• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1233110
審判番号 不服2009-15457  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-24 
確定日 2011-03-02 
事件の表示 特願2004-263544「基板スロット形成」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日出願公開、特開2005- 88587〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成16年9月10日の出願(パリ条約による優先権主張2003年9月12日、米国)であって、平成19年9月6日付け及び平成20年8月19日付けで手続補正がなされ、平成21年4月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月24日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。
さらに、審査官により作成された前置報告書について審尋がなされたところ、審判請求人から平成22年9月7日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成21年8月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年8月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 第1の基板表面と第2の基板表面とを有する基板に、形態的特徴部を形成することと、
前記形成することと組み合わせて前記基板を貫くスロットを形成するのに十分な基板材料を除去するために、前記基板に沿って粒子噴射ノズルを移動させることと、
を含み、
前記形成することおよび前記移動させることは、前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きいように構成することを特徴とするスロット形成方法。」
から
「 第1の基板表面と第2の基板表面とを有する基板に、形態的特徴部を形成することと、
前記形成することと組み合わせて前記基板を貫くスロットを形成するのに十分な基板材料を除去するために、前記基板に沿って粒子噴射ノズルを移動させることと、
を含み、
前記形成することおよび前記移動させることは、前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの長軸方向において互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きいように構成することを特徴とするスロット形成方法。」
に補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きい」の「互いに略対向する第1および第2の端領域」に関して、「長軸方向において」互いに略対向する点を限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-231262号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1-a)「【請求項1】対向する第1の表面(610)および第2の表面(612)を有する基板(606)にスロット(604)を形成する方法であって、
第1のトレンチ(802)を形成するのに十分なレーザ切削部を、前記基板(606)の前記第1または前記第2の表面のいずれかを通して形成することと、及び前記レーザ切削部と組み合わせて、少なくともその一部が前記基板(606)を完全に貫通するスロット(604)を形成するのに有効なように、前記基板(606)の前記第1および前記第2の表面の他方を通して材料(804)を除去することとからなり、
前記スロット(604)が1より大きい、または1に等しい縦横比を有する、方法。
【請求項2】前記材料(804)を除去することが、レーザ加工、サンドドリリング、ドライエッチングおよびウエットエッチングのうちの1つまたは複数の処理からなる、請求項1に記載の方法。」

(1-b)「【0034】図8の(c)は、基板の第2の側面または表面612から形成される部分的に完成した第2のトレンチ804を示す。種々の実施形態において、そのトレンチは第2の表面を通して基板材料を除去することにより形成され得る。この例では、サンドドリリングを用いて、第2のトレンチを形成することができる。サンドドリリングは、標的とする材料が、高圧空気流システムから供給される酸化アルミニウムのような粒子によって除去される、機械的切削プロセスである。サンドドリリングは、サンドブラスト、砂研磨加工、およびサンドアブレイジョンとも呼ばれる。」

(1-c)「【0040】トレンチの寸法は、任意の所望の長さおよび/または幅の貫通するスロットを形成するように修正され得る。たとえば、スロットの長さは、穴またはバイアに類似するように十分に短くされ得る。」

(1-d)図8として、




上記摘記事項から、(1-a)の「第1のトレンチ(802)を形成するのに十分なレーザ切削部を、前記基板(606)の前記第1または前記第2の表面のいずれかを通して形成する」は、「第1のトレンチ(802)を形成するのに十分なレーザ切削部を、前記基板(606)の前記第1の表面を通して形成する」ものであり、かつ、(1-a)の「前記基板(606)の前記第1および前記第2の表面の他方を通して材料(804)を除去する」は、「前記基板(606)の前記第2の表面を通してサンドドリリングを用いて材料(804)を除去する」ものであるといえる。

