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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1233044
審判番号 不服2008-20517  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-11 
確定日 2011-03-02 
事件の表示 特願2003-550529「モバイル機器およびユーザー・モジュールへのデータの格納およびアクセス」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月12日国際公開、WO03/49471、平成17年 4月28日国内公表、特表2005-512425〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本件出願は、2002年12月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年12月4日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年4月16日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「モバイル機器(10)にユーザー・データ(48)を格納し、該機器(10)の該データ(48)にアクセスする方法であって、
前記モバイル機器(10)がアプリケーション・プログラムを実行し、該アプリケーション・プログラムが前記ユーザー・データを処理し、
前記モバイル機器(10)が、デバイス・メモリ(38)を有し、インタフェース(14)を介してユーザー・モジュール(12)に接続されており、前記ユーザー・データ(48)を、少なくとも一部が暗号化された形で前記モバイル機器(10)のデバイス・メモリ(38)に格納し、
アクセス操作において、前記ユーザー・データ(48)の少なくとも復号を、前記ユーザー・モジュール(12)によって提供され、少なくとも一部が該ユーザー・モジュール(12)のプロセッサー・ユニット(50)によって実行される復号化機能(66)を用いて実行する
ことを特徴とする方法。」

2.引用発明と周知技術
a.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された欧州特許出願公開第1107627号明細書(以下、「引用例」という。)には、「A method for protecting user data stored in memory of a mobile communication device, particularly a mobile phone」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「[0008]Further, data stored in a way dependent on the correct SIM-data can/may be ciphered. Two "passwords" have/may have to be correct user controlled passwords and/or SIM dependent passwords. The data can be ciphered with SIM dependent keys or other keys.」(明細書第2頁第1欄49行-53行)
(当審仮約)「[0008]さらに、正しいSIMデータに依存した方法で記憶されたデータは、暗号化され得る/されてもよい。2つの“パスワード”は正しいユーザー制御パスワードおよび/またはSIM依存パスワードである必要があり/必要があっても良い。データはSIM依存キーあるいはその他のキーで暗号化される。」

イ.「[0025]As reference signs in the Fig.1 10 denotes an electrical device, 11 a memory access means implemented in hardware or software, 12 a password controlled by the user, 13 a user data storage like FLASH disc, EEPROM, etc., 14 an MMI (man-machine-interface, 20 a SIM card, 21 an access key generation means, 22 SIM-data stored in SIM card 20 like IMSI,SIM serial number, etc., 30 an output line for communicating user data out of the electrical device 10 in coded or decoded form, 31 an input line for communicating in user data the electrical device 10 in coded or decoded form, 32a line for transferring user data for decoding or encoding, 33 a line for transferring user data coded or decoded, 34 an output line of an access key generation means 21 to be used as input to the memory access means 11, 35 a user controlled password signal line, 36 a line for transferring SIM-data like the SIM serial number, etc. (this store can be outside the control of the user), and 37 a signal line for transferring a user controlled password signal.」(明細書第3頁第3欄19行-38行)
(当審仮訳)「[0025]図1に参照されるように、10は電気装置、11はハードウェアもしくはソフトウェアによるメモリーアクセス手段、12はユーザによりコントロールされるパスワード、13はフラッシュディスクやEEPROMなどのユーザーデータ記憶装置、14はMMI(マンマシンインターフェース)、20はSIMカード、21はアクセスキー生成手段、22はIMSI、SIMシリアル番号など、SIMカード20に記憶されるSIMデータ、30は符号化されたもしくは復号化された形で電気装置10からユーザーデータを送信する出力ライン、31は符号化されたもしくは復号化された形で電気装置10にユーザーデータを受信する入力ライン、32は符号化もしくは復号化のためにユーザーデータを転送する信号ライン、33は符号化もしくは復号化されたユーザーデータを転送する信号ライン、34はアクセスキー生成手段21からの出力ライン、35はユーザによりコントロールされるパスワードの制御ライン、36はSIMシリアル番号などのようなSIMデータを転送する信号ライン(この記憶手段はユーザーの制御外であり得る)、そして37はユーザによりコントロールされるパスワード信号を転送する制御ラインを表す。」

