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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E03C
管理番号 1233936
審判番号 不服2009-25004  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-17 
確定日 2011-03-14 
事件の表示 特願2000-328143「水回り器具の取付部構造」拒絶査定不服審判事件〔平成14年5月9日出願公開,特開2002-129611〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成12年10月27日の出願であって,平成21年9月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,これと同時に手続補正がなされたものであり,その後,平成22年6月21日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年8月24日付けで回答書が提出されたものである。



第2.平成21年12月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年12月17日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理 由]
1.補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりに補正された。
「水回り器具が取り付けられる平坦な設置面における水回り器具の取付領域に、当該設置面とは別体に製作した水回り器具の基部を着座させるための台座部が隙間なく取着され、該台座部の側周面が、上記設置面と水回り器具の基部の側周面とを連接する凹曲面に形成され、水回り器具の基部の側周面と台座部の側周面とが当該凹曲面の接線方向に連接すると共に、台座部の側周面と設置面とが当該凹曲面の接線方向に連接していることを特徴とする水回り器具の取付部構造。」

上記補正は,補正前(平成21年7月21日付け手続補正書を参照。)の請求項1に係る発明の「台座部の側周面が、設置面と水回り器具の基部の側周面とを連接する凹曲面」の構成を,「水回り器具の基部の側周面と台座部の側周面とが凹曲面の接線方向に連接すると共に、台座部の側周面と設置面とが凹曲面の接線方向に連接している」と限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とする。
そこで,本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下検討する。


2.刊行物及びその記載内容
刊行物1:特開平10-117955号公報
刊行物2:実願昭57-119164号(実開昭59-24468号)
のマイクロフィルム

(1)原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された上記刊行物1には,図面とともに,次のことが記載されている。
(1a)「【請求項1】 カウンター表面に設けられた水栓挿通孔の周囲に縦断面がほぼ台形状に滑らかに盛り上がった取付部が設けられ、この盛り上がっている取付部の上面に水栓が取り付けられ、この水栓の側面と取付部の側面とがほぼ連続した滑らかな面になされていることを特徴とするカウンター。」
(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカウンター表面に水栓が取り付けられているカウンターに関する。…
【0002】
【従来の技術】従来、洗面台、厨房室、浴室等のカウンターに水栓を取り付けるときには、カウンターの平らな表面に水栓を取り付けることが多く行われている。…」
(1c)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記浴室等のカウンターでは、水栓とカウンター表面の境界では、ほぼ平らなカウンター表面と水栓の側面とがほぼ直角に交差する隅部が形成されている。…従って、このほぼ直角に交差する隅部は狭く掃除し難い。従って、この隅部にゴミ等が詰まったり微生物が繁殖したりして、衛生上好ましくない。
【0005】このことを図2を参照しながら説明する。図2は、水栓101がカウンター表面102に取り付けられたカウンター100が示されている。そして、この水栓101の側面とカウンター表面102の境界では、ほぼ直角に交差する隅部103が形成されている。この隅部103は、図2から判るように、狭く掃除し難い。従って、この隅部105にゴミ等が詰まったり微生物が繁殖して、衛生上好ましくない。そこで、本発明の目的は、水栓とカウンター表面の境界…にゴミ等が詰まり難いし、微生物が繁殖し難いカウンターを提供することである。」
(1d)「【0012】図1において、1は洗面台であり、この洗面台1は上面にほぼ水平なカウンター2が設けられている。3は洗面ボールであり、この洗面ボール3はカウンター2のほぼ中央に設けられている。この洗面ボール3の背後のカウンター2の表面には、縦断面がほぼ台形状に滑らかに盛り上がっている取付部21が設けられている。従って、このカウンターの表面はほぼ水平で、取付部21のみ滑らかに盛り上がっている。そして、この取付部21のほぼ中央には水栓挿通孔22が設けられている。4は水栓であり、この水栓4はカウンター2の洗面ボール3の後部の取付部21にスペーサー5を介して取り付けられている。
【0013】このスペーサー5は上面が水栓4の下面とほぼ同じであり、下面が取付部21の上面とほぼ同じで、側面が取付部21の傾斜面とほぼ同じ傾斜を有する環状体である。従って、洗面台2の取付部21の上にスペーサー5を載せ、この上に水栓4を取り付けると、取付部21の側面とスペーサー5の側面と水栓4の側面とは連続した滑らかな面を形成する。」
(1e)「【0015】次に、この洗面台1の取付方法および作用について説明する。洗面台1を所定位置に据え付け、取付部21のほぼ中央に水栓挿通孔22を設け、この取付部21の上にスペーサー5を載せ、水栓4の接続部41をスペーサー5の環状の中心部、および、カウンター2の水栓挿通孔22の中を通過させ、接続部41の先端をカウンター2の裏面に貫通させる。カウンター2の裏面に貫通した接続部41にナット45を螺入して、カウンター2にスペーサー5と水栓4を取り付ける。」
(1f)「【0018】
【発明の効果】請求項1記載のカウンターでは、カウンター表面に設けられた水栓挿通孔の周囲に縦断面がほぼ台形状に滑らかに盛り上がっている取付部が設けられているから、このカウンター表面の平らな部分と盛り上がった取付部の境界は滑らかな面となっていて、この部分は掃除し易い。従って、この部分にゴミが詰まることがないし、微生物が繁殖しないので衛生的である。又、この盛り上がっている取付部の上面に水栓が取り付けられ、この水栓の側面と取付部の側面とがほぼ連続した滑らかな面になされているから、取付部と水栓支持部との境界は、カウンターより高い位置にあり、しかも、ほぼ連続した滑らかな面となっていて、この部分も掃除し易い。従って、この部分にゴミが詰まることがないし、微生物が繁殖しないので衛生的である。」

