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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A01N
管理番号 1233536
審判番号 訂正2010-390132  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2010-12-24 
確定日 2011-02-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4152742号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4152742号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 請求の要旨
本件審判の請求の要旨は,特許第4152742号(平成13年5月29日特許出願,優先権主張 平成12年5月30日 日本(JP),平成20年7月11日設定登録)の明細書(以下,「本件特許明細書」という。)を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正するものであり,その訂正事項は下記の1ないし10のとおりである。

1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0045】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン」
と訂正する。

2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0046】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン」
と訂正する。

3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0047】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン」
と訂正する。

4 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0048】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン」
と訂正する。

5 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0049】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン」
と訂正する。

6 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0050】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン」
と訂正する。

7 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0052】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン」
と訂正する。

8 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0053】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン」
と訂正する。

9 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0054】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン」
と訂正する。

10 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0055】の記載
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルキノリン」
を,
「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン」
と訂正する。


第2 当審の判断
1 訂正の目的について
請求人は,訂正事項1?10のいずれにおいても,その請求の原因は誤記であり,その訂正を目的とする点を主張しているので,まずこの点について検討する。

(1)訂正事項1
ア 誤記の有無
本件特許明細書の請求項1には,「式(1)の化合物またはその酸付加塩の少なくとも一種を有効成分として含有する,イネいもち病防除剤」が規定され,また本件特許明細書の請求項3には「式(1)の化合物またはその酸付加塩を,イネ植物体,土壌または田面水に対して適用することを含んでなる,イネいもち病の防除方法」が規定され,その「式(1)の化合物」とは,以下のとおりの化学式で規定されている。


[式中,Rは,水素原子,-COR^(1),-COOR^(1)(ここでR^(1)は炭素数1?4のアルキル基である),-COCH_(2)OCH_(3),または-COCH_(2)OCOCH_(3)である]

これに対して,特許請求の範囲の請求項2,請求項4及び段落【0017】には,該式(1)の化合物の群に含まれる化合物の一つが,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」であることが記載されるとともに,段落【0045】には,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」を得たという製造例が記載されている。

一般式で規定される式(1)の化合物と,名称で規定される上記化合物とは,式(1)の化合物が4位に「-OR基」を有するものであるのに対し,名称で規定される上記化合物とは4位に「アセチル基」すなわち「-C(=O)CH_(3)基」を有するものであるので,式(1)の化合物の具体例が該名称で規定される化合物であるとはいえない。ゆえに式(1)の一般式と,該具体的化合物名称の,いずれかが誤記であると認められる。しかし,いずれが誤記であるのかは判断できない。

そこで,どちらが誤記であるかを判断するために,本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」について検討する。

イ 発明の背景及び発明の概要
発明の背景における背景技術を示す段落【0005】及び発明の概要を示す段落【0006】には,
「また,国際公開WO98/55460号には,4-キノリノール誘導体およびこれらを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤が開示されている。しかしながら,ここには,2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-キノリノール誘導体の有用性についてはなんら記載されていない。
本発明者らは,今般,4-キノリノール誘導体の中でも特に6位にt-ブチル(第3ブチル)と,8位にフッ素とを有するもの,すなわち2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-キノリノール誘導体が,イネいもち病に対して有意に高い防除効果を示すことを見出した。この防除効果は,例えば国際公開WO98/55460号に開示されるような他の4-キノリノール誘導体により得られる効果よりも,顕著に優れたものであった。本発明はかかる知見に基づくものである。」
とある。

この記載より,本件特許化合物は「4-キノリノール誘導体の中でも特に6位にt-ブチル(第3ブチル)と,8位にフッ素とを有するもの」であって「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-キノリノール誘導体」とも称呼されること,「4-キノリノール誘導体」自体は従来技術である「国際公開98/55460号」に記載されていること,が示されているといえる。

そして,その「国際公開WO98/55460号」には「4-キノリノール誘導体」は下記の一般式(1)であることが示されている。



該国際公開WO98/55460号の一般式(1)化合物は4位が-OR基である。これは,本件特許の式(1)化合物の4位が-OR基であることと合致するものであり,本件特許の化合物名称において4位がアセチル基であることとは合致しない。

