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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F |
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管理番号 | 1234051 |
審判番号 | 不服2009-1557 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-19 |
確定日 | 2011-03-17 |
事件の表示 | 特願2002-142924「複数の画点を投影線内に生成する画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 7日出願公開、特開2003- 35958〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年5月17日の出願(パリ条約による優先権主張 2001年 5月18日ドイツ)であって、平成20年10月17日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年1月19日に査定不服の審判がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出されたものである。 さらに、審査官により作成された前置報告書について当審より審尋したところ、平成22年7月23日付で回答書が提出されたものである。 2.平成21年1月19日付手続補正について 平成21年1月19日付手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1において、 (1)「該制御装置は(216)に、」という誤記を「該制御装置(216)に、」と訂正するとともに、 (2)「個々の光源によって定まる平面内での前記対象物線に対する個々の光源の位置のずれが補償されるように、該制御装置の、各光源(12)に対する作動開始時点をそれぞれの距離siにしたがってずらす時間遅延装置(222)」における「作動開始時点をそれぞれの距離siにしたがってずらす」点について、さらに請求項2と請求項6に記載された事項を併合したことを含む。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲において、誤記の訂正及び請求項の削除をするものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第3号の規定に適合するので、適法である。 3.本願発明 本願の請求項1?8に係る発明は、平成21年1月19日付手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 投影線(16)によって定まる方向に直角に、かつ版(28)の表面に対して接線方向に速度成分vで動く版(28)上の、対象物線(14)の投影線(16)内に光源(12)の画点(210)を生成するために、前記対象物線(14)に対して、画像形成装置の製造に基づく距離si(iは光源(12)の番号)を有する、ダイオードレーザバー上の複数の前記光源(12)と、該各光源(12)をオン/オフする制御装置(216)とを有し、該制御装置(216)に、個々の光源によって定まる平面内での前記対象物線に対する個々の光源の位置のずれが補償されるように、該制御装置の、各光源(12)に対する作動開始時点をそれぞれの距離siにしたがってずらす時間遅延装置(222)が付属し、また画点(210)の列によって印刷点のフィールドを生成するために使用され、隣接する生成すべき印刷点同士の距離hを有している、画像形成装置において、 前記時間遅延装置(222)は、画点(210)が前記作動開始によって生成されるように、投影点が前記対象物線の投影線上に位置することになる第1の光源(12)の作動開始時点に対し相対的に、他の各光源を、付属する画点(210)も、該他の光源の付属する投影点が前記対象物線(14)の前記投影線(16)上にあるときに生成されるように、前記第1の光源(12)の前記作動開始時点から時間的にずれてオンし、 前記光源(12)の前記投影点の、前記対象物線(14)の前記投影線(16)からの距離が、隣接する印刷点同士間の距離hのn倍(nは自然数)よりも大きい場合、前記光源(12)によって生成されるべき、前記投影線(16)に対して最も近い距離を有する印刷点の画像情報を用いて当該光源(12)の制御が行われ、前記制御装置は、前記版上の点が遅延時間間隔内で実質的に距離(ksi-nh)(kは対象物線(14)と投影線(16)との間の投影比を示す)だけ進むように前記光源(12)をオンし 前記時間遅延装置(222)が前記ダイオードレーザバーとコンパクトな構造形態に一体化され、かつプログラマルロジックまたはASIC(特定用途向け集積回路)を含んでいることを特徴とする画像形成装置。」 4.引用例の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である特開平11-10949号公報(原査定における引用文献1。以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(以下、下線は、当審にて付与。) (1a)「【請求項1】 「【請求項1】 主走査方向にずれて配置され、各画像データに応じて変調されたビームの出射を各配置位置に応じて開始するn個の発光素子と、 前記n個の発光素子に対する画像データをそれぞれ記憶するn個のラインメモリと、 前記n個の発光素子が出射する各ビームを受光して同期検知信号を出力する1つの同期検知素子と、 前記n個の発光素子の第1の発光素子が出射して前記同期検知素子により検知された第1ビームの同期検知信号に基づいて前記n個のラインメモリの各々を選択的にライトイネーブルに設定するライトイネーブル設定回路と、 前記第1ビームの同期検知信号に基づいてクロックの位相同期を行う第1の位相同期回路と、 前記第1ビームの同期検知信号を前記発光素子による主走査方向の走査時間間隔の分だけ遅延する第1の遅延回路と、 前記第1の遅延回路により遅延された第1ビームの同期検知信号に基づいて第1の位相同期回路により位相同期されたクロックの位相同期を行うn-1個の第2の位相同期回路と、 前記n-1個の第2の位相同期回路により位相同期された各クロックを遅延して他のビーム用のクロックを生成するn-1個の第2の遅延回路と、 前記第1の位相同期回路と前記第2の遅延回路により生成された各クロックを1/nに分周してそれぞれ前記n個のラインメモリのリードクロックを生成するn個の分周回路と、 を備えたマルチビーム画像形成装置。 