以上の事項をまとめると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。

「対向する第1の表面(610)および第2の表面(612)を有する基板(606)にスロット(604)を形成する方法であって、
第1のトレンチ(802)を形成するのに十分なレーザ切削部を、前記基板(606)の前記第1の表面を通して形成することと、及び前記レーザ切削部と組み合わせて、少なくともその一部が前記基板(606)を完全に貫通するスロット(604)を形成するのに有効なように、前記基板(606)の前記第2の表面を通してサンドドリリングを用いて材料(804)を除去することとからなる、方法。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明の
「第1の表面(610)」、
「第2の表面(612)」、
「(対向する第1の表面(610)および第2の表面(612)を有する)基板(606)」、
「(前記基板(606)を完全に貫通する)スロット(604)」、
「材料(804)」、
「第1のトレンチ(802)」、
「(対向する第1の表面(610)および第2の表面(612)を有する基板(606)にスロット(604)を形成する)方法」は、それぞれ、
本願補正発明の
「第1の基板表面」、
「第2の基板表面」、
「(第1の基板表面と第2の基板表面とを有する)基板」、
「(基板を貫く)スロット」、
「基板材料」、
「形態的特徴部」、
「スロット形成方法」に相当する。

イ 刊行物1発明の「第1のトレンチ(802)を形成するのに十分なレーザ切削部を、前記基板(606)の前記第1の表面を通して形成すること」は、
本願補正発明の「形態的特徴部を形成すること」に相当する。
また、刊行物1発明の「サンドドリリングを用いて材料(804)を除去すること」とは、すなわち、「『粒子噴射ノズル』を用いて『基板材料を除去する』こと」であるから、
刊行物1発明の「前記レーザ切削部と組み合わせて、少なくともその一部が前記基板(606)を完全に貫通するスロット(604)を形成するのに有効なように、前記基板(606)の前記第2の表面を通してサンドドリリングを用いて材料(804)を除去すること」と、
本願補正発明の「前記形成することと組み合わせて前記基板を貫くスロットを形成するのに十分な基板材料を除去するために、前記基板に沿って粒子噴射ノズルを移動させること」とは、
「前記形成することと組み合わせて前記基板を貫くスロットを形成するのに十分な基板材料を除去するために、粒子噴射ノズルを用いること」で一致する。

ウ 上記ア及びイから、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「第1の基板表面と第2の基板表面とを有する基板に、形態的特徴部を形成することと、
前記形成することと組み合わせて前記基板を貫くスロットを形成するのに十分な基板材料を除去するために、粒子噴射ノズルを用いることと、
を含む、スロット形成方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]:
本願補正発明は、「前記形成することと組み合わせて前記基板を貫くスロットを形成するのに十分な基板材料を除去するために、粒子噴射ノズルを用いること」が、「前記基板に沿って粒子噴射ノズルを移動させること」であるのに対し、
刊行物1発明には、そのような特定がない点。

[相違点2]:
本願補正発明は、「前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの長軸方向において互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きいように構成する」のに対し、
刊行物1発明には、そのような特定がない点。


(3)判断
上記相違点について検討する。

(3-1)相違点1について
ア 基板材料を除去するために粒子噴射ノズル(サンドブラストノズル)を用いる際に、基板に沿って粒子噴射ノズルを移動させることは、周知の技術である(例.特開2001-334661号公報(段落【0040】、図7)、特開2000-326516号公報(段落【0014】)、特開2000-105481号公報(段落【0025】)、特開平11-198040号公報(図1)、特開平4-277625号公報(図1)、及び、特開平2-131871号公報(第3頁左上欄、第8頁左上欄)参照。)。

イ したがって、刊行物1発明において、「前記基板に沿って粒子噴射ノズルを移動させる」構成を採用することは、当業者が上記アの周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

(3-2)相違点2について
ア まず、「前記形成することと組み合わせて前記基板を貫くスロットを形成するのに十分な基板材料を除去するために、前記基板に沿って粒子噴射ノズルを移動させる」際に、「粒子噴射ノズル」の「移動」は、「第1および第2の端領域」では「停止状態」又は「低速度」であり、「中央領域」では「一定速度」又は「高速度」と考えられるから、この速度差によって、「前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの長軸方向において互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きい」ことが当然達成されるともいえる。

