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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1234019
審判番号 不服2007-30371  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-08 
確定日 2011-03-17 
事件の表示 特願2002- 14671「使用後耐火物のリサイクル方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月30日出願公開、特開2003-212667〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年1月23日の出願であって、平成19年4月6日付けで拒絶理由の起案がなされ、同年5月30日に意見書及び明細書の記載に係る手続補正書の提出がなされ、同年9月28日付けで拒絶査定の起案がなされ、同年11月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年12月10日に審判請求書及び明細書の記載に係る手続補正書の提出がなされ、平成22年9月10日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋の起案がなされ、同年11月15日に回答書の提出がなされたものである。

2.平成19年12月10日付けの手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成19年12月10日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正により、平成19年5月30日付けの手続補正書の特許請求の範囲
「【請求項1】 使用後耐火物のリサイクル方法であって、使用後の耐火物を粉砕し、粉砕後の粉体を予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類し、分類した粉体の中から製品となる耐火物の原料粉体の材質及び粒度構成範囲になるように粉体を複数選択して使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用することを特徴とする使用後耐火物のリサイクル方法。
【請求項2】 使用後耐火物のリサイクル方法であって、使用後の耐火物を変質部と非変質部に分類した後でそれぞれ粉砕し、粉砕後の粉体を予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類し、分類した粉体の中から製品となる耐火物の原料粉体の材質及び粒度構成範囲になるように粉体を複数選択して使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用することを特徴とする使用後耐火物のリサイクル方法。」が以下のとおりに補正された。
「【請求項1】 使用後耐火物のリサイクル方法であって、使用後の耐火物を粉砕し、粉砕後の粉体を予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類し、分類した粉体の中から製品となる耐火物の原料粉体の材質及び粒度構成範囲になるように粉体を複数選択して使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)することを特徴とする使用後耐火物のリサイクル方法。
【請求項2】 使用後耐火物のリサイクル方法であって、使用後の耐火物を変質部と非変質部に分類した後でそれぞれ粉砕し、粉砕後の粉体を予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類し、分類した粉体の中から製品となる耐火物の原料粉体の材質及び粒度構成範囲になるように粉体を複数選択して使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)することを特徴とする使用後耐火物のリサイクル方法。」
(2)即ち、本件補正は、平成19年5月30日付けの手続補正書の特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項2】の「使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用すること」を「使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)すること」とする補正事項を含むものである。この追加された「使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)すること」は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)において明示の記載のない事項であり、当初明細書等の使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用することに関する、「これに対し、実施例9は、粒度20mmから5mmの範囲の廃材を15%、5mmから3mmの範囲のものを15%、合計30%の廃材を、同じ粒度のバージン原料と同じ量だけ入れ替えて配合したものである。同様に実施例10から実施例15は、各粒度域において廃材とバージン原料を同じ粒度で、しかも同じ量だけ入れ替えたものでありバインダーの量もプロパー材と同量を担保している。」(段落【0026】)の記載からは、むしろ、骨材原料を部分を分離回収する再使用を含まざるを得ない程度の粒度の廃材を再使用しており、「使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)すること」については、示唆する記載すら認められない。そして、当初明細書等には、骨材に関する記載としては、僅かに「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平6-345548号公報の方法では粒径10mm以上の骨材にしか適用できず、10mm未満の骨材は使用できない。また、配合割合も施工性の低下や耐用性の低下のため最大でも40%程度が限界である。」(段落【0007】)と記載され、10mm未満の骨材の使用を課題としており、「(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)」が示唆されているとすることはできないので、本願当初明細書等において「使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)すること」が示唆されているとすることもできない。
そうすると、本件補正は、当初明細書等に記載された事項から自明のこととも認められない事項を含むから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえない。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、「使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用すること」という特定事項自体は明確で、拒絶の理由として示された事項についてしたものでもないから、本件補正が明りょうでない記載の釈明とすることもできない。
(3)さらに、本件補正が新たな技術事項を導入しないもので、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する、いわゆる限定的減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるか否かについて、以下で検討する。
(3-1)本件補正により追加された「使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)すること」における「骨材原料部分を分離回収する再使用」とは、いかなる状態を意味するのか当初明細書等には定義がなく、原査定の拒絶の理由において引用された、特開平9-328354号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「一般にマグネシア-カーボンれんがは、骨材部としては粒径が5?0.2mmのマグネシアクリンカーが40?80重量%(以下「%」は「重量%」である。)使用され、マトリクス部としては粒径0.2mm以下のマグネシアクリンカーが5?40%、粒径0.5mm以下の黒鉛が5?40%、有機結合材が2?10%及び粒径0.3mm以下の金属粉が0.1?10%等から成っている。マグネシアクリンカーは、MgO含有量95%以上でその純度によって数グレードのものが使用されている。」(段落【0004】)と記載され、一般のマグネシア-カーボンれんがについては、骨材部の粒径の範囲について記載があるものの、骨材原料部分を分離回収するためのマトリクス部も含まれる粗粉砕後の粒度について、「粗粉砕物の粒度は、使用後の耐火物の強度により調整し、強度が高い場合は、後工程での細化が進みにくいので20mm以下の粒度がよい。」(段落【0014】)とあるだけで、粗粉砕物と骨材の粒度の関係も明らかにされず、粗粉砕物がどの程度の粒度を意味するのかについてあいまいな記載がなされるだけで、除くクレームの対象である「骨材原料部分」とはどのようなものか明確でない。そうすると、本願補正発明は、不明確な「骨材原料部分を分離回収する再使用」という特定事項を有するから特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものである。
(3-2)(2)に記載したように、「(但し、骨材原料部分を分離回収する再使用を除く)」が新たな技術的事項を導入するものでないとしても、本願の発明の詳細な説明に記載されたものでないことは明らかであるから、本願補正発明1がサポート要件を満たすものでなく、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものである。
(3-3)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は独立して特許を受けられるものではない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成19年12月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年5月30日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「使用後耐火物のリサイクル方法であって、使用後の耐火物を粉砕し、粉砕後の粉体を予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類し、分類した粉体の中から製品となる耐火物の原料粉体の材質及び粒度構成範囲になるように粉体を複数選択して使用後耐火物を製品耐火物として入れ替え使用することを特徴とする使用後耐火物のリサイクル方法。」