【請求項2】 前記第1ビームの同期検知信号に基づいて他の発光素子用のn-1個のダミー同期検知信号を生成すると共に、前記n個のラインメモリのライトリセットを前記第1ビームの同期検知信号により行い、前記n個のラインメモリのライトを前記第1ビームの同期検知信号とn-1個のダミー同期検知信号に基づいてトグル動作させることを特徴とする請求項1記載のマルチビーム画像形成装置。」 (1b)「【0002】 【従来の技術】一般に、複写機やプリンタにおいて高速化しようとすると、ビデオクロックの周波数が高速になり、入手可能なICやLD(レーザダイオード)ドライバがないので、例えば特開平4-20066号公報に示すように複数の書き込みビームの各々に異なる画像を割り当てて光変調を行う方法が提案されている。この方法によれば、n個のLDを用いて同時にnラインを書き込む場合にはビデオクロックの周波数を1/nにすることができる。 【0003】例えば2つのLDを用いた場合、2つのラインメモリをトグルして2ライン分の画像データをライトクロックでライン毎に順次書き込み、この2ラインメモリに書き込まれた各ラインの画像データを、ライトクロックの1/2の周波数のリードクロックで略同時に読み出して2つのLDの各々に印加することができる。 【0004】この種の従来例としは、例えば特開昭57-8887号公報に示すように複数のビームを検知した個々の同期検知信号により位相合わせを行った読み出しクロックで読み出す方法が提案されている。この方法によれば、例えば2個の発光素子は、主走査方向にずれて配置されていても、各画像データに応じて変調されたビームの出射を各配置位置に応じて開始する。」 (1c)「【0014】図1?図4において、LD制御板1上にはLDユニット2が実装され、LDユニット2には一例として2個のLD1、LD2が実装されている。なお、LDの数が3個以上であっても基本的な考え方は同一である。LD1、LD2から出射された各レーザビームは、共通のコリメートレンズ3により平行化され、次いでビームコンプレッサ4によりビームの副走査方向のみが集光されてポリゴンスキャナ5により反射される。ポリゴンスキャナ5は矢印で示す主走査方向に回転し、これによりレーザビームが主走査方向に等角速度で偏向される。このビームはfθレンズ6により等速度偏向に補正された後、感光体7上に照射されると共に同期検知素子8により検出される。感光体7は副走査方向に回転している。 【0015】LDユニット2上の2個のLD1、LD2は、図2に示すように主走査方向については距離aだけ離れ、副走査方向については距離bだけ離れて配置されている。そして、LD1、LD2から出射されて図3に示すようにポリゴンスキャナ5により反射される2つのビームは、ビームコンプレッサ4がビームの副走査方向のみを集光するので副走査方向に距離Cだけ離れ、また、距離Cは距離bより非常に小さい値となる。 【0016】更に、LD1、LD2から出射された2つのビームは図4に示すように、LD1、LD2の主走査方向の距離aの分だけずれて同期検知素子8により受光される。同期検知素子8は図5に示すように一例としてフォトダイオード(PD)9を有し、PD9がビームを受光すると電流Iが流れ、V1(=I・R)が基準電圧Vrefを越えるとコンパレータ10が正のパルスの同期検知信号DETPを出力する。この場合、図6に示すように1周期においてLD1の第1ビームを検出した時の同期検知信号DETP1と、LD2の第2ビームを検出した時の同期検知信号DETP2が生成され、また、同期検知信号DETP1より同期検知信号DETP2が遅れる。 【0017】図7に示すAS(特定用途向け)IC14は本発明のマルチビーム画像形成装置を構成し、LD1、LD2の書き込み速度はCCD11の読み取り速度の1/2である。CCD11は原稿画像を読み取ってその画像信号をIPU(画像処理ゲートアレイ)12に出力し、IPU12はCCD11からの画像信号に基づいて画像データSDATAとクロック信号SCLKをGAVD(ビデオ処理ゲートアレー)13に出力する。 【0018】GAVD13はIPU12からの上記信号SDATA、SCLKと、後述するような第1ビームの同期検知信号DETP1と画像クロックVCLKに基づいて、また、FIFOメモリ16、17を用いて画像データVDATA及びクロック信号VCLKをASIC14に出力する。ここで、FIFOメモリ16、17は、読み取り時と書き込み時では画素周波数が異なるのでそのタイミング調整を行う。また、本実施形態では、第1ビームの本物の同期検知信号(以下、本物同期検知信号)DETP1と、本物同期検知信号DETP1に基づいて生成されたダミーの同期検知信号(以下、ダミー同期検知信号)DETP1’と、第2ビームの同期検知信号DETP2が用いられている。 【0019】ASIC14はGAVD13からの上記信号VDATA、VCLKと、本物同期検知信号DETP1と第2ビーム同期検知信号DETP2に基づいて、また、FIFOメモリ18、19を用いてクロック信号VCLKの1/2の速度のLD1用の画像データVDATA1及びそのクロック信号VCLK1を生成して第1LD制御部15aに出力すると共に、同じくクロック信号VCLKの1/2の速度のLD2用の画像データVDATA2及びそのクロック信号VCLK2を生成して第2LD制御部15bに出力する。FIFOメモリ18、19は後述するようにGAVD13からの1ビームデータVDATAを2ビームデータVDATA1、VDATA2に変換するために用いられる。 