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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1234073
審判番号 不服2009-25033  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-17 
確定日 2011-03-17 
事件の表示 特願2000-325633「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月 8日出願公開、特開2002-126253〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成12年10月25日の出願であって、拒絶理由通知に対して平成21年4月1日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成21年12月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成22年5月7日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成22年7月7日に回答書が提出されている。

第二.平成21年12月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年12月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「 始動口への遊技球の入賞に応答して、大当り遊技状態を生起させるか否かを抽選により決定する抽選手段と、背景画像表示領域及び複数の識別情報表示領域を有し、前記背景画像表示領域に表示される背景画像を背景として、前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて識別情報の変動表示及び停止表示が可能な表示装置と、該表示装置における表示を制御する表示制御手段と、を備え、前記始動口への遊技球の入賞に応答して、前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて前記識別情報の変動表示が行われた後、前記識別情報の停止表示が行われ、前記複数の識別情報表示領域において停止表示された前記識別情報の組み合わせによって前記抽選手段による前記抽選の結果を報知する遊技機において、
前記表示制御手段は、
所定のリーチモードを実行することが決定された場合、
前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて前記識別情報の変動表示を行う際に、前記背景画像表示領域において第一の背景画像を表示し、
前記複数の識別情報表示領域のうち少なくとも2つの識別情報表示領域において停止表示された前記識別情報が同一内容となるリーチ状態を構成する際に、前記複数の識別情報表示領域において前記リーチ状態を構成する前記識別情報を表示した状態で、前記背景画像表示領域において無地画像を表示した後に、前記所定のリーチモードに対応する第二の背景画像を表示し、
前記複数の識別情報表示領域の全てにおいて前記識別情報を停止表示して、前記抽選手段による前記抽選の結果を報知する際に、前記背景画像表示領域において前記第一の背景画像を表示することを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって追加された箇所。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「識別情報の変動表示及び停止表示」が、「背景画像表示領域に表示される背景画像を背景として」行われる点を限定する補正である。
してみると、前記補正は、補正前の発明特定事項を限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-210435号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

