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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1233790 |
審判番号 | 不服2008-5014 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-02-28 |
確定日 | 2011-03-08 |
事件の表示 | 特願2004-534931「グリッドガイドラインの電磁誘導層を内装したタッチスクリーン」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日国際公開、WO2004/025455、平成17年12月22日国内公表、特表2005-539302〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年9月27日(パリ条約に基づく優先権主張 2002年9月16日 中国)を国際出願日とする国際出願であって、 平成19年2月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成19年4月26日付けで意見書が提出されるとともに手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成19年8月17日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して、平成19年10月24日付けで意見書が提出されるとともに手続補正(以下、「補正2」という。)がなされたが、平成19年11月28日付けで補正2について補正却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して平成20年2月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.平成20年2月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年2月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正内容 本件補正は、補正前の特許請求の範囲(補正1の特許請求の範囲)の請求項1: 「 【請求項1】 少なくとも、ディスプレイスクリーンとケースを含んで、ディスプレイスクリーンの後ろに誘導層を設け、誘導層の出力は誘導捕集制御回路に接続し、ケース内にディスプレイスクリーンのコントロール回路を設けているグリッドガイドラインの誘導層を内装したタッチスクリーンであって、 上記誘導層は、ガイドラインがそれぞれX、Y軸方向に沿って巻いてなる格子配列された経緯線ネットであり、ガイドラインは交叉点で相互に絶縁し、各グリッドが囲んでなる空間が一つの誘導セルを構成し、 上記誘導コントロール回路と誘導層の両者が、一体に直接に連結し、誘導コントロール回路の構成要素を直接に経緯線ネットの出力端に設けて、誘導コントロール回路がケース内に設けられていることを特徴とするグリッドガイドラインの電磁誘導層を内装したタッチスクリーン。」を、 「 【請求項1】 ディスプレイスクリーンとケースを備えるタッチスクリーンであって、 前記ディスプレイスクリーンの後には、周縁に定位柱を備える複数のガイドライン誘導層が配され、 前記ガイドライン誘導層の出力は誘導捕集制御回路に接続し、 前記ケース内には、ディスプレイスクリーンのコントロール回路が配され、 前記ガイドライン誘導層は、前記定位柱を通じてそれぞれX、Y軸方向に沿って巻かれたガイドラインからなる経緯線ネットを備え、 前記X、Y軸方向に巻かれたガイドラインは、交叉点で相互に絶縁され、各グリッドが囲んでなる空間が一つの誘導セルを構成し、 前記ガイドラインは、その表面が絶縁層で覆われたエナメル線であり、 前記複数のガイドライン誘導層は重ね合わされ、複数の層を形成し、 各層の前記誘導セルは、互いに格子配列されるとともに、前記各層の誘導セルの間隔の大きさは同じ或いは異なり、 前記誘導捕集制御回路と前記ガイドライン誘導層の両者が、一体に直接に連結し、前記誘導捕集制御回路の構成要素を直接的に前記経緯線ネットの出力端に設けて、前記誘導捕集制御回路が前記ケース内に設けられ、 前記ガイドライン誘導層の面積は、前記ディスプレイスクリーンの面積よりも小さく、前記ガイドライン誘導層は、前記ディスプレイスクリーンの一部に付設するとともに前記ディスプレイスクリーンの表示範囲の一側に位置していることを特徴とするグリッドガイドラインの電磁誘導層を内装したタッチスクリーン。」 と補正することを含むものである。 すなわち、本件補正は、請求項1において、 a.「複数のガイドライン誘導層は重ね合わされ、複数の層を形成していること」を規定し、 b.「ガイドライン誘導層は定位柱を有し、ガイドラインは定位柱を通じて巻かれていること」を規定し、 c.「ガイドラインは、その表面が絶縁層で覆われたエナメル線であること」を規定し、 d.