してみると,本件特許の式(1)の化学式が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」が誤記であるとする方が,妥当であるものと考えられる。

ウ 式(1)の化合物の製造方法
上記イは,従来技術との関係についての内容であるので,さらにどちらが誤記であるかを判断するための知見を得るべく,本件特許明細書の記載をみるに,段落【0018】?【0025】には「式(1)の化合物の製造方法」が示され,特に段落【0020】には以下の反応スキームが示される。





該スキームは合理的であり,これに従えば本件特許の式(1)の化学式の化合物が得られると考えられる一方,4位にアセチル基を有する化合物が得られるとはいい難い。

してみると,本件特許の式(1)の化学式が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」が誤記であるとする方が,妥当であるものと考えられる。

上記アで検討した結果,一般式で規定される式(1)の化合物の具体例に,名称で規定される上記化合物は含まれないので,いずれかに誤記があると認められる。そして上記イ及びウで検討した結果,名称で規定される上記化合物の名称が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられる。ついては,何が正しい表記であるかを判断するための知見を得るべく,本件特許明細書の記載,特に「製造例」について検討する。

エ 製造例
段落【0045】に,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」の製造例が示されるので,該記載を検討する。

段落【0045】には,「化合物1」に,無水酢酸を反応させて「化合物2」である「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」が製造されたこと,及び該化合物2の^(1)H-NMRデータとして,「δ(ppm):7.43(1H,dd),7.37(1H,d),2.78(3H,s),2.51(3H,s),2.26(3H,s),1.38(9H,s)」が示される。

その「化合物1」とは,段落【0044】において,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ヒドロキシキノリン」であり,^(1)H-NMRデータは,「δ(ppm):11.27(1H,br.s),7.83(1H,s),7.59(1H,br.d),2.41(3H,s),1.96(3H,s),1.31(9H,s)」であることが示される。

段落【0045】の記載に従えば,化合物2は,化合物1に無水酢酸を反応させたものであるが,この反応に際しては,化合物1の4位の-OH基が,無水酢酸によってエステル化され-OCOCH_(3)基を生じたものと考えることが,当業者には自然である。これは上記ウの本件製法のスキームとも合致する。

したがって,段落【0045】に示された製造過程を経て得られた化合物の名称は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」ではなく,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン」であることが妥当であるものと考えられる。

また,この反応の前後の^(1)H-NMRデータを検討するに,反応前の,化合物1の4位の-OH基由来と考えられる「11.27(1H,br.s)」のシグナルが,反応後,化合物2においては消失するとともに,反応前の,化合物1の2位と3位のメチル基由来と考えられる2つのピークすなわち「2.41(3H,s),1.96(3H,s)」のシグナルが,反応後,化合物2においては3つのピーク「2.78(3H,s),2.51(3H,s),2.26(3H,s)」に増えており,これは2位と3位のメチル基に加え,4位のアセチル基の先端のメチル基が増えた結果と考えられる。このことから,反応が起きたのは4位の-OH基の部位であり,その結果,アセチル基かオキシアセチル基かは不明ながらも,4位に,-CH_(3)を有する基を備えた化合物が製造されたといえ,このことは,上記推測された製造手順と,少なくとも,反してはいない。

オ まとめ
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0045】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項1は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(2)訂正事項2
訂正事項2について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0046】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0046】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項2は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(3)訂正事項3
訂正事項3について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0047】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0047】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項3は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(4)訂正事項4
訂正事項4について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0048】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0048】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項4は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(5)訂正事項5
訂正事項5について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0049】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0049】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項5は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(6)訂正事項6
訂正事項6について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0050】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0050】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項6は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(7)訂正事項7
訂正事項7について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0052】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0052】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項7は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(8)訂正事項8
訂正事項8について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0053】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0053】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項8は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(9)訂正事項9
訂正事項9について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0054】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0054】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項9は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