【0015】まず図1において、パチンコ機10の遊技盤面12上には、複合装置14,第1種始動口30,大入賞口34,下部始動口62,一般の入賞口等を適宜に配置している。第1種始動口30は始動口センサ56を有し、パチンコ球が入賞すると通常の入賞口と同様に賞球(賞品球)を払い出す。・・・
【0016】図2に示す複合装置14には、天入賞口14a、普通図柄用の保留球ランプ20、特別図柄表示器22、特別図柄用の保留球ランプ28等が設けられている。・・・
【0024】次に、表示制御部200はメイン制御部100から送られる表示データを受けて、表示すべき図柄や画像等を適切に加工して特別図柄表示器22に表示する処理を行う。この表示制御部200はVDP(Video Display Processor )とも呼ばれ、CPU210,ROM202,RAM204,通信制御回路206,表示制御回路212等によって構成されている。CPU210は、ROM202に格納されている表示制御プログラムに従って特別図柄表示器22の表示制御を行う。・・・
【0026】まず、図4に示す第1種始動口処理は、第1種始動口30に対するパチンコ球の入賞判別を行う。すなわち、第1種始動口30にパチンコ球が入賞したか否かを判別する〔ステップS10〕。具体的には、図3において始動口センサ56から検出信号が出力された場合には入賞した(YES)と判別し、検出信号が出力されなければ入賞しない(NO)と判別する。そして、第1種始動口30にパチンコ球が入賞したときには、保留球数が上限値(例えば4)に達しているか否かを判別する〔ステップS12〕。保留球数が上限値に達していなければ(NO)、その保留球数を加算する〔ステップS14〕。この加算に伴って表示制御回路112に表示データを出力し、保留球ランプ28で点灯するLEDの個数を変える。その後、各種乱数の読み込みと記憶を行い〔ステップS16〕、第1種始動口処理を終了する。なお第1種始動口30にパチンコ球が入賞していない場合(ステップS10のNO)や、保留球数が上限値に達している場合(ステップS12のNO)には、何もせずにそのまま第1種始動口処理を終了する。
【0027】ここで、各種乱数には大当たり判定用乱数RA,大当たり図柄用乱数RB,リーチアクション乱数RC,確率変動用乱数RDがある。大当たり判定用乱数RAは、大当たりか否かを判別するための乱数である。大当たり図柄用乱数RBは、大当たり判定用乱数RAによって大当たりと判別された場合において、特別図柄表示器22に停止して表示する特別図柄を特定するための乱数である。リーチアクション乱数RCは、特別図柄表示器22に表示されている特別図柄によってリーチになった後、残りの特別図柄が停止するまでの変動パターンを特定するための乱数である。「リーチ状態」とは、未だに変動している残りの特別図柄を除き、他の特別図柄が大当たり図柄と一致している状態を意味する。確率変動用乱数RDは大当たりになった後に大当たりになる確率を変更するか否かを判別するための乱数である。
【0028】次に、図5に示す図柄変動処理では、特別図柄表示器22に特別図柄を変動して表示するための処理を行う。まず、保留球数が正数(保留球数>0)か否かを判別する〔ステップS20〕。保留球数が正数ならば(YES)、上記ステップS16で記憶した大当たり判定用乱数RAを読み込むとともに〔ステップS22〕、次回の処理に備えて保留球数を減算する〔ステップS24〕。そして、変動表示処理を行う〔ステップS26〕。この変動表示処理の具体的な処理内容について、図6を参照しながら説明する。
【0029】図6に示す変動表示処理では、まず「大当たり」か否かを判別する〔ステップS40〕。具体的には、上記ステップS22で読み込んだ大当たり判定用乱数RAが大当たり値と一致したか否かによって判別する。大当たり値は通常は1個であるが、遊技状態(例えば確率変動時)等によっては複数個としてもよい。もし、「大当たり」ならば(YES)、図4のステップS16で記憶した大当たり図柄用乱数RBを読み込み〔ステップS42〕、特別図柄を変動させ始めるべくステップS44に進む。当該大当たり図柄用乱数RBによって、最終的に停止して確定する予定の図柄(以下「停止予定図柄」と呼ぶ。)を決定する。一方、ステップS40で「はずれ」と判別されたならば(NO)、はずれ図柄を特別図柄表示器22に表示するため、はずれ図柄データをRAM104から読み込む〔ステップS60〕。その後、当該はずれ図柄データにリーチ図柄を含むか否かを判別する〔ステップS62〕。「リーチ図柄」とは、リーチになったときに停止して表示されている図柄である。ステップS62を実行するのは、最終的には「はずれ」になるが、途中でリーチになる態様である。もし、リーチ図柄を含むならば(YES)、ステップS44に進む。一方、リーチ図柄を含まないならば(NO)、ステップS64に進む。
【0030】そして、特別図柄の変動開始処理を行なった後に〔ステップS44〕、リーチ処理を行う〔ステップS46〕。ここで、図7を参照しながら変動開始処理の具体的な処理内容を、図8を参照しながらリーチ処理の具体的な処理内容をそれぞれ説明する。図7に示す変動開始処理はリーチに達するまでの第1期間における特別図柄の変動処理を行う。具体的には、まず特別図柄を変動させ始める〔ステップS70〕。変動開始は、左特別図柄72,中特別図柄74,右特別図柄76をほぼ一斉に行なってもよく、一つずつ順番に行なってもよく、その順番を問わない。その後、共通アクションを行う〔ステップS74〕。共通アクションとしては、例えば特定の変動パターンに従って中特別図柄74を変動させる(後述する図9?図11参照)。そして、必要に応じて他のアクション(他の変動パターンに従う図柄の変動)を行い〔ステップS76〕、左特別図柄72,右特別図柄76の変動を停止させ〔ステップS78〕、変動開始処理を終了する。
