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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1233099
審判番号 不服2009-14025  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-06 
確定日 2011-03-04 
事件の表示 平成11年特許願第154697号「球状ベアリング表面を有するベアリング組立体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月11日出願公開、特開2000- 9137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月2日(パリ条約による優先権主張1998年6月4日、米国)の出願であって、平成21年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年8月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、平成18年6月2日付け手続補正、及び平成21年1月9日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 円筒形孔を持つ外側ハウジングと、外側ベアリングとを有し、該外側ベアリングは、上記外側ハウジングの上記円筒形孔に係合する円筒形外面、フィラメント巻きファイバガラス/エポキシ樹脂マトリックスよりなる外部分、およびPTFE織布よりなり、球状の内向きベアリング表面を持つ内部分を有している外側非回転副組立体と;上記外側ベアリングの上記球状の内向きベアリング表面に係合する球状の外向きベアリング表面により構成される外面と、移動可能な部材を受入れるようになっている円筒形内孔とを有する内側の可動副組立体と;を備えたことを特徴とするベアリング組立体。
【請求項2】 上記外側ベアリングは、その円筒形外面の第1部分、およびその球状の内向きベアリング表面の第1部分を有する第1ベアリングセグメントと、上記第1ベアリングセグメントと間隔を隔てた関係で位置決めされており、且つ上記外側ベアリングの上記円筒形外面の第2部分、および上記外側ベアリングの上記球状の内向きベアリング表面の第2部分を有する第2ベアリングセグメントとを有していることを特徴とする請求項1に記載のベアリング組立体。
【請求項3】 上記第1および第2ベアリングセグメントはそれらの間に上記内側ベアリングの上記球状外向きベアリング表面まで延びる空間を構成しており、上記外側ハウジングは外面と、上記空間と上記外面との間に連通する潤滑導管とを有していることを特徴とする請求項2に記載のベアリング組立体。
【請求項4】 上記外側ハウジングに対する上記外側ベアリングの軸線方向移動を防ぐための手段を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のベアリング組立体。
【請求項5】 上記外側ハウジングの上記円筒形孔は軸線、および軸線方向に間隔を隔てた第1および第2端部を有しており、上記ベアリング組立体は更に、上記外側ハウジングの上記円筒形孔を閉じ、且つ上記外側ハウジングに対する上記外側ベアリングの軸線方向移動を防ぐために、上記円筒形孔の上記第1および第2端部に隣接して且つ適所に上記外側ハウジングにそれぞれ固定された第1および第2カバーを有していることを特徴とする請求項1に記載のベアリング組立体。
【請求項6】 上記外側ハウジングの上記円筒形孔の第1および第2端部はねじになっており、上記第1および第2カバーは、上記外側ハウジングの上記円筒形孔の第1および第2ねじ端部とそれぞれ螺合される環状部材であることを特徴とする請求項5に記載のベアリング組立体。」

3.本願発明1について
(1)本願発明1は、上記2.に記載したとおりである。
(2)引用例
2.引用例
独国特許出願公開第2915088号明細書(以下、「引用例」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。なお、括弧内の日本語は、当審における翻訳である。
(あ)「1.Lagerelement mit … beaufschlagt ist.(1.円筒状部材と、これを包囲する環状部材とを備え、該環状部材に油圧媒体が持続的に作用する、軸受エレメントであって、前記油圧媒体で衝撃負荷(beaufschlagen)される空洞(9、11)を有する圧力要素(8、10)が前記環状部材(5、6)に当接することを特徴とする、軸受エレメント。)」(請求項1)
(い)「3.Lagerelement nach … Halbschale anliegt.(3.前記環状部材が球状の内面を有する軸線方向に移動可能な2つのハーフシェル(5、6)から形成されることと、前記圧力要素が2つのリング(8、10)から形成され、該2つのリングのそれぞれがハーフシェルの外側端面に当接することとを特徴とする、玉部材が着座するボルトを円筒状部材として有する球状の回転不可能な軸受の形態での、請求項1または2に記載の軸受エレメント。)」(請求項3)
(う)「Das Lagerelement eignet sich … benutzt werden.(この軸受エレメントは、特に、油圧パルスシリンダに接続するのに適しており、地震シミュレーションに利用される試験台に取り付けたり、揺れ運動、縦揺れ運動、及び回転運動と同時に衝突、ショック、及びバイブレーションによる任意の影響をシミュレーションするために利用される振動台に取り付けたりすることができる。)」(第3ページ第29?34行。行数はページ左側の数字による。以下同様。)