(10)訂正事項10
訂正事項10について検討するに,上記(1)アと同様に誤記の存在が認められ,上記(1)イ?ウで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「発明の背景」,「発明の概要」及び「式(1)の化合物の製造方法」の記載より,本件特許の式(1)の化合物が誤記であるというよりは,本件特許の化合物名称「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルキノリン」が誤記であるとすることが妥当であるものと考えられ,上記(1)エで検討したのと同様に本件特許明細書の記載,特に「製造例」である段落【0055】の記載より,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルキノリン」は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン」とすべき誤記であったと考えられる。
そうしてみると,特許請求の範囲の請求項2,請求項4,段落【0017】及び段落【0055】の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルキノリン」なる記載は,「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン」の誤記と認められるから,上記訂正事項10は,誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当する。

2 新規事項について
訂正事項1?10は,上記1に示したように,いずれも誤記の訂正を目的としたものであるので,これら訂正事項による訂正が,願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるかについて検討する。

(1)訂正事項1
願書に最初に添付した明細書(以下,「当初明細書」という。)には,「本発明によるイネいもち病防除剤」による「評価試験」に関して記載があり(国際公開パンフレット第15頁以降),該評価試験に使用された化合物が表1(国際公開パンフレット第17頁)及び表2(国際公開パンフレット第19頁)に示されている。そして,該表1及び該表2の化合物No.2とは,訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン」に相当する。
よって,訂正事項1による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(2)訂正事項2
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表2の化合物No.3として,既に示されている。
よって,訂正事項2による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(3)訂正事項3
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表2の化合物No.4として,既に示されている。
よって,訂正事項3による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(4)訂正事項4
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表1及び表2の化合物No.5として,既に示されている。
よって,訂正事項4による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(5)訂正事項5
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表1及び表2の化合物No.6として,既に示されている。
よって,訂正事項5による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(6)訂正事項6
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表1及び表2の化合物No.7として,既に示されている。
よって,訂正事項6による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(7)訂正事項7
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表1及び表2の化合物No.8として,既に示されている。
よって,訂正事項7による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(8)訂正事項8
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表1及び表2の化合物No.9として,既に示されている。
よって,訂正事項8による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(9)訂正事項9
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表1及び表2の化合物No.10として,既に示されている。
よって,訂正事項9による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(10)訂正事項10
訂正後の「2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン」について,当初明細書には,上記(1)で指摘した表1及び表2の化合物No.11として,既に示されている。
よって,訂正事項10による訂正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

3 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1?10は,上記1に示したように,いずれも誤記の訂正を目的としたものであって,訂正前のものと訂正後のものとは,化合物名称は異なるが,実質的に意図する化合物は異ならず,してみると,本件訂正は,特許請求の範囲の拡張や変更をするものではない。

4 訂正後の発明の独立特許要件について
本件訂正後の請求項2及び請求項4に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見あたらない。


第3 むすび
以上のとおりであるから,本件審判の請求は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものであり,かつ,同条第3項ないし第5項の規定に適合するものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
イネいもち病防除剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)の化合物またはその酸付加塩の少なくとも一種を有効成分として含有する、イネいもち病防除剤。
【化1】

[式中、
Rは、水素原子、-COR^(1)、-COOR^(1)(ここでR^(1)は炭素数1?4のアルキル基である)、-COCH_(2)OCH_(3)、または-COCH_(2)OCOCH_(3)である]。
【請求項2】
式(1)の化合物が下記からなる群より選択されるものである、請求項1に記載のイネいもち病防除剤:
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ヒドロキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン、および
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン。
【請求項3】
下記式(1)の化合物またはその酸付加塩を、イネ植物体、土壌または田面水に対して適用することを含んでなる、イネいもち病の防除方法。
【化2】