【0020】ASIC14は図8に詳しく示すように、FIFOメモリ18、19のライト、リード処理部/1ビーム→2ビーム変換部21と、ダミー同期信号発生部/LCLR発生部22と、位相同期回路23とクロック分周部24を有する。ダミー同期信号発生部(22)では図9に示すように、カウンタ31により画素クロックVCLKをカウントし、次いでコンパレータ32によりカウンタ31のカウント値と、本物同期検知信号DETP1の1周期の1/2に対応する設定値を比較する。そして、ワンショット発生回路33によりコンパレータ32の比較結果が一致した時に所定パルス幅のダミー同期検知信号DEPT1’を発生し、次いでORゲート34により図10に示すようにダミー同期検知信号DEPT1’と本物同期検知信号DETP1の論理和信号DETP1Aを出力する。」 (1d)「【0026】また、FF25は次の信号LCLR(すなわちダミーの同期検知信号)により出力Qが反転してロウになり、FIFOメモリ18のライトイネーブル信号WEがノンアクティブになると共にFIFOメモリ19のライトイネーブル信号WEがアクティブになる。したがって、FIFOメモリ18、19のライトイネーブル信号WEは信号LCLRにより交互にハイとなる。したがって、画像有効領域が始まった後の最初の本物の同期検知信号DETP1によりFIFOメモリ18が選択されるので、LD1が常に先に発光し、その結果、LD1、LD2の主走査方向の配置位置がずれていても、主走査方向の位相同期がずれて斜線が途切れる等の問題が発生しない。 【0027】位相同期回路23aは画素クロック(=ラインメモリのライトクロック)VCLKを同期検知信号DETP1により位相同期をとった画素クロックVCLKAを分周回路24aと位相同期回路23bに出力する。また、同期検知信号DETP1はLD1、LD2による主走査方向の走査時間間隔の分だけ遅延回路110により遅延され、位相同期回路23bは位相同期回路23aからの画素クロックVCLKAを、この遅延回路30により遅延された同期検知信号DETP1aにより位相同期をとった画素クロックVCLKBを遅延回路111に出力する。遅延回路111はこの画素クロックVCLKBを遅延した画素クロックVCLKB1を分周回路24bに出力する。」 (1e)「【図1】 」 (1f)「【図3】 」 以上の事項から、引用例1には、以下の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「主走査方向について距離aだけ離れ実装されている2個のLD1、LD2から出射された各レーザビームは、共通のコリメートレンズ3により平行化され、ビームの副走査方向のみ集光され、主走査方向に回転するポリゴンスキャナ5により反射され主走査方向に等角速度で偏向され、fθレンズ6により等速度偏向に補正された後、感光体7上に照射され、 LD1、LD2から出射された2つのビームはLD1、LD2の主走査方向の距離aの分だけずれて同期検知素子8により受光され、LD1の第1ビームを検出した時の同期検知信号DETP1と、LD2の第2ビームを検出した時の同期検知信号DETP2が生成され、ASIC14はマルチビーム画像形成装置を構成し、同期検知信号DETP1に基づいて第1LD制御部15aに出力すると共にと第2ビーム同期検知信号DETP2に基づいて第2LD制御部15bに出力する、画像形成装置」 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である特開平11-78110号公報(原査定における引用文献2.以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (2a)「【請求項1】複数のレーザダイオードを整列させた光源部と、前記複数のレーザダイオードから射出したレーザビームを記録材料の記録面に副走査方向に整列させるビーム整列光学系と、前記複数のレーザダイオードから射出したレーザビームと前記記録材料とを相対的に主走査方向に移動させる移動手段と、前記複数のレーザダイオードから射出した各レーザビームのビーム強度を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された各レーザビームのビーム強度に応じて、各レーザビームのビーム強度が等しくなるように、前記複数のレーザダイオードの各レーザダイオードを制御するレーザダイオード制御手段と、を有する画像記録装置であって、フィルタにより、前記複数のレーザダイオードから射出したレーザビーム全ての露光強度をシフトさせるフィルタ調整手段を有することを特徴とする画像記録装置。」 (2b)「 【0009】また、従来の装置では、記録材料への記録位置がずれないようにするために、各レーザダイオードからのレーザビームの記録位置を主走査方向に一致させる必要があった。しかし、このため個々の装置で高精度な調整が、設置前や、経時的な使用により、必要であった。 【0010】第四の発明の目的は、複数のレーザダイオードの各レーザビームの記録材料上の記録位置が主走査方向にずれる程度に各レーザダイオードの取付精度が高くなくても、環境や経時などによる光軸ズレなどによる各レーザダイオードから射出したレーザビームの記録位置の主走査方向のズレの影響を良好に補正でき、良好に記録することができるようにすることである。」 (2c)「【0027】実施形態1 本実施形態の画像記録装置は、赤色光に感光する感光層が設けられたハロゲン化銀モノクローム写真感光材料である製版用写真フィルムに潜像を記録させる装置であり、赤色光の複数のレーザビームを同時に発生させ、主走査方向に移動するこの印画紙上に副走査方向MSDに整列させて照射することにより、印画紙に潜像を記録させる装置である。図1に本実施形態の画像記録装置の概略構成図を示し、以下、図1に基づいて、本実施形態の画像記録装置について説明する。 【0028】光学ユニット1には、複数本(例えば10本)のレーザダイオードを整列させて設けられている光源部10と、光源部10の複数本のレーザダイオードから射出した複数本のレーザビームをドラム2に巻き付けられた製版用写真フィルムの記録面上に、副走査方向MSDに整列させるビーム整列光学系20が設けられている。 