「各層の誘導セルは、互いに格子配列されるとともに、各層の誘導セルの間隔の大きさは同じ或いは異なること」を規定し、 e.「ガイドライン誘導層の面積は、ディスプレイスクリーンの面積よりも小さく、前記ガイドライン誘導層は、前記ディスプレイスクリーンの一部に付設するとともに前記ディスプレイスクリーンの表示範囲の一側に位置していること」を規定したものである。 2.補正の目的 上記補正事項a.?e.は、発明特定事項であるガイドライン誘導層、ガイドライン、及び誘導セルを限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3.刊行物及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平5-210452号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (a)段落番号【0013】 「【0013】 【実施例】図1は、ノートブック型コンピュータ環境で構成される電磁ディジタイザ・アセンブリの断面図であり、データを表示するための液晶(LCD)またはその他の表示装置12及びバックライト13を含む。ペンまたはスタイラス16は、磁気コイル17を含み、センサ・グリッド22による電磁信号の検出を介して書込み面10上の所望の点を指定または入力するために使用される。演算回路14が指定された点の座標値を計算する。静電シールド15が、センサ・グリッド22をLCD12またはバックライト13によって発生される静電雑音から隔離する。表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む、センサ・グリッド22と書込み面10の間に配置されたすべての構成要素は、一括して19として示してある。シールド・プレート24は、歪みまたは干渉磁界の内部発生源からのシールドを行い、これが純粋に導電性シールドの場合には、外部発生源からの雑音をある程度減少させる。干渉の内部発生源としては、演算回路14、及び変圧器、接地板、金属構造要素などの導電性材料または強磁性材料18を含む。干渉の外部発生源は、図1では発生源20で表してある。本発明のシールド材が使用できる電磁ディジタイザの1例は、1991年5月6日付の米国特許出願第07/696434号に記述されている。」 (b)段落番号【0015】 「【0015】図3は、ノートブック型コンピュータ環境で実装するように構成された電磁ディジタイザの断面図である。この構成のディジタイザは、従来のデスクトップ型構成の場合と同様に、ケース11、演算回路14、及び導電性材料または強磁性材料18を含む。しかし、この構成は、書込み面10とセンサ・グリッド22の間に配置された構成要素(一括して19として示す)を含む。構成要素19としては、図1に示した表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15が含まれる。図3の構成に示すシールド・プレート26は、強磁性材料、すなわち高透磁率の材料からなる。」 (c)段落番号【0018】 「【0018】図6は、導電性シールド・プレート30と接触するセンサ・グリッドの構成要素を示す斜視図である。図5に示したように、センサ・グリッド22は、ワイヤ・ループ23及びセンサ・グリッド基板21からなる。図6に示すように、ワイヤ・ループ23は、ワイヤ27の対から構成される。ワイヤ・ループは、閉じた経路を形成し、その周りでペン・コイル17からの磁気誘導によって信号電圧が発生する。ワイヤ・ループは、任意の導電性材料で製造でき、永久的なものでも一時的なものでもよい。永久ループは、ワイヤ対27の物理的に連続な接続によって形成される。一時ループは、電子スイッチを使って様々なワイヤを対を形成するように選択することによって形成される。したがって、永久ループの幅は、固定されるが、一時ループの幅は、そのループを形成するためにどの2本のワイヤが選択されたかに応じて変化する。図をわかりやすくするため、図6では1組のループだけを示してある。指定された点の他の座標を決定するには、図6に示した1組のループに垂直な、もう1組のループが必要になる。」 (d)図1には、表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15から成る構成要素19の後ろにセンサ・グリッド22が示されている。 したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「電磁ディジタイザであって、 磁気コイル17を含むペン16が、センサ・グリッド22による電磁信号の検出を介して書込み面10上の所望の点を指定または入力するために使用され、 前記電磁ディジタイザは、ケース11、指定された点の座標値を計算する演算回路14、及び導電性材料または強磁性材料18を含み、表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む構成要素19の後ろにセンサ・グリッド22を配置しており、 センサ・グリッド22は、ワイヤ・ループ23及びセンサ・グリッド基板21からなり、ワイヤ・ループ23は、ワイヤ27の対から構成され、閉じた経路を形成し、その周りでペン・コイル17からの磁気誘導によって信号電圧が発生し、該ワイヤ・ループ23は、任意の導電性材料で製造でき、永久的なものでもよく、指定された点の他の座標を決定するには、1組のループに垂直な、もう1組のループが必要になる、 電磁ディジタイザ。」 