[式中、
Rは、水素原子、-COR^(1)、-COOR^(1)(ここでR^(1)は炭素数1?4のアルキル基である)、-COCH_(2)OCH_(3)、または-COCH_(2)OCOCH_(3)である]。
【請求項4】
式(1)の化合物が下記からなる群より選択されるものである、請求項3に記載のイネいもち病の防除方法:
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ヒドロキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン、および
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、イネいもち病防除剤に関する。
【0002】
背景技術
これまでに、種々の植物病害に対して防除効果を示す活性物質が、多く見出され、それらを有効成分として含有する様々な植物病害防除剤が開発されてきた。しかしながら、耐性菌の出現などの観点からは、その防除効果には改善の余地があった。
【0003】
植物病害の一つとして、いもち病が挙げられる。いもち病は、糸状菌の一種で、不完全菌類に属するPyricularia属菌の寄生により起こる植物の病気である。特にイネいもち病は、夏期の低温もしくは多雨などの異常気象の際に大発生することがあり、イネの最も重要な病気の一つである。
【0004】
したがって、イネいもち病に対して優れた防除効果を有する防除剤が望まれている。
【0005】
また、国際公開WO98/55460号には、4-キノリノール誘導体およびこれらを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤が開示されている。しかしながら、ここには、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-キノリノール誘導体の有用性についてはなんら記載されていない。
【0006】
【発明の概要】
本発明者らは、今般、4-キノリノール誘導体の中でも特に6位にt-ブチル(第3ブチル)と、8位にフッ素とを有するもの、すなわち2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-キノリノール誘導体が、イネいもち病に対して有意に高い防除効果を示すことを見出した。この防除効果は、例えば国際公開WO98/55460号に開示されているような他の4-キノリノール誘導体により得られる効果よりも、顕著に優れたものであった。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0007】
したがって、本発明は、イネいもち病に対し優れた防除効果を有する化合物および防除剤の提供をその目的とする。
【0008】
そして、本発明は、下記式(1)の化合物、またはその酸付加塩に関するものである。
【0009】
【化3】

[式中、
Rは、水素原子、-COR^(1)、-COOR^(1)(ここでR^(1)は炭素数1?4のアルキル基である)、-COCH_(2)OCH_(3)、または-COCH_(2)OCOCH_(3)である]。
【0010】
また、本発明によるイネいもち病防除剤は、式(1)の化合物またはその酸付加塩の少なくとも一種を有効成分として含有するものである。
【0011】
【発明の具体的説明】
式(1)の化合物
本発明は、前記式(1)の化合物(2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-キノリノール誘導体)、またはその酸付加塩に関するものである。式(1)の化合物またはその酸付加塩は、イネいもち病(Pyricularia oryzae)に対して優れた防除効果を示し、イネいもち病防除剤として有利に使用することができるものである。
【0012】
前記式(1)の化合物において、Rは、水素原子、-COR^(1)、-COOR^(1)、-COCH_(2)OCH_(3)、または-COCH_(2)OCOCH_(3)を示す。ここでR^(1)は炭素数1?4のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、もしくはブチル基が挙げられる。
【0013】
なお、式(1)中においてRが水素原子である場合には、式(1)の化合物は、その互変異性体である下記式(2)に示される構造をとることができる。式(1)の化合物が、前記式(2)の化合物を包含することは当業者にも明らかである。
【0014】
【化4】

本発明において、「酸付加塩」とは、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩等の一般的に農園芸分野において使用可能な塩を意味する。
【0015】
なお、式(1)の化合物は、水和物又は溶媒和物の形態をとることも可能であり、本発明においては、そのような水和物および溶媒和物も式(1)の化合物に包含される。
【0016】
式(1)の化合物の具体例を示せば、下記のものが挙げられる。
【0017】
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ヒドロキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン、
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン、または
2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン。
【0018】
式(1)の化合物の製造方法
本発明による式(1)の化合物は、結合の形成ないし置換基の導入に関して、合目的的な任意の方法によって合成することができる。
【0019】
例えば、既知の方法で合成可能な4-t-ブチル-2-フルオロアニリンから、以下のスキームに従って、式(1)の化合物を製造することができる。
【0020】
【化5】