【0029】ドラム2は、製版用写真フィルムを巻き付けて固定するもので、画像を記録させる時に、一定速度で回転することにより、複数本のレーザダイオードLD10?LD19から射出した複数本のレーザビームと製版用写真フィルムとを相対的に主走査方向に移動させるものである。 【0030】そして、光学ユニット1は、副走査方向MSDに移動可能であり、この光学ユニット1が、ドラム2に対して副走査方向MSDに移動することにより、ドラム2に巻き付けられて固定された製版用写真フィルム全体に潜像を記録させるものである。」 (2d)「【0033】なお、光源部10には、複数本のレーザダイオードLD10?LD19が所定の間隔で整列させて設けられている。そして、複数本のレーザダイオードLD10?LD19は、レンズ21の手前の中心点CPに向けてレーザビームを照射するように配置されている。 【0034】そして、ビーム整列光学系20には、以下のものがある。レンズ21は、これら複数本のレーザダイオードから射出した複数本のレーザビームを平行にする。そして、ミラー22が、レンズ21で平行になった複数本のレーザビームを直角に反射させて、さらに、ミラー23が、この複数本のレーザビームを直角に反射させて、収束レンズ群24に入射させる。そして、収束レンズ群24が入射した複数本のレーザビームを調整面CSの一点に収束させる。そして、調整面CSを通過した複数本のレーザビームが縮小光学レンズ群25に入射する。そして、縮小光学レンズ群25が、入射した複数本のレーザビームを、ドラム2の上に巻き付けられた記録材料上の記録面RSに縮小して結像させるようにする。そして、縮小光学レンズ群25から出た複数本のレーザビームはシリンドリカルレンズ26に入射する。そして、シリンドリカルレンズ26は、主走査方向にのみ屈折力を有するレンズであり、複数本のレーザビームの記録面RSでの主走査方向の位置を一定にさせるように収束させ、複数本のレーザビームを、図3に示すように記録面RSの上で、副走査方向MSDに整列させる。 【0035】なお、図3は記録面RSを正面から見た図で、副走査方向MSDにビーム径BRの複数本のレーザビームをビームピッチBPで副走査方向MSDに整列させて、記録材料に潜像を記録させる。そして、ドラム2が1回転する間に、光学ユニット1が、ドラム2に対して副走査方向MSDに一定の移動量FQ(=10×BP)移動することにより、ドラム2に巻き付けられて固定された製版用写真フィルム全体にムラなく潜像を記録させる。なお、ビーム径BR、ビームピッチBP、移動量FQの具体的な値としては、例えば、ビーム径BRが10.6μmで、ビームピッチBPも同じく10.6μmで、移動量FQが106μmであることが好ましい例として挙げられる。」 (2e)「【0047】そして、レーザビームの記録位置は、図3に示すように副走査方向に一直線に並んでいることが好ましいが、実際には、シリンドリカルレンズ26による整列効果にも係わらず、別の例の記録面RSを正面から見た図5に示すように、各レーザビームの記録位置が主走査方向にずれていることがある。 【0048】そして、受光素子3が、複数のレーザダイオードLD10?LD19の各レーザダイオードから射出したレーザビームの記録位置BC10?BC19を検出し、検出した記録位置BC10?BC19を、図2に示す発光タイミング制御部6に送信する。そして、発光タイミング制御部6は、記録位置BC10?BC19から、最もドラム回転方向で上流側にある記録位置(図5ではBC15)から副走査方向に延ばした直線を標準記録線SBLとして設定する。そして、発光タイミング制御部6は、各記録位置BC10?BC19の標準記録線SBLからの偏差ΔBC10?ΔBC19を求め、この偏差ΔBC10?ΔBC19とドラム2の周速度VDとから、複数のレーザダイオードLD10?LD19の各レーザダイオード毎に、遅延時間TR10?TR19を以下の式で求める。 【0049】TRi=ΔBCi/VD (i=10?19の自然数) そして、発光タイミング制御部6は、複数のレーザダイオードLD10?LD19の各レーザダイオードに入力される画像信号を各々、遅延時間TR10?TR19だけ遅延させて、光源部10に入力する。これにより、発光タイミング制御部6は、各レーザダイオード毎に個別に、受光素子3により検出された各レーザダイオードから射出したレーザビームの記録位置BC10?BC19に応じて、各レーザダイオードの発光タイミングを遅延させるものである。 【0050】これにより、複数のレーザダイオードLD10?LD19の各レーザビームの記録材料上の記録位置BC10?BC19が主走査方向SSDにずれる程度に各レーザダイオードLD10?LD19の取付精度が高くなくても、自動的に、各レーザダイオードから射出したレーザビームの記録位置BC10?BC19を測定し、測定された各レーザダイオードから射出したレーザビームの記録位置BC10?BC19に応じて各レーザダイオードの発光タイミングの遅延時間TR10?TR19が決められ、制御できるので、自動的に、各レーザダイオード毎に個別に、当該レーザダイオードの発光タイミングを遅延させることができるので、環境や経時などによる光軸ズレなどによる各レーザダイオードから射出したレーザビームの記録位置BC10?BC19の主走査方向SSDのズレの影響を良好に補正でき、記録画像の品質を維持するための手間が少なく、良好に記録することができる。」 (2f)「【図1】 」 (2g)「【図3】 」 (2h)「【図5】 」 以上の事項から、引用例2には、以下の発明(以下「引用例2発明」という。)が記載されていると認められる。 「ドラム2の上に巻き付けられた記録材料上の記録面RSに、設置前や経時的な使用、環境や経時などによる光軸ズレなどにより記録材料上の記録位置BCiが主走査方向SSDにずれる複数本のレーザビームを、各レーザダイオードLDiから射出する光源部10と、 光源部10の各レーザダイオードLDiを制御するレーザダイオード制御手段と、 光源部10の各レーザダイオードLDiから射出したレーザビームとドラム2の上に巻き付けられた記録材料上の記録面RSとを相対的に主走査方向に周速度VDで移動させる移動手段と、 最もドラム回転方向で上流側にある記録位置から副走査方向に延ばした標準記録線SBLからの偏差ΔBCiと、ドラム2の周速度VDとから求めた、複数のレーザダイオードの各レーザダイオードLDi毎の遅延時間TRi=ΔBCi/VDだけ遅延させて、光源部10に画像信号を入力する発光タイミング制御部6と、 を有する、レーザビームの記録位置の主走査方向のズレの影響を良好に補正でき、良好に潜像を記録する画像記録装置。」 