また、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2(特開平6-230881号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (e)段落番号【0005】 「【0005】電磁誘導方式の座標検出装置に用いられる回路基板はセンス部と処理回路に分けて考えることができる。ここに、センス部とは、座標検出面の有効エリアに対応して設けられる回路基板の部分であり、例えばループコイルがX軸方向、Y軸方向のそれぞれに並設された形状を有するセンス線の集合からなるものである。また、処理回路とは、センス部に対して電力を供給する回路、座標計算をする回路、制御回路等を含むものである。センス部と処理回路とは一つのプリント基板にて一体的に作製することもそれぞれ別のプリント基板にて構成することも可能である。」 したがって、刊行物2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「座標検出面の有効エリアに対応して設けられる回路基板の部分であり、ループコイルがX軸方向、Y軸方向のそれぞれに並設された形状を有するセンス線の集合からなるセンス部と、センス部に対して電力を供給する回路、座標計算をする回路、制御回路等を含む処理回路とを一つのプリント基板にて一体的に作製した 電磁誘導方式の座標検出装置。」 また、刊行物3(特開平10-105322号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (f)段落番号【0016】 「本発明は以上の事情を考慮してなされたもので、例えば、X軸、Y軸に対し各2層のセンスコイルを所定の間隔でタブレット内に埋め込み、コンピュータにペンの傾きに起因する入力誤差を補正させ、ペン先の正確な位置座標と傾き角度を得て文書処理することができるタブレット装置とそれを用いた文書処理装置並びにタブレット装置制御プログラムを記憶した媒体を提供するものである。」 また、刊行物4(実願平3-81740号(実開平5-25524号公報)のCD-ROM)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (g)段落番号【0001】 「 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案はCAD等に使用される情報入力装置に係わり、特にディスプレイ装置の表示盤面上に装着して使用される電磁誘導方式の透明デジタイザセンサ板に関するものである。」 (h)段落番号【0012】-【0016】 「 【0012】 【実施例】 以下、本考案を図1,図2によって説明する。図1において1は四辺形の開口部10を形成するセンサ線布線用の枠板,2は枠板1の各辺板上に所定間隔で設立されたセンサ線折り返し用のピン,3,3はそれぞれ枠板1上のX軸方向とY軸方向に蛇行状に布線されたセンサ線4,4はそれぞれX軸方向及びY軸方向に布線されたセンサ線の各端末部,5はX軸方向及びY軸方向センサ線の各交点を接着剤で固着した固着点、8は透明ガラス平板、9は枠板1と透明ガラス平板8とを平板部12により所定の間隔に支持固定する額縁状支持枠で、支持枠の額縁部にはセンサ線3,3の端末部4,4を導出する導出口11を有する。 【0013】 本考案の透明デジタイザセンサ板は次のようにして製造される。センサ線布線用の枠板1上のX軸方向に極細マグネットワイヤを用いたセンサ線3を布線パターンに沿って、前記折り返し用ピン2に順次引っ掛け折り返しながら蛇行状に布線してX軸方向センサ線3を形成し、その端末4,4を枠板1から導出する。また、同様にしてY軸方向にY軸方向センサ線3を布線する。このとき、X軸方向とY軸方向の各センサ線3,3は各交点でそれぞれ接触し、X軸方向及びY軸方向センサ線の布線状態で折り返し用ピン2,2間に弛みを生じることのないよう布線される。 【0014】 次に、X軸方向及びY軸方向センサ線3,3の各交点に例えば高粘稠性又は速硬性のエポキシ樹脂等の接着剤を塗布固着し、固着点5を形成する。 【0015】 続いて、額縁状支持枠9の一方の側にX軸方向及びY軸方向センサ線3,3の布線固着された枠板1を嵌着支持し、X軸方向及びY軸方向センサ線3,3のそれぞれの端末部4,4をセンサ線端末部導出口11,11から導出させた状態で枠板1を縁状支持枠9に接着剤で接着固定する。 【0016】 次に、センサ線布線用枠板1の支持固定された前記額縁状支持枠9の他方の側に透明ガラス板8を嵌着載置し接着剤により接着固定させて、透明デジタイザセンサ板が構成される。」 