ウ.「[0027]In case that both numbers are identical, i.e. the user is listed and the password is correct, the SIM-data stored in the SIM card 20 is read out and used as the basis for an access key to provide access to the user data stored in the user data memory 13 of the mobile communication device 12.The read out SIM-data stored in the memory area 22 of the SIM card 20 is used as a basis for an access key to a coding/decoding algorithm within the memory access means 11 for coding/decoding the user data.」(明細書第3頁第3欄47行-56行)
(当審仮約)「[0027]両方の番号が一致するとき、すなわち、ユーザがリストされ、パスワードが正しいとき、SIMカード20に記憶されたSIMデータ22が読み出され、移動通信装置12のユーザーデータ記憶装置13に記憶されたユーザーデータへアクセスするためのアクセスキーの基礎として使われる。SIMカード20の記憶領域22に記憶され、読み出されたSIMデータは、ユーザーデータを符号化/復号化するためのメモリーアクセス手段11内の符号化/復号化アルゴリズムへのアクセスキーの根拠として使われる。」

エ.「[0029]The access key for the memory access means is either SIM-data stored in the memory area 22 of the SIM-card 20 or may be generated by the access key generation algorithm 21 on the basis of SIM-data read out via line 36. The generated access key is supplied to the memory access means 11 via line 34.
・・・(中略)・・・
[0030]The identification number input by the user is either a personal identification number known to the user or a personal unblocking code PUC. The coding/decoding algorithm of memory access means 11 is either stored in a special storage area of the user data memory 13 or preferably stored inthe SIM card 20.」(明細書第3頁第4欄2行-22行)
(当審仮約)「[0029]メモリーアクセス手段へのアクセスキーは、SIMカード20の記憶領域22に記憶されたSIMデータか、あるいは、ライン36を介して読み出されたSIMデータを基礎にしてアクセスキー生成アルゴリズム21によって生成されても良い。生成されたアクセスキーはライン34を介してメモリーアクセス手段11に供給される。
・・・(中略)・・・
[0030]ユーザーによって入力されるID番号はユーザーが知っている個人ID番号か、または、個人解除コードPUCである。メモリーアクセス手段11の符号化/復号化アルゴリズムは、ユーザーデータ記憶装置13の特別な記憶領域か、または、好ましくはSIMカード20に記憶される。」

オ.「[0033]User data can be protected by running the data through the coding/decoding means 11, either by taking existing data from the user data storage 13, coding it and then returningit to the user data storage 13 or by coding new data before storing it.
[0034]The coding/decoding means 11 can use an algorithm, like GEA(e.g. GSM GPRS enciphering algorithm, GSM 01.61, if ever allowed), any simple random number generator with the key as seed, etc.」(明細書第3頁第4欄33行-41行)
(当審仮約)「[0033]ユーザーデータ記憶装置13から既存のデータを取り出して符号化し、これをユーザーデータ記憶装置13に返すか、または、新しいデータを記憶する前に符号化することにより、ユーザーデータは符号化/復号化手段11にデータを通すことで保護される。
[0034]符号化/復号化手段11は、GEA(例えば、許可されるなら、GSM GPRS暗号化アルゴリズム、GSM01.61)、キーを種とする単純な乱数生成器、等のアルゴリズムを使用できる。

カ.「[0042]The protected data is accessed either directly or through an application and is protected by more than an access key generated by the SIM card, i.e. the user data is further protected by the user name and by the user password.」(明細書第4頁第5欄13行-17行)
(当審仮約)「保護されたデータは直接またはアプリケーションを通してアクセスされ、SIMカードによって生成されるアクセスキー以外のものでも保護される。すなわち、ユーザーデータはさらにユーザー名とユーザーパスワードで保護される。」

キ.「1. A method for protecting user data stored in a memory of a mobile communication device, particularly a mobile phone, comprising the following steps:
inputting an identification string; and
associating an internal access key with said identification string to provide access to corresponding user data stored in the user data memory (13) of the mobile communication device (10).」(明細書第4頁第5欄47-57行)
(当審仮約)「1.以下のステップからなる、移動通信装置、特に、移動電話の記憶装置に記憶されたユーザーデータを保護する方法:
ID文字列を入力し;そして
内部のアクセスキーを上記ID文字列に関連付けて、上記移動通信装置(10)のユーザーデータ記憶装置(13)に記憶された対応するユーザーデータへのアクセスできるようにする。」

