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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1233585
審判番号 不服2008-7683  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-27 
確定日 2011-03-10 
事件の表示 特願2002-582028「周波数ホッピングRFIDシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月24日国際公開、WO02/84328、平成16年11月25日国内公表、特表2004-535700〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成14年4月1日(優先権主張2001年4月11日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成19年5月23日付けで拒絶理由が通知され、同年11月27日付けで手続補正書が提出され、同年12月25日付けで拒絶査定され、これに対して平成20年3月27日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.平成20年3月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年3月27日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の請求項2に係る発明
平成20年3月27日付けの手続補正(以下,「本願補正」という)は、本願補正前の平成19年11月27日付け手続補正書により補正された請求項18の内容を、
「【請求項18】
無線周波数識別(RFID)システムであって、
連続波後方散乱を介して無線周波数信号を反射するように構成されたRFIDデバイスと、
時間の経過とともに、擬似乱数的に選択された周波数において無線周波数信号を生成および送信し、ヘテロダイン受信技術を用いて、該RFIDデバイスから反射された変調された無線周波数信号を受信するように構成されたRFID呼び掛け器と
を含む、システム。」
から、
「【請求項2】
無線周波数識別(RFID)システムであって、
連続波後方散乱を介して無線周波数信号を反射するように構成されたRFIDデバイスと、
時間の経過とともに、擬似乱数的に選択された周波数において無線周波数信号を生成および送信し、ヘテロダイン受信技術を用いて、該RFIDデバイスから反射された変調された無線周波数信号を受信するように構成されたRFID呼び掛け器と
を含み、
該RFIDデバイスは、該RFID呼び掛け器から受信された該送信された無線周波数信号内に含まれるデータを取り出し、該取り出されたデータに基づいて、該RFIDデバイスにデータを格納するようにさらに構成されている、システム。」
に、変更する補正を含むものである。

上記補正は、補正前の請求項18における「RFIDデバイス」について、「該RFIDデバイスは、該RFID呼び掛け器から受信された該送信された無線周波数信号内に含まれるデータを取り出し、該取り出されたデータに基づいて、該RFIDデバイスにデータを格納するようにさらに構成されている」点を限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正後の上記請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。


(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定において引用された特表2000-507411号公報(以下、「引用例1」という)には、下記の事項が記載されている。

(あ)「発明の背景
物流コンテナ、鉄道車両及び自動車は、それらが使用中において、しばしば移動中において、識別することが必要とされる。その後方散乱が連続波を変調させてデジタル識別コードを有する変調信号を反射させる能動的又は受動的「タグ」を使用する遠隔識別に有用なシステムは本発明と同一の譲受人へ譲渡されている米国特許第4,739,328号及び第4,888,591号に記載されている。後方散乱変調信号は、通常、元の信号(ソース)を送信した同一のシステムによって受信され、且つ該デジタルコードは変調され且つデコードされて識別情報を与え、それは所望により処理することが可能である。
これらのシステムの多くの適用例において、それらの情報を同時的に処理せねばならない幾つかのタグが設けられている物体が互いに近くに存在している場合がある。これらの種類のシステムにおいては、そのシステム内の乗物(レーン)に対して一つずつ複数個の「読取器」がタグによって受信されるべき送信信号の供給源として使用されている。これらの読取器の各々は、「質問信号」を放射(供給)し、それは、そのそれぞれのレーン内のタグによって受信されると、後方散乱変調され、関連する読取器へ反射波を返す。該システム内の各読取器は、そのレーン内のタグに対して読取りが行われることを確保するために充分に大きな区域に亘って放射するものでなければならない。」(第8頁第8行?第26行)

