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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1233633
審判番号 不服2010-6055  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-19 
確定日 2011-03-10 
事件の表示 特願2007-212521号「車両用変速機の変速制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年3月5日出願公開、特開2009-47216号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年8月17日の出願であって、平成21年12月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成22年3月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、
「【請求項1】
車両に搭載された変速機の変速段を制御する変速機制御装置であって、
前記車両には、アクセルペダルの踏み込みを検出するアクセル検出器とブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキ検出器とが装着され、
前記変速機制御装置は、前記車両の車速と前記車両に搭載されたエンジンのアクセル開度とに対応して変速段を決定する変速段決定手段を備え、
前記変速段決定手段は、現ギヤ段よりも高速のギヤ段へ変速するシフトアップのときの変速段領域を定めるシフトアップ用シフトマップと、現ギヤ段よりも低速のギヤ段へ変速するシフトダウンのときの変速段領域を定めるシフトダウン用シフトマップとを有し、前記シフトダウン用シフトマップの変速段領域は、同一のギヤ段では前記シフトアップ用シフトマップよりも車速の小さい領域に設定されており、さらに、
前記変速機制御装置は、前記アクセル検出器及び前記ブレーキ検出器からの入力信号によって、アクセルペダルの踏み込みを検出した以後アクセルペダルの操作には関係なくブレーキペダルの踏み込みを検出するまでの加速モード期間と、ブレーキペダルの踏み込みを検出した以後ブレーキペダルの操作には関係なくアクセルペダルの踏み込みを検出するまでの減速モード期間とを判別するモード判別手段を備えており、
前記減速モード期間においては、現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を禁止し、かつ、前記シフトダウン用シフトマップで定められる変速段領域を車速が増大する方向に補正することを特徴とする変速機制御装置。」と補正された。(下線部は、審判請求人が補正箇所に関して付したものである。)

上記補正は、請求項1についてみると、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「シフトダウン用シフトマップ」について「前記シフトダウン用シフトマップの変速段領域は、同一のギヤ段では前記シフトアップ用シフトマップよりも車速の小さい領域に設定されて」と限定すると共に、「高速段」を「現ギヤ段よりも高速のギヤ段」と言い換え、また、「低速段」を「現ギヤ段よりも低速のギヤ段」と言い換えたものであって、これは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)引用例1
特公昭48-7137号公報(以下、「引用例1」という。)には、「自動変速機用ガバナー」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。なお、拗音、促音等適宜修正した箇所がある。
(あ)「本発明は自動車のように内燃機関その他の原動機より自動変速機を経て駆動車輪に動力を伝達する車両の変速点を決定するガバナーに関するもので、車速としてはタコゼネレーターで発生した電位を信号に取る。アクセルペダルの操作量としてこれと連動するポテンシオメーターで検出される電位を信号に取り、この両者の関係を電子回路によって演算して変速点を決定するものである。」(第1頁第1欄第21?28行)
(い)「第2図は車両が平地走行している時のシフトパターンである。」(第4頁第7欄第4?5行)
(う)「この様にアクセルペダルの操作量が一定で車速が変化することによって変速するが、同様にして車速が一定でもアクセルペダルの操作量を変えると電位Vbが変化するので変速することができる。この点の連続は第2図において線で表わされている。図のzbcdeは第1速から第2速へ、zfghiは第2速から第3速へ、zjklmは第3速から第2速へ、znopqは第2速から第1速へ変化する線を示す。」(第4頁第8欄第6?15行)
(え)「第3図は変速点を高速側に移すためにスイッチDを開いた場合のシフトパターンを示す。これは登坂中又はエンジンブレーキの必要な時、或はエンジンが低温であるために変速点を高速側に移す必要のある場合に自動的又は手動的に操作される。」(第4頁第8欄第19?23行)
(お)「このような電子回路によるガバナーによって自動変速機の変速点を決定すれば次の様な利点を得ることが出来る。
(1)・・・略・・・
(2)車両が坂道にかかった場合に車両の傾斜を検出するセンサーの信号によりスイッチDを切り、変速点を高速側に移し、アクセルペダルを操作することによって起りやすい変速のハンチングを防止することができる。
(3)エンジンブレーキを得たい時にブレーキペダルに連動したスイッチ、又は手動スイッチによって信号を送り、スイッチDを切り変速点を高速側に移し、エンジンブレーキを利用しやすくする。」(第4頁第8欄第44行?第5頁第9欄第16行)
(か)上記記載事項(特に、(う))及び第2図からみて、シフトパターンは、現ギヤ段よりも高速のギヤ段へ変速するシフトアップ(第1速から第2速、第2速から第3速)のときの変速段領域を定めるシフトアップ用変速点の連続線(実線)zbcde,zfghiと、現ギヤ段よりも低速のギヤ段へ変速するシフトダウン(第2速から第1速、第3速から第2速)のときの変速段領域を定めるシフトダウン用変速点の連続線(点線)znopq,zjklmとを有し、前記シフトダウン用変速点の連続線znopq,zjklmの変速段領域は、同一のギヤ段では前記シフトアップ用変速点の連続線zbcde,zfghiよりも車速の小さい領域に設定されていることが看取される。
(き)上記記載事項(あ)に「アクセルペダルの操作量としてこれと連動するポテンシオメーターで検出される電位を信号に取り」と記載され、記載事項(お)には「エンジンブレーキを得たい時にブレーキペダルに連動したスイッチ・・・によって信号を送り」と記載され、アクセルペダルの操作及びブレーキペダル(エンジンブレーキ)は、それぞれ運転者による加速の意志及び減速の意志を表すものであるから、引用例1の自動変速機用ガバナーは、アクセルペダル操作量と連動するポテンシオメーターとブレーキペダルに連動するスイッチからの入力信号によって、運転者の加速の意志及び減速の意志が働いている期間を判別する手段を備えているといえるものである。また、エンジンブレーキを得たい時とはすなわち運転者の減速の意志が働いている期間であるといえ、そのような運転者の減速の意志が働いている期間において、シフトダウン用変速点の連続線zjklm,znopqで定められる変速段領域を高速側に移しているといえる。(上記記載事項(う)?(か)参照。)

