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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1233111
審判番号 不服2009-20030  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-19 
確定日 2011-02-28 
事件の表示 特願2000- 14587「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月24日出願公開、特開2001-198326〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年1月24日の出願であって、平成21年7月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成21年10月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、当審において、平成22年9月22日付で、平成21年10月19日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶の理由が通知され、これに対し平成22年11月9日付けで手続補正がされた。

2.本願発明
本願の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年11月9日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】遊技領域が形成される遊技盤に設けられる始動口への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な変動表示装置と、
駆動源により、遊技球を入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに状態変換可能な変動入賞装置と、
遊技盤に設けられ、前記始動口を含む入賞口への入賞を検出する入賞検出手段と、
前記入賞検出手段の出力に基づいて、遊技の進行を管理制御するための遊技情報を生成するとともに、当該遊技機に電源が供給されている状態で当該遊技機における遊技制御を行う遊技プログラムを所定時間毎に実行する演算処理部を有する遊技制御装置と、を備え、
前記遊技制御装置の演算処理部により実行される前記遊技プログラムにおいて前記変動表示ゲームの結果が特別表示結果となった場合に、前記変動入賞装置が閉状態から開状態に状態変換することで遊技者に所定の遊技価値を付与可能な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記遊技制御装置は、
前記遊技情報と、前記入賞検出手段の出力と、を検査情報として取り出すための専用の検査情報取り出し部を備え、
該遊技情報には、前記変動入賞装置の駆動源を駆動させるための駆動信号が含まれ、
前記検査情報取り出し部は、
前記遊技制御装置の回路基板に形成されたスルーホール群、若しくは配線パターンで構成されるとともに、当該遊技機の検査の際に外部の検査装置に接続可能な所定の信号端子を取付可能であり、
前記遊技制御装置の入力ポートの前段及び出力ポートの後段から信号を取り出し可能に構成され、
前記遊技制御装置の入力ポートの前段においては、前記入賞検出手段から該遊技制御装置の演算処理部に入力される信号を、該演算処理部を介さずにそのまま生データとして取り出すとともに、
前記遊技制御装置の出力ポートの後段においては、
前記遊技制御装置の演算処理部から前記変動入賞装置の駆動源へ出力される前記駆動信号を分岐させて当該出力ポートからそのまま取り出すように構成し、
前記遊技制御装置の演算処理部により実行される当該遊技機の制御を行う遊技プログラムには、前記検査情報として前記出力ポートを介して出力する信号の加工生成を行う編集処理を含ませて構成し、
前記検査情報取り出し部に、前記所定の信号端子を取り付けた状態及び前記所定の信号端子を取り外した通常遊技状態においても、所定時間毎に前記遊技プログラムを実行するようにしたことを特徴とする遊技機。」

3.特許法29条の2に対して
3-1.先願刊行物記載事項
当審の拒絶の理由で提示した本件出願の日前の特許出願である特願平11-117385号(特開2000-300766号公報として本件出願後に出願公開された。)の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0025】図1に示すように、パチンコ遊技機1は、額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。ガラス扉枠2の下部表面には打球供給皿3がある。打球供給皿3の下部には、打球供給皿3からあふれた景品玉を貯留する余剰玉受皿4と打球を発射する打球操作ハンドル(操作ノブ)5が設けられている。ガラス扉枠2の後方には、遊技盤6が着脱可能に取り付けられている。また、遊技盤6の前面には遊技領域7が設けられている。
【0026】遊技領域7の中央付近には、複数種類の図柄を可変表示するための可変表示部(特別図柄表示部)9と7セグメントLEDによる可変表示器(普通図柄表示器)10とを含む可変表示装置8が設けられている。また、可変表示器10の下部には、4個のLEDからなる通過記憶表示器(普通図柄用記憶表示器)41が設けられている。この実施の形態では、可変表示部9には、「左」、「中」、「右」の3つの図柄表示エリアがある。可変表示装置8の側部には、打球を導く通過ゲート11が設けられている。この例では、4個を上限として、通過ゲート11の玉通過がある毎に、通過記憶表示器41は点灯しているLEDを1つずつ増やす。そして、可変表示器10の普通図柄の可変表示が開始される毎に、点灯しているLEDを1つ減らす。
【0027】通過ゲート11を通過した打球は、玉出口13を経て始動入賞口14の方に導かれる。通過ゲート11と玉出口13との間の通路には、通過ゲート11を通過した打球を検出するゲートスイッチ12がある。また、始動入賞口14に入った入賞球は、遊技盤6の背面に導かれ、始動口スイッチ17によって検出される。また、始動入賞口14の下部には開閉動作を行う可変入賞球装置15が設けられている。可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされる。」

(イ)「【0030】打球発射装置から発射された打球は、打球レールを通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7を下りてくる。打球が通過ゲート11を通ってゲートスイッチ12で検出されると、可変表示器10の表示数字が連続的に変化する状態になる。また、打球が始動入賞口14に入り始動口スイッチ17で検出されると、図柄の変動を開始できる状態であれば、可変表示部9内の図柄が回転を始める。図柄の変動を開始できる状態でなければ、始動入賞記憶を1増やす。
【0031】可変表示部9内の画像の回転は、一定時間が経過したときに停止する。停止時の画像の組み合わせが大当り図柄の組み合わせであると、大当り遊技状態に移行する。すなわち、開閉板20が、一定時間経過するまで、または、所定個数(例えば10個)の打球が入賞するまで開放する。そして、開閉板20の開放中に打球が特定入賞領域に入賞しVカウントスイッチ22で検出されると、継続権が発生し開閉板20の開放が再度行われる。この継続権の発生は、所定回数(例えば15ラウンド)許容される。」

(ウ)「【0035】また、図3はパチンコ遊技機1の遊技盤を背面からみた背面図である。遊技盤6の裏面には、図3に示すように、各入賞口および入賞球装置に入賞した入賞玉を所定の入賞経路に沿って導く入賞玉集合カバー40が設けられている。入賞玉集合カバー40に導かれる入賞玉のうち、開閉板20を経て入賞したものは、玉払出装置97が相対的に多い景品玉数(例えば15個)を払い出すように制御される。始動入賞口14を経て入賞したものは、玉払出装置(図3において図示せず)が相対的に少ない景品玉数(例えば6個)を払い出すように制御される。そして、その他の入賞口24および入賞球装置を経て入賞したものは、玉払出装置が相対的に中程度の景品玉数(例えば10個)を払い出すように制御される。なお、図3には、中継基板33が例示されている。
【0036】賞球払出制御を行うために、入賞球検出スイッチ99、始動口スイッチ17およびVカウントスイッチ22からの信号が、主基板31に送られる。主基板31に入賞球検出スイッチ99のオン信号が送られると、主基板31から賞球基板37に賞球個数信号が送られる。入賞があったことは入賞球検出スイッチ99で検出されるが、その場合に、主基板31から、賞球基板37に賞球個数信号が与えられる。例えば、始動口スイッチ17のオンに対応して入賞球検出スイッチ99がオンすると、賞球個数信号に「6」が出力され、カウントスイッチ23またはVカウントスイッチ22のオンに対応して入賞球検出スイッチ99がオンすると、賞球個数信号に「15」が出力される。そして、それらのスイッチがオンしない場合に入賞球検出スイッチ99がオンすると、賞球個数信号に「10」が出力される。
【0037】図4は、主基板31における回路構成の一例を示すブロック図である。なお、図4には、賞球制御基板37、ランプ制御基板35、音声制御基板70、発射制御基板91および表示制御基板80も示されている。主基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路53と、ゲートスイッチ12、始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22、カウントスイッチ23および入賞球検出スイッチ99からの信号を基本回路53に与えるスイッチ回路58と、可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16および開閉板20を開閉するソレノイド21を基本回路53からの指令に従って駆動するソレノイド回路59と、始動入賞記憶表示器18および通過記憶表示器41の点灯/消灯を行うとともに7セグメントLEDによる可変表示器10と装飾ランプ25とを駆動するランプ・LED回路60とを含む。
【0038】また、基本回路53から与えられるデータに従って、大当りの発生を示す大当り情報、可変表示部9の画像表示開始に利用された始動入賞球の個数を示す有効始動情報、確率変動が生じたことを示す確変情報等をホール管理コンピュータ等のホストコンピュータに対して出力する情報出力回路64を含む。」