(い)「説明
図1を参照すると、質問用無線周波数(RF)信号を発生するための供給源9が大略14で示した読取器内におけるトランシーバ10へ接続している。供給源9からの質問用RF信号は例えば915MHzなどの適宜の周波数を有することが可能である。供給源9が付勢されると、トランシーバ10はアンテナ12を介して電子的タグ(トランスポンダ)18における適宜のアンテナ16(例えば、ダイポールアンテナ)へ質問用RF信号を送信する。トランスポンダ18は物体(不図示)と関連しており且つその物体を識別するために使用される。トランスポンダ18は、該物体を識別するための個別的なパターンにおいての二進1と二進0とからなるシーケンスを与える例えばリードオンリーメモリ(ROM)22などのデータ供給源を有している。
リードオンリーメモリ22内の二進「1」は変調器20をして第一複数個の信号サイクルを供給させ且つリードオンリーメモリ22における二進「0」は変調器20をして第一複数個の信号とは異なる第二複数個の信号サイクルを発生させる。変調器20によってシーケンシャルに発生される該複数個の信号サイクルは、二進1及び二進0のパターンを表わし、それは該物体を識別するものであって、読取器14におけるアンテナ12へ送信するためにダイポールアンテナ16へ導入される。
アンテナ12は受信した信号をトランシーバ10へ供給し信号プロセサ24によって処理される。信号プロセサ24はトランスポンダ18におけるリードオンリーメモリ22内の1及び0のパターンを識別するパターンをもったシーケンスで信号を発生する。該シーケンスは読取器14内において所望のシーケンスと比較され、識別された物体が該読取器によって求められていたものであるか否かの判別を行う。」(第11頁第16行?第12頁第11行)

(う)「本発明システムは、図2において詳細に示した大略50で示した読取器を使用しており、それは図1に示し且つ上に説明したものとある部分において同様のものと考えることが可能である。読取器50は電子的タグ(不図示)へ送信するための質問信号を発生する。読取器50は、大略100で示した周波数ホッピング供給源を有しており、それは電気的にプログラム可能な論理装置(EPLD)200を有しており、該論理装置は擬似ランダムコード発生器として作用し、その出力はデジタル・アナログ変換器(DAC)202へ導入される。EPLD200からの出力信号は、EPLD200によって派生された擬似ランダムシーケンスの選択された状態に関連しているデジタルワードである。一実施例においては、EPLD200からの出力信号はDAC202へパスされ、それは擬似ランダムコードシーケンスの低ビットの精密なデジタル・アナログ変換で発生される場合がある位相ノイズを除去するために12ビットの分解能を有している。EPLD200は図3に関連して後に更に詳細に説明する。
DAC202は、EPLD200から受取った入力をデジタル信号からアナログ信号へ変換する。一実施例においては、アナログデバイシーズ、インコーポレイテッドによって製造された部品番号AD7245AARの12ビットDACを使用する。
DAC202の出力はオペアンプ204への入力として導入される。オペアンプ204はレベル翻訳器であり、それはDAC202から受取った信号レベルをとり且つそれを電圧制御型オシレータ(VCO)206を制御するのに適したレベルへ変換する。一実施例においては、オペアンプ204はリニアテクノロジー、インコーポレイテッドによって製造された部品番号LT1210の増幅器である。
オペアンプ204の利得は、オペアンプ204へ結合されている設定点をトリミングすることにより調節される。特に、オペアンプ204における上側の設定点は、DAC202から受取った全てが「1」の条件を処理することによって設定される。該設定点はオペアンプ204の出力を全て「1」の条件が存在する所望の高出力レベルへ駆動するように調節される。その後に、より低い設定点が、DAC202からオペアンプ204への全てが「0」の入力を処理することによって設定される。この低出力状態と関連しているトリミング用ポット(不図示)が全て「0」の条件が存在する所望の低出力レベルへ出力を駆動するように調節される。最後に、DAC202からオペアンプ204への交互の「1」及び「0」入力を処理することにより中間設定点が設定される。この中間レベル出力状態と関連するトリミング用ポット(不図示)は、交互パターンが存在する所望の中間レベル出力へ該出力を駆動するように調節される。
一実施例においては、熱安定化ネットワーク(不図示)がオペアンプ204へ結合されて、読取器50の動作温度範囲に亘りオペアンプ出力が温度によりドリフトすることを防止する。熱安定化を行うために、負の温度係数を有する抵抗回路網又は当該技術分野において公知のその他の安定化回路網を使用することが可能である。
オペアンプ204の出力は電圧制御型オシレータ(VCO)206へ導入され、該オシレータは読取器50によって発生された質問信号の周波数を変化させる。一実施例においては、VCO206は902-928MHzの周波数の出力信号を供給する。VCO206の出力パワーは約-2乃至2dBmである。VCO206に対する同調係数は約10MHz/Vである。
VCO206の出力は無線周波数(RF)増幅器208内に導入される。RF増幅器208はVCO出力信号を約30dBmへブーストさせる。RF増幅器208の出力はトランシーバ10内へ導入される。一実施例においては、トランシーバ10はホモダイントランシーバである。トランシーバ10は、図5に関連して以下に詳細に説明する。
トランシーバ10の出力はバンドパスフィルタ(BPF)210へ結合され、該フィルタの出力はアンテナ12へ結合される。一実施例においては、該バンドパスフィルタはモトローラセラミックスディビジョン、インコーポレイテッドによって製造されている部品番号09l5c45335である。これで読取器50の送信部分が完成される。
電子的タグ(不図示)から返されて受取った変調質問信号はアンテナ12において受信され且つトランシーバ10へ結合される。変調されたRF信号は検知器212へ送られ、該検知器の出力は信号プロセサ216へ入力する前に前置増幅器214によって増幅される。検知器212及び前置増幅器214については図5に関連して後に詳細に説明する。信号プロセサ216については図6に関連して後に詳細に説明する。」(第12頁第20行?第14頁第27行)

