• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1233757
審判番号 不服2008-13514  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-29 
確定日 2011-03-09 
事件の表示 特願2002-41158「直線キュベット配列、それにより組み立てられた2次元キュベット配列及びそのような2次元キュベット配列を含むシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月8日出願公開、特開2002-323502〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年2月19日(パリ条約による優先権主張 平成13年2月20日 欧州特許庁)を出願日とする出願であって、その請求項1ないし14に係る発明は、平成22年8月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】 複数のキュベット(12、13、14)が一体に組み立てられたプラスチック材料製の直線キュベット配列(31、41)を少なくとも2個と、キュベット(12、13、14)を受け入れるための開口部(34)のマトリックス配列(33)を有するキュベットホルダー(32、42)とを備える、キュベットシステムであって、
上記直線キュベット配列(31、41)は、配列内のすべてのキュベットが同一の形状及び寸法を有し、隣接するキュベットが単一の腕で相互に連結しており、
上記キュベット配列(31、41)を構成しているすべてのキュベットの対称軸(Y-Y)が、上記キュベット配列(31、41)の対称面である同平面と実質的に同一の平面(A-A)内にあり、
上記キュベット配列の一の端部にある第1のキュベット(13)と上記キュベット配列の反対側の端部にある第2のキュベット(14)との間にある中間キュベット(12)の上部は、上記中間キュベット(12)の一方の側に隣接するキュベット(13)に、第1の単一の腕(15)によって連結し、中間キュベット(12)の反対側に隣接するキュベット(14)に、第2の単一の腕(16)によって連結しており、
個々の上記単一の腕(15、16)が湾曲した形状を有し、
上記キュベット配列は、各キュベット(12、13、14)が、両チャンバーの中心を通る共通の対称軸Y-Yを有する、上部チャンバー(17)及び下部チャンバー(18)を有し、
上記上部チャンバー及び下部チャンバーは、各々実質的に円筒状の形状を有し、上部チャンバー(17)の中央部における断面は、下部チャンバー(18)の同断面より大きく、
上記下部チャンバー(18)は、開口した下端(23)を有し、
上記上部チャンバー(17)は、開口した上端(24)と、上記上部チャンバー(17)を下部チャンバー(18)に連結している円形の開口部を中央に有する、環状の底面壁(25)とを有し、
各々のキュベットホルダー内で同一の相対的位置を占めるキュベットは、それらの対称軸を一致させて上下に正確に位置づけられ、かつ、上側キュベットの下部の一部が下側キュベットの上部チャンバー内にあり、上側キュベット(51)の下端が、下側キュベット(52)の上部チャンバーの底面壁(25)から予め決められた距離にあるように、積み重ねられていることを特徴とする、キュベットシステム。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物1ないし刊行物4には以下の事項がそれぞれ記載されている。下線は当審で付加した。