(エ)「【0042】図5は、主基板31、賞球制御基板37および表示制御基板80の試験用信号出力に関わる部分を示すブロック図である。主基板31において、各センサからの信号は、入力ポート577に入力されるとともに、試験信号出力回路71にも供給される。なお、センサとは、この実施の形態では、ゲートスイッチ12、始動口スイッチ17、カウントスイッチ23およびVカウントスイッチ22であるが、その他、主基板31に入力される各種のスイッチ情報およびセンサ出力情報を含む。
【0043】出力回路572は、CPU56から出力ポート571を介して出力された信号を賞球制御基板37に送出するドライバ回路やバッファ回路である。賞球制御基板37において、賞球制御用CPU371は、入力回路372を介して主基板31から賞球制御信号を入力する。また、入力回路373を介して各センサからの信号を入力する。ここで、センサとして、例えば、賞球モータ位置センサや払出球検出センサがある。賞球制御用CPU371は、賞球制御信号およびセンサ情報にもとづいて、出力回路374を介して賞球払出モータ97Aを駆動する。
【0044】出力回路573は、CPU56から出力ポート571を介して出力された信号にもとづいて、ランプ/LEDおよび普通図柄表示器を駆動する。ランプ/LEDとは、この実施の形態では、始動入賞記憶表示器18、通過記憶表示器41および装飾ランプ25である。
【0045】出力回路574は、CPU56から出力ポート571を介して出力された表示制御コマンドを表示制御基板80に送出する。表示制御基板80において、表示制御用CPU101は、入力バッファ105を介して表示制御コマンドを入力し、表示制御コマンドにもとづいて、出力回路109を介して可変表示部9を駆動する。
【0046】また、CPU101は、所定の試験用信号を作成して、試験信号出力回路110を介して外部に出力する。試験信号出力回路110は、各入力信号を増幅する等の処理を行って試験用信号として試験信号端子111,112に出力する。試験信号端子111,112は、試験装置からのプローブを接続可能な信号ピンや試験装置からのケーブルを接続可能なコネクタで構成される。試験信号端子111,112は表示制御基板80に実装されていてもよいし、量産時のコスト低減のため中継基板等に実装されていてもよい。試験信号出力回路110と試験信号端子111,112は、信号出力手段を構成する。
【0047】なお、主基板31において、出力回路575は、CPU56から出力ポート571を介して出力された信号に応じてソレノイドを駆動する。この実施の形態では、ソレノイドは、可変入賞球装置15を開放するためのソレノイド16と、開閉板20を開放するためのソレノイド21である。
【0048】主基板31の試験信号出力回路71は、各入力信号を増幅する等の処理を行って試験用信号として試験信号端子72?75に出力する。試験信号端子72?75は、試験装置からのプローブを接続可能な信号ピンや試験装置からのケーブルを接続可能なコネクタで構成される。試験信号端子72?75は主基板31に実装されていてもよいし、量産時の主基板31のコスト低減のため中継基板等に実装されていてもよい。」

(オ)「【0053】次いで、各種出力データの格納領域の内容を各出力ポートに出力する処理を行う(データ出力処理:ステップS6)。また、ランプタイマを1減ずる処理を行い、ランプタイマがタイムアウトしたら(=0になったら)、ランプデータポインタを更新するとともに新たな値をランプタイマに設定する(ランプタイマ処理:ステップS7)。
【0054】また、ランプデータポインタが示すアドレスのデータ、ホール管理用コンピュータに出力される大当り情報、始動情報、確率変動情報などの出力データを格納領域に設定する出力データ設定処理を行う(ステップS8)。さらに、パチンコ遊技機1の内部に備えられている自己診断機能によって種々の異常診断処理が行われ、その結果に応じて必要ならば警報が発せられる(エラー処理:ステップS9)。」

(カ)「【0093】図16は、第1の試験信号端子72の試験用信号配置例を示す説明図である。試験信号端子72に出力される各試験用信号は、図5に示された入力ポート577に入力される各種センサの信号が試験信号出力回路71に分岐された信号である。図16に示された各試験用信号において、発射球信号1,2は、図1に示された発遊技盤正面において遊技領域への球出口付近に設置されているファール球止め弁の入口および出口に設けられているセンサ(図1において図示せず)の出力信号である。また、各普通入賞口入賞信号は、各入賞口24に入賞した遊技球を検出するためのスイッチ(図1において図示せず)の出力信号である。
【0094】図17は、第2の試験信号端子73の試験用信号配置例を示す説明図である。試験信号端子73に出力される各試験用信号は、主基板31のCPU56が作成して試験信号出力回路71に出力した信号である。すなわち、CPU56が遊技制御プログラムを実行しているときに、適宜作成する信号、または試験用信号として作成された信号である。そして、試験信号端子73に出力される各試験用信号は、特別図柄および普通図柄に係る遊技状態を示す信号である。なお、図17において、内容欄の括弧付きの説明は、この実施の形態の遊技機では用いられないが、他の遊技機に対して同一の試験装置を用いることができるように、あらかじめ定義されている試験用信号である。
【0095】図18は、第3の試験信号端子74の試験用信号配置例を示す説明図である。試験信号端子74に出力される各試験用信号は、主基板31のCPU56が作成して試験信号出力回路71に出力した信号である。すなわち、CPU56が遊技制御プログラムを実行しているときに、適宜作成する信号、または試験用信号として作成された信号である。なお、試験信号端子74に出力される各試験用信号は、特に、普通図柄の変動状態を示す信号である。
【0096】図19は、第4の試験信号端子75の試験用信号配置例を示す説明図である。試験信号端子75に出力される各試験用信号は、主基板31のCPU56が作成して試験信号出力回路71に出力した信号である。すなわち、CPU56が遊技制御プログラムを実行しているときに、適宜作成する信号である。なお、試験信号端子74に出力される各試験用信号は、特に、普通図柄の変動中の表示図柄を示す信号である。」

