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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1234031
審判番号 不服2008-8981  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-10 
確定日 2011-03-17 
事件の表示 平成10年特許願第163304号「配線の接続構造」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月24日出願公開,特開平11-354637〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成10年6月11日の出願であって,平成20年3月3日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年4月10日に審判請求がされた。
その後当審において,平成22年10月27日付けで拒絶の理由が通知され,これに対して同年12月28日に手続補正書及び意見書が提出された。


第2 当審における拒絶理由

当審において,平成22年10月27日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審における拒絶の理由」という。)の概要は,本願発明は,本願の出願前に日本国内で頒布された特開平07-321197号公報(以下「引用例1」という。)に記載された発明に,本願の出願前に日本国内で頒布された特開平09-232423号公報(以下「引用例2」という。)に記載された発明及び本願の出願前における常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。


第3 本願発明の容易想到性について

1 本願発明について
平成22年12月28日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲において,その請求項1に記載された「導電層」は「導通層」の誤記と認められるから,本願の請求項1?4に係る発明は次のとおりのものと認める。(以下,本願請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

「【請求項1】第1の絶縁膜に形成された溝に埋め込まれる第1の配線と,
前記第1の絶緑膜に形成された溝に埋め込まれる第2の配線とを有し,
前記第2の配線は,前記第1の配線側に突状の接続部が設けられた主配線材料と,前記主配線材料の第1の配線側に沿って形成されたバリア層及び導通層と,を有し,
前記導通層及び前記バリア層は,前記第1の配線の主面から外側の側面まで延在し,前記主配線材料と前記第1の配線とは前記バリア層及び前記導通層を介して電気的に接続され,
前記第2の配線の延在方向における突状の接続部の長さは,前記第1の配線の幅よりも広く,
前記第1の配線の先端側面は,前記突状の接続部に接しており,
且つ,前記突状の接続部は,前記第2の配線の側面及び先端側面よりも内側に位置し,前記第2の配線の側面及び先端側面によって平面的に取り囲まれている,
ことを特徴とする配線の接続構造。
【請求項2】前記導通層は低抵抗の導電性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の配線の接続構造。
【請求項3】前記導通層は、高融点金属あるいは高融点金属のシリサイド化合物のいずれか一方から構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の配線の接続構造。
【請求項4】前記バリア層は、高融点金属の窒化物から構成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の配線の接続構造。」

2 引用例の記載と引用発明
(1)引用例1と引用発明
ア 引用例1
引用例1には,図1,図2及び図9とともに,次の記載がある。(下線は当審で付加したものである。以下同じ。)
(ア)産業上の利用分野について
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体デバイスの構造に関するものであり,詳しくは溝埋め込み配線の構造およびその製造方法に関するものである。」

(イ)実施例1について
「【0035】(実施例1)図1は,層間絶縁膜に形成された埋め込み配線の構造に本発明を適用した実施例であり,詳しくはシリコン基板1上の層間絶縁膜であるシリコン酸化膜2に形成された溝3にアルミ4を埋め込んだ場合である。
(中略)
【0039】図2は,上述した配線構造を得るための工程断面図である。まず,図2(a)に示すように,シリコン基板1上のシリコン酸化膜2にフォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程で溝3を形成する。しかる後,スパッタ法により密着層として50?100オングストロームのチタン(Ti)を成膜し(図示せず),さらに図2(b)に示すように導電性硬質膜である窒化チタン(TiN)5を50?500オングストローム程度成膜する。窒化チタン5の成膜は,通常のスパッタリング法やコリメータスパッタ法あるいはCVD法を用いる。さらに,溝部3を埋め込むようにアルミ4を成膜する。ここでは,通常のスパッタリング法よりも埋め込み性のよいCVD法,コリメータスパッタリング法あるいは高温リフロースパッタリング法をアルミ成膜に用い,その膜厚は2000?10000オングストローム程度である。
【0040】さらに,図2(c)に示すように化学機械研磨法(Chemical Mechanical Polishing:CMP)でシリコン酸化膜2上のアルミ4およびTiN5/Tiを除去する。Al/TiN/Ti膜のCMPでは,pH3?5程度の酸性水溶液に50?1000オングストローム程度のアルミナ粒子を分散させたスラリー(ベイヤーら,米国特許第4944836号明細書)やpH8?10程度のアルカリ性水溶液に10?1000オングストローム程度のシリカ粒子を分散させたスラリー液あるいは研磨剤粒子の含まれないアミン水溶液(林ら,特願平4-276866号明細書)を加工液として用いる。」

