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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1234076
審判番号 不服2010-1067  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-18 
確定日 2011-03-17 
事件の表示 特願2006-217155「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日出願公開、特開2006-297154〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一、手続の経緯
本願は、平成13年8月9日に出願した特願2001-242397号の一部を平成18年8月9日に新たな特許出願としたものであって、平成21年6月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年8月5日付けで手続補正がなされ、同年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月18日付けで審判請求がなされるとともに、同日付け手続補正書によって明細書の一部が補正(以下、「本件補正」という。)されたものである。
なお、当審において、平成22年8月2日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、同年9月27日に回答書が提出されている。

第二、平成22年1月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年1月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正前・後の本願発明
本件補正は、補正前(平成21年8月5日付け手続補正による補正)の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「【請求項1】装着孔(13a)を有する遊技盤(13)と、該遊技盤(13)の前側から前記装着孔(13a)に装着される前構造体(40)とを備えた弾球遊技機において、前記前構造体(40)に対応して前記遊技盤(13)の裏側に装着される裏構造体(41)を備え、前記前構造体(40)と前記裏構造体(41)とは前記遊技盤(13)を前後に挟み込むように装着され、前記前構造体(40)には、遊技球を左右に往復移動させつつ減速させた後、前側に案内して前記遊技盤(13)の前側の下部側に落下させる球案内ステージ(53)が設けられており、前記前構造体(40)と前記裏構造体(41)とを互いに固定する固定手段(43)を、前記球案内ステージ(53)の左右方向中央に対応してその後側に設けたことを特徴とする弾球遊技機。」を、

「【請求項1】装着孔(13a)を有する遊技盤(13)と、該遊技盤(13)の前側から前記装着孔(13a)に装着される前構造体(40)とを備えた弾球遊技機において、前記前構造体(40)に対応して前記遊技盤(13)の裏側に装着される裏構造体(41)を備え、前記前構造体(40)と前記裏構造体(41)とは前記遊技盤(13)を前後に挟み込むように装着され、前記前構造体(40)には、遊技球を左右に往復移動させつつ減速させた後、前側に案内して前記遊技盤(13)の前側の下部側に落下させる球案内ステージ(53)が設けられており、前記前構造体(40)と前記裏構造体(41)とを前後方向に互いに固定する固定手段(43)を、前記球案内ステージ(53)の左右方向中央に対応してその後側に設けたことを特徴とする弾球遊技機。」と補正するものである(下線部は本件補正により追加された部分)。

上記本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「固定手段(43)」による固定の態様について、「互いに固定する」を「前後方向に互いに固定する」と限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(あ)刊行物に記載された発明
刊行物1:特開2001-112950号公報
(平成13年4月24日公開)
刊行物2:特開平8-155107号公報
刊行物3:特開2000-37524号公報