上記(1a)?(1f)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識からみて,刊行物1には,次の発明(以下,「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「水栓4が取り付けられるカウンター2の表面に台形状に盛り上げた取付部21の上面における水栓4の取付領域に,当該取付部21の上面とは別体に製作した水栓4の基部を着座させるためのスペーサー5が隙間なく取着され,該スペーサー5の側周面が,上記取付部21の側周面と水栓4の基部の側周面とを連接する滑らかな面に形成され,水栓4の基部の側周面とスペーサー5の側周面とが滑らかな面で連接すると共に,カウンター2の表面の平らな部分と取付部21の側周面とが滑らかな面で連接する水栓4の取付部構造。」

(2)同じく,刊行物2には,図面とともに,次のことが記載されている。
(2a)「本考案は台所等における流しの水槽への水栓の取付けの改良に関するものである」(明細書1頁10?11行)
(2b)「本考案は…、ハンドル等の周辺における清掃に適し、この種のものに要求される清潔な状態を維持するに適した流しを提供することを目的とする。…」(同書2頁5?8行)
(2c)「…第1図は本考案に係るホーロー製の流しの水槽の斜視図であり、第2図は水栓取付部のA-A′拡大断面図である。流し1は水槽部2と水槽部2上部から外側に折曲し平坦な縁状に形成したカウンター部3からなる。カウンター部3の適宜位置には水栓の取付部4を設ける。取付部4は第2図に示す如くカウンター部3から上方に円筒状に突出形成して取付基台5を成し、取付基台5はカウンター部3の上面から下面に貫通した取付孔6を形成する。取付基台5に水栓7を取付ける。…」(同書2頁13行?3頁3行)
(2d)第2図には、取付基台5とカウンター部3との隅角部を凹曲面としたことが記載されている。


3.対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「水栓4」が補正発明の「水回り器具」に相当し,同じく,「スペーサー5」が「台座部」に相当する。
また,刊行物1記載の発明の「カウンター2の表面に台形状に盛り上げた取付部21の上面」と補正発明の「平坦な設置面」とが「設置面」で共通し,同じく,「スペーサー5の側周面が,取付部21の側周面と水栓4の基部の側周面とを連接する滑らかな面に形成され,水栓4の基部の側周面とスペーサー5の側周面とが滑らかな面で連接すると共に,カウンター2の表面の平らな部分と取付部21の側周面とが滑らかな面で連接する」と「台座部の側周面が、設置面と水回り器具の基部の側周面とを連接する凹曲面に形成され、水回り器具の基部の側周面と台座部の側周面とが当該凹曲面の接線方向に連接すると共に、台座部の側周面と設置面とが当該凹曲面の接線方向に連接し」とが「台座部の側周面が,設置面と水回り器具の基部の側周面とを滑らかに連接するように形成され」で共通する。

そうすると,両者は,
「水回り器具が取り付けられる設置面における水回り器具の取付領域に,当該設置面とは別体に製作した水回り器具の基部を着座させるための台座部が隙間なく取着され,該台座部の側周面が,上記設置面と水回り器具の基部の側周面とを滑らかに連接するように形成された水回り器具の取付部構造。」である点で一致し,次の点で相違する。
<相違点1>
水回り器具を取り付ける設置面について,
補正発明が,平坦な設置面であるのに対し,
刊行物1記載の発明は,カウンターの表面に台形状に盛り上げた取付部の上面である点。
<相違点2>
台座部の側周面について,
補正発明が,設置面と水回り器具の基部の側周面とを連接する凹曲面に形成したのに対し,
刊行物1記載の発明は,取付部の側周面と水回り器具(水栓)の基部の側周面とを連接する滑らかな面に形成した点。
<相違点3>
水回り器具を取り付ける設置面と水回り器具の基部の側周面とを滑らかに連接することについて,
補正発明は,水回り器具の基部の側周面と台座部の側周面とが(台座部の)凹曲面の接線方向に連接すると共に、台座部の側周面と設置面とが上記凹曲面の接線方向に連接しているのに対し,
刊行物1記載の発明は,水回り器具の基部の側周面と台座部(スペーサー)の側周面とが滑らかな面で連接すると共に,カウンターの表面の平らな部分と取付部の側周面とが滑らかな面で連接する点。