(1)刊行物1:特開平3-92761号公報の記載事項
(1a)「1)少なくとも、1式のキュベット・マトリックスのためのスペースを有するトレイに載置される、少なくとも1行または1列のキュベットを有するキュベット・マトリックスを備えたトレイにおいて、隣接するキュベット(2)の距離を少し変えることのできる可撓性連結部材(3)によって隣接するキュベットの少なくとも一部を相互に連結し、各キュベットは対応するアパーチャに押し込まれる下部を有し、トレイはキュベット・マトリックスに対応する少なくとも1式のアパーチャ・マトリックスを備えたフレームと、キュベット(2)を定置できる、各キュベット用アパーチャ(8)とを有し、前記アパーチャは、摩擦作用によってキュベットをアパーチャに保持する可撓性クランプ部材(9)を具備することを特徴とするキュベット・トレイ装置。
(2)1個またはこれ以上の前記キュベットをマトリックスから一度に取り外せることを
特徴とする、特許請求の範囲第1項記載のキュベット・トレイ装置。
(3)前記可撓性連結部材(3)を折ることによって前記キュベットを取り外すことができることを特徴とする、特許請求の範囲第1項または第2項記載のキュベット・トレイ装置。
(4)前記連結部材が前記キュベットを相互に連結するステム(3)であることを特徴とする、特許請求の範囲第1項ないし第3項記載のキュベット・トレイ装置。
(5)前記ステム(3)はキュベットの列または行の中心線からはなれたキュベットの列または行に沿って配置され、また中心線から異なる距離だけはなれた連続する空間または中心線の反対側に配置されたことを特徴とする、特許請求の範囲第4項記載のキュベット・トレイ装置。
(6)隣接する前記ステム(3)は中心線の反対側にあることを特徴とする、特許請求の範囲第5項のキュベット・トレイ装置。
(7)キュベット(2)の外部表面に突出フランジ部(5)があることを特徴とする、特許請求の範囲第1項ないし第6項記載のキュベット・トレイ装置。
(8)前記クランプ部材はアパーチャの壁上に少なくとも1個の可撓性指状突起を有し、前記指状突起はキュベットをアパーチャの他の壁に押し付けることを特徴とする、特許請求の範囲第1項ないし第7項記載のキュベット・トレイ装置。
(9)前記指状突起(9)は水平方向に可撓的であることを特徴とする、特許請求の範囲第8項記載のキュベット・トレイ装置。
(10)各キュベットに対し、ただ1個のみの指状突起を備えたことを特徴とする、特許請求の範囲第8項ないし第9項のキュベット・トレイ装置。」(特許請求の範囲)
(1b)「(問題点を解決するための手段および作用)
この目的を達成するため以下のような構成としている。キュベット・マトリックスは1列の直列マトリックスまたは並列に並べた数列のマトリックスによって形成される。マトリックスの隣接するキュベットの少なくとも一部は可撓性連結部材によって互いに連結され、それによって、キュベットを少なくとも水平方向に、少しだけ移動させることができる。連結部材は、各キュベットの下部がトレイのアパーチャにセットできるように、位置を定める。連結部材は軸状のものが好ましく、キュベットを連結するためそれらの上部におかれる。たとえば、軸状部材をキュベットの列の中心線から少しはなすことによってキュベット列の可撓性を得ることができる。まがった軸状部材をその中心線の間近で使用することも可能である。
必要数のキュベットがマトリックスから簡単に外すことができるように、キュベットは相互に連結されるのが好ましい。前以て連結部材が折れるようにすることにより、取り外すことができるようになる。
トレイは少なくともマトリックスの1個のキュベット用には1個のアパーチャを有するフレームによって形成される。アパーチャは可撓性クランプ部材を有し、このクランプ部材は、好ましくは側部からその下部を押して、摩擦作用によってキュベットをアパーチャに固定するものである。いずれにしろ、クランプ部材によって、キュベットをアパーチャに押し込む方法はその他にも多く考えられる。クランプ部材はキュベットを1側部または数カ所の側部から押してもよい。クランプ部材はキュベットを剛性フレームへ押し付ける。クランプ部材は、たとえば、1本またはそれ以上の可撓性の指状突起によって形成することができる。この指状突起は水平方向にたわむのが好ましい。