(ウ)実施例4について
「【0061】(実施例4)ここでは,実施例1?3に説明した発明を統合化し,さらに多層配線形成に適用した実施例について述べる。特に,多層配線間の縦接続抵抗を低減化する方策を示している。以下,図6?図9とに示した工程断面図あるいは断面模式図を用いて,本発明を多層配線形成に適用した場合の実施例を詳細に説明する。
(中略)
【0071】図9は,図6?図8に示した一連の工程後,多層配線形成工程を行った場合の実施例を示す断面模式図である。多層配線形成工程では,第1層目の埋め込みアルミ配線15上にシリコン酸化膜17を形成し,さらに低誘電体膜としてここでは低誘電体有機膜18(例えば,ポリイミドやパテフロンやパリレン等)とエッチング保護膜としてシリコン窒化膜25を成膜する。シリコン窒化膜25および有機膜18に第2層目の配線用の溝を形成するが,低誘電体有機膜18のエッチングに酸素プラズマガスを用いるため,下地シリコン酸化膜17がエッチングストッパーとして働き,溝の深さは容易に一定となる。しかる後,低誘電体有機膜18上のシリコン窒化膜25をマスクとして,シリコン酸化膜17にスルーホール16を形成する。この時,第1層目の埋め込みアルミ配線15をエッチングすることなく,下地SiOF膜11の内部に達するような深いスルーホール16を形成する。しかる後,CVD工程とCMP工程とによりAl膜4/TiN膜5/Ti膜をスルーホール16と溝とに一括して埋め込み,さらに第2層目の埋め込みアルミ配線19の表面にイオン注入層6を形成する。さらに,必要に応じてシリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜のキャップ膜20を形成しておく。
【0072】このように,一連の工程で多層配線構造を形成するわけであるが,第2層目の配線用の溝には配線側壁膜を形成していないため,第2層目の配線19の幅L_(2)およびスルーホール16の径は第1層目の配線15の幅L_(1)よりも大きくなるようにしてある。さらに,下地SiOF膜11の内部に達するような深いスルーホール16を形成することで,下層配線の上面のみならず側面とから電気的接続を得て接続面積を増加させ,スルーホールを低抵抗化させている。
【0073】なお,上述した実施例では,溝に埋め込む金属としてアルミを用いたが,銅等の低抵抗金属であっても同様な効果が得られることも自明である。さらに,上述した実施例4では実施例1?3に記載したすべての発明を統合化したものであるが,必ずしもこれらすべての発明を用いる必要はない。実施例4のポイントは,下層配線の幅よりも大きな径のスルーホールを下層配線中腹部にまで達するように深く形成することで,下層配線の上面および側面とを利用して上層配線と接続し,その接続抵抗を低減化している点にある。」

イ 引用発明
(ア)上記ア(イ)及び図9から,「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の「第1層目の埋め込みアルミ配線15」側に突状の接続部が設けられていることは明らかである。

(イ)上記ア(イ)及び図9によれば,「第1層目の埋め込みアルミ配線15」の幅よりも大きい幅を有する「スルーホール16」内において,「第2層目の埋め込みアルミ配線19」に設けられた突状の接続部が,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」の上面及び側面と接続しているから,上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の延在方向における上記突状の接続部の長さは,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」の幅よりも広いことは明らかである。