原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2001-112950号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は遊技盤に役物等遊技部材を簡単に装着できるようにし、デザインを重視したパチンコ遊技機およびパチンコ遊技機における遊技部材取付け構造に関する。」、
(1b)「【0016】図1において、遊技盤1を説明する。遊技盤1には円弧状の打球誘導レール2として、外レール2aが設けられ、かつその外レールの内側には球誘導通路を存して内側レール2bが設けられている。この打球誘導レール2に囲まれる遊技領域3には図柄表示装置、各種入賞口等遊技部材(第2ユニット)4が備えられている。5はこの遊技部材4のベースとなるベース部材(第1ユニット)である。前記遊技部材(第2ユニット)4としては、図柄表示装置10、その両側のランプ風車11、サイド飾り12、その内側に備えた左と右袖入賞口13、中央下部の第1種始動口14、普通電動役物15、その下方に大入賞口16、その両側の落とし入賞口17、左右のゲート等を含むものである。前記ベース部材(第1ユニット)5として、合成樹脂製ベース板50、50’等を含むものである。・・・
【0017】この発明は遊技盤1の前面に取付ける遊技部材(第2ユニット)4をビスを用いないで取着しうるようにしたものである。図2乃至図14において、遊技部材4の1例として図柄表示装置10の場合の取付け構造を説明する。遊技部材4の取付け構造は、遊技部材4と遊技部材の合成樹脂製ベース部材5とにより遊技盤1を挟み込み、遊技部材4とベース部材5の係合手段を相互に係脱させ、遊技部材4とベース部材5の位置決め手段を遊技盤の表裏の位置決め手段と相互に嵌合させて取付けできるようにしたものである。
【0018】図1および図2において、遊技部材(第2ユニット)4の図柄表示装置10は中央に開口20aを形成したほぼ四角形状の合成樹脂製器体20の前面上部に普通図柄装置21を備え、左右の球通過口入口22と、下部の内側に左右の球通過口出口23が形成され、中央下部には左右の球通過口出口23から出された球を中央に誘導して下方へ落下するステージ24が形成され、器体20の奥に表示窓孔25が設けられ、かつ器体20の背面に四角形の取付け枠30が形成されている。・・・
【0019】図12および図13において、遊技部材4の図柄表示装置10の取付け構造は、器体20の背面の取付け枠30の両側に第1の係合手段31が設けられ、かつその器体20の両側背面に遊技部材位置決め手段32が設けられている。取付け枠30に設ける第1の係合手段31として、取付け枠30の背面に第2の係合手段54の係受部57に係止しうる鉤状の爪33aが先端外側に形成された係止爪33が一体形成され、かつ遊技部材位置決め手段32として、器体20の背面上下に遊技部材位置決め凸部34が突設されている。
【0020】遊技盤1の材質は合成樹脂製、木製等で、遊技部材4の形状に対応する開口部が複数形成されている。図3、図6では遊技部材4の1例である図柄表示装置10用の取付け開口部40が形成された場合で説明する。この開口部40は遊技部材4の図柄表示装置10の取付け枠30、第1の係合手段31を嵌合しうる大きさに形成されている。遊技盤1の前面には該開口部40の上下位置に図柄表示装置10を取付けるための位置決め手段41として複数個の位置決め凹部(位置決め孔)43が設けられ、かつその背面には開口部40の両側にベース部材5を取付けるための位置決め手段42として位置決め凹部(位置決め孔)44が設けられている。
【0021】図3乃至図5に示すベース部材(第1ユニット)5は、コ字型に屈曲形成して中央に凹状取付け部51が形成されかつ両側に取付け片52が形成された合成樹脂製ベース板50で、その凹状取付け部51の中央に特別図柄表示窓53とその両側に第2の係合手段(被係合部)54が形成され、かつ両側の取付け片52にベース部材位置決め手段55が形成され、かつまた、ベース板50の背面には液晶ユニット取付け部61が形成されている。前記凹状取付け部51は前記遊技部材4の取付け枠30が挿入しうる巾とする。
【0022】図12および図13において、前記第2の係合手段(被係合部)54として、遊技部材4の係止爪33が通過する通過孔56と係止爪33を引っ掛け固定する係受部57が設けられている。該通過孔56は係止爪33の先端の爪を挿入しうるよう少し広く形成される。而して、係止爪33は弾性を利用して通過孔56の通過により加圧され、通過後復元力により爪を係受部57に掛け止めできる。
【0023】前記ベース部材5の両側の取付け片52には、ベース部材位置決め手段55として前記遊技盤1の背面のベース部材位置決め凹部44に嵌合しうるベース部材位置決め凸部(位置決め体)58が前面上下に所定の間隔をおいて突設されている。このベース部材位置決め凸部58が前記遊技盤1の位置決め凹部44に嵌合されて正確に位置決めされる。なお、64は取付け片52に設けたビス孔である。」、
(1c)「【0027】図9乃至図14において、この発明の遊技部材取付け構造により遊技部材4とベース部材5とで遊技盤1を挟み込んで係合手段、位置決め手段により取付ける方法を説明する。図9乃至図13における実施形態では、遊技盤1の前面側に遊技部材4を当て背面側にベース部材5を当て、遊技盤1の開口部40を通じて遊技部材4の取付け枠30、係止爪33を挿通し、該取付け枠30とベース板50の凹状取付け部51に挿入し、遊技部材4の両側の係止爪33を凹状取付け部51に設けた通過孔56に挿入時に通過孔56により係止爪が加圧され内側へ押圧されて通過し、通過した後加圧された係止爪33は弾性で復元し係止爪33が係受部57に引っ掛け固定される。・・・」。