以上の記載事項及び図面(特に、第2,3図)からみて、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両に搭載された変速機の変速点を決定する自動変速機用ガバナーであって、
前記車両には、アクセルペダル操作量と連動するポテンシオメーターと、ブレーキペダルに連動するスイッチとが装着され、
前記自動変速機用ガバナーは、前記車両の車速と前記アクセルペダル操作量とに対応して変速点を決定するシフトパターンを備え、
前記シフトパターンは、現ギヤ段よりも高速のギヤ段へ変速するシフトアップのときの変速段領域を定めるシフトアップ用変速点の連続線zbcde,zfghiと、現ギヤ段よりも低速のギヤ段へ変速するシフトダウンのときの変速段領域を定めるシフトダウン用変速点の連続線znopq,zjklmとを有し、前記シフトダウン用変速点の連続線znopq,zjklmの変速段領域は、同一のギヤ段では前記シフトアップ用変速点の連続線zbcde,zfghiよりも車速の小さい領域に設定されており、さらに、
前記自動変速機用ガバナーは、前記アクセルペダル操作量と連動するポテンシオメーターとブレーキペダルに連動するスイッチからの入力信号によって、運転者の加速の意志及び減速の意志が働いている期間を判別する手段を備えており、
運転者の減速の意志が働いている期間においては、前記シフトダウン用変速点の連続線zjklm,znopqで定められる変速段領域を高速側に移す自動変速機用ガバナー。」

(2-2)引用例2
特開平9-317872号公報(以下、「引用例2」という。)には、「無段変速装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
(く)「【0042】・・・そして、車両がエンジンブレーキ走行用の変速マップに基づいて走行させられている間に、運転者がアクセルペダルを踏み込む(アクセルオン)と、制御部206の図示しないペダル操作検出手段は、アクセルペダルが踏み込まれたことを検出し、変速マップ選択手段253の変速マップ変更手段255は、再び前進走行用の変速マップを変更する。その結果、制御部206のアクチュエータ作動手段254は、前進走行用の変速マップを参照し、油圧アクチュエータ43を作動させる。そして、車両が前進走行させられる。」