なお、キュベットは円筒状カップが好ましい。」(第2頁右下欄10行?第3頁右上欄8行)
(1c)「(実施例)
第1a図ないし第3b図により、本発明による一実施例について詳細に説明する。なお、この実施例は本発明をマイクロテストプレ-ト(8行x12列)に応用したものである。
第1a図および第1b図は1列のキュベット・マトリックスlを図示している。これはキュベット2を幅の狭いステム3によって相互に連結して形成する。ステム3はキュベット2の上部に固定される。ステム3は、隣り合うもの同士が互いに反対側になるように、キュベット列の中心線からはなれた、キュベット列の側部に配置される。このステム3によって隣接する各キュベット2間の距離を1mmの1/100または1/10程度小さくまたは大きくできる。
キュベット2の内部は円筒形をなしており、その底部は光伝達計測用窓を形成している。また、その窓の外周にはカラ一部を形成し、引っ掻きなどから窓を保護している。
キュベツト2の外部表面上の中央部より少し下の部分に、その下部より広い肩部5を形成する。それによって、トレイ6にキュベット2をどの程度の深さで押し込めるかが決められる。キュベット2の下部の外部表面は円錐状となっており、下に向かってわずかにテーパ状となっている。
ステム3は手で折ることができるので、必要数のキュベット2を簡単に取り外すことができる。
キュベット・マトリックスの両端部には、その上部にフランジ7が設けられており、同様に手で折ることができる。
第2a図および第2b図において、トレイ6には横断面正方形のアパーチャ(孔部)8が8列xl2行形成されている。アパーチャ8の1辺の長さはキュベット2の下部の最大径よりわずかに短い。アパーチャ8はアルファベット(A-H)を付した8列と、数字(1-12)を付した12行とから形成される。また、アパーチャ8は互いに垂直な隔壁10を有する方形のフレームによって形成される。
行(1-12)と平行な隔壁10は一体となっており、また剛性を備えている。列(A-H)と平行な隔壁10のうち2列目から1列おきの隔壁10も一体であり、また、剛性を備えている。
列(A-H)と平行な隔壁10のうち1列目から1列おきの隔壁は行(1-12)の中心線のところで垂直に、しかし隔壁に対して斜めに切り放されており、その切断縁部間に小さな隙間が形成される。このようにして、隔壁10の列(A-H)と平行に、指状突起9が形成され、これらはわずかに水平方向にまがっている。この結果、キュベット2は各々のアパーチャ8に押し込められ、このとき、指状突起9はキュベットの中心からはなれるように曲がる。そして、キュベット2は指状突起9の摩擦作用によってアパーチャにしっかりと保持される。
キュベット2の外部表面上の肩部5は剛性隔壁10の上縁部に係止される。また、フレームは肩部5に対応する肘部をトレイの側部に具備する。
各行(1-12)の図面上右端部に対応するトレイの側部上にピン11が立設される。また、キュベット・マトリックスの頭部フランジ7にはピンl1が嵌合する孔が形成されており、キュベット・マトリックスは常にトレイ上にしっかりと保持されるものである。
トレイの下端部は、トレイにセットされたキュベットの底部より下に延出している。さらにトレイのコーナ部にはトレイを簡単に重ねることができるように舌片を具備している。」(第3頁右上欄9行?第4頁左上欄20行)
(1d)「(発明の効果)
本発明は、以上の説明から明らかなように、単純な構造で、任意の数のキュベットをトレイから簡単に一度で取り外すことができるとともに、再度トレイに容易にセットすることができ、また、キュベットをトレイのアパーチャにしっかりと保持することができる。」(第4頁右上欄1行?7行)
(1e)第1a図、第1b図には、それぞれ肩部(5)を有する8個のキュベット(2)が、中心線に対称的に配置され、可撓性連結部材であるステム(3)により連結され、両端にフランジ(7)を有するキュベット・マトリックス(1)が図示されている。(第5頁第1a図、第1b図)また、第2a図、第2b図には、キュベット・マトリックス用のトレイが、第3a図、第3b図には、キュベットをトレイにセットした状態が図示されている。(第5頁第1a図、第1b図、第2a図、第2b図、第6頁第3a図、第3b図)