(ウ)以上によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「下地SiOF膜11に形成された溝3に埋め込まれる第1層目の埋め込みアルミ配線15と,
上記下地SiOF膜11に形成された溝3に埋め込まれる第2層目の埋め込みアルミ配線19とを有し,
上記第2層目の埋め込みアルミ配線19は,上記第1層目の埋め込みアルミ配線15側に突状の接続部が設けられたAl膜4,TiN膜5及びTi膜とを有し,
上記第2層目の埋め込みアルミ配線19の延在方向における上記突状の接続部の長さは,上記第1層目の埋め込みアルミ配線15の幅よりも広い,半導体デバイスの溝埋め込み配線の構造。」

(2)引用例2
引用例2には,図1とともに次の記載がある。
ア「【0016】半導体装置の平面模式図である図1(a)と図1(a)のAA線での断面模式図である図1(b)とを参照すると,本発明の第1の実施の形態を適用した半導体装置の構造は,以下のとおりになっている。
【0017】シリコン基板101の表面上には下地絶縁膜102が設けられている。(中略)下地配線102の表面上には下層配線103aa,103ab,103ac等が設けられている。(中略)下層配線103aa,103ab,103acの上面はそれぞれ例えば膜厚70nm程度の第1の導電体膜113により直接に覆われ,下層配線103aa,103ab,103acの側面(および導電体膜113の側面)はそれぞれ所要の膜厚(後述する)の窒化チタン膜(もしくはチタン膜,チタン・シリサイド膜,タングステン膜)からなる第2の導電体膜123により直接に覆われている。
(中略)
【0018】下層配線103aa,103ab,103ac等を含めて下地絶縁膜102の表面は,例えば(下地絶縁膜102の上面からの)膜厚1.0μm程度の酸化シリコン系の絶縁膜例えば酸化シリコン膜)からなる層間絶縁膜104により覆われている。層間絶縁膜104が酸化シリコン系の絶縁膜からなるのは多層配線の配線間の寄生容量を考慮するためである。さらに層間絶縁膜104の上面は平坦化されていることが好ましい。層間絶縁膜には,それぞれ下層配線103aa,103ab,103ac等に達するビア・コンタクト・ホール105aが設けられている。(中略)例えば下層配線103aaにおいて,ビア・コンタクト・ホール105aにより,導電体膜113の上面と導電体膜123の上端および側面(の一部)とが露出する。導電体膜123の上端と下端との間の適宜な位置において,ビア・コンタクト・ホール105aの底部が導電体膜123の側面に交差している。
【0019】ビア・コンタクト・ホール105aは,タングステン膜からなるコンタクト・プラグ106により充填されている。層間絶縁膜104の表面上には上層配線107aa,107ab,107ac等が設けられている。(中略)上層配線107aa,107ab,107acは,ビア・コンタクト・ホール105aを充填するコンタクト・プラグ106(および導電体膜113,123)を介して,それぞれ下層配線103aa,103ab,103acに接続される。」

イ 上記アを参酌すると,図1(a)及び(b)には,「ビア・コンタクト・ホール105a」において,「下層配線103ab」の上面を覆う「導電体膜113」の上面,並びに「下層配線103ab」の側面及び先端側面を覆う「導電体膜123」の上端及び側面で,「コンタクト・プラグ106」が接続され,「上層配線107ab」が上記「コンタクト・プラグ106」を介して上記「下層配線103ab」に接続された構成が示されている。

3 本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「下地SiOF膜11」,「溝3」,「第1層目の埋め込みアルミ配線15」及び「第2層目の埋め込みアルミ配線19」は,それぞれ,本願発明の「第1の絶縁膜」,「溝」,「第1の配線」及び「第2の配線」に相当する。
そうすると,引用発明の「下地SiOF膜11に形成された溝3に埋め込まれる第1層目の埋め込みアルミ配線15と,上記下地SiOF膜11に形成された溝3に埋め込まれる第2層目の埋め込みアルミ配線19とを有し,」は,本願発明の「第1の絶縁膜に形成された溝に埋め込まれる第1の配線と,前記第1の絶緑膜に形成された溝に埋め込まれる第2の配線とを有し,」に相当する。