ク.「3. The method according to claim 1 or 2, wherein said access key provides access to a coding/decoding algorithm(11) for coding/decoding the user data.」(明細書第4頁第6欄5-7行)
(当審仮約)「3.上記アクセスキーは、ユーザーデータを符号化/復号化するための符号化/復号化アルゴリズムへのアクセスを可能にする、上記請求項1または2に係る方法。」

ケ.「12. The method according to one of the preceding claims 2 to 11, wherein the coding/decoding algorithm is stored in the SIM-card (20).」(明細書第4頁第6欄49-51行)
(当審仮約)「12.符号化/復号化アルゴリズムはSIMカード(20)に記憶されている、上記請求項2乃至11に係る方法。」

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
・上記電気装置10は移動通信端末であり(発明の名称、摘記事項ウ.、キ.)、該電気装置10のユーザーデータ記憶装置13はユーザーデータを格納しており(摘記事項オ.)、
・保護されたデータはアプリケーションを通してアクセスされ(摘記事項カ.)、また、該保護されたデータが上記ユーザーデータであることは自明であるから、上記引用例にはユーザーデータにアクセスする方法が記載されていると言え、
・上記電気装置10は、ユーザーデータ記憶装置13を有し、出力ライン34と制御ライン35を介してSIMカード20に接続されており(摘記事項イ.)、
・上記ユーザデータは符号化されてユーザーデータ記憶装置13に記憶されいる(摘記事項オ.)が、この符号化は暗号化とも言い得(摘記事項ア.)、
・上記ユーザーデータの符号化/復号化アルゴリズムがSIMカード20に記憶され(摘記事項エ.、ケ.)、該符号化/復号化アルゴリズムはSIMカード20で生成されたアクセスキーによりアクセス可能となり(摘記事項ク.)、また、このようなアクセスはアクセス操作により可能となることは自明であり、

以上を総合すると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
「移動通信端末にユーザーデータを格納し、該移動通信端末の該ユーザーデータにアクセスする方法であって、
アプリケーションが前記ユーザーデータにアクセスし、
前記移動通信端末が、ユーザーデータ記憶装置を有し、出力ラインと制御ラインを介してSIMカードに接続されており、前記ユーザーデータを、暗号化された形で前記移動通信端末のユーザーデータ記憶装置に格納し、
アクセス操作において、前記ユーザーデータの復号を、SIMカードによって提供される復号化アルゴリズムを用いて実行する方法。」

b.周知技術
例えば、原審の拒絶理由通知に先行技術文献として記載された特開2001-16325号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項コ.およびサ.が記載されており、また、特開平9-84101号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項シ.が記載されており、また、特開2001-217925号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項ス.が記載されている。

コ.「【0033】図2において、201はメモリカード102内のシステムバスに接続されている各デバイスの制御を行うコントローラである。202はメモリ205に対し、再生、消去、記録、または初期化を行うメモリ制御手段である。203はメモリカードインタフェース207を介して転送された電話番号から生成固有IDを生成する固有ID生成手段である。204は、メモリ205の固有ID格納部301に記録されている記録固有IDと、固有ID生成手段203で携帯電話機の電話番号に基づいて生成した生成固有IDとを比較する固有ID判定手段である。固有ID判定手段204における比較結果は、メモリカードインタフェース207を介して表示インタフェース214に転送され、表示手段104にて表示される。」(第5頁第7欄8-21行)

