明では、どのように決定しているのかが明示されていない点。 (相違点2) オブジェクトを飛ばす際のプログラム処理に関して、本願発明では、「少なくとも選択されたゲーム装置へ、オブジェクトの飛び先のゲーム装置を識別するためのデータと、前記オブジェクトの飛び方を示すデータとを送信する」のに対して、引用発明では、具体的な処理内容が示されていない点。 (相違点3) オブジェクトに関する状態表示として、本願発明では、「オブジェクトの飛び先として選択可能なゲーム装置の一覧を表示するとともに、他のゲーム装置から前記オブジェクトの飛び先のゲーム装置を識別するためのデータを受信したときに、前記オブジェクトの飛び先が自装置ではない場合は、前記一覧の中で前記オブジェクトの飛び先のゲーム装置を識別可能に表示する」のに対して、引用発明では、そのような状態表示を行っていない点。 第5 当審の判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 上記摘記事項「f.」?「i.」の記載によると、引用例2には、ゲームで複数のプレイヤーが対戦している際に、攻撃等の作用を与える相手を選択することができないと対戦のおもしろみに欠けるという課題解決のために、攻撃等の作用を与える相手を選択可能にする技術が記載されており、かつ、上記摘記事項「j.」の記載によれば、それは「アクションゲーム、スポーツゲーム」等にも適用可能な技術であることが示唆されている。 そして、引用発明のゲームも複数のプレイヤーで対戦するものであり、かつ、「アクションゲーム、スポーツゲーム」に類する種別のゲームであるから、引用例2に記載されたものと同様の課題を有することは当業者にとって明らかである。 そうすると、対戦のおもしろみを増すために、引用発明に引用例2に記載された攻撃等の作用を与える相手を選択可能にする技術を付加し、ボールを送る先の相手のプレイヤの移動電話機を選択可能にすることにより、相違点1に係る発明の構成を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。 なお、ここでは上記相違点1を一応の相違点として判断を行ったが、引用発明においても複数存在する移動電話機の中から特定の移動電話機のみにボールを送るようになっているから、ボールを送る先のゲーム装置は複数の中から選択されており、当然のその選択のための機能が実現されているといえるので、この解釈の下では、この点は実質的には相違点ではない 。 (2)相違点2について 引用発明では、複数のプレイヤ間でゲームが行われるため、ゲーム及びボールを複数のプレイヤ中の特定の「次のプレイヤ」に渡すには、複数のプレイヤの有する移動電話機の中から、ゲーム及びボールを渡される「次のプレイヤ」の移動電話機が識別される必要があることは、技術常識からして明らかである。 そして、そのような特定の「次のプレイヤ」の移動電話機を識別するためのデータを「次のプレイヤ」を含むそれぞれの移動電話機に送信することで当該識別を行うことは、当業者であれば容易に想到することである。 また、引用例1の上記摘記事項d.において、「ボールがウィンドウを通過した場合・・・ゲームの状態はそのまま引き渡されるので、ボールの動き・・・は、ボールが引き渡される以前と同様である。」と記載されており、「ゲーム」を引き渡す際には、「ボールの動き」を含む「ゲームの状態」も引き渡すとされているから、引用発明で当該「ボールの動き」を示すデータを送信することも、当業者であれば容易に想到することである。 そうすると、相違点2に係る発明の構成を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。 (3)相違点3について 引用例2の上記摘記事項i.、l.にディスプレイに他のプレーヤの一覧を含む対戦相手情報表示画像を表示し、攻撃等の作用を与える相手等を示すことが記載されており、上記摘記事項g.に「【0075】 対戦相手情報表示制御処理部120は、他のゲームシステムから受信したゲーム情報に基づき、他のプレーヤのゲーム情報を対戦相手情報表示画像(通信相手情報表示画像の一例)として表示部に表示するための表示制御を行う。」と記載されているように、引用例2には、複数のプレーヤで行うゲームにおいて、他のプレーヤのゲーム情報(他のプレーヤのゲーム上の何らかの状態を示す情報)を表示する技術が示されている。 引用発明に当該技術を付加して、他のプレイヤの一覧を示すと共に他のプレイヤのゲーム情報を表示することは、当業者であれば容易になし得ることであり、かつ、具体的にどのような情報を表示するべきであるかは、ゲーム内容等に応じて、当業者が適宜に選択できる任意の設計的事項に過ぎない。 そして、引用発明のゲームでは、他のプレイヤのゲーム情報として、ゲーム及びボールを渡されているか否か、チャレンジモードにおける連鎖から外されているか否か等のゲーム上の状態があるから、他のプレイヤのゲーム情報として、それらの状態を示す情報を表示することで、相違点3に係る発明の構成を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。 さらに、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2に記載された技術から当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 〔付記〕 なお、請求人は、平成22年9月28日付け意見書において、本願発明は、現在のオブジェクトの飛び先のゲーム装置を一覧の中で識別可能に表示することにより、ユーザにストレスを感じさせる問題を解決できるという格別の作用効果を奏するのに対して、引用例2にはオブジェクトの飛び先を表示する開示がないという趣旨の主張をしているが、現在の状態に関する情報をユーザに示すことで、ユーザが現在の状態を正しく認識できるようになるのは当然のことであって、例えば、引用例2における他のプレーヤのゲーム情報を表示する技術でも同様の効果は得られるから、請求人の主張する格別の作用効果は認められない。 さらに、請求人の主張する作用効果は、実質的には、ユーザに示す情報として、「現在のオブジェクトの飛び先」を選択したという情報の内容により奏されるものであり、引用例2に記載された技術と本願発明との情報表示に関する技術的構成の相違に起因するものではない。そもそも、情報の内容に応じてユーザに与える影響が異なるのは当たり前のことであって、それは発明の作用効果というよりは、情報自体の作用効果というべきであるから、表示する情報の内容の選択に起因する作用効果の差異を発明の格別の作用効果と認めることはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-20 |
結審通知日 | 2010-12-21 |
審決日 | 2011-01-11 |
出願番号 | 特願2006-134773(P2006-134773) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 肇、宮本 昭彦 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 橋本 直明 |
発明の名称 | ゲーム制御プログラム、ゲーム制御方法、ゲーム装置 |
代理人 | 森下 賢樹 |
代理人 | 三木 友由 |
代理人 | 村田 雄祐 |
代理人 | 青木 武司 |