(2)引用発明の「Al膜4」,「TiN膜5」及び「Ti膜」は,それぞれ,本願発明の「主配線材料」,「バリア層」及び「導通層」に相当する。
そうすると,本願発明と引用発明とは,「前記第2の配線は,前記第1の配線側に突状の接続部が設けられた主配線材料と,」「バリア層及び導通層と,を有」する点で共通する。

(3)引用発明の「上記第2層目の埋め込みアルミ配線19の延在方向における上記突状の接続部の長さは,上記第1層目の埋め込みアルミ配線15の幅よりも広い」は,本願発明の「前記第2の配線の延在方向における突状の接続部の長さは,前記第1の配線の幅よりも広く,」に相当し,また,引用発明の「半導体デバイスの溝埋め込み配線の構造」は,本願発明の「配線の接続構造」に相当する。

(4)以上から,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア 一致点
「第1の絶縁膜に形成された溝に埋め込まれる第1の配線と,
前記第1の絶緑膜に形成された溝に埋め込まれる第2の配線とを有し,
前記第2の配線は,前記第1の配線側に突状の接続部が設けられた主配線材料と,バリア層及び導通層と,を有し,
前記第2の配線の延在方向における突状の接続部の長さは,前記第1の配線の幅よりも広い,
配線の接続構造。」

イ 相違点
・ 相違点1
本願発明において,「バリア層及び導通層」は,「前記主配線材料の第1の配線側に沿って形成され」,「前記第1の配線の主面から外側の側面まで延在し」ており,「前記主配線材料と前記第1の配線とは前記バリア層及び前記導通層を介して電気的に接続され」ているのに対し,引用発明では,「TiN膜5」及び「Ti膜」が,「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の「Al膜4」及び「第1層目の埋め込みアルミ配線15」それぞれのどの部分に形成されるかについて,明示されていない点。

・ 相違点2
本願発明は,「前記第1の配線の先端側面は,前記突状の接続部に接して」いるのに対し,引用発明は,「第1層目の埋め込みアルミ配線15」の先端側面と「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の「突状の接続部」との間で,このような構成を備えていない点。

・ 相違点3
本願発明は,「前記突状の接続部は,前記第2の配線の側面及び先端側面よりも内側に位置し,前記第2の配線の側面及び先端側面によって平面的に取り囲まれている」のに対し,引用発明は,「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の「突状の接続部」と上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の「側面及び先端側面」との間で,このような構成を備えていない点。

4 相違点についての検討
(1)相違点1について
ア 上記2(1)ア(イ)から,引用例1には,実施例1として,シリコン基板上の層間絶縁膜であるシリコン酸化膜に形成された溝に,Tiを成膜し,さらにTiNを成膜し,さらに上記溝を埋め込むようにAlを成膜した後,CMPで上記シリコン酸化膜上のAl/TiN/Ti膜を除去することが記載されている。
ここで,上記2(1)ア(ウ)から,引用発明は,引用例1で実施例1?3に説明した発明を統合化したものであるから,引用発明において,「下地SiOF膜11」(本願発明の「第1の絶縁膜」に相当。)に形成された「溝3」(本願発明の「溝」に相当。)に埋め込まれる「第2層目の埋め込みアルミ配線19」(本願発明の「第2の配線」に相当。)は,上記「溝3」に,Tiを成膜し,さらにTiNを成膜し,さらに上記溝を埋め込むようにAlを成膜した後,CMPで上記「下地SiOF膜11」上の「Al膜4」(本願発明の「主配線材料」に相当。),「TiN膜5」(本願発明の「バリア層」に相当。)及び「Ti膜」(本願発明の「導通層」に相当。)を除去することにより形成されると解するのが自然である。
そして,その結果,上記「TiN膜5」及び上記「Ti膜」が,上記「Al膜4」の「第1層目の埋め込みアルミ配線15」(本願発明の「第1の配線」に相当。)側に沿って形成され,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」の主面から外側の側面まで延在し,上記「Al膜4」と上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」とが,上記「TiN膜5」及び上記「Ti膜」を介して電気的に接続されること,すなわち,相違点1に係る構成となることは,当業者が直ちに察知し得ることである。
そうすると,引用発明は,相違点1に係る構成を実質的に備えているから,相違点1は,実質的な相違点ではない。