(キ)「【0108】図22は、図17に示された試験信号端子73に出力される特別図柄大当り信号、特別電動役物作動中信号、特別電動役物開放信号および役物連続作動装置作動信号の関係を示すタイミング図である。各信号は、主基板31のCPU56によって、遊技制御中に作成される。なお、図22に示された図柄変動中信号は特別図柄に関する信号であり、後述するように、表示制御基板80から出力される。また、特別電動役物開放信号は、大入賞口が開放していることを示す信号であるが、CPU56が出力ポート571を介して大入賞口を開放するために出力する信号(ソレノイド信号)をそのような信号と見なして用いる。
【0109】上記の実施の形態では、試験信号端子73に出力される特別図柄保留1個目信号?4個目信号(始動入賞記憶表示器18の表示に対応)、普通図柄保留1個目信号?4個目信号(通過記憶表示器41の表示に対応)、および試験信号端子75に出力される1桁目図柄データbit0?bit7(可変表示器10の表示に対応)は、主基板31のCPU56によって作成された。しかし、各LEDに出力される信号を分岐して試験信号端子73,75に出力するようにしてもよい。
【0110】図23は、そのような他の実施の形態を示すブロック図である。図23に示すように、出力回路573,574から各LEDに出力される信号が分岐されて試験信号出力回路71に供給される。
【0111】このような構成では、試験用信号である特別図柄保留1個目信号?4個目信号(始動入賞記憶表示器18の表示に対応)、普通図柄保留1個目信号?4個目信号(通過記憶表示器41の表示に対応)、および試験信号端子75に出力される1桁目図柄データbit0?bit7(可変表示器10の表示に対応)は、ハードウェア信号が分岐出力されたものとなるので、主基板31のCPU56は、試験信号端子73に出力される特別図柄保留1個目信号?4個目信号、普通図柄保留1個目信号?4個目信号、および試験信号端子75に出力される1桁目図柄データbit0?bit7を作成しなくてよい。なお、このような実施の形態でも、試験信号端子に接続された試験装置から見ると、図5に示されたように構成された場合と同様の試験用信号が入力されることになる。
【0112】このように、始動入賞記憶表示器18、通過記憶表示器41および可変表示器10に対する信号を、そのまま試験用信号として使用できるのは、始動入賞記憶表示器18、通過記憶表示器41および可変表示器10に信号を出力するための出力ポートおよび駆動回路が独立に設けられているからである。始動入賞記憶表示器18、通過記憶表示器41および可変表示器10を駆動する信号を扱う出力ポートおよびLED駆動部が共用される構成がとられていると、各LEDに出力される信号を試験用信号として使用した場合に、試験者は、試験装置の表示を見ても、始動入賞記憶表示器18、通過記憶表示器41および可変表示器10が正常に動作しているのか否かを直ちに判断することができない。」

(ク)「【0210】図57は、試験信号端子111,112の各種の実現例を示す説明図である。ただし、図57に示す例では、試験信号端子111,112は、表示制御基板80上に存在する。なお、主基板31における試験信号端子72?75も同様に構成可能である。図57(A)に示す例は、パターン302上に、スルーホールを有するランド303が設けられた例である。試験装置からのプローブは、スルーホールを有するランド303に接続される。図57(B)に示す例は、試験用信号出力のためのコネクタ305を設けた例である。なお、コネクタ305に代えて信号ピンを実装してもよい。
【0211】なお、図57(A),(B)に示された各例は、試験信号端子111,112が表示制御基板80に設けられた例であるが、表示制御基板80ではなく中継基板や端子盤に設けてもよい。そして、それらの中継基板や端子盤は、量産時には取り外し可能なように構成してもよい。さらに、主としてドライバ回路からなる試験信号出力回路110も、表示制御基板80ではなく中継基板に設けてもよい。」

摘記した上記(ア)?(ク)の記載や図面等によれば、先願明細書及び図面には以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。
「遊技領域7が前面に設けられた遊技盤6に設けられた始動入賞口14に打球が入り始動口スイッチ17に検出されると、図柄の変動を開始できる状態であれば、「左」、「中」、「右」の3つの図柄表示エリアがある可変表示部9内の図柄が回転を始め、
ソレノイド21によって開閉板20が開閉する大入賞口と、
遊技盤6に設けられる各入賞口および入賞球装置に入賞した玉を検出する始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22及び入賞球検出スイッチ99と、前記始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22及び入賞球検出スイッチ99を含む検出手段の出力に基づいて、特別図柄および普通図柄に係る遊技状態を示す信号等を遊技制御プログラムを実行しているときに適宜作成するCPU56と、定期的に基本回路53にリセットパルスを与えてCPU56に遊技制御プログラムを先頭から再度実行させるための定期リセット回路66とを有する主基板31と、を備え、
可変表示部9内の図柄の回転は、一定時間が経過したときに停止し、停止時の画像の組み合せが大当り図柄の組み合わせであると、大当り状態に移行し、開閉板20が、一定時間経過するまで、または、所定個数の打球が入賞するまで開放するパチンコ遊技機1において、
前記主基板31は、
前記特別図柄および普通図柄に係る遊技状態を示す信号等と、前記始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22及び入賞球検出スイッチ99の出力と、を試験信号として取り出すための試験信号端子72,73,74,75を備え、
前記特別図柄および普通図柄に係る遊技状態を示す信号等には、特別電動役物開放信号を含み、
該試験信号端子72,73,74,75は、
主基板31のパターン上に、スルーホールを有するランドを設け、試験装置からのブローブは、スルーホールを有するランドに接続でき、
前記始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22及び入賞球検出スイッチ99からの信号は、入力ポート577に入力されるとともに、試験信号出力回路71にも供給され、
前記特別電動役物開放信号は、出力ポート571から試験信号出力回路71にも供給され、
るパチンコ遊技機1」

3-2.先願発明と本願発明との対比
先願発明の「遊技領域7」は本願発明の「遊技領域」に相当し、以下同様に、
「遊技盤6」は「遊技盤」に、
「始動入賞口14」は「始動口」に、
「打球」は「遊技球」に、
「「左」、「中」、「右」の3つの図柄表示エリアがある可変表示部9内の図柄」は「複数の識別情報」に、
「図柄が回転」は「変動表示ゲーム」に、
「可変表示部9」は「変動表示装置」に、
「ソレノイド21」は「駆動源」に、
「開閉板20が開閉する大入賞口」は「遊技球を入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに状態変換可能な変動入賞装置」に、
「各入賞口および入賞球装置」は「入賞口」に、
「入賞した玉を検出する始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22及び入賞球検出スイッチ99」は「入賞を検出する入賞検出手段」に、
「特別図柄および普通図柄に係る遊技状態を示す信号等」は「遊技の進行を管理制御するための遊技情報」に、
「遊技制御プログラム」は「遊技制御を行う遊技プログラム」に、
「定期的に基本回路53にリセットパルスを与えてCPU56に遊技制御プログラムを先頭から再度実行」は「遊技制御を行う遊技プログラムを所定時間毎に実行」に、
「CPU56」は「演算処理部」に、
「主基板31」は「遊技制御装置」に、
「停止時の画像の組み合せが大当り図柄の組み合わせ」は「前記変動表示ゲームの結果が特別表示結果」に、
「大当り状態に移行し、開閉板20が、一定時間経過するまで、または、所定個数の打球が入賞するまで開放」は「前記変動入賞装置が閉状態から開状態に状態変換することで遊技者に所定の遊技価値を付与可能な特別遊技状態を発生可能」に、
「パチンコ遊技機1」は「遊技機」に、
「試験信号」は「検査情報」に、
「試験信号端子72,73,74,75」は「専用の検査情報取り出し部」に、
「主基板31のパターン上に、スルーホールを有するランドを設け」は「前記遊技制御装置の回路基板に形成されたスルーホール群、若しくは配線パターンで構成される」に、
「試験装置からのブローブは、スルーホールを有するランドに接続でき」は「当該遊技機の検査の際に外部の検査装置に接続可能な所定の信号端子を取付可能であり」に、
それぞれ相当する。