また、刊行物5(特開2001-282443号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (i)段落番号【0001】 「 【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、座標入力手段から発生する交番磁界により、座標入力シートに敷設された導線に発生する信号に基づいて上記座標入力手段の位置座標を読み取る座標読取装置に関する。」 (j)段落番号【0027】-【0028】 「【0027】[ノイズの影響に関する実験]次に、本発明者らが行ったノイズの影響に関する実験について図9を参照して説明する。図9(A)はパネル22の厚さを示す説明図であり、図9(B)は図9(A)に示すパネル22の厚さと、ノイズレベルおよびSN比との関係を示すグラフである。最初に、本発明者らは、ノイズレベルがどのぐらいであると、位置座標の読取精度に好ましくない影響を与えるかについて検討した。たとえば、ループ状パターンから検出できる電圧の最大値が3.3Vであり、その最大値を検出したときのA/D変換回路52(図7)のカウント値が256(8bit)であるとすると、そのカウント値に約2?3の誤差が発生すると、検出する位置座標に好ましくない影響を及ぼすことが分かった。たとえば位置座標に0.4mmの誤差が発生してしまうことが分かった。そして、カウント値2?3をノイズレベルに換算すると約30mVとなった。 【0028】つまり、ノイズレベルが30mV以下になるようにパネル22の厚さhsを設定すればよいことが分かった。そこで、本発明者らは、パネル22の厚さhsを0.1mm?1.6mmまで変化させて、ループ状パターン23により検出されるノイズレベルおよびSN比を測定した。その結果、図9(B)に示すように、パネル22の厚さhsが1.0mm以上になると、ノイズレベルが30mV以下になることが分かった。なお、従来のエナメル線や銅箔を用いたものは、ループの抵抗値は、10Ω以下であり、ノイズ自体の発生が小さいが、上記のようなパネル厚さを選択することは、ループコイル抵抗値が10Ω以上でノイズ発生が多い場合に特に有効である。」 また、刊行物6(特開昭61-217826号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (k)第4頁右上欄第3-10行 「本発明を適用した光学式位置検出装置の他の実施例として、第6図に示すように、前記光学式位置検出装置を画像表示装置の一部に適用することも可能である。すなわち、第6図に示すように画像表示面(71)の一部に沿って発光素子(72)乃至(75)と受光素子列(76)及び(77)を配設することにより画像表示面(71)の一部について位置検出を行うことができる。」 4.本願補正発明と引用発明1との一致点・相違点 引用発明1の表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む構成要素19が、本願補正発明のディスプレイスクリーンに相当するから、引用発明1の「表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む構成要素19とケース11を含む電磁ディジタイザ」は、本願補正発明の「ディスプレイスクリーンとケースを備えるタッチスクリーン」に相当する 引用発明1のセンサ・グリッド22が、本願補正発明のガイドライン誘導層に相当するから、引用発明1の電磁ディジタイザは、本願補正発明のタッチスクリーンと、「前記ディスプレイスクリーンの後には、ガイドライン誘導層が配され」ている点で一致している。 引用発明1のセンサ・グリッド22は、「1組のループ」と「1組のループに垂直な、もう1組のループ」を有しており、これらは、本願補正発明の「それぞれX、Y軸方向に沿って巻かれたガイドラインからなる経緯線ネット」に相当するから、引用発明1の電磁ディジタイザは、本願補正発明のタッチスクリーンと、「前記ガイドライン誘導層は、それぞれX、Y軸方向に沿って巻かれたガイドラインからなる経緯線ネットを備え」ている点で一致している。 引用発明1のセンサ・グリッド22の「1組のループ」と「1組のループに垂直な、もう1組のループ」とは、直交することにより格子を形成するから、引用発明1の電磁ディジタイザは、本願補正発明のタッチスクリーンと、「前記X、Y軸方向に巻かれたガイドラインは、各グリッドが囲んでなる空間が一つの誘導セルを構成し」ている点、及び「誘導セルは、互いに格子配列される」点で一致している。 したがって、本願補正発明と引用発明1の一致点・相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「ディスプレイスクリーンとケースを備えるタッチスクリーンであって、 前記ディスプレイスクリーンの後には、ガイドライン誘導層が配され、 前記ガイドライン誘導層は、それぞれX、Y軸方向に沿って巻かれたガイドラインからなる経緯線ネットを備え、 前記X、Y軸方向に巻かれたガイドラインは、各グリッドが囲んでなる空間が一つの誘導セルを構成し、 前記誘導セルは、互いに格子配列されていることを特徴とするグリッドガイドラインの電磁誘導層を内装したタッチスクリーン。」