イ さらに,仮に,相違点1が実質的な相違点であるとした場合について検討する。
絶縁膜に形成された溝に主配線材料を埋め込み,埋め込み配線を形成する際に,上記絶縁膜の表面,及び上記溝の内面に沿って,Tiからなる導電層及びTiNからなるバリア層を形成し,その後,上記絶縁膜を覆うとともに,上記溝を埋め込むように,上記主配線材料からなる層を形成して,上記埋め込み配線を形成することは,次のとおり,本願の出願前に日本国内で頒布され,平成22年10月27日付けで通知した拒絶の理由で引用された,特開平08-064676号公報及び特開平07-176615号公報にみられるように,当該技術分野では常套手段であるから,引用発明において,上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」を,上記「溝3」に,Tiを成膜し,さらにTiNを成膜し,さらに上記溝を埋め込むようにAlを成膜して形成することは,当業者が適宜なし得たものである。

・ 特開平08-064676号公報
図1及び図2とともに次の記載がある。
「【0013】図1(a) に示す成膜状態が得られる本発明方法について説明する。まずコンタクトホール2aが形成されたSi基板1上にバリアメタルとしてのTiN膜3(500Å) 及びTi膜4(300Å) をECRプラズマCVD法にて成膜する。
(中略)
【0016】図2は,図1に示す状態のものに反応式スパッタ法にて8000ÅのAl層5を形成し,スパッタ装置内にて大気開放せずに 550℃, 30分の熱処理によりAlリフローを行った状態を示す,同じくSEM写真の模式的断面図である。図2よりAlリフローにおける埋め込み特性は,従来方法よりもECRプラズマCVD法の方が優れていることが判る。」

・ 特開平07-176615号公報
図2とともに次の記載がある。
「【0048】即ち図2に示すように,Si基板10の拡散層11と上層Al系配線5との接続をとる接続孔2であるコンタクトホールを埋め込み平坦化するにあたり,基板1側から,Ti41,TiN42,Ti43の各層を形成した。下層Ti41は導電性確保のための導電層,TiN42はバリア層,上層Ti43はAl系材料との濡れ性を良好にするための密着層の役割を果たす。」

そして,その結果,上記「TiN膜5」及び上記「Ti膜」が,上記「Al膜4」の上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」側に沿って形成され,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」の主面から外側の側面まで延在し,上記「Al膜4」と上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」とが,上記「TiN膜5」及び上記「Ti膜」を介して電気的に接続されること,すなわち,相違点1に係る構成となることは,当業者が直ちに察知し得ることである。
そうすると,仮に,相違点1が実質的な相違点であるとしても,引用発明において,相違点1に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものである。