サ.「【0040】先ず、再生時について説明する。入力手段103により再生指令があった場合、該再生指令はキーインタフェース210を介して、CPU208へと伝えられる。該再生指令を受けたCPU208は、メモリカードインタフェース207を介して、メモリカード102に内蔵のコントローラ201に対し再生指令を送る。
【0041】コントローラ201はメモリ制御手段206に対し固有IDを読み出すよう指令し、メモリ制御手段202は、メモリ205の固有ID格納部301から記録固有IDを、暗号化コンテンツキー格納部302から暗号化コンテンツキーを読み出し、復号手段206に供給する。コントローラ201は復号手段206に対しコンテンツキーの復号開始を指令し、復号手段206は、読み出した記録固有IDを鍵として暗号化コンテンツキーからコンテンツキーを復号する。コンテンツキーを復号した後、復号手段206は、コンテンツキーの復号が行えたか行えなかったかをコントローラ201へと伝える。
【0042】復号手段206でコンテンツキーの復号が行えた場合、コントローラ201はメモリ制御手段202に対しメモリ205の暗号化データ格納部303から暗号化データを読み出すように指令すると共に、復号回路206に対し、該読み出した暗号化データと復号したコンテンツキーによりデータを復号するよう指令する。復号されたデータはCPU208の指示に従い、音声データであれば音声ドライバ211にて音声として再生され、音楽データであれば再生手段215にて音楽として再生され、送受話器213またはイヤホンジャック212へ出力される。また、文字データまたは画像データであれば表示インタフェース214を介し、表示手段104へと出力される。」(第6頁第9欄3-33行)

シ.「【0003】ここで、図2に基づいてSIMカードを使用する従来の移動電話機1の動作について説明する。
【0004】同図において、上記SIMカード2本体はコネクタ4を介して外部装置(移動電話機)1と接続される。この移動電話機1は、コネクタ5を介して蓄電池(ΒATT)3と接続され、電源の供給を受ける。また、コネクタ4には電源(PWW)線12の端子、入出力シリアルデータ(Ι/ΟDATA)線13の端子、データの同期を取るクロック(CLΚ)線14の端子、SIM-CPU6を初期状態とするリセット(RST)線15の端子、及びグランド(GND)線16の端子が収納されている。
【0005】このうち、線13、14、15の各端子はSIMカード2の演算素子(SIM-CPU)6に接続され、外部装置1との間で、データの送受を行う。このSIM-CPU6は、それぞれアドレスバス17及びデータバス18によって、プログラムROM7及び電気的にデータの書き込み、消去が可能なメモリ(EEPROM)8に接続され、外部装置1からの命令に従って外部装置1から受信したデータを書き込み、上記ROM7やEEPROM8に記憶されているデータの送信を制御する。SIM-CPU6は、移動電話機1内のメインプロセッサである演算素子(M-CPU)9からΙ/ODATA線13を介して送られてくる命令を受信すると、ROM7内の所定のプログラムで動作して、EEPRΟM8内の情報をΙ/ΟDATA線13を介してM-CPU9へ転送したり、また受信したデータをEEPRΟΜ8内へ格納する。」(第2頁第2欄8-35行)

ス.「【0034】図4は、SIMカード15の電気的構成を示す機能ブロック図である。SIMカード15は、CPU(カード側制御手段)17,システムコントロールロジック18,ROM19,RAM20,EEPROM(記憶手段)21及びI/Oポート(インターフェイス部)22等を内蔵している。
【0035】ROM19には、CPU17の制御プログラムが記憶されており、書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM21には例えば、カード製造番号(或いは、カードを一意的に定める通し番号),アクセス認証番号(所謂、電話番号),パスワード,SIM保有者(ユーザ)の情報(フリー領域)などが記録されている。尚、EEPROM21に記憶されているこれらの情報をまとめてID情報と称する。但し、上記は一例であり、ID情報は、通話を行うのに必要とされる最低限の情報であれば良い。また、RAM20は、ワークエリアとして使用される。
【0036】CPU17は、システムコントロールロジック18を介して上記のメモリ19?21にアクセスすると共に、シリアルポートであるI/Oポート22を介して外部(自動車電話装置1)との間で通信を行うようになっている。
【0037】即ち、自動車電話装置1のコントローラ9は、コネクタ13及びカードリーダ14を介してSIMカード15のI/Oポート22に接続されるようになっている。カードリーダ14は、コントローラ9とSIMカード15との間のインターフェイスであり、例えば、コントローラ9が、SIMカード15にアクセスする場合のデータをパラレル/シリアル変換するように構成されている。
【0038】SIMカード15のCPU17は、コントローラ9より発行される制御コードを、カードリーダ14及びI/Oポート22等を介して受信すると、その制御コードに応じて必要なデータをEEPROM21より読み出してコントローラ9側に転送するようになっている。
【0039】そして、コントローラ9は、通話に先立って上記ID情報を無線機3を介して基地局側に送信する。すると基地局側では、送信されたID情報の照合を行い、その照合の結果問題がなければ、自動車電話装置1に対して通話を許可する。コントローラ9は、基地局によって通話が許可されると、ユーザが所望する通話先との間に通話回線を確立するための手続きを行い、通話を可能とするようになっている。」(第5頁第8欄37行-第6頁第9欄30行)