したがって、引用刊行物1には、
「 遊技部材4とベース部材5とにより遊技盤1を挟み込み、遊技部材4とベース部材5の係合手段を相互に係脱させ、遊技部材4とベース部材5の位置決め手段を遊技盤の表裏の位置決め手段と相互に嵌合させ、遊技盤1の前面に遊技部材4を取着しうる、パチンコ遊技機において、
(a)前記遊技部材4の図柄表示装置10はほぼ四角形状の合成樹脂製器体20の前面上部に普通図柄装置21を備え、下部の内側に左右の球通過口出口23が形成され、中央下部には左右の球通過口出口23から出された球を中央に誘導して下方へ落下するステージ24が形成され、前記器体20の背面に四角形の取付け枠30が形成され、該取付け枠30の両側に第1の係合手段31として、取付け枠30の背面に第2の係合手段54の係受部57に係止しうる鉤状の爪33aが先端外側に形成された係止爪33が一体形成され、かつその器体20の両側背面に遊技部材位置決め手段32として、器体20の背面上下に遊技部材位置決め凸部34が突設され、
(b)前記遊技盤1は、遊技部材4の図柄表示装置10用の取付け開口部40が形成され、この開口部40は遊技部材4の図柄表示装置10の取付け枠30、第1の係合手段31を嵌合しうる大きさに形成され、遊技盤1の前面には該開口部40の上下位置に図柄表示装置10を取付けるための位置決め手段41として複数個の位置決め凹部(位置決め孔)43が設けられ、かつその背面には開口部40の両側にベース部材5を取付けるための位置決め手段42として位置決め凹部(位置決め孔)44が設けられ、
(c)前記ベース部材5は、コ字型に屈曲形成して中央に凹状取付け部51が形成されかつ両側に取付け片52が形成された合成樹脂製ベース板50で、その凹状取付け部51の中央に特別図柄表示窓53とその両側に第2の係合手段(被係合部)54が形成され、取付け片52にはビス孔64が設けられ、ベース部材5の両側の取付け片52には、ベース部材位置決め手段55として前記遊技盤1の背面のベース部材位置決め凹部44に嵌合しうるベース部材位置決め凸部(位置決め体)58が前面上下に所定の間隔をおいて突設され、このベース部材位置決め凸部58が前記遊技盤1の位置決め凹部44に嵌合されて正確に位置決めされる、パチンコ遊技機。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

本願出願前に頒布された特開平8-155107号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(2a)「【0011】図2中、10は、弾球遊技機としてのパチンコ機を示すものであり、このパチンコ機10は、その前面には遊技盤20を有し、遊技盤20の表面には、円弧状の外レール21及び内レール22の2本のレールからなる略円形状のガイドレール23で囲まれた略円形の遊技部30を備えている・・・
【0012】・・・また、前記遊技部30内のほぼ中央には、図2に示すように、複数種類の図柄を変動表示する変動表示装置50が設けられている。また、この変動表示装置50の下方には、図2に示すように、チューリップ型の始動口60が設けられ、この始動口60内には、遊技球の入球を検出すると、前記変動表示装置50による図柄の変動表示を開始させる始動口センサ61が設けられている。」、
(2b)「【0016】上記変動表示装置50は、図3に示すように、前面に位置する変動表示装置用のエスカッション90と、このエスカッション90の後方に配置された、例えばドットマトリックスで構成され、図柄の変動表示を行う変動表示器91とから構成されている。上記エスカッション90は、図1に示すように、遊技盤20に設けられた方形状の取付開口Hに、前面をガラス板40方向に向けて挿入され遊技盤20に固定される。
【0017】また、エスカッション90は、図1に示すように、大別して周囲を囲む略楕円の筒形に形成された枠部材100と、・・・とから構成されている。
【0018】上記枠部材100は、図1,5?7に示すように、楕円状の取付枠部101と、この取付枠部101から立ち上がって筒状をなした側壁102とからなり、例えばプラスチックで一体的に形成されている。・・・
【0019】上記取付枠部101には、図5?8に示すように、その裏面に、遊技盤20の裏面側にネジ止めによって取り付けるための支持棒103・・・が十字方向の位置に合計4本設けられている。・・・」。

したがって、引用刊行物2には、
「 遊技盤20表面の略円形の遊技部30内のほぼ中央には、複数種類の図柄を変動表示する変動表示装置50が設けられ、この変動表示装置50の下方には、チューリップ型の始動口60が設けられる、パチンコ機10において、
上記変動表示装置50のエスカッション90は、遊技盤20に設けられた方形状の取付開口Hに挿入され遊技盤20に固定され、
当該エスカッション90を構成する枠部材100は、楕円状の取付枠部101と、この取付枠部101から立ち上がって筒状をなした側壁102とからなり、上記楕円状の取付枠部101には、その裏面に、遊技盤20の裏面側にネジ止めによって取り付けるための支持棒103・・・が十字方向の位置に合計4本設けられている、パチンコ機10。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