【0031】図8に示すリーチ処理はリーチになってから図柄を停止させるまでの第2期間における特別図柄の変動処理を行う。具体的には、まず図4のステップS16で記憶したリーチアクション乱数RCを読み込み〔ステップS80〕、リーチアクションを決定する〔ステップS82〕。例えば、図6のステップS42で決定した停止予定図柄とリーチ図柄とに基づいて図柄の関係を求め、当該図柄の関係と図8のステップS80で読み込んだリーチアクション乱数RCとに基づいて上記表1に従って変動パターンを決定する。なお、所要の条件が成立すると、表1における変動パターンα,β,γ,δ,ε(リーチアクション)の位置や個数等を変えてもよい。当該所要の条件としては、遊技機の種類,日時,遊技状態等に応じて適切に定める条件であって、当該条件は固定してもよく変化させてもよい。例えば、遊技球が所定領域に入賞または通過することや、大当たりしたときの特別図柄が特定図柄であること等のような条件がある。こうすれば変動パターンの出現確率が変化してゆくので、遊技者はどの変動パターンが大当たりになり易いのかが一時的に分からなくなる。したがって、遊技者は大当たりになる期待感を特別図柄の全てが停止するまで維持することができる。そして、その後は遊技を続けるにつれてどの変動パターンが大当たりになり易いのかを推測できる。
【0032】こうして決定したリーチアクションに基づいて、特別図柄表示器22にリーチになったことを表示する〔ステップS84〕。当該表示の際、遊技者にリーチを認識させるための表示をあわせて行なってもよい。当該認識表示としては、例えば「リーチ」の文字を表示したり、キャラクタを表示したり、所定のアニメーションを表示したり、あるいは画面22aを数回フラッシュさせる等がある。そして、ステップS82で決定したリーチアクションを行う〔ステップS86〕。当該リーチアクションとしては、共通アクションのみを行うか(ステップS86a)、他のアクションのみを行うか(ステップS86b)、あるいは共通アクションと他のアクションとの両方を行う(ステップS86a,S86b)。また、共通アクションを行なった後に他のアクションを行なってもよく、他のアクションを行なった後に共通アクションを行なってもよい。さらに、共通アクションと他のアクションの実行回数は任意であり、交互に繰り返し行なってもよい。
【0033】リーチ処理を終えると図6に戻り、特別図柄を停止させる〔ステップS48〕。具体的には、リーチとして先に停止させた左特別図柄72,中特別図柄74に加えて、停止することなく変動していた右特別図柄76を停止して表示する。・・・
【0039】上記実施の形態1では中特別図柄74の変動パターンを共通態様とした。この形態に代えて、左特別図柄72,右特別図柄76の変動パターンと、装飾図柄の表示との組み合わせを共通態様としてもよい。その一例を以下に示す。まず、共通態様を含み大当たりになる可能性の高いリーチアクションとして変動パターンδを行う例について説明する。例えば、図7のステップS70を実行すると、図14(A)に示すように特別図柄(左特別図柄72,中特別図柄74,右特別図柄76)とチャンス図柄(左チャンス図柄70,右チャンス図柄78)とをほぼ一斉に変動させ始める。その後、図14(B)に示すように特別図柄の変動領域を画面22aの全画面から部分領域80に小さくするとともに、部分領域80の上側領域を点滅させる。そして、図7のステップS74を実行すると、図14(C)に示すように左特別図柄72,右特別図柄76を同じ図柄で同期させながら変動させるとともに、これらの図柄と異なる変動速度で中特別図柄74を変動させる。当該特別図柄の背景には、装飾図柄としてのキャラクタ82を表示する。さらに図7のステップS74を実行し、左特別図柄72と右特別図柄76のみならず、中特別図柄74も一時的に停止する。左特別図柄72と右特別図柄76とは同じ図柄なのでリーチであり、図8に示すステップS84を実行してリーチ表示を行う。リーチ表示の一例を図15(A)に示す。
【0040】リーチ表示を行なった後は、図8のステップS86を実行してリーチアクションを行う。具体的には図8のステップS86aを実行し、図15(B)に示すように全ての特別図柄を同期して変動させる。こうして最終的には図6のステップS48を実行し、図15(C)に示す大当たり図柄「333」等を表示する。ここで左特別図柄72,右特別図柄76に注目すると、リーチ前後では同期して変動しており、両方の変動パターンに共通する共通パターン(共通アクション,共通態様)を含む。また、キャラクタ82も共通して表示されている。したがって、遊技者は大当たりになる可能性の高い変動パターンがリーチ後にも行われ、ひいては大当たりになることを期待する期待感を持つことができる。
【0041】次に、共通アクションを含まず大当たりになる可能性の低いリーチアクションとして変動パターンαを行う例について説明する。リーチ表示を行うまでの過程は変動パターンδの例と同様とし、リーチ後の変動パターンについて説明する。リーチ表示を行なった後は、図8のステップS86を実行してリーチアクションを行う。具体的には図8のステップS86bを実行し、図16(A)に示すように左特別図柄72,右特別図柄76を完全に停止させた状態で、中特別図柄74のみを変動させる。こうして最終的には図6のステップS48を実行し、例えば図16(B)に示す大当たり図柄「666」等あるいは図16(C)に示すはずれ図柄「636」等を表示する。・・・