(2)刊行物2:特開平2-149321号公報の記載事項
(2a)「1.上端部及び底端部にて開放し、その軸心が相互に平行となるように真直ぐに一列に配設された略円筒状の複数のウェルであって、相互に極く隣接するが接触しないよう前記ウェルを離間させる脆弱なウェブにより連結された前記複数のウェルと、
各ウェルの底端部を閉じる、相互に離間された個別のフィルタ膜と、を備えることを特徴とするフィルタストリップ。
・・・
4.基部及び取り外し可能なカバーを有する真空マニホルドと、
該真空マニホルド内の室と、
該室と連通し、該室に減圧された圧力を作用させるマニホルドの通路と、
ストリップの各ウェルの底部を閉じるフィルタ膜を有するマルチウェルフィルタストリップと、フィルタストリップを支持するためにカバーの外側に形成された手段と、
フィルタストリップの各膜を前記室と連通するように定置させることにより、該室に加えられた減圧が前記ウェル内の液体を膜を通じて前記室内に吸引するように、前記カバーに形成された穴と、を備えることを特徴とするフィルタ組立体。
5.カバー上に設けられた前記手段が、各々、外面に形成されてフィルタストリップの1つのウェルの底部端を受け入れる個々の複数の凹所を備え、
カバーの前記穴が、各凹所の底部から前記室内に伸長することを特徴とする請求項4記載のフィルタ組立体。
6.カバーに設けられた手段が、膜を通って各ウェルから室に流動するろ液間の混合を防止することを特徴とする請求項4記載のフィルタ組立体。
7.第2マルチウェルストリップを支持する手段が、前記室内に設けられることにより、第2ストリップ内の各ウェルが、フィルタストリップ内の別個のウェルからろ液を受け取ることを特徴とする請求項6記載のフィルタ組立体。
8.各凹所が、中央部分にて漏斗状をし、平坦なショルダ部分により包囲された底部壁を有し、マルチウェルフィルタストリップのウェル前記凹所内に取り付けられたとき、各凹所の平坦なショルダ部分が、各ウェルの底部に対してシールを形成するようにしたことを特徴とする請求項5記載のフィルタ組立体。(請求項1、4?8)
(2b)「[従来の技術]
微孔性メンブランフィルタを利用する2つの基本的な分析方法が公知である。その第1は単純に微孔性膜を用いて分析のための小さな粒子を採取する方法であって、例えば、酢酸セルロース膜上に三塩化酢酸化蛋白質の沈澱物を採取する方法である。その第2は、第1の物質をフィルタに固定し、フィルタに反応物質を加えて上記物質と反応させる方法であって、例えば、一本鎖のRNA又はDNAをニトロセルロース膜上に固定し、核酸の交雑を行うといった、フィルタをより能動的に使用する方法である。Journal of MolecularBiology,12: 829-842(1965)のGillespie,D.及びSpielgelman,S.の論文を参照すると良い。」(第3頁右上欄5行?18行)
(2c)「各ウェル20の開放した底部24は、透過性の膜34により閉じられる。各ウェルの個々の膜は、他方から分離している個別のディスクであり、ろ液又は滞留液が1方のウェルから別のウェルに移動するのを防止する。隣接するウェルの隣接面の間には、空隙36が存在し、従って、液体が1つのウェルの壁26から別のウェルの壁に流動することがない。各ウェルの底部24を閉じる膜34は、ヒートシール、超音波溶接、又は溶剤すなわち接着剤により、円筒状の壁26の底面に取り付けることか出来る。」(第5頁左下欄12行?右下欄2行)
(2d)「又、操作時、該ストリップに対して故意に力を加えない限り、ストリップが湾曲あるいは屈曲したり又は撓わむことかない。1列全体のウェルより少数のウェルを使用することが望ましい場合には、個々のウェル又は2?3のウェルをストリップから破断することが出来る。」(第6頁左上欄11行?17行)
(2e)「第10図乃至第13図に別個に図示されたトランスファープレート120は、その上面144に多数の円筒状の凹所130が形成された成形プラスチック体である。この凹所130は、水平方向のショルダ部分132を包囲する垂直の側壁131を有し、該ショルダ部分132は漏斗状の底部壁133を囲繞している。底部壁133は、貫通する穴136を有し下方向に伸長するノズル134と整合する。各ノズル134は、96-ウェルプレート122のウェル140の開放した頂部138と整合可能となるような外径を有している(第8図参照)。ノズル134は開放したウェル140に嵌まり、ウェル140内に蓄積したガスを排出することが出来る僅かな空隙を形成する。ノズル134は、トランスファープレートの下面142から下方向に伸長し、閉じた底部を有するウェル140内に入り、プレート122にて1つのウェルから別のウェルにかけて液が汚染されないようにする。」(第7頁右下欄11行?第8頁左上欄9行)
(2f)「第14図乃至第15図には、本発明のさらに別の実施例が図示されており、この場合、圧力マニホルドは、8-ウェルフィルタストリップ及び閉じた底部を有する8-ウェルストリップを収容している。この圧力マニホルドは、基部200と、トランスファープレート201と、1対の外側垂直ポスト203により垂直状態に積み重ねられかつ着脱可能に取り付けられたカバー202とを備えている。この垂直ポスト203は、基部、トランスファープレート、及びカバーに形成された整合穴を通る。各基部、トランスファープレート、及びカバーの間にて、ポストの周囲にはばね204が設けられており、各構成要素を偏倚させて相互に離反させ、第15図に図示するように、トランスファープレートの上方及び下方にて、それぞれ、フィルタストリップ18及び閉じた底部を有するストリップ76を容易に装填し及び解除し得るようにする。ポルト220のような着脱可能な締め付は手段が設けられている。これら締め付は手段は、ろ過中、第14図に図示するように、ばねの偏倚力に抗して各構成要素を閉じた位置に保持する作用をする。(第8頁左下欄6行?右下欄7行)」