先願明細書には、パチンコ遊技機1がゲーム制御用のプログラムを実行する際、パチンコ遊技機に電源が供給されている状態であるか否かが明記されていないものの、技術常識から考えて、パチンコ遊技機1の遊技制御プログラムは電源が供給されている状態で実行されていることは明らかである。
また、上記(キ)の「・・・また、特別電動役物開放信号は、大入賞口が開放していることを示す信号であるが、CPU56が出力ポート571を介して大入賞口を開放するために出力する信号(ソレノイド信号)をそのような信号と見なして用いる。」との記載から、「特別電動役物開放信号」は、大入賞口を開放するために出力するソレノイド信号であるから、特別電動役物開放信号は、大入賞口のソレノイドを駆動させるための駆動信号であるといえる。
また、上記(エ)及び図5から、先願明細書には、主基板31の入力ポート577の前段及び出力ポート571から信号を取り出し可能とすることが記載されているといえる。
また、上記(エ)、図5及び図16から、入力ポート577の前段においては、始動口スイッチ17、Vカウントスイッチ22及び入賞球検出スイッチ99からCPU56に入力される信号を、CPU56を介さず生データとして取り出しているといえる。
また、上記(カ)の、特に、「CPU56が遊技制御プログラムを実行しているときに、適宜作成する信号」及び図17、図18における「信号の内容」として「・・・ソフトで作成」との記載、及び、上記(キ)の記載から、出力ポート571の後段においては、CPU56から出力される特別電動役物開放信号を取り出しているといえ(「特別電動役物開放信号」が請求項1における「前記変動入賞装置の駆動源に出力される前記駆動信号」に相当することは上述のとおり)、「CPU56が遊技制御プログラムを実行しているときに、適宜作成する信号」であるから、遊技制御プログラムは、出力ポート571を介して出力する信号の加工生成を行う編集処理を行っているといえる。
また、先願明細書には、試験を行っていない状態と、行っている状態とで、制御フローが異なることは記載されていないのであるから、通常遊技状態においても、定期的に基本回路53にリセットパルスを与えてCPU56に遊技制御プログラムを先頭から再度実行しているといえる。

以上を総合すると、両者は、
「遊技領域が形成される遊技盤に設けられる始動口への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な変動表示装置と、
駆動源により、遊技球を入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに状態変換可能な変動入賞装置と、
遊技盤に設けられ、前記始動口を含む入賞口への入賞を検出する入賞検出手段と、
前記入賞検出手段の出力に基づいて、遊技の進行を管理制御するための遊技情報を生成するとともに、当該遊技機に電源が供給されている状態で当該遊技機における遊技制御を行う遊技プログラムを所定時間毎に実行する演算処理部を有する遊技制御装置と、を備え、
前記遊技制御装置の演算処理部により実行される前記遊技プログラムにおいて前記変動表示ゲームの結果が特別表示結果となった場合に、前記変動入賞装置が閉状態から開状態に状態変換することで遊技者に所定の遊技価値を付与可能な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記遊技制御装置は、
前記遊技情報と、前記入賞検出手段の出力と、を検査情報として取り出すための専用の検査情報取り出し部を備え、
該遊技情報には、前記変動入賞装置の駆動源を駆動させるための駆動信号が含まれ、
前記検査情報取り出し部は、
前記遊技制御装置の回路基板に形成されたスルーホール群、若しくは配線パターンで構成されるとともに、当該遊技機の検査の際に外部の検査装置に接続可能な所定の信号端子を取付可能であり、
前記遊技制御装置の入力ポートの前段及び出力ポートの後段から信号を取り出し可能に構成され、
前記遊技制御装置の入力ポートの前段においては、前記入賞検出手段から該遊技制御装置の演算処理部に入力される信号を、該演算処理部を介さずに生データとして取り出すとともに、
前記遊技制御装置の出力ポートの後段においては、
前記遊技制御装置の演算処理部から前記変動入賞装置の駆動源へ出力される前記駆動信号を分岐させて当該出力ポートから取り出すように構成し、
前記遊技制御装置の演算処理部により実行される当該遊技機の制御を行う遊技プログラムには、前記検査情報として前記出力ポートを介して出力する信号の加工生成を行う編集処理を含ませて構成し、
前記検査情報取り出し部に、前記所定の信号端子を取り付けた状態及び前記所定の信号端子を取り外した通常遊技状態においても、所定時間毎に前記遊技プログラムを実行するようにしたことを特徴とする遊技機。」
の点で一致し、次の点で一応相違する。

<相違点>
本願発明では、入賞検出手段からの信号を入力ポートの前段からそのまま取り出し、また、駆動信号を出力ポートからそのまま取り出すように構成しているのに対して、先願発明では、入力ポートの前段から取り出した信号を試験信号出力回路を介して取り出し、また、特別電動役物開放信号を出力ポートから試験信号出力回路を介して取り出している点。

3-3.判断
<相違点>について
先願発明における試験信号出力回路は、各入力信号を増幅する等の処理を行うものであるが(特に、【0048】)、所定の回路から信号を取り出すに際して、取り出し端子の前段に増幅回路を設けること、あるいは設けないことを適宜に選択できることは、例えば、特開昭61-154421号公報(特に、公報第3頁左下欄第20行?同頁右下欄第1行)、特公平6-60919号公報(特に、第11欄第3行?第6行)、特開平9-57663号公報(特に、【0010】)にみられるように周知であるから、先願発明から試験信号出力回路(増幅回路)を削除することは、単なる設計上の微差に過ぎず、本願発明と先願発明とは実質同一である。

以上のように、本願発明は、先願発明と同一である。

なお、審判請求人は、平成22年11月9日付けの意見書において「また、先願発明としての引用文献6には、他の実施形態としてランプやLEDを制御する制御信号を、出力ポート後段から分岐させて取り出している開示があるのに対して、本願発明では、分岐させて取り出す信号をソレノイドの駆動信号に限定しており、この限定により、制御信号の取得タイミングがずれることにより、最も重要な出玉に関する開閉制御に影響を与えてしまう不具合を防止することができる効果を奏することとなります。この点につき、先願発明ではソレノイドの駆動信号に限定しているような記載はなく、そのため本願発明の上記効果も得られず、よって、本願発明は先願発明と構成及び効果が相違し、実質同一ではありません。」と主張しているものの、請求項1の記載では、分岐させて取り出す信号がソレノイドの駆動信号に限定されていないため上記主張は採用することができない(また、仮に、請求項1の記載で、分岐させて取り出す信号がソレノイドの駆動信号に限定されているとするならば、その点の記載が願書に最初に添付した明細書又は図面に記載がなく、また、それらの記載から自明の事項でもないため、新たな技術事項を追加する補正となる点に留意されたい。)。
また、審判請求人は、同意見書において「しかしながら、上記のように先願発明には編集処理について具体的に示す記載はありません。あえていえば、各入力信号を増幅して試験用信号とした外部に出力するとの記載があるにとどまり、「増幅」という概念があるに過ぎません。「増幅」を編集処理と断定するのは無理があります。「増幅」は単に信号の振幅などを大きくしてノイズの影響を受けにくくする程度のもので、編集という範疇には入らないと思料致します。」と主張しているものの、「増幅」は、「試験信号出力回路71」での処理であり、上記(カ)の、特に、「CPU56が遊技制御プログラムを実行しているときに、適宜作成する信号」及び図17、図18における「信号の内容」として「・・・ソフトで作成」との記載から、遊技制御プログラムは、出力ポート571を介して出力する信号の加工生成を行う編集処理を行っていると認められるため上記主張は採用できない。