5.対比 5-1.引用例1発明との対比 引用例1発明の「LD1」,「LD2」は、本願発明の「ダイオードレーザバー上の複数の前記光源(12)」に相当し、引用例1発明の「主走査方向について距離aだけ離れ実装されている2個のLD1、LD2」は、本願発明の「画像形成装置の製造に基づく距離si(iは光源(12)の番号)を有する、ダイオードレーザバー上の複数の前記光源(12)」に相当する。 引用例1発明の「感光体7」は、本願発明の「版(28)」に相当する。 引用例1発明の「各レーザビームは、主走査方向に回転するポリゴンスキャナ5により反射され主走査方向に等角速度で偏向され、fθレンズ6により等速度偏向に補正された後、感光体7上に照射され」ることは、照射される「各レーザービーム」と「感光体」とが互いに等速度で主走査方向に移動することになる点で、本願発明の「投影線(16)によって定まる方向に直角に、かつ版(28)の表面に対して接線方向に速度成分vで動く版(28)上の、対象物線(14)の投影線(16)内に光源(12)の画点(210)を生成する」ことと等価である。 引用例1発明で「ASIC14」を有することは、本願発明の「時間遅延装置(222)が前記ダイオードレーザバーとコンパクトな構造形態に一体化され、かつプログラマルロジックまたはASIC(特定用途向け集積回路)を含んで」いることに相当し、 引用例1発明の「ASIC14」が「LD1、LD2から出射された2つのビームはLD1、LD2の主走査方向の距離aの分だけずれて同期検知素子8により受光され、LD1の第1ビームを検出した時の同期検知信号DETP1と、LD2の第2ビームを検出した時の同期検知信号DETP2が生成され、同期検知信号DETP1に基づいて第1LD制御部15aに出力すると共にと第2ビーム同期検知信号DETP2に基づいて第2LD制御部15bに出力する」ことは、 本願発明の「各光源(12)をオン/オフする制御装置(216)を有し、該制御装置(216)に、個々の光源によって定まる平面内での前記対象物線に対する個々の光源の位置のずれが補償されるように、該制御装置の、各光源(12)に対する作動開始時点をそれぞれの距離siにしたがってずらす時間遅延装置(222)が付属し、」「前記時間遅延装置(222)は、画点(210)が前記作動開始によって生成されるように、投影点が前記対象物線の投影線上に位置することになる第1の光源(12)の作動開始時点に対し相対的に、他の各光源を、付属する画点(210)も、該他の光源の付属する投影点が前記対象物線(14)の前記投影線(16)上にあるときに生成されるように、前記第1の光源(12)の前記作動開始時点から時間的にずれてオン」していることに相当する。 したがって、両者は、 「投影線(16)によって定まる方向に直角に、かつ版(28)の表面に対して接線方向に速度成分vで動く版(28)上の、対象物線(14)の投影線(16)内に光源(12)の画点(210)を生成するために、前記対象物線(14)に対して、画像形成装置の製造に基づく距離si(iは光源(12)の番号)を有する、ダイオードレーザバー上の複数の前記光源(12)と、該各光源(12)をオン/オフする制御装置(216)とを有し、該制御装置(216)に、個々の光源によって定まる平面内での前記対象物線に対する個々の光源の位置のずれが補償されるように、該制御装置の、各光源(12)に対する作動開始時点をそれぞれの距離siにしたがってずらす時間遅延装置(222)が付属し、また画点(210)の列によって印刷点のフィールドを生成するために使用され、隣接する生成すべき印刷点同士の距離hを有している、画像形成装置において、 前記時間遅延装置(222)は、画点(210)が前記作動開始によって生成されるように、投影点が前記対象物線の投影線上に位置することになる第1の光源(12)の作動開始時点に対し相対的に、他の各光源を、付属する画点(210)も、該他の光源の付属する投影点が前記対象物線(14)の前記投影線(16)上にあるときに生成されるように、前記第1の光源(12)の前記作動開始時点から時間的にずれてオンし、 前記時間遅延装置(222)が前記ダイオードレーザバーとコンパクトな構造形態に一体化され、かつプログラマルロジックまたはASIC(特定用途向け集積回路)を含んでいる 画像形成装置。」で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明では「画像形成装置の製造に基づく距離si(iは光源(12)の番号)を有する、ダイオードレーザバー上の複数の光源(12)」「の投影点の、前記対象物線(14)の前記投影線(16)からの距離が、隣接する印刷点同士間の距離hのn倍(nは自然数)よりも大きい場合、前記光源(12)によって生成されるべき、前記投影線(16)に対して最も近い距離を有する印刷点の画像情報を用いて当該光源(12)の制御が行われ、前記制御装置は、前記版上の点が遅延時間間隔内で実質的に距離(ks_(i)-nh)(kは対象物線(14)と投影線(16)との間の投影比を示す)だけ進むように前記光源(12)をオン」しているのに対して、 引用例1発明では「2個のLD1、LD2から出射された各レーザビームは」 「LD1、LD2の主走査方向の距離aの分だけずれて同期検知素子8により受光され、LD1の第1ビームを検出した時の同期検知信号DETP1と、LD2の第2ビームを検出した時の同期検知信号DETP2が生成され、同期検知信号DETP1に基づいて第1LD制御部15aに出力すると共にと第2ビーム同期検知信号DETP2に基づいて第2LD制御部15bに出力する」にすぎず、本願発明のように「投影点の、前記対象物線(14)の前記投影線(16)からの距離が、隣接する印刷点同士間の距離hのn倍(nは自然数)よりも大きい場合」にどの程度の遅延時間とするかを明示していない点。 