(2-3)引用例3
実公平6-50261号公報(以下、「引用例3」という。)には、「自動変速機の制御装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
(け)「アップシフトを禁止している所定時間内にブレーキが踏み込まれた場合には、運転者が減速の意志を持っていると判断して、アップシフトを禁止することにより、アイドル状態になる前の低変速段によるエンジンブレーキ力を発生させることができる。」(第4頁第7欄第30?35行)

(2-4)引用例4
特開平1-261547号公報(以下、「引用例4」という。)には、「自動変速機の変速制御装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
(こ)「エンジンブレーキ用のダウンシフト作動時には、アップシフトを禁止する構成にしたため、車速が上昇してもアップシフトしないから、エンジンブレーキ力が減少することはなくなるという効果が得られる。」(第3頁右上欄第16?20行)

(3)対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「変速点を決定する」は、その意味、機能等を考慮すれば、本願補正発明の「変速段を制御する」又は「変速段を決定する」に相当し、以下同様に、「自動変速機用ガバナー」は「変速機制御装置」に、「アクセルペダル操作量と連動するポテンシオメーター」は「アクセルペダルの踏み込みを検出するアクセル検出器」に、「ブレーキペダルに連動するスイッチ」は「ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキ検出器」に、「アクセルペダル操作量」は「車両に搭載されたエンジンのアクセル開度」に、「シフトパターン」は「変速段決定手段」に、「シフトアップ用変速点の連続線zbcde,zfghi」は「シフトアップ用シフトマップ」に、「シフトダウン用変速点の連続線znopq,zjklm」は「シフトダウン用シフトマップ」に、「前記シフトダウン用変速点の連続線zjklm,znopqで定められる変速段領域を高速側に移す」は「前記シフトダウン用シフトマップで定められる変速段領域を車速が増大する方向に補正する」に、それぞれ実質的に相当する。
また、引用例1発明の「運転者の加速の意志の作用する期間」及び「運転者の減速の意志の作用する期間」と、その内容の相違は下記に相違点として挙げるとしても、本願補正発明の「アクセルペダルの踏み込みを検出した以後アクセルペダルの操作には関係なくブレーキペダルの踏み込みを検出するまでの加速モード期間」及び「ブレーキペダルの踏み込みを検出した以後ブレーキペダルの操作には関係なくアクセルペダルの踏み込みを検出するまでの減速モード期間」とは、少なくとも、「運転者の加速の意志の作用する期間」及び「運転者の減速の意志の作用する期間」である点では共通しているといえる。

したがって、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、両者は、
「車両に搭載された変速機の変速段を制御する変速機制御装置であって、
前記車両には、アクセルペダルの踏み込みを検出するアクセル検出器とブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキ検出器とが装着され、
前記変速機制御装置は、前記車両の車速と前記車両に搭載されたエンジンのアクセル開度とに対応して変速段を決定する変速段決定手段を備え、
前記変速段決定手段は、現ギヤ段よりも高速のギヤ段へ変速するシフトアップのときの変速段領域を定めるシフトアップ用シフトマップと、現ギヤ段よりも低速のギヤ段へ変速するシフトダウンのときの変速段領域を定めるシフトダウン用シフトマップとを有し、前記シフトダウン用シフトマップの変速段領域は、同一のギヤ段では前記シフトアップ用シフトマップよりも車速の小さい領域に設定されており、さらに、
前記変速機制御装置は、前記アクセル検出器及び前記ブレーキ検出器からの入力信号によって、運転者の加速の意志の作用する期間と、運転者の減速の意志の作用する期間とを判別する判別手段を備えており、
運転者の減速の意志が働いている期間においては、前記シフトダウン用シフトマップで定められる変速段領域を車速が増大する方向に補正する変速機制御装置。」
で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明は、「前記変速機制御装置は、前記アクセル検出器及び前記ブレーキ検出器からの入力信号によって、アクセルペダルの踏み込みを検出した以後アクセルペダルの操作には関係なくブレーキペダルの踏み込みを検出するまでの加速モード期間と、ブレーキペダルの踏み込みを検出した以後ブレーキペダルの操作には関係なくアクセルペダルの踏み込みを検出するまでの減速モード期間とを判別するモード判別手段を備えており、前記減速モード期間においては、現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を禁止し、かつ、前記シフトダウン用シフトマップで定められる変速段領域を車速が増大する方向に補正する」構成を有しているのに対して、引用例1発明の自動変速機用ガバナーは、アクセルペダル操作量と連動するポテンシオメーターとブレーキペダルに連動するスイッチからの入力信号によって、運転者の加速の意志の作用する期間と、運転者の減速の意志の作用する期間とを判別する判別手段を備えており、運転者の減速の意志が働いている期間においては、シフトダウン用変速点の連続線zjklm,znopqで定められる変速段領域を高速側に移す構成、すなわち、変速機制御装置は、アクセル検出器及びブレーキ検出器からの入力信号によって、運転者の加速の意志の作用する期間と、運転者の減速の意志の作用する期間とを判別する判別手段を備えており、運転者の減速の意志が働いている期間においては、シフトダウン用シフトマップで定められる変速段領域を車速が増大する方向に補正することに相当する構成を有しているものの、本願補正発明のような加速モード期間及び減速モード期間を備えているか明らかでなく、さらに、運転者の減速の意志が働いている期間において現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を禁止してはいない点。