イ また、スロットの幅を均一とするべく「粒子噴射ノズル」を移動させたとしても、必ずしも均一となるものではないから、「前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの長軸方向において互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きい」構成を含め、スロットの幅の変動範囲をどの程度とするかは、当業者が適宜決定できる設計的事項である。
加えて、刊行物1には、任意の所望の幅のスロットを形成できる旨、記載されている(上記摘記事項(1-c)「トレンチの寸法は、任意の所望の長さおよび/または幅の貫通するスロットを形成するように修正され得る。」参照。)。

ウ ところで、「前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの長軸方向において互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きいように構成する」点に関して、本願明細書には下記の記載がある。
『 【0049】
図7gないし図7jは、ノズル706から噴射される研磨粒子によってさらなる基板材料が除去された後の基板306dを示す。基板材料を除去して形態的特徴部を形成すること、および粒子噴射ノズルからの粒子によってさらなる基板を除去することを組み合わせることによって、スロット304dを形成する。この特定の実施形態において、第2の表面312dにおいては略均一の幅w2が維持される。他の好適な実施形態は、第2の表面312dにおいて長軸と直交して測定して、スロット端領域730、732で、中央領域734の幅w5よりもわずかに大きい幅w3、w4をそれぞれ有してもよい。先行技術では、スロット端領域730、732よりも大きい中央領域734の幅を作製した。中央領域のほうが幅が広いスロットであれば、基板上でスロット同士を互いに関してどれだけ接近して配置できるかを制限してしまう可能性がある、および/または、隣接する2つのスロットの間に延びる基板材料にひび割れ(クラッキング)が生じる結果になってしまう可能性がある。』
してみると、本願補正発明が奏する効果は、「基板上でスロット同士を互いに関して接近して配置できること」及び「隣接する2つのスロットの間に延びる基板材料にひび割れ(クラッキング)が生じないこと」といえる。

エ しかしながら、「隣接する2つのスロットの間に延びる基板材料にひび割れ(クラッキング)が生じないこと」は、2つのスロットが最も接近する部位のスロット間の距離によって決まるというべきであって、かつ、「基板上でスロット同士を互いに関して接近して配置できる」間隔が、「スロット端領域730、732(第1および第2の端領域)の幅w3、w4」に依存せず、「中央領域734の幅w5」のみに依存するとの技術常識はなく、また、そのように合理的に理解することもできない。
したがって、「前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの長軸方向において互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きいように構成する」ことによって、「基板上でスロット同士を互いに関して接近して配置できること」及び「隣接する2つのスロットの間に延びる基板材料にひび割れ(クラッキング)が生じないこと」が必ずしも達成できないことは明らかである。

オ したがって、刊行物1発明において、「前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの長軸方向において互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きい」との構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(3-3)本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1及び2によって、本願補正発明が奏する効果は、上記(3-2)で検討したとおり、格別のものではない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年8月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成20年8月19日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものであり、特に、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「 第1の基板表面と第2の基板表面とを有する基板に、形態的特徴部を形成することと、
前記形成することと組み合わせて前記基板を貫くスロットを形成するのに十分な基板材料を除去するために、前記基板に沿って粒子噴射ノズルを移動させることと、
を含み、
前記形成することおよび前記移動させることは、前記第2の表面における前記スロットを、前記スロットの互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きいように構成することを特徴とするスロット形成方法。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.2.(1-a)?(1-d)で示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から、「前記スロットの長軸方向において互いに略対向する第1および第2の端領域のほうが前記スロットの中央領域よりも幅が大きい」に関して、「長軸方向において」を削除したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
なお、請求人は、当審からの審尋への回答書において、補正の用意がある旨記載しているが、仮に補正されたとしても、進歩性を有するものとも認められないので(請求項7のリブを有する点に関して、例えば、特開平6-115075号公報参照。)、特許法が補正の時期的制限を設けていることの趣旨に鑑みて、補正の機会を設けることとはしない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-29 
結審通知日 2010-10-05 
審決日 2010-10-18 
出願番号 特願2004-263544(P2004-263544)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 尚荒巻 慎哉  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 鈴木 秀幹
桐畑 幸▲廣▼
発明の名称 基板スロット形成  
代理人 藤井 正弘  
代理人 後藤 政喜  
代理人 上野 英夫  
代理人 飯田 雅昭  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