[上記スキームにおいて、式中、
Rは、水素原子、-COR^(1)、-COOR^(1)(ここでR^(1)は炭素数1?4のアルキル基である)、-COCH_(2)OCH_(3)、または-COCH_(2)OCOCH_(3)であり、R^(2)はR^(1)、-OR^(1)、-CH_(2)OCH_(3)または-CH_(2)OCOCH_(3)である]。
【0021】
このスキームは、先ず、式(2)の化合物を用意し(工程(a))、次いで、この式(2)の化合物を、式(3)または式(4)の化合物と、塩基存在下若しくは塩基非存在下において反応させる(工程(b))ことによって、式(1)の化合物を得るものである。
【0022】
上記スキームを具体的に説明すると、下記の通りである。
【0023】
工程(a)
先ず、4-t-ブチル-2-フルオロアニリンと2-メチルアセト酢酸エチルとから、例えば、J.Am.Chem.Soc.70,2402(1948)、Tetrahedron Lett.27,5323(1986)に準じて、式(2)の化合物を得る。なお、この式(2)の化合物は、式(1)の化合物においてRが水素原子である化合物に相当する。また使用される4-t-ブチル-2-フルオロアニリンは、例えば、Chem.Abs.42,2239またはJ.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1992,595に記載の公知の方法により得ることができる。
【0024】
工程(b)
次いで、式(1)においてRが水素原子以外の化合物を所望する場合には、式(3)または式(4)の化合物で塩基存在下若しくは塩基非存在下で反応させることにより、式(1)の化合物を製造することができる。
【0025】
ここで、使用可能な塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等の有機アミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。また、式(3)または式(4)の化合物は、式(2)の化合物に対して1?50当量、好ましくは1?10当量の範囲で用いることが望ましい。工程(b)の反応は、無溶媒または反応に関与しない有機溶媒中、例えばジメチルホルムアミドまたはテトラヒドロフラン中において、例えば0?140℃の範囲の温度で実施することができる。
【0026】
イネいもち病防除剤
本発明によるイネいもち病防除剤は、前記式(1)の化合物またはその酸付加塩の少なくとも一種を有効成分として含有するものである。
【0027】
ここで「有効成分として含有する」ということは、剤型に応じた担体を含む場合を包含することは当然として、併用可能な他の薬剤を含有してもよいことも意味する。
【0028】
したがって、式(1)の化合物をイネいもち病防除剤として用いる場合には、該式(1)の化合物をそのまま用いてもよいが、通常は適当な固体担体、液体担体、ガス状担体、界面活性剤、分散剤および/またはその他の製剤用補助剤と混合して、乳剤、液剤、水和剤、粉剤、粒剤、油剤、エアゾール、フロアブル剤等の任意の剤型にして使用することができる。
【0029】
このとき、固体担体としては、例えば、タルク、ベンナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、バーミキュライト、ホワイトカーボン、および炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0030】
液体担体としては、例えば、メタノール、n-ヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、n-ヘキサン、ケロシン、灯油等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、ダイズ油、綿実油等の植物油類、ジメチルスルホキシド、および水等が挙げられる。
【0031】
ガス担体としては、例えば、LPG、空気、窒素、炭酸ガス、およびジメチルエーテル等が挙げられる。
【0032】
式(1)の化合物を乳化、分散、もしくは展着等させる目的で使用される界面活性剤もしくは分散剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル類、アルキル(アリール)スルホン酸塩類、ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル類、多価アルコールエステル類、およびリグニンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0033】
さらに、製剤の性状を改善するための補助剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、アラビアガム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
上記の担体、界面活性剤、分散剤、および補助剤は、その各群内および各群間から2種以上選択してそれらを組み合わせて使用してもよい。
【0035】
イネいもち病防除剤中における式(1)の化合物またはその酸付加塩の含有量は、該防除剤の製剤形態、適用方法、使用環境、およびその他の条件を考慮して適宜変更可能であるが、該防除剤が乳剤形態である場合には通常1?75重量%、好ましくは5?30重量%であり、該防除剤が粉剤形態である場合には通常0.3?25重量%、好ましくは1?3重量%であり、該防除剤が水和剤形態である場合には通常1?90重量%、好ましくは5?50重量%であり、また、該防除剤が粒剤形態である場合には通常0.5?50重量%、好ましくは2?30重量%である。
【0036】
本発明によるイネいもち病防除剤は、通常、そのまままたは希釈して用いられる。
【0037】
本発明によるイネいもち病防除剤の使用態様としては、例えば、イネ植物体自体への適用(茎葉散布)、育苗箱への適用(育苗箱施用)、土壌への適用(土壌混和もしくは側条施用)、田面水への適用(水面施用もしくは本田施用)、および種子への適用(種子処理)等が挙げられる。
【0038】
本発明の別の態様として、式(1)の化合物またはその酸付加塩を、イネ植物体、土壌または田面水に対して適用することを含んでなる、イネいもち病の防除方法が提供される。
【0039】
本発明によるイネいもち病防除剤の使用量は、その使用環境およびイネの生育状態等に応じて適宜変更可能であるが、例えば、イネ生育用の土壌または田面水に対して該防除剤を適用する場合には、有効成分量で10アール当たり9?500g、好ましくは30?300g使用することが好ましい。
【0040】
また、本発明によるイネいもち病防除剤は他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物成長調節剤、肥料等と混合して用いてもよい。
【0041】
【実施例】
以下本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるれものではない。
【0042】
製造例
本発明による化合物1?11を下記のようにして製造した。また比較例である化合物12?14も前記化合物と同様にして製造した。
【0043】
4-t-ブチル-2-フルオロアニリンの製造