4.特許法29条2項に対して
4-1.刊行物記載事項
当審の拒絶の理由で引用した特開平11-216238号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 表示状態が変化可能な可変表示装置を含み、前記可変表示装置に表示される識別情報の表示結果があらかじめ定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって、
遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
前記遊技制御手段の指令にもとづいて前記可変表示装置の表示状態を制御する表示制御手段と、
前記可変表示装置の表示状態を示す情報を出力する第1の情報出力手段と、
少なくとも前記可変表示装置における可変表示に影響を与える部分および可変表示に影響される部分の状態を示す情報を出力する第2の情報出力手段と
を備えたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】 第1の情報出力手段からの情報と第2の情報出力手段からの情報とを遊技機の外部に出力するための中継手段を備えた
請求項1記載の遊技機。
【請求項3】 第1の情報出力手段は表示制御手段に含まれている
請求項1または請求項2記載の遊技機。
【請求項4】 第2の情報出力手段は遊技制御手段に含まれている
請求項1ないし請求項3記載の遊技機。」

(イ)「【0006】そこで、本発明は、より簡便に検査を行うことができ、検査期間を短縮することができる遊技機を提供することを目的とする。」

(ウ)「【0009】図1に示すように、パチンコ遊技機1は、額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。ガラス扉枠2の下部表面には打球供給皿3がある。打球供給皿3の下部には、打球供給皿3からあふれた景品玉を貯留する余剰玉受皿4と打球を発射する打球操作ハンドル5が設けられている。ガラス扉枠2の後方には、遊技盤6が着脱可能に取り付けられている。また、遊技盤6の前面には遊技領域7が設けられている。
【0010】遊技領域7の中央付近には、複数種類の図柄を可変表示するための画像表示部9と7セグメントLEDによる可変表示器10とを含む可変表示装置8が設けられている。可変表示装置8の側部には、打球を導く通過ゲート11が設けられている。通過ゲート11を通過した打球は、玉出口13を経て始動入賞口14の方に導かれる。通過ゲート11と玉出口13との間の通路には、通過ゲート11を通過した打球を検出するゲートセンサ12がある。また、始動入賞口14に入った入賞球は、遊技盤6の背面に導かれ、始動口センサ17によって検出される。また、始動入賞口14の下部には開閉動作を行う可変入賞球装置15が設けられている。可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされる。可変入賞球装置15の下部には、特定遊技状態(大当たり状態)においてソレノイド21によって開状態とされる開閉板20が設けられている。開閉板20から遊技盤6の背面に導かれた入賞球のうち一方(Vゾーン)に入った入賞球はVカウントセンサ22で検出され、他方に入った入賞球はカウントセンサ23で検出される。可変表示装置8の下部には、始動入賞口14に入った入賞球数を表示する4個の表示部を有する始動入賞記憶表示器18が設けられている。この例では、4個を上限として、始動入賞がある毎に、始動入賞記憶表示器18は点灯している表示部を1つずつ増やす。そして、画像表示部9の可変表示が開始される毎に、点灯している表示部を1つ減らす。
【0011】遊技盤6には、複数の入賞口19,24が設けられている。遊技領域7の左右周辺には、遊技中に点滅表示される装飾ランプ25が設けられ、下部には、入賞しなかった打球を吸収するアウト口26がある。また、遊技領域7の外側の左右上部には、効果音を発する2つのスピーカ27が設けられている。遊技領域7の外周には、遊技効果ランプ・LED28が設けられている。そして、この例では、一方のスピーカ27の近傍に、景品玉払出時に点灯する賞球ランプ51が設けられ、他方のスピーカ27の近傍に、補給玉が切れたときに点灯する玉切れランプ52が設けられている。さらに、図1には、パチンコ遊技台1に隣接して設置され、プリペイドカードが挿入されることによって玉貸しを可能にするカードユニット50も示されている。
【0012】打球発射装置から発射された打球は、打球レールを通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7を下りてくる。打球が通過ゲート11を通ってゲートセンサ12で検出されると、可変表示器10の表示数字が連続的に変化する状態になる。また、打球が始動入賞口14に入り始動口センサ17で検出されると、画像表示部9内の3つの図柄が回転を始める。画像表示部9内の画像の回転は、一定時間が経過したときに停止する。停止時の図柄の組み合わせが大当たり図柄の組み合わせであると、大当たり遊技状態に移行する。すなわち、開閉板20が、一定時間経過するまで、または、所定個数(例えば10個)の打球が入賞するまで開放する。そして、開閉板20の開放中に打球が特定入賞領域に入賞しVカウントセンサ22で検出されると、継続権が発生し開閉板20の開放が再度行われる。この継続権の発生は、所定回数(例えば16回)許容される。
【0013】停止時の画像表示部9内の図柄の組み合わせが確率変動を伴う大当たり図柄の組み合わせであって、可変表示器10の示す図柄が所定の図柄である場合には、その後、可変入賞球装置15が高い頻度で開状態となるとともに、次に大当たりとなる確率が高くなる。すなわち、遊技者にとってさらに有利な状態となる。」

(エ)「【0016】さらに、メイン基板31には、基本回路53から与えられるデータに従って、大当たりの発生を示す大当たり情報、画像表示部9の画像表示開始に利用された始動入賞球の個数を示す有効始動情報、確率変動が生じたことを示す確変情報等を出力する情報出力回路64が設けられている。情報出力回路64からの情報は、例えば、中継基板(図2において図示せず)を介して遊技機外に出力される。情報出力回路64には、基本回路53から、ゲートセンサ12、始動口センサ17、カウントセンサ23およびVカウントセンサ22のオン、ソレノイド16,21のオン、可変表示器10の表示状態、ならびに、始動記憶表示器18の表示状態に関する情報も入力される。さらに、遊技機のエラー状態を示すエラー情報も入力されている。従って、情報出力回路64は、それらの情報も外部に出力することができる。
【0017】基本回路53は、ゲーム制御用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用されるRAM55、制御用のプログラムに従って制御動作を行うCPU56およびI/Oポート部57を含む。なお、ROM54およびRAM55はCPU56に内蔵されている場合もある。
【0018】さらに、メイン基板31には、電源投入時に基本回路53をリセットするための初期リセット回路65と、定期的(例えば、2ms毎)に基本回路53にリセットパルスを与えてゲーム制御用のプログラムを先頭から再度実行させるための定期リセット回路66と、基本回路53から与えられるアドレス信号をデコードしてI/Oポート部57のうちのいずれかのI/Oポートを選択するための信号を出力するアドレスデコード回路67とが設けられている。」

(オ)「【0025】次に動作について説明する。
図7は、メイン基板31における基本回路53の動作を示すフローチャートである。上述したように、この処理は、定期リセット回路66が発するリセットパルスによって、例えば2ms毎に起動される。基本回路53が起動されると、基本回路53は、まず、スタックポインタの指定アドレスをセットするためのスタックセット処理を行う(ステップS1)。次いで、初期化処理を行う(ステップS2)。初期化処理では、基本回路53は、RAM55にエラーが含まれているか判定し、エラーが含まれている場合には、RAM55を初期化するなどの処理を行う。そして、画像表示部9に送出されるコマンドコードをRAM55の所定の領域に設定する処理を行った後に(ステップS3)、コマンドコードを出力する処理を行う(ステップS4)。
【0026】次いで、電飾基板コマンド出力回路62を介して、電飾基板35に音声発生やLED点灯制御用の所定のコマンドを送信するための処理を行うとともに、情報出力回路64を介して、大当たり情報、始動情報、確率変動情報などのデータを送信するための処理を行う(データ出力処理:ステップS5)。また、パチンコ遊技機1の内部に備えられている自己診断機能によって種々の異常診断処理が行われ、その結果に応じて必要ならば警報が発せられる(エラー処理:ステップS6)。また、エラー情報は、情報出力回路64を介して外部に出力される。」