(え)「読取器50の詳細について上に説明したので、単一及びマルチレーン形態における電子的タグに関連した読取器50の動作について説明する。図1及び2を参照して、単一読取器の構成において、読取器50が選択した周波数帯域における周波数範囲に亘って変化する周波数を有する質問信号を発生する。その質問信号は、周波数ホッピング供給源100によって発生され且つホモダイントランシーバ10を介して電子的タグ18へ送信される。電子的タグ18は、その中に格納されているID情報を変調し且つコード化した信号を処理するために読取器50へ戻す。特に、電子的タグ18は該質問信号を後方散乱変調し、電子的タグ18と関連しているROM22内に格納されているIDと関連している振幅変調リターン信号を与える。該変調信号はホモダイントランシーバ10へリターンされる。検知器212が検知し且つPLD600(図6)がID情報をデコードし、従ってそのID情報はマイクロコントローラ610(図6)へパスされる。」(第23頁第3行?第15行)

(お)上記(え)には、「電子的タグ18は該質問信号を後方散乱変調し、電子的タグ18と関連しているROM22内に格納されているIDと関連している振幅変調リターン信号を与える」ことが記載されているので、引用例1に記載された電子的タグは、「質問信号を後方散乱変調して反射するように構成された」ものであるといえる。

上記(あ)乃至(お)及び関連図面の記載から、引用例1には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「物体識別システムであって、
質問信号を後方散乱変調して反射するように構成された電子的タグと、
擬似ランダムシーケンスに基づいて変化する周波数を有する前記質問信号を生成して送信し、ホモダイントランシーバにより前記電子的タグから反射され変調された質問信号を受信する読取器と、
を含む物体識別システム。」