アセトニトリル(200ml)にSELECTFLUOR(Aldrich Chemical Company Inc製)(1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンビステトラフルオロボレート)(15g)を70℃で30分加熱し、溶解させた。得られた反応液を60℃まで冷却し、これに4-t-ブチル-アセトアニリド(5.7g)を加えた。100℃で1時間撹拌し、放冷後、該反応液を水(200ml)に加え、これを酢酸エチルを用いて抽出した(100ml、2回)。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200(和光純薬工業社製),溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(10:1))を用いて精製し、4-t-ブチル-2-フルオロ-アセトアニリド(3.06g)を得た。この4-t-ブチル-2-フルオロ-アセトアニリド(3.67g)を、エタノール(30ml)と濃塩酸(15ml)の混合液中に加え、これを95℃において2時間撹拌した。この反応液を放冷後、水にあけ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、酢酸エチルを用いて抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水を用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去して、4-t-ブチル-2-フルオロアニリン(3.49g)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.01(1H,dd),6.95(1H,dd),6.73(1H,m),1.28(9H,s)
【0044】
化合物1:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ヒドロキシキノリン
上記のプロセスに従って得られた4-t-ブチル-2-フルオロアニリン(4.79g)と2-メチル-アセト酢酸エチル(4.96g)とを、トリフルオロボロンエーテレート(0.3ml)の存在下、トルエン中(60ml)において3時間還流し、反応液を得た。得られた反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水を用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下においてその溶媒を留去した。得られた反応生成物をジフェニルエーテル(80ml)中において1時間還流し、放冷させた後、析出した生成物を減圧下で濾取し、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ヒドロキシキノリン(化合物1)(1.66g)を得た。この化合物の重DMSO(ジメチルスルホキシド)中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):11.27(1H,br.s),7.83(1H,s),7.59(1H,br.d),2.41(3H,s),1.96(3H,s),1.31(9H,s)
【0045】
化合物2:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン
化合物1(50mg)を、無水酢酸(3ml)中において、120℃で3時間撹拌して反応液を得た。得られた反応液から減圧下において無水酢酸を留去した。得られた残渣を酢酸エチルで溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(5:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセチルオキシキノリン(化合物2)(35.7mg)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.43(1H,dd),7.37(1H,d),2.78(3H,s),2.51(3H,s),2.26(3H,s),1.38(9H,s)
【0046】
化合物3:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(20mg)をテトラヒドロフラン(3ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(124mg)を加えて、30分間撹拌した。これにプロピオニルクロリド(200μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-プロピオニルオキシキノリン(21mg)(化合物3)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.42(1H,dd),7.36(1H,d),2.81(2H,q),2.75(3H,s),2.25(3H,s),1.43(3H,t),1.37(9H,s)
【0047】
化合物4:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(20mg)をテトラヒドロフラン(3ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(124mg)を加えて、30分間撹拌した。これにブチリルクロリド(200μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ブチリルオキシキノリン(化合物4)(64mg)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.43(1H,dd),7.37(1H,d),2.76(2H,t),2.75(3H,s),2.25(3H,s),1.94(2H,m),1.37(9H,s),1.15(3H,t)
【0048】
化合物5:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(20mg)をテトラヒドロフラン(3ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(124mg)を加えて、30分間撹拌した。これにバレリルクロリド(200μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-バレリルオキシキノリン(化合物5)(120mg)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.42(1H,dd),7.37(1H,d),2.78(2H,t),2.75(3H,s),2.25(3H,s),1.89(2H,m),1.56(2H,m),1.37(9H,s),1.03(3H,t)
【0049】
化合物6:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(20mg)をテトラヒドロフラン(3ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(124mg)を加えて、30分間撹拌した。これにクロロギ酸メチル(200μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシカルボニルオキシキノリン(化合物6)(100mg)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.45(1H,br.s),7.43(1H,dd),4.00(3H,s),2.76(3H,s),2.31(3H,s),1.38(9H,s)
