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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1233180
審判番号 不服2010-10200  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-13 
確定日 2011-03-03 
事件の表示 特願2004- 31865「食品容器のヘッドスペース置換方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月30日出願公開、特開2004-269051〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年2月9日(優先権主張平成15年2月18日)の出願であって、平成22年3月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年5月13日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、これと同時に平成22年5月13日付け手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
平成22年5月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

1.本件補正の内容
本件補正は、以下の補正事項aを有するものと認める。

補正事項a;特許請求の範囲の記載につき
「容器に内容物を充填した後該内容物の表面と接触する部分を含む該容器のヘッドスペース部を亜酸化窒素ガスまたは亜酸化窒素ガスと窒素ガスの混合ガスで置換し、前記ヘッドスペース内の酸素を除去することを特徴とする食品容器のヘッドスペース置換方法。」 とあるのを

「容器に内容液を充填した後該内容液の表面と接触する部分を含む該容器のヘッドスペース部を亜酸化窒素ガスまたは亜酸化窒素ガスと窒素ガスの混合ガスで置換し、前記ヘッドスペース内の酸素を除去することを特徴とする食品容器のヘッドスペース置換方法。」と補正するものである。

2.判断
2.1 補正事項aの新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1における「内容物」を、「内容液」と液体に限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項第2号の規定に適合している。

2.2 独立特許要件について
上記補正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

2.2.1 本願補正発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という)は、上記補正事項aの補正後の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

2.2.2 引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平5-77810号公報(以下 「引用例1」という。)には、図面と共に次の記載がある。
(a)「【請求項2】 上記工程に先立ち、内容物が充填された瓶のヘッドスペースに向けて、窒素ガスと炭酸ガスとからなる混合不活性ガスを噴射して瓶のヘッドスペース内の空気を排出させると同時に、この排出した空気を吸引するよう予備置換工程を設けてなることを特徴とする請求項1記載の瓶詰飲料の製造方法。」(第1欄第12行?第17行)
(b)「本発明の方法は、ガラス、プラスチック等を素材とする瓶に、果汁、コーヒー、乳飲料等の飲料を充填し、その後、瓶口のヘッドスペースの空気を不活性ガスで置換して瓶口にキャップを供給する際、キャップがちょうど瓶口に斜めに半被りの状態となったときに、このキャップ内空部に向けて、ノズルから、窒素ガスと炭酸ガスとからなる混合不活性ガスを噴射し、キャップ内空部の空気を上記混合不活性ガスで置換すると共に、キャップ内空部壁面にあたって反射した上記混合不活性ガスが瓶のヘッドスペース内に侵入しヘッドスペース内の空気も上記混合不活性ガスで置換するものであり」(第4欄第24行?第34行)

上記(a)の排出される空気に酸素が含まれていることは明らかで、以上の記載及び図面によれば、引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という)は次のとおりのものと認められる。

「瓶に飲料を充填した後該飲料の表面と接触する部分を含む該瓶のヘッドスペースを窒素ガスと炭酸ガスとからなる混合不活性ガスで置換し、ヘッドスペース内の酸素を除去する瓶の予備置換工程」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2003-2350号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

(c)「キャップと中栓との間に収納室を有する壜によっても、収納室に収納された原料の、収納室に内包された空気中の酸素と接触による酸化、褐変、老化、劣化を防ぐことは困難であった。また、中栓の漏出孔からの放出は原料の自重によるものであるため、原料の固化による漏出孔の詰まり等により円滑な放出が達成できないおそれがあった。
そこで、本発明は、原料と液体とから構成されるボトル詰め飲料を、原料の劣化等をおこさないように製造時の鮮度を維持しながら消費者に供給でき、また原料と液体を円滑に混合できるボトルキャップを提供することを目的とする。」(第3欄第12行?第23行)
(d)「該原料は液体であって、緑茶、コーヒー、紅茶、濃縮ミネラル、海洋深層水抽出ミネラル、健康食品、薬品、濃縮果汁、乳製品から選ばれた一つであってもよい。この場合、原料を液体に速やかにかつ極めて良好に混合させることができる。なお、多岐にわたる原料を使用することにより、前述の効果を得ることができる。」(第5欄第12行?第18行)
(e)「このボトルキャップ1によれば、収容室5に収容される原料12を、圧力気体13により空気から遮断し、空気中の酸素と接触することによりおこる酸化や劣化等を防止することができる。そのため、製造時の鮮度を維持したまま消費者に供給することができる。」(第5欄第37行?第39行) (f)「圧力気体13は、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、亜酸化窒素又はこれらの気体の二つ以上の混合気体から選ばれた一つであることが特に好ましく、そうすると、市販の製品として簡単かつ安価に入手することができコストを低減できる。」(第6欄第17行?第21行)

上記(d)の「原料は液体であって」の記載、(e)の「収容室5に収容される原料12を、圧力気体13により空気から遮断し、空気中の酸素と接触することにより起こる酸化や劣化等を防止する」の記載、(f)の「圧力気体13は、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、亜酸化窒素」及び図面より「キャップの収容室の液体以外の部分を亜酸化窒素で置換し、酸素を除去」する構成が示されているといえる。

以上の記載及び図面によると引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」とする)が記載されている。

「液体の表面と接触する部分を含むキャップの収容室の液体以外の部分を亜酸化窒素で置換し、収容室の液体以外の部分の酸素を除去する」


2.2.3 対比
本願補正発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「飲料」は、本願補正発明の「内容液」に相当する。

また、引用発明1の「瓶」は、本願補正発明の「容器」、「食品容器」に相当する。
さらに、引用発明1の「窒素ガスと炭酸ガスとからなる混合不活性ガス」は、ガスという点で本願補正発明の「亜酸化窒素ガス」に相当する。

すると本願補正発明と引用発明1は

「容器に内容液を充填した後該内容液の表面と接触する部分を含む該容器のヘッドスペース部をガスで置換し、前記ヘッドスペース内の酸素を除去する食品容器のヘッドスペース置換方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点
置換によって酸素を除去するガスが本願補正発明では、「亜酸化窒素ガス」であるのに対して、引用発明1は「窒素ガスと炭酸ガスとからなる混合不活性ガス」である点

2.2.4 相違点の検討

引用発明1と引用発明2は、「容器内のガス置換方法」という同一の技術分野に属していることから、引用発明2の「収容室の液体以外の部分の酸素を置換により除去」する「亜酸化窒素」を、引用発明1の「窒素ガスと炭酸ガスとからなる混合不活性ガス」の代わりに用いて、上記相違点に係る構成のようにすることは、当業者が容易になしえたものである。

しかも本願補正発明が奏する効果も引用発明1と引用発明2から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。


以上のことから、本願補正発明は、原査定時に引用した引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

3.まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明

以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明は、本件補正a.の補正前の【請求項1】に記載した事項により特定されるものと認められる。
以下補正事項aの補正前の【請求項1】に係る発明を「本願発明」という。

2.引用例及びその記載事項

引用例及びその記載事項は、上記「第2.補正の却下の決定」の項中の「2.2.2引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願補正発明は本願発明の「内容物」を「内容液」に限定したものである。
そうすると、上記本願補正発明が、上記「2.2 独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例1、2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.まとめ
そうすると、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審決日 2011-01-19 
出願番号 特願2004-31865(P2004-31865)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳本 幸雄  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 谷治 和文
佐野 健治
発明の名称 食品容器のヘッドスペース置換方法  
代理人 原田 卓治  
代理人 坂本 徹  

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