また、摘記した段落【0039】?【0041】、【図14】(A)、【図15】(C)、【図16】(B)及び【図16】(C)の記載からみて、特別図柄を変動させ始める際及び特別図柄の変動停止の際には、特別図柄表示器22に装飾図柄としてのキャラクタ82を表示する背景とは異なる背景(以下「背景A」という。)を表示していることが見てとれる。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 第1種始動口30又は下部始動口62にパチンコ球が入賞したとき、保留球数が上限値に達していなければ、その保留球数を加算し、その後、各種乱数の読み込みと記憶を行い、図柄変動処理では、保留球数が正数ならば、大当たり判定用乱数RAを読み込むとともに、保留球数を減算し、変動表示処理を行い、該変動表示処理では、大当たりか否かを判別し、
特別図柄,チャンス図柄,背景図柄等を表示する特別図柄表示器22と、表示すべき図柄や画像等を適切に加工して前記特別図柄表示器22に表示する処理を行う表示制御部200と、を備え、
前記大当たり判定用乱数RAによって大当たりと判別された場合において、大当たり図柄用乱数RBで特定される特別図柄を特別図柄表示器22に停止して表示するパチンコ機10において、
前記表示制御部200は、
リーチアクションとして変動パターンαを行う例では、
左特別図柄72,中特別図柄74,右特別図柄76をほぼ一斉に変動させ始める際に、前記特別図柄表示器22に背景Aを表示し、
その後、特別図柄の変動領域を画面22aの全画面から部分領域80に小さくし、左特別図柄72,右特別図柄76を同じ図柄で同期させながら変動させるとともに、これらの図柄と異なる変動速度で中特別図柄74を変動させ、当該特別図柄の背景には、装飾図柄としてのキャラクタ82を表示し、次に左特別図柄72,右特別図柄76を完全に停止させた状態で、中特別図柄74のみを変動させるリーチアクションを行い、
最終的には大当たり図柄あるいははずれ図柄を表示し、その際には前記特別図柄表示器22に背景Aを表示するパチンコ機10。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
引用発明の「第1種始動口30又は下部始動口62」は、本願補正発明の「始動口」に相当し、以下同様に、
「パチンコ球」は「遊技球」に、
「特別図柄」は「識別情報」に、
「背景図柄」は「背景画像」に、
「特別図柄表示器22」は「表示装置」に、
「表示すべき図柄や画像等を適切に加工して前記特別図柄表示器22に表示する処理を行う表示制御部200」は「表示装置における表示を制御する表示制御手段」に、
「リーチアクションとして変動パターンαを行う例では」は「所定のリーチモードを実行することが決定された場合」に、
「左特別図柄72,中特別図柄74,右特別図柄76をほぼ一斉に変動させ始める際」は「前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて前記識別情報の変動表示を行う際」に、
「左特別図柄72,右特別図柄76を完全に停止させた状態」は「前記複数の識別情報表示領域のうち少なくとも2つの識別情報表示領域において停止表示された前記識別情報が同一内容となるリーチ状態」に、
「最終的には大当たり図柄あるいははずれ図柄を表示し」は「前記複数の識別情報表示領域の全てにおいて前記識別情報を停止表示して」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明において、第1種始動口30又は下部始動口62にパチンコ球が入賞したとき各種乱数の読み込みと記憶を行い、図柄変動処理で大当たり判定用乱数RAを読み込み、変動表示処理で大当たりか否かを判別することは、本願補正発明において「始動口への遊技球の入賞に応答して、大当り遊技状態を生起させるか否かを抽選により決定する」ことに相当するから、引用発明と本願補正発明は“始動口への遊技球の入賞を一つの条件として、大当り遊技状態を生起させるか否かを抽選により決定する抽選手段”を備える点では共通している。