【0050】
化合物7:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(60mg)をテトラヒドロフラン(10ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(200mg)を加えて、30分間撹拌した。これにクロロギ酸エチル(200μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-エトキシカルボニルオキシキノリン(化合物7)(220mg)を得た。
【0051】
この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.45(1H,br.s),7.43(1H,dd),4.40(2H,q),2.32(3H,s,),2.04(3H,s),1.44(3H,t),1.38(9H,s)
【0052】
化合物8:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(20mg)をテトラヒドロフラン(3ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(124mg)を加えて、30分間撹拌した。これにクロロギ酸ノルマルプロピル(200μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルプロポキシカルボニルオキシキノリン(化合物8)(96mg)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.45(1H,br.s),7.43(1H,dd),4.35(2H,t),2.75(3H,s),2.31(3H,s),1.82(2H,m),1.38(9H,s),1.04(3H,t)
【0053】
化合物9:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(60mg)をテトラヒドロフラン(10ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(200mg)を加えて、30分間撹拌した。これにクロロギ酸ノルマルブチル(200μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-ノルマルブトキシカルボニルオキシキノリン(化合物9)(142mg)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.45(1H,d),7.43(1H,dd),4.35(2H,t),2.75(3H,s),2.32(3H,s),1.77(2H,m),1.48(2H,m),1.38(9H,s),0.99(3H,t)
【0054】
化合物10:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(165mg)をテトラヒドロフラン(10ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(680mg)を加えて、30分間撹拌した。これにメトキシアセチルクロリド(200μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-メトキシアセチルオキシキノリン(化合物10)(390mg)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.42(1H,dd),7.35(1H,d),4.51(2H,s),3.62(3H,s),2.75(3H,s),2.26(3H,s),1.37(9H,s)
【0055】
化合物11:2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン
60%水素化ナトリウム(44mg)をテトラヒドロフラン(10ml)に懸濁し、そこに、氷冷下、化合物1(200mg)を加えて、30分間撹拌した。これにアセトキシアセチルクロリド(100μl)をさらに加えて3時間撹拌した。得られた反応液を氷水にあけ、これを酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200,溶出溶媒n-ヘキサン-酢酸エチル(3:1))にて精製して、2,3-ジメチル-6-t-ブチル-8-フルオロ-4-アセトキシアセチルオキシキノリン(化合物11)(140mg)を得た。この化合物の重クロロホルム中における^(1)H-NMRデータを以下に示す。
δ(ppm):7.43(1H,dd),7.42(1H,br.s),5.02(2H,s),2.75(3H,s),2.27(3H,s),2.23(3H,s),1.40(9H,s)
【0056】
化合物12?14(比較例)
上記した各化合物の製造方法と同様にして、後述する表1に示されるような構造を有する化合物12?14を製造した。これら化合物12?14は本発明の比較例に相当する。
【0057】
イネいもち病防除剤の製造
製造例1:水和剤
下記組成の各成分を均一に混合して、粉砕し、水和剤を得た。
【0058】
化合物2 25 重量%
クレー 30 重量%
ケイソウ土 35 重量%
リグニンスルホン酸カルシウム 3 重量%
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル 7 重量%
【0059】
製造例2:粉剤
下記組成の各成分を均一に混合して、粉剤を得た。
【0060】
化合物2 2 重量%
クレー 60 重量%
タルク 37 重量%
ステアリン酸カルシウム 1 重量%
【0061】
製造例3:乳剤
下記組成の各成分を均一に混合して、溶解させ、乳剤を得た。
【0062】
化合物2 20 重量%
N,N-ジメチルホルムアミド 20 重量%
キシレン 50 重量%
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル 10 重量%
【0063】
評価試験
試験1:イネいもち病感染阻害試験(イネいもち病の予防試験)
培養土を入れたプラスチック製ポットに播種した後に15日程度育苗して、第3葉が完全に展開したイネ(品種:十石)を供試植物とした。
【0064】
本発明によるイネいもち病防除剤を10%アセトン水(ネオエステリンを2000倍で加用)で希釈して所定の各濃度に調整した試験用薬液をそれぞれ調製した。得られた各薬液をスプレーガンを用いてそれぞれ、3ポットあたり10ml散布処理し、風乾させた。
【0065】
次いで、予めイネいもち病菌を培養しておいたシャーレよりイネいもち病菌を採集して、分生胞子懸濁液(1?5×10_(6)/ml)を調製した。この分生胞子懸濁液を、前記ポットにそれぞれ均一に噴霧接種した後、25℃の湿室内に24時間、各ポットを静置した。その後夜間20℃、日中25℃の人工気象室に移してイネを発病させた。
【0066】
接種7日後に第3葉の病斑数を数え、処理区の場合に得られた結果と、無処理区の場合に得られた結果とを求め、下記式に従って、各場合の防除価を算出した。
【0067】
防除価=[1-(処理区の病斑数/無処理区の病斑数)]×100
結果は表1に示されるとおりであった。
【0068】
【表1】