である点。 [相違点1] 本願補正発明では、ガイドライン誘導層は、複数のガイドライン誘導層から構成されており、該複数のガイドライン誘導層は重ね合わされ、複数の層を形成しており、各層の誘導セルの間隔の大きさは同じ或いは異なっているのに対して、引用発明1には、センサ・グリッド22が、複数のセンサ・グリッドから成っていることは記載されていない点。 [相違点2] 本願補正発明では、ガイドライン誘導層の出力は誘導捕集制御回路に接続し、前記誘導捕集制御回路と前記ガイドライン誘導層の両者が、一体に直接に連結し、前記誘導捕集制御回路の構成要素を直接的に前記経緯線ネットの出力端に設けて、前記誘導捕集制御回路が前記ケース内に設けられているのに対して、引用発明1では、センサ・グリッド22と誘導捕集制御回路との関係について記載されていない点。 [相違点3] 本願補正発明では、ガイドライン誘導層は周縁に定位柱を備え、ガイドラインは前記定位柱を通じて巻かれているのに対して、引用発明1では、定位柱について記載されていない点。 [相違点4] 本願補正発明では、ケース内には、ディスプレイスクリーンのコントロール回路が配されているのに対して、引用発明1では、表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む構成要素19のコントロール回路について記載されていない点。 [相違点5] 本願補正発明では、X、Y軸方向に巻かれたガイドラインは、交叉点で相互に絶縁され、ガイドラインは、その表面が絶縁層で覆われたエナメル線であるのに対して、引用発明1では、「ワイヤ・ループ23は、任意の導電性材料で製造でき、永久的なものでもよく、」と記載されている点。 [相違点6] 本願補正発明では、ガイドライン誘導層の面積は、ディスプレイスクリーンの面積よりも小さく、前記ガイドライン誘導層は、前記ディスプレイスクリーンの一部に付設するとともに前記ディスプレイスクリーンの表示範囲の一側に位置しているのに対して、引用発明1では、表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む構成要素19とセンサ・グリッド22の面積の大小関係及び位置については記載されていない点。 5.相違点についての検討 [相違点1について] 刊行物3には「X軸、Y軸に対し各2層のセンスコイルを所定の間隔でタブレット内に埋め込み、コンピュータにペンの傾きに起因する入力誤差を補正させ」ることが記載されているから、引用発明1において、センサ・グリッド22を2枚重ねてX軸、Y軸に対し各2層のワイヤループを所定の間隔で配置し、ペン16の傾きに起因する入力誤差を補正することは、刊行物3から容易に想到できたことである。そして、センサ・グリッド22を2枚重ねれば、各層の誘導セルの間隔の大きさは同じか、或いは異なっているの2種類しかあり得ないことは明らかである。 [相違点2について] 引用発明1では、磁気コイル17を含むペン16が、センサ・グリッド22による電磁信号の検出を介して書込み面10上の所望の点を指定または入力するために使用され、また指定された点の座標値を計算する演算回路14を有しているから、センサ・グリッド22からの信号を集めて演算回路14に渡すための誘導捕集制御回路を有していることは明らかである。 また、引用発明2は、電磁誘導方式の座標検出装置において、ループコイルがX軸方向、Y軸方向のそれぞれに並設された形状を有するセンス線の集合からなるセンス部と、センス部に対して電力を供給する回路、座標計算をする回路、制御回路等を含む処理回路とを一つのプリント基板にて一体的に作製することを開示しているから、引用発明1において、センサ・グリッド22、誘導捕集制御回路及び演算回路14を一つのプリント基板にて一体的に作製することは、容易に想到できたことである。 そして、このように引用発明1において、センサ・グリッド22、誘導捕集制御回路及び演算回路14を一つのプリント基板にて一体的に作製すれば、センサ・グリッド22の出力は誘導捕集制御回路に接続され、前記誘導捕集制御回路と前記センサ・グリッド22の両者が、一体に直接に連結され、前記誘導捕集制御回路の構成要素を直接的にセンサ・グリッド22の出力端に設けて、前記誘導捕集制御回路がケース11内に設けられていることは、明らかである。 [相違点3について] 刊行物4には、透明デジタイザセンサ板を作成する時に、センサ線布線用の枠板の各辺板上に所定間隔でセンサ線折り返し用のピンを設立して、極細マグネットワイヤを用いたセンサ線を布線パターンに沿って、前記折り返し用ピンに順次引っ掛け折り返しながら布線することが開示されているから、引用発明1において、センサ・グリッド22の周縁に所定間隔でセンサ線折り返し用のピンを設立して、ワイヤを折り返し用ピンに順次引っ掛け折り返しながら布線することは、容易に想到できたことである。 このように構成した場合のセンサ線折り返し用のピンは、本願補正発明の定位柱に相当する。 [相違点4について] 引用発明1に、明記されていないが、表示装置12及びバックライト13のコントロール回路が存在していることは明らかである。そして該コントロール回路については、電磁ディジタイザと別体にして導線で接続するよりも、電磁ディジタイザのケース11に内に配置する方が好ましいことは、当業者が普通に考えることである。 [相違点5について] 引用発明1における「1組のループ」及び「1組のループに垂直な、もう1組のループ」は、それぞれ、指定された点のY座標、X座標を独立に検出するためのものであるから、交叉点で相互に絶縁されている必要があることは明らかである。また、刊行物5に記載されているように、座標入力手段から発生する交番磁界により、座標入力シートに敷設された導線に発生する信号に基づいて上記座標入力手段の位置座標を読み取る座標読取装置において、ループにエナメル線を用いることは、従来から行われていることであるから、引用発明1におけるワイヤ・ループ23を、その表面が絶縁層で覆われたエナメル線とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 [相違点6について] 刊行物6には、画像表示面(71)の一部について位置検出を行うことが記載されているから、引用発明1において、センサ・グリッド22の面積を表示装置12の面積より小さくして、センサ・グリッド22を表示装置12の表示範囲の上側寄り、下側寄り、右側寄り、又は左側寄りの位置に、構成要素19に付設することは、容易に想到できたことである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1,2及び刊行物3?6に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明1,2及び刊行物3?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下された。また、補正2は、既に拒絶査定と同日の平成19年11月28日に却下されているので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、補正1の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりものである。 「 【請求項1】 少なくとも、ディスプレイスクリーンとケースを含んで、ディスプレイスクリーンの後ろに誘導層を設け、誘導層の出力は誘導捕集制御回路に接続し、ケース内にディスプレイスクリーンのコントロール回路を設けているグリッドガイドラインの誘導層を内装したタッチスクリーンであって、 上記誘導層は、ガイドラインがそれぞれX、Y軸方向に沿って巻いてなる格子配列された経緯線ネットであり、ガイドラインは交叉点で相互に絶縁し、各グリッドが囲んでなる空間が一つの誘導セルを構成し、 上記誘導コントロール回路と誘導層の両者が、一体に直接に連結し、誘導コントロール回路の構成要素を直接に経緯線ネットの出力端に設けて、誘導コントロール回路がケース内に設けられていることを特徴とするグリッドガイドラインの電磁誘導層を内装したタッチスクリーン。」 1.刊行物及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び引用発明は、前記「第2.3.」に記載したとおりである。 2.本願発明と引用発明1との一致点・相違点 引用発明1の表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む構成要素19が、本願発明のディスプレイスクリーンに相当するから、引用発明1の「表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む構成要素19とケース11を備えた電磁ディジタイザ」は、本願発明の「ディスプレイスクリーンとケースを含むタッチスクリーン」に相当する 引用発明1のセンサ・グリッド22が、本願発明の誘導層に相当するから、引用発明1の電磁ディジタイザは、本願発明のタッチスクリーンと、「ディスプレイスクリーンの後に、ガイドライン誘導層を設け」ている点で一致している。 引用発明1のセンサ・グリッド22が、本願発明のグリッドガイドラインの誘導層に相当するから、引用発明1の電磁ディジタイザは、本願発明のタッチスクリーンと、「グリッドガイドラインの誘導層を内装したタッチスクリーン」である点で一致している。 引用発明1のセンサ・グリッド22は、「1組のループ」と「1組のループに垂直な、もう1組のループ」を有しており、これらは直交することにより格子を形成するから、引用発明1の電磁ディジタイザは、本願発明のタッチスクリーンと、「上記誘導層は、ガイドラインがそれぞれX、Y軸方向に沿って巻いてなる格子配列された経緯線ネットであ」る点、及び「各グリッドが囲んでなる空間が一つの誘導セルを構成し」ている点で一致している。 