(3)刊行物3:特開平6-207934号公報の記載事項)
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】2個又はそれより多い相互に連結しているキュベットにより形成されている少なくとも一つの列からなり、その列からキュベット用の開口部を持つスタンド中に置かれるための一つのキュベットを取り外すことができるキュベットマトリックスであって;キュベットの外側表面上に、キュベット列の縦方向から一定の角度で支持部材(10)があり、そして該部材がキュベットが開口部の側面に密着することを容易にすることを特徴とするキュベットマトリックス。」
(3b)「【0008】本発明に従ったキュベットマトリックスは1列又はそれより多いキュベット列からなり、そしてそのキュベットは、1個又はそれより多い使用するキュベットを、所望の場合、一度に取外すことが可能であるように連結されている。キュベットマトリックスは、その目的に適したポリスチレンのようなある種のプラスチックから製造されているのが好ましい。光学的測定のためには、キュベットの底は、所望の場合は、透明であるように製造されている。キュベットは特に液体試料で製造されたいろいろの診断検定に使用するために特に適している。所望の場合は、キュベットは、例えば測定する抗体の抗原の塗布により前処理できる。」
(3c)「【0010】キュベットは好ましくはその外表面が下方に僅かに先細になっていてそれによりスタンド中の位置付けがより容易である。外表面上では、スタンドに関して或る高さでキュベットの位置付けを容易にする拡張部又はそのようなものであってもよい。
【0011】各々のキュベットは、その外表面上に支持部材を持ち、それはキュベットを回転する際、キュベットを開口部に対してより厳密にすら固定する。好ましくは、支持部材はキュベット列に縦方向に対して実質的に45°の角度にあり、それによりキュベットは相応して実質的に45°まで回転する。好ましくは、キュベットの反対側に2個の支持部材がある。
【0012】好ましくは支持部材は、キュベットの表面上の拡張部である。拡張部は垂直の平面であるのが最も良く、それは、キュベットを回転した時、スタンドの開口部の垂直壁に対して着実に位置する。拡張部は例えば小節又はある種の隆起であってもよく、その際開口部の壁はそれらに該当する窪み又は溝を持っていてよい。
【0013】好ましくはスタンドの開口部は更に弾力性の圧縮部材も持っていてよく、それはキュベットを所定位置に保持する。」