【0069】
試験2:イネいもち病病斑進展阻害試験(イネいもち病の治療試験)
培養土を入れたプラスチック製ポットに播種した後に15日程度育苗して、第3葉が完全に展開したイネ(品種:十石)を供試植物とした。
【0070】
予めイネいもち病菌を培養しておいたシャーレよりイネいもち病菌を採集して、分生胞子懸濁液(1?5×10_(6)/ml)を調製した。この分生胞子懸濁液を、前記ポットに均一に噴霧接種した後、25℃の湿室内に24時間、各ポットを静置した。その後夜間20℃、日中25℃の人工気象室に移してイネを発病させた。
【0071】
接種48時間後に、本発明によるイネいもち病防除剤を所定の各濃度に調整して薬液を調製し、各薬液をそれぞれスプレーガンを用いて3ポットあたり10ml散布処理し、風乾させた。次いで、再び前述の人工気象室に移して発病させた。
【0072】
接種7日後に第3葉の病斑数を数え、処理区の場合に得られた結果と、無処理区の場合に得られた結果とを求め、感染阻害試験の場合と同様に、各場合の防除価を算出した。
【0073】
結果は表2に示されるとおりであった。
【0074】
【表2】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-02-03 
出願番号 特願2002-500845(P2002-500845)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (A01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福島 芳隆  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 齊藤 真由美
東 裕子
登録日 2008-07-11 
登録番号 特許第4152742号(P4152742)
発明の名称 イネいもち病防除剤  
代理人 宮嶋 学  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 伊藤 武泰  
代理人 横田 修孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 宮嶋 学  
代理人 中村 行孝  
代理人 横田 修孝  
代理人 伊藤 武泰  
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