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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1233113
審判番号 不服2009-25733  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-25 
確定日 2011-02-28 
事件の表示 特願2003-164527「柱状体を有する位相差制御板」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月 6日出願公開、特開2005- 3750〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年6月10日の特許出願であって、拒絶理由の通知に応答して平成20年4月28日に手続補正がされたが、平成21年9月14日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成21年12月25日に拒絶査定不服審判が請求がされるとともに、これと同時に手続補正がされたものである。

第2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。) は、平成21年12月25日に補正された本願の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「基板上に液晶性高分子からなる位相差制御層が積層されており、前記位相差制御層上に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された柱状体が配列されて積層されており、
前記液晶性高分子が棒状液晶性高分子である、ことを特徴とする位相差制御板。」

第3 引用発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2000-221506号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載1ないし3が図と共にある。
1 「【請求項1】偏光板が液晶セル外に設けられた液晶表示装置において、
視角特性を改善する位相差板は上記液晶セル内に設けられていることを特徴とする液晶表示装置。」

2 「【0041】また、上記位相差板2は、以上のような構成に限定されるものではなく、位相差板2をパターン化可能な材料で構成する場合、図3で示すように該位相差板12を溝状構造とすることによって、位相差板2の機能とASM壁7(溝構造)の機能とを兼ねることが可能となる。なお、説明の便宜上、図3の各部材の参照番号は、図1と同じ機能を有する部材の参照番号と同じものを使用している。
【0042】例えば、図3に示すように、液晶セル内において、ガラス基板1上に、カラーフィルタ4が形成され、その上にオーバーコート膜5を介して、透明電極6、パターン化され2つの上記機能を有する位相差板12、及びスペーサ8が形成されている。上記位相差板12は、対向する2つのガラス基板上にそれぞれ設けられていてもよい。」

3 「【0064】以上は、溝の構造として、例えば図9(a)に示すように、平面配置が格子状(溝同士が格子状に連続した状態)のものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図15(a)(b)に示すように、溝同士が格子状に連続して形成されるのではなくて、溝同士が互いに孤立して不連続に形成されたものでもよい。この場合でも、格子状の溝構造の場合と同様に、充分所望とする配向制御能力が得られる。」

上記2より、上記1の液晶表示装置は、ガラス基板1、カラーフィルタ4、オーバーコート膜5、透明電極6、位相差板12及びスペーサ8の順に形成されたものを含む。

上記3より、位相差板12は、上記2が参照する図3に示された「平面配置が格子状(溝同士が格子状に連続した状態)のもの」に限定されず、図15(a)(b)に示すように、溝同士が互いに孤立して不連続に形成されたものでもよい。後者の場合には、溝は1枚の位相差板12の面上に孤立して存在している。

引用例の図3からは、スペーサ8が位相差板12上に配列されて積層されていることが看取できる。

以上のことから、記載1ないし3を含む引用例には、次の発明が記載されていると認めることができる。
「位相差板が液晶セル内に設けられ、
ガラス基板1上に、カラーフィルタ4、オーバーコート膜5、透明電極6、位相差板12及びスペーサ8が形成されており、
上記位相差板12上に上記スペーサ8が配列されて積層されている、液晶表示装置。」(以下「引用発明」という。)

第4 対比
引用発明と本願発明とを対比する。
引用発明の「ガラス基板1」及び「位相差板12」は、それぞれ、本願発明の「基板」及び「位相差制御層」に相当する。

本願明細書には以下の記載がある。
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明においては、重合性液晶を用いて位相差制御層を構成しながらも、対向基板等との所定の間隔を実現し得る位相差制御板を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決する手段】
発明者の検討により、重合性液晶を用いて位相差制御層を構成した上に、紫外線硬化性樹脂の硬化物で構成された柱状体を配列して形成した基板を用いることにより、従来技術における欠点を解消できることが判明し、本発明に到達することができた。」(下線は審決にて付与した。以下同様。)
該記載より、本願発明の「柱状体」は、所定間隔を実現するスペーサの機能を果たしている。
よって、引用発明の「スペーサ8」は、「スペーサ」である点で、本願発明の「柱状体」と共通している。