(2-2)引用例2
原査定において引用された特表平11-514507号公報(以下、「引用例2」という)には、下記の事項が記載されている。

(か)「 発明の開示
本発明は、その構成要素として1つ以上の(典型的に天井取付け)トランシーバ及び多数のESL(又はタグ)受信機/再帰反射器を含むシステムで構成される。そのシステムトランシーバ送信信号は、搬送波(好適には2.4GHz中心)を2進位相偏移変調[Binary Phase Shift Keying(BPSK)]する各データビット毎にNチップ(N>10)の一次直接順序スペクトル拡散[underlying Direct Sequence Spectrum(DSSS)疑似ランダム列で以て両側波帯振幅変調(オンオフキード)された送信である。チッピング率(chipping rate)を説明する他の方法は、これがデータ率のそれの少なくとも10倍が望ましいと云うことである。ESLへ送信しようとする情報に対するオンオフキード変調は、マンチェスターコード化を通して送信された情報にかかわらず搬送波の平均デューティサイクルを保存する。送信機はFCCパーツ(Parts)15.247、15.205、及び15.209に従って運転し、1ワットより低い放射電力レベルを維持し、不許可運転に対する要件に適合する。
本発明は、中心周波数(例えば、上述の2.4GHz)に同調した簡単なアンテナ、低コストショットキーダイオード又はPINダイオード、(100万分の±100の許容差を有する)1から10MHz水晶を使用する水晶発振器、及びいくつかの受動構成要素で構成される低コストESL「受信機]を採用する。その前置部分(front end)は、アンテナ及びダイオードを含む。このダイオードは、RF受信用検波器として機能し、かつ(下に説明するように)アップリンク応答用混合及び変調器としてまた機能する。ESLが受信するとき、同調アンテナによって収集されたRFエネルギーが浅くバイアスされたダイオードによって検波される。先に述べたように、ダウンリンクデータ変調は、オンオフキーイングである。ダイオードは、(低電力論理内に実現された)復調器と一緒になって、着信メッセージを表す遷移を抽出しかつその結果を受信シフトレジスタ内へ供給する。復調器は、増幅器及びマンチェスターデコーダで構成される。
ESLが「送信する」とき、このダイオードは、システムトランシーバから受信した[スペクトル拡散直接順序(spread spectrum direct sequence)変調]された信号(これはいかなるデータによっても変調されていない)を内部(例えば、10.7MHz)発振信号と混合し、それによって、受信された信号より各々10.7MHzだけ偏移させれた、1つは上の、1つは下の、2つの周波数成分を発生する。送信されたデータは、10.7MHz発振器の位相を反転することによって変調され、それによってDBPSK[差動2進位相偏移変調(differential Binary Phase-Shift Keyed)]が反射エネルギーを変調する。10.7MHz発振器は、送信中のみ動作し、ESLのエネルギー源を保全する。換言すれば、10.7MHz発振器は、ラベル送信が行われないときは除勢される。
システムトランシーバ受信機は、受信された反射信号を(典型的に天井に取り付けられた)送信アンテナからの送信に使用された同じ疑似ランダム列とコヒーレントに相関させる。ESL(又はタグ)から受信された信号は、システムトランシーバから送信された信号にESLからの10.7MHzDBFPK変調されたデータ流を乗じたもので構成される。(やはり典型的に天井に取り付けられた)受信アンテナからの信号は、低雑音増幅器内で増幅され、送信アンテナの信号と混合されることによって中間周波数(IF)にダウン変換され、かつ帯域通過フィルタに通される。この混合は、搬送波を変調するために使用された同じ疑似ランダム列との相関を生じる。相関された信号は、ベースバンドに変換され、サンプルされ、量子化され、かつ容易に入手可能なディジタル信号プロセッサ集積回路を使用して処理される。DSPアルゴリズムが、ビット、フレームタイミング、搬送波位相、周波数誤り、及びESL変調情報を抽出するために使用される。」(第20頁第9行?第22頁第1行)

(き)「アンテナ22に受信されたエネルギーは、低雑音増幅器23を通り、次いで混合器24内でアンテナ13から送信されつつある(線路25上を搬送される)同じ信号と混合される。この混合は、2つの目的に役立つ。第一に、この混合は、従来のスーパヘテロダインとして作用し、中間周波数(IF)信号を34に生じ、IF信号は次いで下流の電子回路によって処理される。スーパヘテロダイン受信は、下流の電子回路がギガヘルツレベルで機能しなくてよく、代わりに僅か10MHz程度であるオフセット周波数で機能するだけでよいことを意味する。」(第25頁第10行?第16行)

(く)「当業者が認めるように、非常に多数のスペルトル拡散技術が知られており、これらは、ここに示された構成で、説明された利益をもたらす。これらの技術には、周波数ホッピング及びその他の位相偏移変調がある。」(第26頁第23行?第26行)

上記(か)乃至(く)及び関連図面の記載から、引用例2には、実質的に下記の事項が記載されている。
「周波数ホッピング方式でスペクトル拡散された信号をトランシーバから送信し、タグ受信機は送信された信号を受信して反射し、該トランシーバは反射された信号をスーパーヘテロダイン技術により中間周波数に変換するシステム。」


(3)対比
(3-1)本願補正発明と引用発明との対応関係について
(ア)引用発明の「質問信号」、「電子的タグ」、「読取器」は、本願補正発明の「無線周波数信号」、「RFIDデバイス」、「RFID呼び掛け器」に相当する。

(イ)引用発明の「物体識別システム」は、無線周波数信号である「質問信号」を用いて物体の識別を行うものであるから、本願補正発明の「無線周波数識別(RFID)システム」に相当する。

(ウ)引用発明では、電子的タグが質問信号を後方散乱変調して読取器が受信する信号を生成しているので、質問信号は連続波であると認められることから、引用発明の「質問信号を後方散乱変調して反射するように構成された電子的タグ」は、本願補正発明の「連続波後方散乱を介して無線周波数信号を反射するように構成されたRFIDデバイス」に相当する。