5-2.引用例2発明との対比 引用例2発明の「光源部10」は、本願発明の本願発明の「ダイオードレーザバー上の複数の前記光源(12)」に相当し、引用例2発明の「設置前や経時的な使用、環境や経時などによる光軸ズレなどにより記録材料上の記録位置BCiが主走査方向SSDにずれる複数本のレーザビームを、各レーザダイオードLDiから射出する光源部10」は、本願発明の「画像形成装置の製造に基づく距離si(iは光源(12)の番号)を有する、ダイオードレーザバー上の複数の前記光源(12)」に相当する。 引用例2発明の「ドラム2の上に巻き付けられた記録材料上の記録面RS」は、本願発明の「版(28)」に相当する。 引用例2発明の「移動手段」が「光源部10の各レーザダイオードLDiから射出したレーザビームとドラム2の上に巻き付けられた記録材料上の記録面RSとを相対的に主走査方向に周速度VDで移動させる」ことは、本願発明の「投影線(16)によって定まる方向に直角に、かつ版(28)の表面に対して接線方向に速度成分vで動く版(28)上の、対象物線(14)の投影線(16)内に光源(12)の画点(210)を生成する」ことと等価である。 引用例2発明の「発光タイミング制御部6」は、本願発明の「時間遅延装置(222)」に相当し、引用例2発明の「発光タイミング制御部6」が「最もドラム回転方向で上流側にある記録位置から副走査方向に延ばした標準記録線SBLからの偏差ΔBCiと、ドラム2の周速度VDとから求めた、複数のレーザダイオードの各レーザダイオードLDi毎の遅延時間TRi=ΔBCi/VDだけ遅延させて、光源部10に画像信号を入力する」ことによって「レーザビームの記録位置の主走査方向のズレの影響を良好に補正でき、良好に潜像を記録する」ことは、本願発明の「各光源(12)をオン/オフする制御装置(216)を有し、該制御装置(216)に、個々の光源によって定まる平面内での前記対象物線に対する個々の光源の位置のずれが補償されるように、該制御装置の、各光源(12)に対する作動開始時点をそれぞれの距離siにしたがってずらす時間遅延装置(222)が付属し、」「前記時間遅延装置(222)は、画点(210)が前記作動開始によって生成されるように、投影点が前記対象物線の投影線上に位置することになる第1の光源(12)の作動開始時点に対し相対的に、他の各光源を、付属する画点(210)も、該他の光源の付属する投影点が前記対象物線(14)の前記投影線(16)上にあるときに生成されるように、前記第1の光源(12)の前記作動開始時点から時間的にずれてオン」していることに相当する。 したがって、両者は、 「投影線(16)によって定まる方向に直角に、かつ版(28)の表面に対して接線方向に速度成分vで動く版(28)上の、対象物線(14)の投影線(16)内に光源(12)の画点(210)を生成するために、前記対象物線(14)に対して、画像形成装置の製造に基づく距離si(iは光源(12)の番号)を有する、ダイオードレーザバー上の複数の前記光源(12)と、該各光源(12)をオン/オフする制御装置(216)とを有し、該制御装置(216)に、個々の光源によって定まる平面内での前記対象物線に対する個々の光源の位置のずれが補償されるように、該制御装置の、各光源(12)に対する作動開始時点をそれぞれの距離siにしたがってずらす時間遅延装置(222)が付属し、また画点(210)の列によって印刷点のフィールドを生成するために使用され、隣接する生成すべき印刷点同士の距離hを有している、画像形成装置において、 前記時間遅延装置(222)は、画点(210)が前記作動開始によって生成されるように、投影点が前記対象物線の投影線上に位置することになる第1の光源(12)の作動開始時点に対し相対的に、他の各光源を、付属する画点(210)も、該他の光源の付属する投影点が前記対象物線(14)の前記投影線(16)上にあるときに生成されるように、前記第1の光源(12)の前記作動開始時点から時間的にずれてオンする 画像形成装置。」で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2) 本願発明では「画像形成装置の製造に基づく距離si(iは光源(12)の番号)を有する、ダイオードレーザバー上の複数の光源(12)」「の投影点の、前記対象物線(14)の前記投影線(16)からの距離が、隣接する印刷点同士間の距離hのn倍(nは自然数)よりも大きい場合、前記光源(12)によって生成されるべき、前記投影線(16)に対して最も近い距離を有する印刷点の画像情報を用いて当該光源(12)の制御が行われ、前記制御装置は、前記版上の点が遅延時間間隔内で実質的に距離(ks_(i)-nh)(kは対象物線(14)と投影線(16)との間の投影比を示す)だけ進むように前記光源(12)をオン」しているのに対して、 引用例2発明では「発光タイミング制御部6」が「最もドラム回転方向で上流側にある記録位置から副走査方向に延ばした標準記録線SBLからの偏差ΔBCiと、ドラム2の周速度VDとから求めた、複数のレーザダイオードの各レーザダイオードLDi毎の遅延時間TRi=ΔBCi/VDだけ遅延させて、光源部10に画像信号を入力」しているにすぎず、本願発明のように「投影点の、前記対象物線(14)の前記投影線(16)からの距離が、隣接する印刷点同士間の距離hのn倍(nは自然数)よりも大きい場合」にどの程度の遅延時間とするかを明示していない点。 (相違点3) 本願発明では「時間遅延装置(222)が前記ダイオードレーザバーとコンパクトな構造形態に一体化され、かつプログラマルロジックまたはASIC(特定用途向け集積回路)を含んでいる」のに対して、引用例発明では「プログラマルロジック」または「ASIC(特定用途向け集積回路)」について言及がない点。 6.検討 6-1.引用例1発明との相違点1について 本願発明の「版上の点が遅延時間間隔内で実質的に距離(ks_(i)-nh)(kは対象物線(14)と投影線(16)との間の投影比を示す)だけ進む」ことについて、本願明細書の詳細な説明【0024】【0025】には、以下の記載がある。 