(4)刊行物4:特開昭59-35141号公報の記載事項)
(4a)「サンプル容器14は円形の横断面形状を有し、この容器内へのサンプルの注入に便利なように大径となされた入口部34(第7図参照)と、この入口部34から垂下されたこれより小径の胴部36と、先端部38とよりなる。・・・入口部34は、水平面に対して約45°内方にに傾斜した斜面40を介して胴部36の内壁面に接続されているのが好ましく」(第5頁右下欄7行?第6頁左上欄2行)

3 対比・判断
刊行物1の上記記載事項から、刊行物1には、
「少なくとも1列の直列マトリックスによって形成されるキュベット・マトリックスであって、隣接する同一の形状及び寸法のキュベットは可撓性連結部材によって互いに連結され、それによって、キュベットを少なくとも水平方向に少しだけ移動させ、キュベット間の距離を小さく又は大きくでき、連結部材はキュベットの上部に配置され、キュベットの列の中心線の反対側に少しはなすことによってキュベット列の可撓性を得ることができるキュベット・マトリックスと、
キュベット・マトリックスに対応する少なくとも1式のアパーチャ・マトリックスを備えたフレームと、キュベットを定置できる各キュベット用アパーチャとを有し、前記アパーチャは、摩擦作用によってキュベットをアパーチャに保持する可撓性クランプ部材を具備するトレイと、を備えたキュベット・トレイ装置」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「1列の直列マトリックスによって形成されるキュベット・マトリックス」と、本願発明の「複数のキュベット(12、13、14)が一体に組み立てられたプラスチック材料製の直線キュベット配列(31、41)」とは、複数のキュベットが一体に組み立てられた直線キュベット配列である点で共通している。
(イ)刊行物1発明の「可撓性連結部材」は、第1b図からみて、連続する3個のキュベットがそれぞれ隣接するキュベットと、キュベットの上部にある一つの連結部材で連結されているから、本願発明の「第1の単一の腕」及び「第2の単一の腕」に相当する。
(ウ)刊行物1発明は、第1a図、第1b図からみて、キュベットの列を構成するすべてのキュベットの対称軸は、キュベットの列の対称面と実質的に同一の平面内にあるといえる。
(エ)刊行物1発明の「キュベット・マトリックスに対応する少なくとも1式のアパーチャ・マトリックスを備えたフレームと、キュベットを定置できる各キュベット用アパーチャとを有し、前記アパーチャは、摩擦作用によってキュベットをアパーチャに保持する可撓性クランプ部材を具備するトレイ」は、本願発明の「キュベット(12、13、14)を受け入れるための開口部(34)のマトリックス配列(33)を有するキュベットホルダー(32、42)」に相当する。
(オ)刊行物1発明の「キュベット・トレイ装置」は、本願発明の「キュベットシステム」に相当する。

したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
複数のキュベットが一体に組み立てられた直線キュベット配列を少なくとも2個と、キュベットを受け入れるための開口部のマトリックス配列を有するキュベットホルダーとを備える、キュベットシステムであって、
上記直線キュベット配列は、配列内のすべてのキュベットが同一の形状及び寸法を有し、隣接するキュベットが単一の腕で相互に連結しており、
上記キュベット配列を構成しているすべてのキュベットの対称軸(Y-Y)が、上記キュベット配列の対称面である同平面と実質的に同一の平面(A-A)内にあり、
上記キュベット配列の一の端部にある第1のキュベットと上記キュベット配列の反対側の端部にある第2のキュベットとの間にある中間キュベットの上部は、上記中間キュベットの一方の側に隣接するキュベットに、第1の単一の腕によって連結し、中間キュベットの反対側に隣接するキュベットに、第2の単一の腕によって連結しているキュベットシステムである点。

(相違点1)
直線キュベット配列が、請求項1発明では、プラスチック材料製であるのに対して、刊行物1発明では、その材質を特定していない点。

(相違点2)
請求項1発明は、個々の単一の腕が湾曲した形状を有しているのに対して、刊行物1発明では、可撓性連結部材の形状を規定していない点。

(相違点3)
直線キュベット配列が、本願発明では、各キュベットが、両チャンバーの中心を通る共通の対称軸Y-Yを有する、上部チャンバー及び下部チャンバーを有し、上記上部チャンバー及び下部チャンバーは、各々実質的に円筒状の形状を有し、上部チャンバーの中央部における断面は、下部チャンバーの同断面より大きく、上記下部チャンバーは、開口した下端を有し、上記上部チャンバーは、開口した上端と、上記上部チャンバーを下部チャンバーに連結している円形の開口部を中央に有する、環状の底面壁とを有し、各々のキュベットホルダー内で同一の相対的位置を占めるキュベットは、それらの対称軸を一致させて上下に正確に位置づけられ、かつ、上側キュベットの下部の一部が下側キュベットの上部チャンバー内にあり、上側キュベットの下端が、下側キュベットの上部チャンバーの底面壁から予め決められた距離にあるように、積み重ねられているのに対して、
刊行物1発明では、各キュベットは、上記のような上部チャンバーと下部チャンバーに分かれておらず、上下に積み重ねられていない点。

そこで、上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
キュベットの材質をプラスチック材料とすることは、例えば、刊行物3(上記(3b))にも記載されるように本願優先日前の周知慣用技術であり、刊行物1発明において、キュベット・マトリックスの材質をプラスチック材料とすることに何ら困難性はない。

(相違点2について)
刊行物1(上記(1b))には、「まがった軸状部材をその中心線の間近で使用することも可能である」と記載され、可撓性連結部材をまがった軸状部材とすることにより中心線付近に軸状部材が存在しても可撓性が得られることが示唆されているから、刊行物1発明において、可撓性連結部材を湾曲した形状とすることは、刊行物1の記載事項から当業者が適宜になし得るこである。