上記周知例1の「コントローラ201」、上記周知例2の「SIM-CPU6」、上記周知例3の「CPU17」は、いずれも、モバイル機器に接続される固有IDを備えたカードに設けられ、該カード内の各種デバイスの制御を行うものであって、プロセッサー・ユニットと言い得るものであるから、上記周知例1?3に開示されているように、「モバイル機器に接続される固有IDを備えたカードにプロセッサー・ユニットを設けること」はモバイル機器の技術分野における周知技術である。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、
・引用発明の「移動通信端末」、「ユーザーデータ」、「ユーザーデータ記憶装置」は、それぞれ、本願発明の「モバイル機器(10)」、「ユーザー・データ(48)」、「デバイス・メモリ(38)」に相当し、
・引用発明の「アプリケーション」がアプリケーションプログラムであることは自明であるから本願発明の「アプリケーション・プログラム」に相当し、また、移動体端末がこのアプリケーションプログラムを実行することも自明であり、
・引用発明の「ユーザーデータにアクセス」することは、本願発明の「ユーザー・データ(48)を処理」することに含まれ、
・引用発明の「SIMカード」は、ユーザー固有の番号を有した単体のモジュールであるから、本願発明の「ユーザー・モジュール(12)」に相当するものと認められ、
・引用発明の「出力ラインと制御ライン」は、移動通信端末とSIMカードを接続して電気信号を伝送するための部材であるから、本願発明の「インタフェース(14)」に相当するものと認められ、
・引用発明の「暗号化された形で」と「復号」は、それぞれ、本願発明の「少なくとも一部が暗号化された形で」と「少なくとも復号」に含まれ、
・引用発明の「復号化アルゴリズム」は復号を行うための機能と言えるから、本願発明の「復号化機能(66)」に相当するものと認められ、

以上を総合すると、両者は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「モバイル機器にユーザー・データを格納し、該機器の該データにアクセスする方法であって、
前記モバイル機器がアプリケーション・プログラムを実行し、該アプリケーション・プログラムが前記ユーザー・データを処理し、
前記モバイル機器が、デバイス・メモリを有し、インタフェースを介してユーザー・モジュールに接続されており、前記ユーザー・データを、少なくとも一部が暗号化された形で前記モバイル機器のデバイス・メモリに格納し、
アクセス操作において、前記ユーザー・データの少なくとも復号を、前記ユーザー・モジュールによって提供される復号化機能を用いて実行する方法。」

(相違点)
ユーザー・データの復号を行う復号化機能に関し、本願発明では「少なくとも一部が該ユーザー・モジュールのプロセッサー・ユニットによって実行される」のに対し、引用発明ではどの手段で実行しているのか不明である点。

4.検討
そこで、上記相違点つき以下に検討する。
上記「2.引用発明と周知技術」の項中の「b.周知技術」の項に記したように、「モバイル機器に接続される固有IDを備えたカードにプロセッサー・ユニットを設けること」はモバイル機器の技術分野における周知技術であるところ、引用発明の「SIMカード」も上記周知技術の「モバイル機器に接続される固有IDを備えたカード」に他ならないうえ、引用発明の「SIMカード」のアクセスキー生成手段21はSIMデータを基礎にしてアクセスキーを生成しており(摘記事項エ.)、何らかの演算手段を当然に備えていると認められるから、上記引用発明のSIMカードにもプロセッサー・ユニットを設け、SIMカードによって提供される復号化機能の少なくとも一部を該プロセッサー・ユニットによって実行させるように限定することは、上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、本願発明が奏する効果も引用発明および周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-28 
結審通知日 2010-10-05 
審決日 2010-10-18 
出願番号 特願2003-550529(P2003-550529)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 勝広  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 新川 圭二
高野 洋
発明の名称 モバイル機器およびユーザー・モジュールへのデータの格納およびアクセス  
代理人 佐久間 剛  
代理人 柳田 征史  

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