(カ)「【0037】停止時の図柄の組み合わせが大当たり図柄の組み合わせであると、大当たり遊技状態に移行する。すなわち、基本回路53は、ソレノイド21を駆動して開閉板20を開状態にする。そして、一定時間経過するまで、または、所定個数の打球の入賞がカウントセンサ23によって検出されるまで開状態は継続される。そして、開閉板20の開放中に打球が特定入賞領域に入賞しVカウントセンサ22で検出されると、所定回数を上限とした継続権が発生し開閉板20の開放が再度行われる。この間、基本回路53は、カウントセンサ23およびVカウントセンサ22のオンを検出するが、オン状態は、図2に示す情報出力回路64に出力される。また、ソレノイド21の状態も情報出力回路64に出力される。
【0038】可変表示装置8におけるCRTでの図柄変動開始の条件となる始動口センサ17のオン状態および可変表示器10での図柄変動開始の条件となるゲートセンサ12のオン状態も、情報出力回路64に出力される。なお、基本回路53は、有効始動情報を情報出力回路64に出力しているので、始動口センサ17のオン状態は、情報出力回路64に与えられなくてもよい。また、基本回路53は、ランプ・LED回路60を介して可変表示器10および始動記憶表示器18の表示制御を行うが、それらの表示器における表示状態も、情報出力回路64に出力される。
【0039】従って、情報出力回路64は、それらの情報を外部に出力することができる。上述したように、表示制御基板80における情報出力回路95も各図柄の情報を遊技機の外部に出力するので、遊技機外部において、遊技進行中の種々の情報を収集することができる。例えば、情報出力回路64,95からの情報を入力する検査装置を用意し、検査装置において、自動的に、停止図柄の組合せの統計をとったりすることができる。従って、停止図柄の各組合せの発生頻度が設計値と異なっているような場合には、検査者は、直ちにそのことを知ることができる。また、各センサやソレノイドのオン/オフ情報も入力できるので、Vカウントセンサ22がオンしなかったにもかかわらず開閉板20開放の継続権が発生したり、開閉板20を開放すべきであるのにソレノイド21が駆動されなかったりする不具合を、開発段階の最終的な検査において容易に発見できる。
【0040】また、有効始動情報、確変情報およびエラー情報だけでなく、各センサのオン、各ソレノイドのオン、可変表示器10の表示状態、ならびに、始動記憶表示器18の表示状態に関する情報も検査装置に入力でき、かつ、図柄の表示状況も入力できることから、遊技機が遊技店に設置された状態において、検査装置を用いて遊技機の状態をチェックできる。従って、遊技機に対して不正な改造が施された場合であっても、検査装置を接続することによって容易にそのことを検出できる。
【0041】図9は、本発明の他の実施の形態におけるメイン基板31と表示制御基板80を示すブロック図である。なお、図9では、外部に情報を出力することに関連するブロック以外は記載省略されている。この実施の形態では、メイン基板31において、各センサからの入力信号と基本回路53からの各ソレノイドおよびランプ・LEDへの出力信号とが情報出力回路64に入力されている。また、表示制御基板80において、表示制御コマンドデータがバッファ回路95Bを介してそのまま出力されている。
【0042】このような構成によれば、基本回路53におけるCPU56および表示制御基板80における表示制御用CPU91の負荷を軽くすることができる。具体的には、情報出力に関するプログラム容量を節減することができる。
【0043】図10は、本発明のさらに他の実施の形態を示すブロック図である。図10では、メイン基板53において、表示制御基板80に送信される表示制御コマンドデータを出力するためのコネクタ(CNA)69と情報出力回路64からの情報を出力するためのコネクタ(CNB)70も示されている。また、表示制御基板80において、メイン基板31からの表示制御コマンドデータを受け取るためのコネクタ(CNC)100および情報出力回路95Cから情報を入出力するためのコネクタ(CND)98も示されている。なお、コネクタ69,70,98,100に相当するものは図2および図9に示された構成でも設けられていたが、図2および図9では記載省略されていた。また、図10において、情報出力に関するブロック以外は記載省略されている。」

(キ)「【0045】図11および図12は、中継基板110に外部から入出力される信号のフォーマットの一例を示す説明図である。
図11に示された例では、フォーマット1には、以下の信号が含まれる。なお、フォーマット1による信号は、中継基板110から外部に出力される信号である。
【0046】図柄番号: 後述するフォーマット2で指定される桁の表示図柄の図柄番号。変換回路110は、表示制御基板80の情報入出力回路95Cから入力した表示図柄に関する情報を図柄番号に変換する。例えば、情報入出力回路95Cがメイン基板31からの表示制御コマンドデータをそのまま出力するように構成されている場合には、表示制御コマンドデータは、その機種における特有のコマンド体系で表現されていることが多い。例えば、コマンドヘッダなどが含まれる。そこで、変換回路110は、表示制御コマンドデータによる情報を図柄番号に変換する。
カラーデータ: 図柄の色を示す。同一図柄であっても色違いのものがある場合に設定される。変換回路110は、表示制御基板80の情報入出力回路95Cから入力した表示図柄に関する情報からカラーデータを生成する。
【0047】保留ランプ1信号?保留ランプ4信号: メイン基板31の情報出力回路64から出力される始動入賞記憶に対応したもの。
大入賞口ソレノイド信号: 大入賞口を開閉するためのソレノイドの状態を示す。この実施の形態では、開閉板20を開閉するためのソレノイド21の状態であり、メイン基板31の情報出力回路64から出力される信号である。
大当たり信号: 大当たりとなる図柄の組合せの停止時から大当たり処理終了までオンにする。変換回路110は、例えば、表示制御コマンドデータによる情報から、この大当たり信号を生成する。
普通図柄当たり信号: この実施の形態では、7セグメントLEDによる可変表示器10の表示態様による当たり時にオンにする。変換回路110は、例えば、メイン基板31の情報出力回路64から出力される可変表示器10の表示図柄からこの信号を生成する。
確率変動中信号: 高確率時にオン、低確率時にオフにする。変換回路110は、例えば、メイン基板31の情報出力回路64から出力される確変情報からこの信号を生成する。
図柄変動中信号: 図柄の変動中にオンにする。変換回路110は、表示制御基板80の情報入出力回路95Cから入力した表示図柄に関する情報から、この信号を生成する。
図柄確定信号: 図柄の変動が停止してから所定期間(例えば1秒間)オンにする。変換回路110は、表示制御基板80の情報入出力回路95Cから入力した表示図柄に関する情報から、この信号を生成する。
エラー信号: 遊技機がエラー状態になるとオンにする。この実施の形態では、メイン基板31の情報出力回路64から出力されるエラー情報の状態が設定される。
【0048】この実施の形態では、フォーマット1において、図柄番号として8ビットが用意されているので、256種類の図柄を扱うことができる。また、カラーデータとして4ビットが用意されているので、16種類の色を扱うことができる。このように多くの図柄および色を取り扱えるように決められているのは、多数の図柄表示領域をもつ遊技機を考慮したためである。すなわち、多くの機種間でこのフォーマットを共用したいからである。
また、保留ランプ1信号?保留ランプ4信号、大入賞口ソレノイド信号、普通図柄当たり信号およびエラー信号については、メイン基板31の情報出力回路64から出力される情報をそのまま使用して信号を生成できるが、変換回路110は、情報出力回路64から入力した情報をフォーマット1における該当する位置に設定する変換処理を行う。」