(相違点3について)
刊行物2(上記(2e))には、下端部を開口とし、開口部にフィルタ膜を取り付けた複数のウエル(20)を、ウエブ(28)で連結し真直ぐに一列に配設したウエルフィルタストリップを、トランスファープレートを介して、底部を有するウエルストリップ上に重ね合わせ、上下の各ウエルの軸が一致するように位置づけること、トランスファープレートが漏斗状の底部壁(133)と下方に伸長するノズル(134)を有し、ノズルが下側のウエルストリップのウエル内に入るようにして、液を対応するウェル内に誘導し汚染が防止されるようにしたものが記載されている。
そして、分析容器に試料が受け入れ易くするために上方の断面積を大きくした分析容器の形状として、刊行物4に、断面積の大きい円筒状の上部チャンバーの底面壁を介して、断面積の小さい円筒状の下部チャンバーを連結したものが記載され、上部の断面積を下部の断面積より大きくした分析容器は、本願優先日前に周知であるといえるところ、上下に重ねて使用する容器配列においても、刊行物2記載のトランスファープレートのようなものを用いないでも液がこぼれずに下側の容器に誘導されるように、容器下部の断面積を小さくし、小径の下端部を下側の容器の上端部に突き出させて配置することは、特開平4-227860号公報(当審における拒絶理由で、積み重ねた態様を含む請求項14について提示した周知例であり、拒絶の査定の理由で引用された引用文献3でもある)に、試験トレイの各室(3)が、下方部分(6)は円筒形で、上方部分(7)が下方にテーパー状となった円錐台形であること(【0012】、【図2】、【図3】)、試験トレイ(1)の各室(3)の下部の栓(12)が、収集トレイ(72)のウエル(16)の開口部に収容されるように、上下に重ね合わせることで、漏れや汚染を生じないこと(【0006】)が記載され、国際公開第98/57746号(対応日本公報 特表2002-506386号公報)には、図7、8に上部と下部のフィルタ保持部材F1、F2がそれぞれ、小径の出口端部と大径の上部パイプ領域で形成された実験装置であり、上部フィルタ保持部材F1の、小径の出口端部(82)が、下部フィルタ保持部材F2の上部パイプ領域中に突き出ること(図7、8、1、第10頁図1の説明、第15?16頁図7、8の説明)が記載されているように、本願優先日前に周知の技術といえる。
そうすると、刊行物1発明のキュベットを、刊行物2に記載されるように、上下に重ねて使用することを考え、キュベットの底部を開口として、トランスファープレートのような部材を用いることなく、こぼれることなく上側及び下側の分析容器に試料が受け入れられるように、上記周知技術を勘案して、キュベットの形状と上下重ね合わせ状態について、上部チャンバー及び下部チャンバーを有し、上部チャンバー及び下部チャンバーは、各々実質的に円筒状の形状を有し、上部チャンバーの中央部における断面は、下部チャンバーの同断面より大きく、上部チャンバーは、開口した上端と、上記上部チャンバーを下部チャンバーに連結している円形の開口部を中央に有する、環状の底面壁とを有するようにして、上側キュベットの下部の一部が下側キュベットの上部チャンバー内にあり、上側キュベットの下端が、下側キュベットの上部チャンバーの底面壁から予め決められた距離にあるように、積み重ねることは、当業者が容易になし得たものといえる。

(本願発明の効果について)
分析試料を最適な方法で、所望の高処理量スクリーニングを達成できる等の本願発明の効果は、刊行物1ないし4の記載事項及び周知技術から予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。

4 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-13 
結審通知日 2010-10-15 
審決日 2010-10-26 
出願番号 特願2002-41158(P2002-41158)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 洋平郡山 順  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 後藤 時男
竹中 靖典
発明の名称 直線キュベット配列、それにより組み立てられた2次元キュベット配列及びそのような2次元キュベット配列を含むシステム  
代理人 金森 久司  
代理人 浅村 肇  
代理人 長沼 暉夫  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 皓  
代理人 金森 久司  
代理人 浅村 肇  
代理人 長沼 暉夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