4.引用文献
引用文献1の記載事項は、以下のとおりである。
(1)「 使用後の耐火物を粗粉砕し、粗粉砕後の粒に摩擦力、押しつけ力及び/又は衝突力を加えて骨材原料部分を分離回収し、耐火原料として再使用することを特徴とする使用後耐火物の原料リサイクル方法。」(特許請求の範囲【請求項1】)
(2)「マトリクスがほぐされて骨材部分がバラバラになったら、必要な骨材の粒径に応じて分離することで、骨材が回収される。この骨材は、れんが製造時に使用したもとの原料とほぼ同じ形状で回収され、骨材表面にわずかのマトリクス部の微粉が付着しているものである。したがって、このまま再生原料として使用可能であり、従来の粉砕したものと比較して、原料としてより多く使用でき、品質低下も非常に少なくなる。」(段落【0024】)
(3)「この再生原料は、純度が高いため、様々な耐火物の原料として使用可能であり、特に用途を限定するものではないが、同材質のれんがの原料として使用しても品質低下があまり見られず、その使用の効果が大きい。」(段落【0025】)
(4)「使用後の耐火物の原料をリサイクルする場合、同じ材質の耐火物が一つの炉で使用される場合には問題ないが、一つの炉で様々な材質の耐火物が使用されている場合には、材質別に使用後耐火物を分別回収する必要がある。」(段落【0026】)

5.引用発明の認定
引用文献1の記載事項(1)には「使用後の耐火物を粗粉砕し、粗粉砕後の粒に摩擦力、押しつけ力及び/又は衝突力を加えて骨材原料部分を分離回収し、耐火原料として再使用することを特徴とする使用後耐火物の原料リサイクル方法。」が記載され、同(2)には「必要な骨材の粒径に応じて分離することで、骨材が回収される」ことが記載され、同(3)には「再生原料は、・・・同材質のれんがの原料として使用しても品質低下があまり見られず、その使用の効果が大きい」ことが記載され、同(4)には「材質別に使用後耐火物を分別回収する」ことが記載されているから、これらを本願発明の記載に則して整理すると、引用文献1には、「使用後の耐火物を粗粉砕し、粗粉砕後の粒に摩擦力、押しつけ力及び/又は衝突力を加えて必要な骨材の粒径に応じて骨材原料部分を分離回収し、材質別に使用後耐火物を分別し、同材質のれんがの原料として再使用する使用後耐火物の原料リサイクル方法。」が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。