(ク)「【0064】なお、この実施の形態では、変換回路111を中継基板110に設けたが、変換回路111の機能を情報出力回路64および情報入出力回路95Cで実現するようにしてもよい。そのようにした場合には、中継基板110において変換回路111は必要なく、メイン基板31および表示制御基板80からの信号をそのままコネクタ121?124に出力することができる。また、情報入出力回路95Cのみを設け、情報入出力回路95Cが変換機能を有するように構成し、表示制御コマンドデータによる情報のみをフォーマット変換して入出力するようにしてもよい。表示制御コマンドデータからは、図柄変動の状態に加えて大当たりの発生や大当たり動作中に関する情報も含まれるので、表示制御コマンドデータによる情報のみを外部に出力する場合であっても、遊技機の主要動作の情報を外部で収集できる。その結果、遊技機の主要動作の検査は容易化される。」

(ケ)「【0070】図14は、少なくとも可変表示装置における可変表示に影響を与える部分および可変表示に影響される部分の状態を示す情報を出力する第2の情報出力手段の実現例を示すブロック図である。第2の情報出力手段は、上述した各実施の形態では、図2、図9、図10または図13に示された情報出力回路64、または、情報出力回路64とコネクタ70とを含む。図14(A)は、情報出力回路64が出力情報を基本回路53から入力する場合の構成例であり、図14(C)は、情報出力回路64がスイッチ回路58、ソレノイド回路59およびランプ/LED回路60から出力情報を入力する場合の構成例である。基本回路53から出力情報を入力する場合には、情報出力回路64として、CPU53に接続される出力ポート641が設けられる。また、スイッチ回路58、ソレノイド回路59およびランプ/LED回路60から出力情報を入力する場合には、情報出力回路64として、出力ラッチ回路642が設けられる。なお、スイッチ回路58、ソレノイド回路59およびランプ/LED回路60の出力電流が十分であれば、出力ラッチ回路642を設けなくてもよい。
【0071】図14(B),(D)に示すように、第2の情報出力手段には、コネクタ70が実装されなくてもよい。例えば、検査時には図14(A),(C)に示すようにコネクタ70を実装し、製品としての出荷時には図14(B),(D)に示すようにコネクタ70を実装しないといった使い分けがなされる。従って、図14(B),(D)には、コネクタ70の実装箇所にランド643が示されている。また、製品としての出荷時には、図10や図13に示された中継基板110を実装しなくてもよい。
【0072】図15は、可変表示装置の表示状態を示す情報を出力する第1の情報出力手段の実現例を示すブロック図である。第1の情報出力手段は、図4、図9または図10に示された構成では、図4、図9または図10に示された情報出力回路95、バッファ回路95B、または、情報入出力回路95Cとコネクタ98とを含む。図15(A)は、表示制御用CPU91に接続された情報出力回路95(または情報入出力回路95C)とコネクタ98とを含む場合の構成例であり、情報出力回路95(または情報入出力回路95C)としての出力ポート(または入出力ポート)951とコネクタ98とが含まれる。バッファ回路95Bが用いられる場合には、図15(C)に示すように、バッファ回路95Bとしてのラッチ回路952とコネクタ98とが含まれる。
【0073】図15(B),(D)に示すように、第1の情報出力手段には、コネクタ98が実装されなくてもよい。例えば、検査時には図15(A),(C)に示すようにコネクタ98を実装し、製品としての出荷時には図15(B),(D)に示すようにコネクタ70を実装しないといった使い分けがなされる。従って、図15(B),(D)には、コネクタ98の実装箇所にランド953が示されている。
【0074】 図16は、遊技店における遊技機設置島700に設置されたパチンコ遊技機1A?1Fと検査装置200との接続例を示す斜視図である。検査装置200は、1台毎に遊技機を検査するものでもよいが、図16に示されたように、複数の遊技機を一時に検査するものでもよい。図に示すように、各パチンコ遊技機1A?1Fの裏面に実装された中継基板110と検査装置200とは、各ケーブルで接続される。なお、各パチンコ遊技機1A?1Fの検査を行うための処理は上述したとおりである。」

摘記した上記(ア)?(ケ)の記載や図面等によれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「遊技領域7が設けられる遊技盤6に始動入賞口14を設け、打球が始動入賞口14に入り始動口センサ17で検出されると、画像表示部9内の3つの図柄が回転を始め、
ソレノイド21によって開状態とされる開閉板20と、
遊技盤に設けられ、前記始動入賞口14、通過ゲート11、複数の入賞口19,24、大入賞口への入賞を検出する始動口センサ17、ゲートセンサ12、入賞玉検出器99、カウントセンサ23、Vカウントセンサ22と、
メイン基板31には、電源投入時に基本回路53をリセットするための初期リセット回路65と、定期的に基本回路53にリセットパルスを与えてゲーム制御用のプログラムを先頭から再度実行させるための定期リセット回路66とを備え、基本回路53からの各ソレノイドおよびランプ・LEDへの出力信号を情報出力回路64に入力し、
画像表示部9内の画像の回転が、一定時間が経過したときに停止し、停止時の図柄の組み合わせが大当たり図柄の組み合わせであると、開閉板20が、一定時間経過するまで、または、所定個数の打球が入賞まで開放する大当たり遊技状態に移行するパチンコ遊技機1において、
メイン基板31は、
各ソレノイドおよびランプ・LEDへの出力信号と、始動口センサ17、ゲートセンサ12、入賞玉検出器99、カウントセンサ23、Vカウントセンサ22からの入力信号と、を情報出力回路64から中継基板110を介して検査装置200に出力され、情報出力回路64は、CPU53に接続される出力ポート641とランド643からなり、
メイン基板31のランド643にはコネクタ70を実装可能であり、
始動口センサ17、ゲートセンサ12、入賞玉検出器99、カウントセンサ23、Vカウントセンサ22からの入力信号は、スイッチ回路58に入力されるとともに情報出力回路64にも出力され、各ソレノイドおよびランプ・LEDへの出力信号は、ソレノイド回路59、ランプ・LED回路60から情報出力回路64にも供給され、
るパチンコ遊技機1」