(エ)引用発明の質問信号の周波数は、「擬似ランダムシーケンスに基づいて変化する周波数」であるから、「時間の経過とともに、擬似乱数的に選択された周波数」でもあるともいえるので、引用発明の「擬似ランダムシーケンスに基づいて変化する周波数を有する前記質問信号を生成して送信し」は、本願補正発明の「時間の経過とともに、擬似乱数的に選択された周波数において無線周波数信号を生成および送信し」に相当する。

(3-2)本願補正発明と引用発明の一致点について
上記の対応関係から、本願補正発明と引用発明は、下記の点で一致する。
「無線周波数識別(RFID)システムであって、
連続波後方散乱を介して無線周波数信号を反射するように構成されたRFIDデバイスと、
時間の経過とともに、擬似乱数的に選択された周波数において無線周波数信号を生成および送信し、該RFIDデバイスから反射された変調された無線周波数信号を受信するように構成されたRFID呼び掛け器と
を含むシステム。」

(3-3)本願補正発明と引用発明の相違点について
本願補正発明と引用発明は、下記の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明では、「ヘテロダイン受信技術」を用いているのに対し、引用発明はホモダイン受信技術を用いている点。

(相違点2)
本願補正発明の「RFIDデバイス」は、「該RFID呼び掛け器から受信された該送信された無線周波数信号内に含まれるデータを取り出し、該取り出されたデータに基づいて、該RFIDデバイスにデータを格納するようにさらに構成」されているのに対し、引用発明はそのような構成とはなっていない点。


(4)当審の判断
(4-1)相違点1について
周波数ホッピング通信システムの受信構成において、ヘテロダイン受信技術が用いられることは、例えば、特開昭63-245145号公報に記載されているように周知であり、また、上記2.(2)(2-2)に記載したように引用例2には、
「周波数ホッピング方式でスペクトル拡散された信号をトランシーバから送信し、タグ受信機は送信された信号を受信して反射し、該トランシーバは反射された信号をスーパーヘテロダイン技術により中間周波数に変換するシステム。」
が記載されているので、周波数ホッピング通信システムを採用したRFIDにおいて、受信側の構成にヘテロダイン技術を適用することは格別な事項であるとは認められない。
してみると、ので、引用発明において、ホモダイン受信技術の代わりに「ヘテロダイン受信技術」を適用することは当業者が容易に想到し得たものである。

(4-2)相違点2について
RFIDの技術分野では、質問器(RFID基地局)から送信されたデータをトランスポンダ(RFIDタグ)側のメモリに格納することは、例えば、特開平10-229351号公報(【0003】)、特開平11-326507号公報(【0058】)に記載されているように周知技術である。
よって、RFIDの技術分野に属する引用発明において、上記周知技術を採用することにより「電下的タグ(RFIDデバイス)」を、「該RFID呼び掛け器から受信された該送信された無線周波数信号内に含まれるデータを取り出し、該取り出されたデータに基づいて、該RFIDデバイスにデータを格納するようにさらに構成」することは、当業者が容易に想到し得たものである。

(4-3)本願補正発明の作用効果について
また、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用例2の記載事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。


(5)むすび
よって、本願補正発明は、引用発明、引用例2の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本願補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成20年3月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成19年11月27日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項18に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「【請求項18】
無線周波数識別(RFID)システムであって、
連続波後方散乱を介して無線周波数信号を反射するように構成されたRFIDデバイスと、
時間の経過とともに、擬似乱数的に選択された周波数において無線周波数信号を生成および送信し、ヘテロダイン受信技術を用いて、該RFIDデバイスから反射された変調された無線周波数信号を受信するように構成されたRFID呼び掛け器と
を含む、システム。」


(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例2の記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。


(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「RFIDデバイス」について、「該RFIDデバイスは、該RFID呼び掛け器から受信された該送信された無線周波数信号内に含まれるデータを取り出し、該取り出されたデータに基づいて、該RFIDデバイスにデータを格納するようにさらに構成されている」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明、引用例2の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例2の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、引用例2の記載事項及び周知技術に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-15 
結審通知日 2010-10-18 
審決日 2010-10-29 
出願番号 特願2002-582028(P2002-582028)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江口 能弘藤井 浩  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 飯田 清司
長島 孝志
発明の名称 周波数ホッピングRFIDシステム  
代理人 森下 夏樹  
代理人 安村 高明  
代理人 山本 秀策  

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