したがって、本願発明と引用発明1の一致点・相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「少なくとも、ディスプレイスクリーンとケースを含んで、ディスプレイスクリーンの後ろに誘導層を設けた、グリッドガイドラインの誘導層を内装したタッチスクリーンであって、 上記誘導層は、ガイドラインがそれぞれX、Y軸方向に沿って巻いてなる格子配列された経緯線ネットであり、各グリッドが囲んでなる空間が一つの誘導セルを構成している、 グリッドガイドラインの電磁誘導層を内装したタッチスクリーン。」である点。 [相違点11] 本願発明では、誘導層の出力は誘導捕集制御回路に接続し、上記誘導コントロール回路と誘導層の両者が、一体に直接に連結し、誘導コントロール回路の構成要素を直接に経緯線ネットの出力端に設けて、誘導コントロール回路がケース内に設けられているのに対して、引用発明1では、センサ・グリッド22と誘導捕集制御回路及び誘導コントロール回路との関係について記載されていない点。 [相違点12] 本願発明では、ケース内にディスプレイスクリーンのコントロール回路を設けているのに対して、引用発明1では、表示装置12、バックライト13、及び静電シールド15を含む構成要素19のコントロール回路について記載されていない点。 [相違点13] 本願発明では、ガイドラインは交叉点で相互に絶縁しているのに対して、引用発明1では、「1組のループ」と「1組のループに垂直な、もう1組のループ」の交叉点における接続又は絶縁について明記されていない点。 3.相違点についての検討 [相違点11について] 本願発明において「上記誘導コントロール回路」と記載されているが、その記載箇所より前に「誘導コントロール回路」という記載がないから、本願発明において、「誘導コントロール回路」は「誘導捕集制御回路」と同じ意味であると解される。 引用発明1では、磁気コイル17を含むペン16が、センサ・グリッド22による電磁信号の検出を介して書込み面10上の所望の点を指定または入力するために使用され、また指定された点の座標値を計算する演算回路14を有しているから、センサ・グリッド22からの信号を集めて演算回路14に渡すための誘導捕集制御回路を有していることは明らかである。 また、引用発明2は、電磁誘導方式の座標検出装置において、ループコイルがX軸方向、Y軸方向のそれぞれに並設された形状を有するセンス線の集合からなるセンス部と、センス部に対して電力を供給する回路、座標計算をする回路、制御回路等を含む処理回路とを一つのプリント基板にて一体的に作製することを開示しているから、引用発明1において、センサ・グリッド22、誘導捕集制御回路及び演算回路14を一つのプリント基板にて一体的に作製することは、引用発明2から容易に想到できたことである。 そして、このように引用発明1において、センサ・グリッド22、誘導捕集制御回路及び演算回路14を一つのプリント基板にて一体的に作製すれば、センサ・グリッド22の出力は誘導捕集制御回路に接続され、前記誘導捕集制御回路(すなわち、誘導コントロール回路)と前記センサ・グリッド22の両者が、一体に直接に連結され、前記誘導捕集制御回路(すなわち、誘導コントロール回路)の構成要素を直接にセンサ・グリッド22の出力端に設けて、前記誘導捕集制御回路(すなわち、誘導コントロール回路)がケース11内に設けられていることは、明らかである。 [相違点12について] 引用発明1に、明記されていないが、表示装置12及びバックライト13のコントロール回路が存在していることは明らかである。そして該コントロール回路については、電磁ディジタイザと別体にして導線で接続するよりも、電磁ディジタイザのケース11に内に配置する方が好ましいことは、当業者が普通に考えることである。 [相違点13について] 引用発明1における「1組のループ」及び「1組のループに垂直な、もう1組のループ」は、それぞれ、指定された点のY座標、X座標を独立に検出するためのものであるから、交叉点で相互に絶縁されている必要があることは明らかである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明1,2から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明1,2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項にかかる発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-12 |
結審通知日 | 2010-10-13 |
審決日 | 2010-10-26 |
出願番号 | 特願2004-534931(P2004-534931) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 廣瀬 文雄、森田 充功 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
近藤 聡 青木 健 |
発明の名称 | グリッドガイドラインの電磁誘導層を内装したタッチスクリーン |
代理人 | 清原 義博 |