引用発明の「ガラス基板1上に、カラーフィルタ4、オーバーコート膜5、透明電極6、位相差板12及びスペーサ8が形成されており」は、基板(ガラス基板1)上に位相差制御層(位相差板12)が積層されている点で、本願発明の「基板上に液晶性高分子からなる位相差制御層が積層されており」と共通している。

引用発明の「位相差板12上にスペーサ8が配列されて積層されている」は、「位相差制御層(位相差板12)上にスペーサが配列されて積層されている」点で、本願発明の「位相差制御層上に電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された柱状体が配列されて積層されており」と共通している。

引用発明の液晶表示装置の、ガラス基板1、カラーフィルタ4、オーバーコート膜5、透明電極6、位相差板12及びスペーサ8が形成された部分は、位相差板12による位相差制御機能を有するから、本願発明の「位相差制御板」に相当する。

してみれば、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「基板上に位相差制御層が積層されており、前記位相差制御層上にスペーサが配列されて積層されている、位相差制御板。」

<相違点1>
本願発明は、位相差制御層が「液晶性高分子からなる」と特定され、かつ該液晶性高分子が「棒状液晶性高分子である」と特定されているのに対し、引用発明はこれらの特定を有しない点。

<相違点2>
本願発明は、スペーサが「電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された柱状体」と特定されているのに対し、引用発明は該特定を有しない点。

第5 判断
1 <相違点1>について
位相差板の材料として、化学構造式からして棒状といえる液晶性高分子を用いることは周知技術であり、拒絶査定で引用した特表2001-500984号公報及び特開2001-55573号公報を参照することができる。
さらに、本願出願前に頒布された特開2001-154018号公報には、誘電率に負の異方性があることで位相差を生じさせ得る光学補償シートを棒状液晶性高分子で作ることが明記されている。特に、同公報の以下の記載を参照されたい。
「【請求項1】 誘電率異方性(Δε)が負の値であって光学的に一軸性ではない液晶性化合物を一種類以上含有する層を少なくとも一層支持体上に有することを特徴とする光学補償シート。」

「【請求項6】 液晶性化合物が、棒状液晶性化合物を構成単位とする高分子液晶性化合物であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の光学補償シート。」

よって、引用発明において、本願発明の相違点1に係る構成を備えることは、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

2 <相違点2>について
(1)引用例の図10(a)及び図10(b)からは、それぞれ、スペーサ8が面上に分散して配置されていること及びスペーサ8がカラーフィルタ4の面上に立っていることが看取できるから、このスペーサ8は柱状体といえる。引用例の図13(a)及び図13(b)も同様である。
よって、引用発明において、スペーサ8を柱状体とすることは、引用例の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)本願明細書の【0063】には「以降の記述では、専ら感光性樹脂組成物を扱うが、紫外線以外の電子線等による硬化によるものであってもよい。」とあるから、本願発明の「電離放射線」は紫外線を含む。
一方、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物でスペーサを構成することは周知技術である。例えば、本願出願前に頒布された以下の公報の記載を参照されたい。
特開平8-94995号公報
「【0009】さらに、かかるスペーサーの形成方法として公知の方法、例えば基板の導電性膜からなる電極表面上にUV硬化樹脂層を形成し露光パターンニングしてスペーサーを形成するフォトリソグラフィー法や」

特開平11-142859号公報
「【請求項1】・・・スペーサは、少なくともその中心部が紫外線硬化性樹脂からなる液晶表示素子。」

特開平5-100232号公報
「【0025】・・・紫外線を照射して、シール材15を塗布したシール部と前記第2のスペーサ14とを同時に硬化させ」

(3)上記(1)及び(2)より、引用発明において、本願発明の相違点2に係る構成を備えることは、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

3 上記1及び2より、引用発明において、本願発明の相違点1及び2に係る構成を備えることは、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
また、かかる構成を採用することによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-28 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-17 
出願番号 特願2003-164527(P2003-164527)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司磯野 光司  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 田部 元史
杉山 輝和
発明の名称 柱状体を有する位相差制御板  
代理人 紺野 昭男  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 横田 修孝  
代理人 浅野 真理  
代理人 吉武 賢次  
代理人 中村 行孝  

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