ウ 以上から,相違点1は,本願発明と引用発明との実質的な相違点ではなく,仮に,実質的な相違点であるとしても,当業者が適宜なし得たものである。

(2)相違点2について
上記2(2)イから,引用例2には,「ビア・コンタクト・ホール105a」において,「下層配線103ab」の上面を覆う「導電体膜113」の上面,並びに「下層配線103ab」の側面及び先端側面を覆う「導電体膜123」の上端及び側面で,「コンタクト・プラグ106」が接続され,「上層配線107ab」が上記「コンタクト・プラグ106」を介して上記「下層配線103ab」に接続されることが記載されている。
そして,上記2(1)ア(ウ)から,引用発明は,「第1層目の埋め込みアルミ配線15」(本願発明の「第1の配線」に相当。)と「第2層目の埋め込みアルミ配線19」(本願発明の「第2の配線」に相当。)との接続面積を増加させ,両者の接続抵抗を低減化するものであるから,引用発明において,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」と上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」との接続箇所を設定する際に,両者の接続面積が大きくなる位置に上記接続箇所を設定することは,当業者に普通に期待できることである。
そうすると,引用発明において,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」と上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」との接続箇所を,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」の延在方向の端部に設定して,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」の上面,側面及び先端側面に,上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の「突状の接続部」が接する構成とし,上記「第1層目の埋め込みアルミ配線15」と上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」との接続面積を大きくすることは,引用例2に記載された発明に接した当業者が,容易に想到し得たものである。
以上から,引用発明において,相違点2に係る構成とすることは,引用例2に記載された発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。

(3)相違点3について
ア 引用発明において,「第2層目の埋め込みアルミ配線19」(本願発明の「第2の配線」に相当。)に「突状の接続部」を形成する際に,上記「突状の接続部」と上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の側面及び先端側面との位置関係をどのように設定するかは,当業者が任意に選択し得ることである。
また,本願の明細書又は図面には,本願発明の「前記突状の接続部は,前記第2の配線の側面及び先端側面よりも内側に位置し,前記第2の配線の側面及び先端側面によって平面的に取り囲まれている」との構成について,図15に示されているだけで,本願の明細書には,上記の構成及びその作用効果についての説明は記載されておらず,本願発明において,上記の構成により,格別の作用効果を奏するとは認められない。
そうすると,引用発明において,上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の「突状の接続部」と上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の側面及び先端側面との位置関係を設定する際に,上記「突状の接続部」を,上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の側面及び先端側面よりも内側に位置し,上記「第2層目の埋め込みアルミ配線19」の側面及び先端側面によって平面的に取り囲まれるようにすることは,当業者が適宜なし得たものである。

イ なお,審判請求人は,平成22年12月28日に提出された意見書で,本願発明は,「(C)突状の接続部は,突状の接続部は,第2の配線の側面及び先端側面よりも内側に位置し,第2の配線の側面及び先端面によって平面的に取り囲まれていること(特徴点(C)による構成)」によって,「突状の接続部が第1の配線及び第2の配線以外の配線と近づくことによって互いの伝達信号が影響し合う可能性を低減しながら,第1の配線と第2の配線の間のエレクトロマイグレーションの発生を抑制することが可能とな」ると主張している。
しかしながら,上記アで検討したとおり,本願発明において,上記「特徴点(C)による構成」により,「突状の接続部が第1の配線及び第2の配線以外の配線と近づくことによって互いの伝達信号が影響し合う可能性を低減」するという作用効果を奏することは,本願の明細書又は図面に記載されておらず,本願発明が,審判請求人が主張する上記の作用効果を奏するとは認められない。
また,仮に,本願発明が,審判請求人の主張する上記の作用効果を奏するとしても,本願発明において,異なる配線構造に与えられる伝達信号間の影響は,「突状の接続部」とこれに接続されている「第1の配線及び第2の配線」以外の配線との間においてのみ発生するのではなく,「第1の配線」又は「第2の配線」とこれに隣接するほかの配線の間においても発生するから,この点を考慮すれば,審判請求人の主張する上記の作用効果は,格別のものとは認められない。
そうすると,上記意見書における審判請求人の主張を採用することはできない。

ウ 以上から,引用発明において,相違点3に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものである。

5 小括
したがって,本願発明は,引用例1に記載された発明(引用発明)において,引用例2に記載された発明及び本願の出願前における常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 結言

以上のとおりであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-17 
結審通知日 2011-01-18 
審決日 2011-02-01 
出願番号 特願平10-163304
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲辻▼ 弘輔青鹿 喜芳  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 市川 篤
加藤 浩一
発明の名称 配線の接続構造  
代理人 西元 勝一  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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