4.判断
(1)相違点の検討
<相違点1について>
相違点1について検討する。
水回り器具を取り付ける設置面を平坦な設置面とすることは,刊行物1に「従来、洗面台、厨房室、浴室等のカウンターに水栓を取り付けるときには、カウンターの平らな表面に水栓を取り付けることが多く行われている。」(上記(1b)の記載を参照。)と記載され,また,その他にも,例えば,特開平6-10383号公報に従来例(【図5】を参照。)として記載されているように,当該技術分野において従来から周知の技術である。
そうすると,刊行物1記載の発明において,上記周知の技術を採用し,補正発明のように,水回り器具を取り付ける設置面を平坦な設置面とするように構成することは,当業者であれば容易に想到できることである。

<相違点2について>
相違点2について検討する。
刊行物2には,ハンドル等の周辺における清掃に適し,清潔な状態を維持するに適した流しの水槽への水栓の取り付けであること(上記(2a),(2b)の記載を参照。),取付部4をカウンター部3から上方に円筒状に突出形成して取付基台5を成すこと(上記(2c)の記載を参照。),及び,カウンター部3と取付基台5との隅角部を凹曲面とすること(上記(2d)の記載を参照。)が記載されており,このような記載からみて,刊行物2には,補正発明と同様に,「水垢等の汚れの付着が防止され、取付部の清掃も容易にする」(本願明細書の段落【0005】を参照。)ために,「水栓の取付基台5とカウンター部3との隅角部を凹曲面とした」発明が記載されているものと認められる。
そうすると,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用して,補正発明のように,台座の側周面を設置面と水回り器具の基部の側周面とを連接する凹曲面に形成するように構成することは,当業者であれば容易に想到できることである。
<相違点3について>
相違点3について検討する。
刊行物1記載の発明は,水栓とカウンター表面の境界にゴミ等が詰まり難く,微生物が繁殖し難いカウンターを提供するため,すなわち,補正発明と同様に,「水垢等の汚れの付着が防止され、取付部の清掃も容易にする」ために,「水栓4の基部の側周面とスペーサー5の側周面とが滑らかな面で連接すると共に,カウンター2の表面の平らな部分と取付部21の側周面とが滑らかな面で連接する」ようにしたものである。
そうすると,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用して,台座の側周面を設置面と水回り器具の基部の側周面とを連接する凹曲面に形成する際に,設置面と水回り器具の基部の側周面とを滑らかに連接するようにするために,補正発明のように,水回り器具の基部の側周面と台座部の側周面とが凹曲面の接線方向に連接すると共に,台座部の側周面と設置面とが凹曲面の接線方向に連接するように構成することは,当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。

(2)作用効果・判断
そして,補正発明全体の構成により奏する作用効果も,格別のものではない。
よって,補正発明は,刊行物1,2記載の発明及び技術分野における周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


5.補正の却下の決定のむすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3.本願発明について
平成21年12月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成21年7月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「水回り器具が取り付けられる平坦な設置面における水回り器具の取付領域に、当該設置面とは別体に製作した水回り器具の基部を着座させるための台座部が隙間なく取着され、該台座部の側周面が、上記設置面と水回り器具の基部の側周面とを連接する凹曲面に形成されていることを特徴とする水回り器具の取付部構造。」

1.刊行物及びその記載内容
原査定に引用され,本願出願前に頒布された刊行物及びその記載内容は,上記「第2.2.」に記載したとおりである。


2.対比・判断
本願発明は,上記「第2.」で検討した補正発明から,「台座部の側周面が、設置面と水回り器具の基部の側周面とを連接する凹曲面」との構成の限定事項である,「水回り器具の基部の側周面と台座部の側周面とが当該凹曲面の接線方向に連接すると共に、台座部の側周面と設置面とが当該凹曲面の接線方向に連接している」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が,上記「第2.4.」で説示したとおり,刊行物1,2記載の発明及び技術分野における周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1,2記載の発明及び技術分野における周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


3.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物記載の発明1,2及び技術分野における周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-28 
結審通知日 2011-01-11 
審決日 2011-01-28 
出願番号 特願2000-328143(P2000-328143)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E03C)
P 1 8・ 575- Z (E03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 真理子  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
草野 顕子
発明の名称 水回り器具の取付部構造  
代理人 内田 敏彦  

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