「【0024】本発明による画像形成装置は、画点の列によって印刷点のフィールド、特に、隣接する生成されるべき画点が距離hを有しているフィールドを生成するために用いることができる。光源の距離s_(i)が、隣接する印刷点の、n倍の距離h/kよりも大きい場合(nは自然数を、kは投影比を示す)、対象線の投影線に対し距離が最も短い生成された印刷点の画像情報で当該光源を制御してもよい。この後、制御装置は、遅延時間間隔内で、点が版上を実質的に距離(ks_(i)-nh)(kは対象物線と投影線との間の投影比であり、nはInt(s_(i)k/h)、すなわちnhがs_(i)kよりも小さいhの最大の自然数倍数である)だけ進むように、前述の光源をオンする。 【0025】対象物線によって定まる方向に直角に、かつ版の表面に対して接線方向に少なくとも速度成分vで動かされる版上の対象物線の投影線内に、光源によって定まる平面内の対象物線に対して各距離s_(i)(添字iは光源の番号を示す)を有する、複数の光源の画点を生成する、本発明による方法は、この場合、次のステップを有する。第1の光源の投影点が対象物線の投影線上に位置することとなるとき、この第1の光源による照射が開始される。したがって、第2の光源は、この第2の光源の対応する投影点が投影線を通過するとき、第2の光源の対応する画点も対象物線の投影線上にあるように第1の光源の作動開始に対して時間的に遅れて作動が開始される。複数の光源を有する画像形成装置内の他の各光源についても同様の処理が行われる。」 したがって、本願発明では「隣接する生成すべき印刷点同士の距離hを有して」いることにより、「第2の光源は、この第2の光源の対応する投影点が投影線を通過するとき、第2の光源の対応する画点も対象物線の投影線上にある」ことになる。(下線は、当審にて付与。) これらの作動により、第1の光源の作動開始に対して時間的に遅れて作動が開始されることによって、光源に対応する印刷点すなわち画点が、最も距離が短い投影線に対して距離(ks_(i)-nh)だけ進むことで、該画点が投影線上にあるようにしていることが理解できる。 この点について、請求人も以下のように指摘している。 「引用文献1には「前記光源(12)の前記投影点の、前記対象物線(14)の前記投影線(16)からの距離が、隣接する印刷点同士間の距離hのn倍(nは自然数)よりも大きい場合、前記光源(12)によって生成されるべき、前記投影線(16)に対して最も近い距離を有する印刷点の画像情報を用いて当該光源(12)の制御が行われ、前記制御装置は、前記版上の点が遅延時間間隔内で実質的に距離(ksi-nh)(kは対象物線(14)と投影線(16)との間の投影比を示す)だけ進むように前記光源(12)をオン」することは全く記載されていません。」(平成22年7月23日付回答書) 他方、引用例1発明では、「LD1、LD2の主走査方向の距離aの分だけずれて同期検知素子8により受光され、LD1の第1ビームを検出した時の同期検知信号DETP1と、LD2の第2ビームを検出した時の同期検知信号DETP2が生成され、同期検知信号DETP1に基づいて第1LD制御部15aに出力すると共にと第2ビーム同期検知信号DETP2に基づいて第2LD制御部15bに出力する」ことにより、「LD1が常に先に発光し、その結果、LD1、LD2の主走査方向の配置位置がずれていても、主走査方向の位相同期がずれて斜線が途切れる等の問題が発生しない。」(上記(1d)参照。)ということが認められる。 そして、位相同期を一致させるべくLD2の主走査方向の走査時間間隔の分だけ遅延させ発光させる際に、なるべく近いタイミングで複数のビームを発光させることが自然であるから、主走査方向に特定間隔で繰り返される投影線のうちの近いものに一致させることは、当業者が適宜設計し得た事項である。したがって、上記相違点1に係る構成を採用することに、格別の困難性はない。 また、主走査方向に特定間隔で繰り返される投影線のうち、すべての投影点が同じ投影線に同期させる引用例発明1の場合には、投影点に用いる印刷点の画像情報は単純に同じ対象物線上に存在する画像情報を選択するだけでよいが、本願発明の場合には、本来の投影線に大きくずれる投影点について、線を書き込む画像形成の際に途切れることがないように、最も近い距離を有する投影線上の印刷点の画像情報を用いることになり、その選択するための工程が必要となる。この点を考慮すると、2つの光源の作動に時間的遅れを設けることで、線を書き込む画像形成の際に途切れることがないようにできる点で、引用例1発明と本願発明との間で差異はないが、印刷点の画像情報を用いる際には一応の差異があると言える。しかし、格別の効果の差異というものではない。 6-2.引用例2発明との相違点2について 本願発明の「版上の点が遅延時間間隔内で実質的に距離(ks_(i)-nh)(kは対象物線(14)と投影線(16)との間の投影比を示す)だけ進む」ことについて、本願明細書の詳細な説明【0024】【0025】には、以下の記載がある。 「【0024】本発明による画像形成装置は、画点の列によって印刷点のフィールド、特に、隣接する生成されるべき画点が距離hを有しているフィールドを生成するために用いることができる。光源の距離s_(i)が、隣接する印刷点の、n倍の距離h/kよりも大きい場合(nは自然数を、kは投影比を示す)、対象線の投影線に対し距離が最も短い生成された印刷点の画像情報で当該光源を制御してもよい。この後、制御装置は、遅延時間間隔内で、点が版上を実質的に距離(ks_(i)-nh)(kは対象物線と投影線との間の投影比であり、nはInt(s_(i)k/h)、すなわちnhがs_(i)kよりも小さいhの最大の自然数倍数である)だけ進むように、前述の光源をオンする。 【0025】対象物線によって定まる方向に直角に、かつ版の表面に対して接線方向に少なくとも速度成分vで動かされる版上の対象物線の投影線内に、光源によって定まる平面内の対象物線に対して各距離s_(i)(添字iは光源の番号を示す)を有する、複数の光源の画点を生成する、本発明による方法は、この場合、次のステップを有する。