(え)「Unter … axial vorgespannt.(「回転不可能な」軸受とは、内側のボルトが回転しないことと理解される。球形運動は、玉部材、すなわち外側ハーフシェルを中心にして2つの自由度で行われる。本発明を、軸受エレメントを部分的に切断した側面図を示す図面をもとにして例示的に説明する。軸受エレメントは、接続板1と、フォークヘッドのフォーク2とからなり、この場合、フォーク2にはボルト3が固定的に支持されている。ボルト3には、球形凸形の外面を有する玉部材4が設けられている。玉部材4は、相補的な球形凹形の内面を有するハーフシェル5及び6により両側で支持されている。これらの内面は、例えばポリテトラフルオロエチレンや、ガラス繊維強化プラスチックまたは軸受合金といった自己潤滑性複合材料の層7で覆われている。ハーフシェル5及び6は、接続板1の孔14内に配置され、接続板1の内ネジ12及び13に螺入された2つのネジ付きリング8及び10によって側方で軸線方向に予荷重がかけられている(vorgespannt)。)」(第4ページ第8?30行参照)
以上の記載事項及び図面からみて、引用例には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。
「孔14を持つ接続板1と、ハーフシェル5及び6とを有し、該ハーフシェル5及び6は、上記接続板1の上記孔14に係合する外面、外部分、及びポリテトラフルオロエチレン等の自己潤滑性複合材料の層7よりなり、球形凹形の内面を持つ内部分を有している外側副組立体と;上記ハーフシェル5及び6の上記球形凹形の内面に係合する球形凸形の外面を有する玉部材4と、玉部材4が設けられるボルト3とからなる内側の副組立体と;を備えた軸受エレメント。」
(3)対比
本願発明1と引用例発明とを対比すると、後者の「接続板1」は前者の「外側ハウジング」に相当し、以下同様に、「ハーフシェル5及び6」は「外側ベアリング」に、「球形凹形の内面」は「球状の内向きベアリング表面」に、「球形凸形の外面」は「球状の外向きベアリング表面により構成される外面」に、「軸受エレメント」は「ベアリング組立体」に、それぞれ相当する。
以上より、本願発明1の用語に倣って整理すると、両者は、
「孔を持つ外側ハウジングと、外側ベアリングとを有し、該外側ベアリングは、上記外側ハウジングの上記孔に係合する外面、外部分、およびPTFEよりなり、球状の内向きベアリング表面を持つ内部分を有している外側副組立体と;上記外側ベアリングの上記球状の内向きベアリング表面に係合する球状の外向きベアリング表面により構成される外面を有する内側の副組立体と;を備えたベアリング組立体。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願発明1は、「外側ハウジング」の「孔」、及び「外側ベアリング」の「外面」が「円筒形」であるのに対して、引用例発明は、「接続板1」の「孔」及び「ハーフシェル5及び6」の「外面」の形状が不明である点。
[相違点2]
本願発明1の「外側ベアリング」は、「フィラメント巻きファイバガラス/エポキシ樹脂マトリックスよりなる外部分、およびPTFE織布よりなり、球状の内向きベアリング表面を持つ内部分を有している」のに対して、引用例発明の「ハーフシェル5及び6」は、「外部分、及びポリテトラフルオロエチレン等の自己潤滑性複合材料の層7よりなり、球形凹形の内面を有している」にすぎない点。
[相違点3]
本願発明1の「外側」「副組立体」が「非回転」であり、「内側」の「副組立体」が「移動可能な部材を受入れるようになっている円筒形内孔」を有し、「可動」であるのに対して、引用例発明は、「外側副組立体」が「非回転」かどうか不明であるとともに、「内側の副組立体」が「移動可能な部材を受入れるようになっている円筒形内孔」を有するものでなく、「可動」かどうか不明である点。
(4)判断
(4-1)相違点1について
引用例発明の「接続板1」の「孔」及び「ハーフシェル5及び6」の「外面」の形状は、軸受エレメントとしての用途や所要性能を考慮して適宜設計する事項にすぎず、「円筒形」とすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。
また、引用例の「ハーフシェル5及び6は、接続板1の孔14内に配置され、接続板1の内ネジ12及び13に螺入された2つのネジ付きリング8及び10によって側方で軸線方向に予荷重がかけられている」(上記(え)参照)の記載、「ハーフシェル5及び6」が「球形凹形の内面」を有するものであること、及び図面の記載からみると、引用例発明の「接続板1」の「孔」及び「ハーフシェル5及び6」の「外面」の形状は、実質的に「円筒形」であるということができる。
(4-2)相違点2について
引用例発明の「ハーフシェル5及び6」の各部の材質・構造は、所要の性能、製造の作業性等を考慮して適宜設計する事項にすぎない。
ここで、米国特許第3,700,295号明細書(特に、第3欄第11?14行、第3欄第60行?第4欄第14行、第4欄第34行?第6欄第46行)には、(a)ボールソケット軸受の軸受組立体がボール11、及びアウタレースないしソケット12からなり、ソケット12がハウジング13内に配置されること、(b)アウタレースないしソケット12は、ガラス繊維15で強化されたエポキシ樹脂からなる外側部材と、スリーブ26形状に織られたファブリック16からなる内側部材とを有すること、(c)アウタレースないしソケット12は、ガラス繊維の平行ローブからなるテープ30が巻かれて形成されること、及び(d)ファブリック16の縦ヤーン24は主として「テフロン」のような低摩擦材であることが示されている。このように、軸受組立体のアウタレースないしソケットの外側部分を実質的に「ファイバガラス/エポキシ樹脂マトリックスよりなる」ものとし、内側部分を「PTFE」を含む「織布」よりなるものとすることは、周知であると認められる。