b.引用発明の特別図柄が複数の領域で変動表示された後に停止することは、段落【0039】?【0041】及び【図14】?【図16】の記載等から明らかであるから、引用発明の「特別図柄表示器22」は、本願補正発明の「背景画像表示領域及び複数の識別情報表示領域」に相当する領域を有し、本願補正発明の「表示装置」が有する「背景画像表示領域に表示される背景画像を背景として、前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて識別情報の変動表示及び停止表示が可能」に相当する機能を有するものといえる。

c.引用発明において「特別図柄を特別図柄表示器22に停止して表示する」ことは、本願補正発明において「前記始動口への遊技球の入賞に応答して、前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて前記識別情報の変動表示が行われた後、前記識別情報の停止表示が行われ」ることに相当する。
また、引用発明では大当たり判定用乱数RAによって大当たりと判別された場合において、大当たり図柄用乱数RBで特定される特別図柄を停止して表示しており、その表示が大当たりか否かを判別した結果の報知となることは明らかであるから、引用発明の「パチンコ機10」は、本願補正発明の「前記複数の識別情報表示領域において停止表示された前記識別情報の組み合わせによって前記抽選手段による前記抽選の結果を報知する」に相当する機能を有するものといえる。

d.上記b.で述べたように、引用発明の「特別図柄表示器22」は、本願補正発明の「背景画像表示領域及び複数の識別情報表示領域」に相当する領域を有しているから、引用発明において「前記特別図柄表示器22に背景Aを表示」することは、本願補正発明において「前記背景画像表示領域において第一の背景画像を表示」することに相当する。

e.上記b.で述べたように、引用発明の「特別図柄表示器22」は、本願補正発明の「背景画像表示領域及び複数の識別情報表示領域」に相当する領域を有しており、引用発明の「装飾図柄としてのキャラクタ82」は、本願補正発明の「第二の背景画像」に相当するから、引用発明において「当該特別図柄の背景には、装飾図柄としてのキャラクタ82を表示」することと、本願補正発明において「前記背景画像表示領域において無地画像を表示した後に、前記所定のリーチモードに対応する第二の背景画像を表示」することとは、“前記背景画像表示領域において第二の背景画像を表示”する点で共通している。

f.上記c.で述べたように、引用発明において特別図柄の停止表示が大当たりか否か判別した結果の報知となることは明らかであるとともに、上記d.で述べたように、引用発明において「前記特別図柄表示器22に背景Aを表示」することは、本願補正発明において「前記背景画像表示領域において第一の背景画像を表示」することに相当するから、引用発明は本願補正発明の「前記抽選手段による前記抽選の結果を報知する際に、前記背景画像表示領域において前記第一の背景画像を表示する」に相当する機能を有するものといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 始動口への遊技球の入賞を一つの条件として、大当り遊技状態を生起させるか否かを抽選により決定する抽選手段と、背景画像表示領域及び複数の識別情報表示領域を有し、前記背景画像表示領域に表示される背景画像を背景として、前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて識別情報の変動表示及び停止表示が可能な表示装置と、該表示装置における表示を制御する表示制御手段と、を備え、前記始動口への遊技球の入賞に応答して、前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて前記識別情報の変動表示が行われた後、前記識別情報の停止表示が行われ、前記複数の識別情報表示領域において停止表示された前記識別情報の組み合わせによって前記抽選手段による前記抽選の結果を報知する遊技機において、
前記表示制御手段は、
所定のリーチモードを実行することが決定された場合、
前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて前記識別情報の変動表示を行う際に、前記背景画像表示領域において第一の背景画像を表示し、
前記複数の識別情報表示領域のうち少なくとも2つの識別情報表示領域において停止表示された前記識別情報が同一内容となるリーチ状態を構成する際に、前記複数の識別情報表示領域において前記リーチ状態を構成する前記識別情報を表示した状態で、前記背景画像表示領域において第二の背景画像を表示し、
前記複数の識別情報表示領域の全てにおいて前記識別情報を停止表示して、前記抽選手段による前記抽選の結果を報知する際に、前記背景画像表示領域において前記第一の背景画像を表示する遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明は「始動口への遊技球の入賞に応答して、大当り遊技状態を生起させるか否かを抽選により決定する」のに対し、引用発明は、第1種始動口30又は下部始動口62にパチンコ球が入賞しても、保留球数が上限値に達している場合には、各種乱数の読み込みと記憶を行わない、すなわち大当たりか否かの抽選が行われない点。