第1の光源の投影点が対象物線の投影線上に位置することとなるとき、この第1の光源による照射が開始される。したがって、第2の光源は、この第2の光源の対応する投影点が投影線を通過するとき、第2の光源の対応する画点も対象物線の投影線上にあるように第1の光源の作動開始に対して時間的に遅れて作動が開始される。複数の光源を有する画像形成装置内の他の各光源についても同様の処理が行われる。」 したがって、本願発明では「隣接する生成すべき印刷点同士の距離hを有して」いることにより、「第2の光源は、この第2の光源の対応する投影点が投影線を通過するとき、第2の光源の対応する画点も対象物線の投影線上にある」ことになる。(下線は、当審にて付与。) これらの作動により、第1の光源の作動開始に対して時間的に遅れて作動が開始されることによって、光源に対応する印刷点すなわち画点が、最も距離が短い投影線に対して距離(ks_(i)-nh)だけ進むことで、該画点が投影線上にあるようにしていることが理解できる。 この点について、請求人も以下のように指摘している。 「また、引用文献2には「前記光源(12)の前記投影点の、前記対象物線(14)の前記投影線(16)からの距離が、隣接する印刷点同士間の距離hのn倍(nは自然数)よりも大きい場合、前記光源(12)によって生成されるべき、前記投影線(16)に対して最も近い距離を有する印刷点の画像情報を用いて当該光源(12)の制御が行われ、前記制御装置は、前記版上の点が遅延時間間隔内で実質的に距離(ksi-nh)(kは対象物線(14)と投影線(16)との間の投影比を示す)だけ進むように前記光源(12)をオン」することは全く記載されていません。」(平成22年7月23日付回答書) 他方、引用例2発明では、「発光タイミング制御部6」が「最もドラム回転方向で上流側にある記録位置から副走査方向に延ばした標準記録線SBLからの偏差ΔBCiと、ドラム2の周速度VDとから求めた、複数のレーザダイオードの各レーザダイオードLDi毎の遅延時間TRi=ΔBCi/VDだけ遅延させて、光源部10に画像信号を入力する」ことにより、 「レーザビームの記録位置の主走査方向のズレの影響を良好に補正でき、良好に潜像を記録する」ことが認められる。 そして、主走査方向のずれの影響を補正する際に、なるべく近いタイミングで複数のビームを発光させることが自然であるから、主走査方向に特定間隔で繰り返される投影線のうちの近いものに一致させることは、当業者が適宜設計し得た事項である。したがって、上記相違点2に係る構成を採用することに、格別の困難性はない。 また、主走査方向に特定間隔で繰り返される投影線のうち、すべての投影点が同じ投影線に同期させる引用例2発明の場合には、複数のレーザダイオードの各レーザダイオードLDi毎の遅延時間TRi=ΔBCi/VDだけ遅延させて、光源部10に画像信号を入力する」ことになり、投影点に用いる印刷点の画像情報は単純に同じ対象物線上に存在する画像情報を選択するだけでよいが、本願発明の場合には、本来の投影線に大きくずれる投影点について、線を書き込む画像形成の際に途切れることがないように、最も近い距離を有する投影線上の印刷点の画像情報を用いることになり、その選択するための工程が必要となる。この点を考慮すると、レーザビームの記録位置の主走査方向のズレの影響を良好に補正できる点で、引用例2発明と本願発明との間で差異はないが、印刷点の画像情報を用いる際には一応の差異があると言える。しかし、格別の効果の差異というものではない。 6-3.引用例2発明との相違点3について 制御回路に「ASIC(特定用途向け集積回路)」を含ませることは、従来周知(上記引用例1 (1c)参照。)である。したがって、 相違点3に係る構成を採用することは、当業者が適宜なし得た事項である。 7.請求人の主張について 請求人は、平成22年7月23日付回答書で、以下のように主張している。 「本発明(請求項1と5の発明)はレーザダイオードバーを有する画像形成装置に関するものです。引用文献1でも複数のレーザダイオードを用いて画像データを書き込みますが、これらのレーザダイオードがレーザダイオードバー、すなわち複数のレーザダイオードを有する集積回路装置との記載はありません。 ・・・ 引用文献2の段落0050には確かに本発明と同様に、個々の光源によって定まる平面内での対象物線に対する個々の光源の位置のずれを補償するために、第1の光源の作動開始時点を基準として、他の各光源の作動開始時点を時間的にずらしてオンすることが記載されています。しかし、引用文献2でも複数のレーザダイオードがレーザダイオードバー、すなわち複数のレーザダイオードを有する集積回路装置との記載はありません。」 しかし、 複数のLDをユニット化したり、所定の間隔で整列させて光源部を設けることが従来周知(上記引用例1 (1c)、引用例2(2d) (2f)参照。)であり、集積化は従来慣用技術である。したがって、上記主張は採用できない。 8.まとめ 以上のことから、本願発明は、引用例1発明若しくは引用例2発明と、従来周知の技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 9.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項1以外の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-08 |
結審通知日 | 2010-10-13 |
審決日 | 2010-11-02 |
出願番号 | 特願2002-142924(P2002-142924) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 秀樹 |
特許庁審判長 |
柏崎 康司 |
特許庁審判官 |
伏見 隆夫 木村 史郎 |
発明の名称 | 複数の画点を投影線内に生成する画像形成装置 |
代理人 | 緒方 雅昭 |
復代理人 | 石橋 亮一 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
代理人 | 石橋 政幸 |