4-2.引用発明と本願発明との対比
引用発明の「遊技領域7」は本願発明の「遊技領域」に相当し、以下同様に、
「遊技盤6」は「遊技盤」に、
「始動入賞口14」は「始動口」に、
「打球」は「遊技球」に、
「打球が始動入賞口14に入り始動口センサ17で検出されると」は「始動口への遊技球の入賞に基づき」に、
「3つの図柄が回転を始め」は「複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示」に、
「画像表示部9」は「変動表示装置」に、
「ソレノイド21によって開状態とされる開閉板20」は「駆動源により、遊技球を入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに状態変換可能な変動入賞装置」に、
「前記始動入賞口14、通過ゲート11、複数の入賞口19,24、大入賞口」は「前記始動口を含む入賞口」に、
「始動口センサ17、ゲートセンサ12、入賞玉検出器99、カウントセンサ23、Vカウントセンサ22」は「前記始動口を含む入賞口への入賞を検出する入賞検出手段」に、
「各ソレノイドおよびランプ・LEDへの出力信号」は「遊技の進行を管理制御するための遊技情報」に、
「定期的に基本回路53にリセットパルスを与えてゲーム制御用のプログラムを先頭から再度実行させる」は「遊技機における遊技制御を行う遊技プログラムを所定時間毎に実行する」に、
「基本回路53」は「演算処理部」に、
「メイン基板31」は「遊技制御装置」に、
「停止時の図柄の組み合わせ」は「前記変動表示ゲームの結果」に、
「大当たり図柄の組み合わせ」は「特別表示結果」に、
「開閉板20が、一定時間経過するまで、または、所定個数の打球が入賞まで開放する」は「前記変動入賞装置が閉状態から開状態に状態変換する」に、
「大当たり遊技状態に移行」は「遊技者に所定の遊技価値を付与可能な特別遊技状態を発生」に、
「パチンコ遊技機1」は「遊技機」に、
「始動口センサ17、ゲートセンサ12、入賞玉検出器99、カウントセンサ23、Vカウントセンサ22からの入力信号」は「前記入賞検出手段の出力」に、
「情報出力回路64」は「検査情報として取り出すための専用の検査情報取り出し部」に、
「ランド643」は「スルーホール群」に、
「検査装置200」は「外部の検査装置」に、
「メイン基板31のランド643にはコネクタ70を実装可能であり」は「前記遊技制御装置の回路基板に形成されたスルーホール群、若しくは配線パターンで構成されるとともに、当該遊技機の検査の際に」「接続可能な所定の信号端子を取付可能であり」に、
それぞれ相当する。

引用文献には、パチンコ遊技機1がゲーム制御用のプログラムを実行する際、パチンコ遊技機1に電源が供給されている状態であるか否かが明記されていないものの、技術常識から考えて、パチンコ機1のゲーム制御用のプログラムは電源が供給されている状態で実行されていることは明らかである。
また、上記(カ)及び図9から、引用文献には、基本回路53のI/Oポート57の前段及び後段から信号を取り出し可能とすることが記載されていると認める。
また、上記(カ)及び図9から、引用文献では、I/Oポート57の前段においては、始動口センサ17、ゲートセンサ12、入賞玉検出器99、カウントセンサ23、Vカウントセンサ22からの入力信号を、基本回路53を介さずそのまま生データとして取り出していると認める。
また、上記(カ)及び図9から、引用文献では、I/Oポート57の後段においては、基本回路53からソレノイド回路59を介して、開閉板20を開状態とするソレノイド21への出力信号を分岐させて取り出していると認める。
また、上記(カ)及び図9から、引用文献では、情報出力回路64から、有効始動情報、確変情報、エラー情報等を外部に出力することが可能であることから、パチンコ遊技機1は、ゲーム制御用のプログラムにて、前記した情報等を加工生成を行う編集処理を実行していると認める。
また、引用文献には、検査を行っていない状態と、行っている状態とで、制御フローが異なることは記載されておらず、共通のフローであるから、パチンコ遊技機1は、通常遊技状態においても、定期的に基本回路53にリセットパルスを与えてゲーム制御用のプログラムを先頭から再度実行していると認める。

以上を総合すると、両者は、
「遊技領域が形成される遊技盤に設けられる始動口への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な変動表示装置と、
駆動源により、遊技球を入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに状態変換可能な変動入賞装置と、
遊技盤に設けられ、前記始動口を含む入賞口への入賞を検出する入賞検出手段と、
前記入賞検出手段の出力に基づいて、遊技の進行を管理制御するための遊技情報を生成するとともに、当該遊技機に電源が供給されている状態で当該遊技機における遊技制御を行う遊技プログラムを所定時間毎に実行する演算処理部を有する遊技制御装置と、を備え、
前記遊技制御装置の演算処理部により実行される前記遊技プログラムにおいて前記変動表示ゲームの結果が特別表示結果となった場合に、前記変動入賞装置が閉状態から開状態に状態変換することで遊技者に所定の遊技価値を付与可能な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記遊技制御装置は、
前記遊技情報と、前記入賞検出手段の出力と、を検査情報として取り出すための専用の検査情報取り出し部を備え、
該遊技情報には、前記変動入賞装置の駆動源を駆動させるための駆動信号が含まれ、
前記検査情報取り出し部は、
前記遊技制御装置の回路基板に形成されたスルーホール群、若しくは配線パターンで構成されるとともに、当該遊技機の検査の際に接続可能な所定の信号端子を取付可能であり、
前記遊技制御装置の入力ポートの前段及び出力ポートの後段から信号を取り出し可能に構成され、
前記遊技制御装置の入力ポートの前段においては、前記入賞検出手段から該遊技制御装置の演算処理部に入力される信号を、該演算処理部を介さずにそのまま生データとして取り出すとともに、
前記遊技制御装置の出力ポートの後段においては、
前記遊技制御装置の演算処理部から前記変動入賞装置の駆動源へ出力される前記駆動信号を分岐させて当該出力ポートから取り出すように構成し、
前記遊技制御装置の演算処理部により実行される当該遊技機の制御を行う遊技プログラムには、前記検査情報として前記出力ポートを介して出力する信号の加工生成を行う編集処理を含ませて構成し、
前記検査情報取り出し部に、前記所定の信号端子を取り付けた状態及び前記所定の信号端子を取り外した通常遊技状態においても、所定時間毎に前記遊技プログラムを実行するようにしたことを特徴とする遊技機」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、遊技制御装置の回路基板に検査装置を接続可能な所定の信号端子を取付可能であるのに対し、引用発明では、メイン基板31に中継基板110を接続可能であり、該中継基板110に検査装置を接続可能なコネクタを備えている点。

<相違点2>
本願発明では、駆動信号を出力ポートからそのまま取り出すように構成しているのに対して、引用発明では、ソレノイドへの出力信号がソレノイド回路59を介して情報出力回路64から出力されている点。

4-3.判断
<相違点1>について
配線をする際に中継基板を設けるか否かは、作業性等を考慮して当業者が適宜決定し得る事項に過ぎず、遊技機の分野において、遊技御基板と副制御とを中継基板を介して接続するか直接接続するかは、ともに例示するまでもなく周知技術であるので、引用発明において、中継基板を介さずにメイン基板31に検査装置を接続可能な所定の信号端子を取付可能として、上記相違点1に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>について
検査をする場合には回路基板上の様々な場所の信号を確認することが一般的であることから、検査に際して、どこから信号を取り出すかは当業者が適宜決め得る程度の事項に過ぎないことである。そうすると、引用文献の図9において、ソレノイド回路の後段から検査信号を取り出していることに代えて、ソレノイド回路の前段から検査信号を取り出すようにすることに、何ら格別の困難性はない。

そして、本願発明の効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、上記「3.特許法29条の2に対して」に記載したとおり、本願発明は、その出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願平11-117385号(特開2000-300766号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、両発明の発明者が同一ではなく、また両出願の出願人がその出願の時において同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
また、上記「4.特許法29条2項に対して」に記載したとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-28 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-17 
出願番号 特願2000-14587(P2000-14587)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 綾子  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 川島 陵司
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿嶋 英實  

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