6.対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「使用後耐火物の原料リサイクル方法」は、本願発明の「使用後耐火物のリサイクル方法」に相当することは明らかである。そして、引用発明の「使用後の耐火物を粗粉砕し、粗粉砕後の粒に摩擦力、押しつけ力及び/又は衝突力を加え」は、粗粉砕とそれに続く粉砕を意味するから、本願発明の「使用後の耐火物を粉砕し」に相当するものと認められ、引用発明の「必要な骨材の粒径に応じて骨材原料部分を分離回収」すること、及び「材質別に使用後耐火物を分別」することは、それぞれ単数の粒径を分離回収することと単数の材質別に使用後耐火物を分別することを意味するとする解釈は、リサイクルにおける分離回収技術や分別技術からみて非合理的であるから、複数の粒径を分離回収すること及び複数の材質に分別することと理解され、これらは、予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類することに外ならないので、本願発明の「粉砕後の粉体を予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類」することに相当すると認められる。また、引用発明の「れんがの原料として再使用する」ことは、本願発明の「使用後耐火物を製品耐火物として・・・使用すること」に相当することは明らかである。
これらを総合すると、両発明は、「使用後の耐火物を粉砕し、粉砕後の粉体を予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類し、使用後耐火物を製品耐火物として使用することを特徴とする使用後耐火物のリサイクル方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]粉砕後の粉体について、本願発明は、「分類した粉体の中から製品となる耐火物の原料粉体の材質及び粒度構成範囲になるように粉体を複数選択して」いるのに対し、引用発明では、再使用する使用後耐火物を複数選択することは特定されていない点。
[相違点2]使用後耐火物について、本願発明は、「入れ替え」使用するのに対し、引用発明では、「同材質の」れんがの原料として再使用することが特定される点。

7.判断
[相違点1]について
引用発明において同材質のれんがの原料として再使用するために、必要な骨材の粒径に応じて骨材原料部分を分離回収し、材質別に使用後耐火物を分別することが本願発明の「粉砕後の粉体を予め決められた材質毎及び粒度範囲毎に分類」することに相当すると認められることは、6.に記載したとおりであり、そうであれば、材料設計技術上の要請から、引用発明において、製品となる耐火物の原料粉体の材質及び粒度構成範囲となるように粉体を複数選択することは、引用文献1に示唆されているというべきである。
そして、例えば、特許法第164条第3項に基づく報告に引用された、特開平7-187830号公報(以下、「周知例」という。)に「最後に第五工程は、予め作成した計算式に基づいて、補修する工業炉について高耐食性を得る溶射材料の化学組成を求め、さらに溶射材料として良好な流動性、溶融性が得られるように、化学組成別、粒度別の前記貯蔵の各種粉末材料の1種あるいは2種以上を自動的に組み合わせて配合することからなる。」(段落【0015】)と記載されるように、使用後耐火物の再使用に際して製品となる耐火物の原料粉体の材質及び粒度構成範囲となるように粉体を複数選択することが公知であり、相違点1にかかる特定事項を採用することは当業者であれば容易に想到し得るというべきである。
[相違点2]について
本願発明において使用後耐火物を製品耐火物として「入れ替え」使用することの技術的意義は、当初明細書等の段落【0026】に記載されるように、「廃材を、同じ粒度のバージン原料と同じ量だけ入れ替えて配合」することであり、引用文献1の記載事項(3)「同材質のれんがの原料として使用しても品質低下があまり見られず、その使用の効果が大きい。」ことからみても同材質のれんがの原料として、全体を置き換えることが困難であるとしても、部分的に使用すること、即ち、入れ替えて使用することは、当業者であれば容易に想到し得た材料の置換にすぎないものである。
[効果]について
本願発明によって得られた効果も予測可能なものであって、格別顕著とすることはできない。

8.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に記載された発明は、引用文献1及び周知例に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-17 
結審通知日 2011-01-18 
審決日 2011-01-31 
出願番号 特願2002-14671(P2002-14671)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (C04B)
P 1 8・ 575- Z (C04B)
P 1 8・ 121- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 賢一  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 中澤 登
深草 祐一
発明の名称 使用後耐火物のリサイクル方法  
代理人 石田 敬  
代理人 亀松 宏  
代理人 鶴田 準一  
代理人 中村 朝幸  

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