[相違点2]本願補正発明は「前記複数の識別情報表示領域において前記リーチ状態を構成する前記識別情報を表示した状態で、前記背景画像表示領域において無地画像を表示した後に、前記所定のリーチモードに対応する第二の背景画像を表示」しているのに対し、引用発明は、(イ)「左特別図柄72,右特別図柄76を完全に停止させた状態」(本願補正発明の「前記リーチ状態を構成する前記識別情報を表示した状態」に相当)となる以前(「左特別図柄72,右特別図柄76を同じ図柄で同期させながら変動させるとともに、これらの図柄と異なる変動速度で中特別図柄74を変動」させている状態)から、背景に装飾図柄としてのキャラクタ82を表示している点、(ロ)装飾図柄としてのキャラクタ82が「変動パターンα」(本願補正発明の「所定のリーチモード」に相当)に対応するものとはいえない点(キャラクタ82は、変動パターンδ(図15(A)及び(B)を参照)でも用いられている)、及び(ハ)背景Aを表示した後、特別図柄の変動領域を画面22aの全画面から部分領域80に小さくし、キャラクタ82を表示しているが、特別図柄の変動領域が小さくなっているとき背景が無地になっているか明らかでない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
パチンコ機の技術分野において、始動口へのパチンコ球の入賞に応答して、保留球数に関係なく抽選が行われるようにすることは、例えば、特開平10-295900号公報(特に、段落【0057】)、特開平11-192342号公報(特に、段落【0058】)及び特開2002-360838号公報(特に、段落【0042】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
よって、引用発明に周知技術1を適用し、引用発明において保留球数に上限値を設けず、保留球数が上限値に達しているかの判断を省略して、上記相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得る事項である。

[相違点2について]
遊技機において、リーチ状態となってから所定のリーチモードに対応する背景画像を表示することは、例えば、特開平11-179005号公報(特に、段落【0029】?【0030】)や特開平11-235433号公報(特に、段落【0040】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
また、画面を切り換える際に、フェードイン、フェードアウトを用いること、すなわち切り換え前の画面から無地の画面を介して切り換え後の画面とすることは、拒絶査定で引用された「アドビ・プレミア5実践講座」パソコンでビデオ編集別冊付録、株式会社玄光社、平成12年5月25日発行、P68?69に記載されるように一般に広く行われているとともに、遊技機においても、例えば、特開平10-151245号公報(特に、段落【0124】【0126】)、特開平9-91162号公報(特に、段落【0482】及び【0484】)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。
よって、引用発明に周知技術2及び3を適用し、「左特別図柄72,右特別図柄76を完全に停止させた状態」で特別図柄の背景を無地とした後に、「変動パターンα」に対応するキャラクタを表示し、上記相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

(4)まとめ
以上のように相違点1及び2は、いずれも当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1?3に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成21年12月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年4月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 始動口への遊技球の入賞に応答して、大当り遊技状態を生起させるか否かを抽選により決定する抽選手段と、背景画像表示領域及び複数の識別情報表示領域を有し、該複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて識別情報の変動表示及び停止表示が可能な表示装置と、該表示装置における表示を制御する表示制御手段と、を備え、前記始動口への遊技球の入賞に応答して、前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて前記識別情報の変動表示が行われた後、前記識別情報の停止表示が行われ、前記複数の識別情報表示領域において停止表示された前記識別情報の組み合わせによって前記抽選手段による前記抽選の結果を報知する遊技機において、
前記表示制御手段は、
所定のリーチモードを実行することが決定された場合、
前記複数の識別情報表示領域のそれぞれにおいて前記識別情報の変動表示を行う際に、前記背景画像表示領域において第一の背景画像を表示し、
前記複数の識別情報表示領域のうち少なくとも2つの識別情報表示領域において停止表示された前記識別情報が同一内容となるリーチ状態を構成する際に、前記複数の識別情報表示領域において前記リーチ状態を構成する前記識別情報を表示した状態で、前記背景画像表示領域において無地画像を表示した後に、前記所定のリーチモードに対応する第二の背景画像を表示し、
前記複数の識別情報表示領域の全てにおいて前記識別情報を停止表示して、前記抽選手段による前記抽選の結果を報知する際に、前記背景画像表示領域において前記第一の背景画像を表示することを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、「識別情報の変動表示及び停止表示」が、「背景画像表示領域に表示される背景画像を背景として」行われるという構成を省いたものといえる。
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「識別情報の変動表示及び停止表示」が、「背景画像表示領域に表示される背景画像を背景として」行われる点を限定する補正である。
そうすると、本願発明の構成要件の一部である「識別情報の変動表示及び停止表示」が、「背景画像表示領域に表示される背景画像を背景として」行われる点を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-12 
結審通知日 2011-01-18 
審決日 2011-01-31 
出願番号 特願2000-325633(P2000-325633)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 昌也土屋 保光  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
代理人 内藤 嘉昭  
代理人 森 哲也  
代理人 田中 秀▲てつ▼  

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