(4)判断
[相違点1]について
引用例1発明の自動変速機用ガバナー(変速機制御装置)において、運転者の加速の意志の作用する期間と、運転者の減速の意志の作用する期間とをどのように設計して、車両をシフトアップ又はシフトダウンさせるよう設計するかは、エンジンブレーキを効果的に利用する、変速の繰り返し(ハンチング)を防止する等の技術課題を考慮して、当業者が適宜設計する設計的事項にすぎない。特に、アクセルペダル又はブレーキペダルが立て続けに連続して踏み込まれることは一般的によく行われることや、アクセルペダル又はブレーキペダルが操作された後に加速用又は減速用の制御に切り換わることも一般的によく行われること(必要であれば、上記引用例2の記載事項(く)を参照。)であるから、上述した技術課題も考慮すれば、運転者の加速の意志の作用する期間及び運転者の減速の意志の作用する期間を、それぞれ、アクセルペダルの踏み込みを検出した以後アクセルペダルの操作には関係なくブレーキペダルの踏み込みを検出するまでの期間(加速モード期間)及びブレーキペダルの踏み込みを検出した以後ブレーキペダルの操作には関係なくアクセルペダルの踏み込みを検出するまでの期間(減速モード期間)として設定することは、当業者が容易になし得たものである。
同様にエンジンブレーキを効果的に利用する等の技術課題を考慮して、現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速(シフトアップ)を禁止することは従来周知の技術(例えば、上記引用例3の記載事項(け)及び引用例4の記載事項(こ)を参照。)である。
してみると、引用例1に記載された発明及び上記従来周知の技術に基づいて、本願補正発明のように構成することは当業者が容易になし得たものである。
また、本願補正発明の作用効果について検討してみても、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が予測し得る程度のものである。

なお、審判請求人は、平成22年11月8日付け回答書において、概ね、
「引用文献1乃至引用文献5(審決注:該「引用文献1」ないし「引用文献4」は、本審決の「引用例1」ないし「引用例4」に相当。以下、同様。)に記載のものは、本願発明の「前記減速モード期間においては、現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を禁止する」との制御態様を備えていない。本願発明は、このポイントとなる発明特定事項により上記(3.1)で述べた特有の作用効果が生じるものであるから、引用文献1乃至引用文献5に記載の発明により当業者が容易に発明をすることができたものではない。」(「3.2.本願発明と各引用文献記載の発明との対比等」欄)旨の主張をしている。
しかしながら、上記「前記減速モード期間においては、現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を禁止する」構成は、引用例1に記載された発明及び上記従来周知の技術に基づいて当業者が容易になし得たものであり、その作用効果も、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が予測し得る程度のものであることは、上記「(4)判断」で述べたとおりである。