技術分野の共通性ないし関連性からみて、引用例発明の「ハーフシェル5及び6」の材質・構造として上記周知の事項を適用することは、上記のように所要の性能、製造の作業性等を考慮して当業者が容易に想到し得たものと認められる。ただ、上記の周知事項が「フィラメント巻き」であるかどうかは必ずしも明らかではないが、どのような「巻き」とするかは製造の作業性等に応じて適宜採用される設計的事項にすぎない。この点についてはまた、上記の米国特許第3,700,295号明細書には、「Tape 30 consists of a number of parallel roves 32 of glass filaments (15) and …」(第4欄第40及び41行)、「The winding of tape 30 should proceed at a helix angle so that …」(第5欄第26及び27行)と記載されており、これらの記載等からみると、「フィラメント巻き」という事項が実質的に記載ないし示唆されているということもできる。
以上のようにしたものは、実質的にみて、相違点2に係る本願発明1の上記事項を具備するということができる。
(4-3)相違点3について
引用例発明のような軸受エレメントにおいて、相対的に運動する二部材のうちのどちら側を「非回転」部材とし、どちら側を「可動」部材として使用するかは、用途、使用態様等に応じて適宜設計する事項にすぎない。引用例発明において「外側副組立体」を「非回転」とし、「内側の副組立体」を「可動」とすることは、上記のように用途、使用態様等に応じて当業者が容易に想到し得たものと認められる。
また、一般に、球面ベアリング装置の内側ベアリング部材に「移動可能な部材を受入れるようになっている内孔」を備えることは、例えば、特開平8-164860号公報(段落番号【0014】、【0015】、【図2】)、特開平4-19082号公報(第3ページ左下欄第14行?右下欄第4行、第2図))等に示されているように周知であり、引用例発明の「ボルト3」に「移動可能な部材を受入れるようになっている円筒形内孔」を設けること、ないしは、「ボルト3」を、「移動可能な部材を受入れるようになっている円筒形内孔」を有する部材とすることは、引用例発明の軸受エレメントの実施化にあたってその用途や使用態様等に応じて適宜設計変更する程度のことにすぎない。
そして、本願発明1による作用効果は、引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が予測し得る程度のものである。
(5)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

以上に関して、審判請求人は審判請求の理由において「(2)上記拒絶査定の備考に示された審査官の認定、見解からわかるように、本願の外側ベアリングの外部分が、フィラメント巻きファイバガラス/エポキシ樹脂マトリックスよりなることの正確な認定はなされておらず、かかる不正確な認定に基づいて、『補正後の請求項1-6に係る発明は、引用文献1(登録実用新案第3050926号公報)、引用文献2、及び引用文献3に記載されたもの並びに上記周知技術から、当業者が容易に想到し得たものと認められる。』とすることは著しく妥当性を欠くものである。」と主張するが、どのような「巻き」とするかは製造の作業性等に応じて適宜採用される設計的事項にすぎないと認められること、また、上記の米国特許第3,700,295号明細書には「フィラメント巻き」という事項が実質的に記載ないし示唆されているということもできることは、上記のとおりである。
なお、ここでの「引用文献2」が本審決の「引用例」である。「引用文献1」及び「引用文献3」は、本審決では特に援用していない。この点について、平成20年10月9日付け拒絶理由の「備考」には「引用文献1-3には、ハウジングの円筒形孔に係合する外側のベアリングを有する外側の非回転副組立体と、外側のベアリングの内向きベアリング表面に係合する球状の外向きベアリング表面により構成される外面を有する内側の可動副組立体とを備えたベアリング組立体が記載されている。そうしてみると、本願請求項1に係る発明は、引用文献1-3に記載されたものと同一であるか、又は、引用文献1-3に記載されたものから、当業者が容易に想到し得たと認められる。」と記載されており、引用文献1?3は該技術事項が示されている文献として重複的に列挙されているのであって、特に引用文献1?3の組み合わせを拒絶の理由としているものではない。また、平成21年3月30日付け拒絶査定の「備考」には「…そうしてみると、補正後の請求項1-6に係る発明は、引用文献1(登録実用新案第3050926号公報)、引用文献2,及び引用文献3に記載されたもの並びに上記周知技術から、当業者が容易に想到し得たと認められる。」と記載されており、ここでも、引用文献1?3を引用した趣旨は上記の拒絶理由の場合と同様である。

4.結語
以上のとおり、本願発明1は、引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明1が特許を受けることができないものである以上、本願発明2?6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-01 
結審通知日 2010-10-07 
審決日 2010-10-21 
出願番号 特願平11-154697
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 裕  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 大山 健
常盤 務
発明の名称 球状ベアリング表面を有するベアリング組立体  
代理人 小川 信夫  
代理人 中村 稔  
代理人 大塚 文昭  
代理人 村社 厚夫  
代理人 宍戸 嘉一  

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