また、審判請求人は、同回答書において、請求項1に係る発明を、
「車両に搭載された変速機の変速段を制御する変速機制御装置であって、
前記車両には、アクセルペダルの踏み込みを検出するアクセル検出器とブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキ検出器とが装着され、
前記変速機制御装置は、前記車両の車速と前記車両に搭載されたエンジンのアクセル開度とに対応して変速段を決定する変速段決定手段を備え、
前記変速段決定手段は、現ギヤ段よりも高速のギヤ段へ変速するシフトアップのときの変速段領域を定めるシフトアップ用シフトマップと、現ギヤ段よりも低速のギヤ段へ変速するシフトダウンのときの変速段領域を定めるシフトダウン用シフトマップとを有し、前記前記シフトダウン用シフトマップの変速段領域は、同一のギヤ段では前記シフトアップ用シフトマップよりも車速の小さい領域に設定されており、さらに、
前記変速機制御装置は、前記アクセル検出器及び前記ブレーキ検出器からの入力信号によって、アクセルペダルの踏み込みを検出した以後アクセルペダルの操作には関係なくブレーキペダルの踏み込みを検出するまでの加速モード期間と、ブレーキペダルの踏み込みを検出した以後ブレーキペダルの操作には関係なくアクセルペダルの踏み込みを検出するまでの減速モード期間とを判別するモード判別手段を備えており、
前記減速モード期間においては、現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を禁止し、かつ、前記シフトダウン用シフトマップで定められる変速段領域を車速が増大する方向に補正するとともに、前記減速モード期間から前記加速モード期間に切り換わったときに現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を許容することを特徴とする変速機制御装置。」と補正する補正案を示している。
しかしながら、「前記減速モード期間においては、現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を禁止」することが当業者にとって容易になし得たものである以上、「前記減速モード期間から前記加速モード期間に切り換わったときに現ギヤ段よりも高速のギヤ段への変速を許容する」ことも当業者にとって容易になし得る事項であるから、上記補正案によって当審の判断が覆るものではない。

よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、本件補正における他の補正事項を検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成22年3月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明(以下、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成21年1月16日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】
車両に搭載された変速機の変速段を制御する変速機制御装置であって、
前記車両には、アクセルペダルの踏み込みを検出するアクセル検出器とブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキ検出器とが装着され、
前記変速機制御装置は、前記車両の車速と前記車両に搭載されたエンジンのアクセル開度とに対応して変速段を決定する変速段決定手段を備え、
前記変速段決定手段は、高速段へ変速するシフトアップのときの変速段領域を定めるシフトアップ用シフトマップと、低速段へ変速するシフトダウンのときの変速段領域を定めるシフトダウン用シフトマップとを有しており、さらに、
前記変速機制御装置は、前記アクセル検出器及び前記ブレーキ検出器からの入力信号によって、アクセルペダルの踏み込みを検出した以後アクセルペダルの操作には関係なくブレーキペダルの踏み込みを検出するまでの加速モード期間と、ブレーキペダルの踏み込みを検出した以後ブレーキペダルの操作には関係なくアクセルペダルの踏み込みを検出するまでの減速モード期間とを判別するモード判別手段を備えており、
前記減速モード期間においては、高速段への変速を禁止し、かつ、前記シフトダウン用シフトマップで定められる変速段領域を車速が増大する方向に補正することを特徴とする変速機制御装置。」

3-1.本願発明1について
(1)本願発明1
上記のとおりである。

(2)引用例
引用例1?4及びその記載事項は上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は、実質的に、上記2.で検討した本願補正発明における、「前記シフトダウン用シフトマップの変速段領域は、同一のギヤ段では前記シフトアップ用シフトマップよりも車速の小さい領域に設定されて」との事項を削除して拡張すると共に、「現ギヤ段よりも高速のギヤ段」を「高速段」と言い換え、また、「現ギヤ段よりも低速のギヤ段」を「低速段」と言い換えたものに該当する。

そうすると、本願発明1の特定事項をすべて含み、本願発明1を限定したものに相当する本願補正発明が、上記2.(3)(4)に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明1)は、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.結語
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明1)が特許を受けることができないものである以上、本願発明2について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-06 
結審通知日 2011-01-11 
審決日 2011-01-24 
出願番号 特願2007-212521(P2007-212521)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16H)
P 1 8・ 121- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 山岸 利治
大山 健
発明の名称 車両用変速機の変速制御装置  
代理人 飯田 隆  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  
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