本願出願前に頒布された特開2000-37524号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
(3a)「【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明によって提供される上記パチンコ機の好適な実施形態について図面を参照しつつ説明する。」、
(3b)「【0047】・・・図8に示すように、本実施形態に係るセンター役物50は、上記センター役物20と同様、本発明に係る図柄表示装置として機能し得る装置である。すなわち、本センター役物50は特別図柄を表示・変動する液晶ディスプレイ51を備えており、さらにワープ機構を備えた役物である。而して、液晶ディスプレイ51を包囲するように形成された本体部50aは所定の形状に予め成形された合成樹脂製であり、遊技盤1の中央部に設けられた取付け開口部(図示せず)にビスvによって取り付けられている。・・・」、
(3c)「【0049】一方、ワープ入口52に連通する球通路を通行した遊技球Bは、本センター役物50の裏面側を通って液晶ディスプレイ51の両サイドに設けられたワープ出口55a,55bから再びセンター役物50の表面側に送り出される。ここで、上記センター役物20と同様、液晶ディスプレイ51の下方部には、下棚板57が形成されており、両端から中央に向けて下がり傾斜が形成されている。このため、上記ワープ出口55a,55bから出た遊技球Bはそのまま下棚板57上を転動し、その中央部に設けられた放出部58から流下する。
【0050】一方、当該放出部58の真下には、本実施形態に係る第1種始動口60aを構成する入賞装置(固定入賞装置)60が装着されている。すなわち、本実施形態においては、ワープ入口52に遊技球Bを入れることによって、その遊技球Bを第1種始動口60a上に誘導することができる。」。
(3d)また、一実施形態に係る本発明のセンター役物の表面構成を示す正面図である【図8】には、「下棚板57の左右方向中央近傍に位置するビスv」が示されている。

したがって、引用刊行物3には、
「 液晶ディスプレイ51とワープ機構を備え、
前記液晶ディスプレイ51を包囲するように形成された本体部50aは、遊技盤1の中央部に設けられた取付け開口部に、ビスvによって取り付けられる、パチンコ機のセンター役物50であって、
前記液晶ディスプレイ51の両サイドに設けられたワープ出口55a,55bから出た遊技球Bを、前記液晶ディスプレイ51の下方部に形成された下棚板57上を転動させ、その中央部に設けられた放出部58から流下させ、その遊技球Bを当該放出部58の真下に装着されている第1種始動口60a上に誘導することができ、
前記ビスvは、前記下棚板57の左右方向中央近傍に位置するものである、パチンコ機のセンター役物50。」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

(い)対比・検討
本願補正発明と引用発明1とを対比・検討する。
(い-1)引用発明1の「開口部40」は本願補正発明の「装着孔(13a)」に相当し、以下同様に「遊技盤1」は「遊技盤(13)」に、「遊技部材4」は「前構造体(40)」に、「パチンコ遊技機」は「弾球遊技機」に、「ベース部材5」は「裏構造体(41)」に、「挟み込み」は「挟み込む」に、それぞれ相当する。
(い-2)引用発明1の「開口部40」は、「遊技部材4の図柄表示装置10用の取付け」のために形成され、「遊技部材4の図柄表示装置10の取付け枠30、第1の係合手段31を嵌合しうる大きさに形成され」るものであり、また引用発明1の「遊技部材4」は「ベース部材5とにより遊技盤1を挟み込み」、「遊技盤1の前面に取着」されるものであるから、引用発明1は本願補正発明の「遊技盤(13)の前側から装着孔(13a)に装着される前構造体(40)」及び「前構造体(40)に対応して遊技盤(13)の裏側に装着される裏構造体(41)」に相当する事項を備えている。
(い-3)引用発明1の「遊技部材4の・・・、中央下部には左右の球通過口出口23から出された球を中央に誘導して下方へ落下するステージ24が形成され」について検討すると、「ステージ24」から落下する球が遊技盤の前側の下部側に落下することは、パチンコ遊技機における技術常識であるから、引用発明1は本願補正発明の「遊技球を左右に往復移動させつつ減速させた後、前側に案内して(前記)遊技盤の前側の下部側に落下させる球案内ステージ(53)」と比較して、「遊技球を前側に案内して遊技盤の前側の下部側に落下させる球案内ステージ(53)」において一致している。
(い-4)引用発明1は「遊技部材4とベース部材5とにより遊技盤1を挟み込み、遊技部材4とベース部材5の係合手段を相互に係脱させ、遊技盤1の前面に遊技部材4を取着しうる」、即ち「前後方向に相互に係脱させ」るものであるから、引用発明1は本願補正発明の「前構造体(40)と裏構造体(41)とを前後方向に互いに固定する固定手段(43)」に相当する事項を備えている。
(い-5)引用発明1は、「遊技部材4とベース部材5の係合手段を相互に係脱させ」るもので、「遊技部材4背面の取付け枠30の背面両側に第1の係合手段31として、第2の係合手段54の係受部57に係止しうる鉤状の爪33aが先端外側に形成された係止爪33が一体形成され、ベース部材5の凹状取付け部51中央の特別図柄表示窓53の両側に第2の係合手段54が形成された」ものであり、また「遊技部材4の中央下部にはステージ24が形成され」ているものであるから、引用発明1は本願補正発明の「固定手段を、(前記)球案内ステージの左右方向中央に対応してその後側に設けた」と比較して、「固定手段を、(前記)球案内ステージの後側に設けた」において一致している。

よって、両者は、
「 装着孔を有する遊技盤と、該遊技盤の前側から前記装着孔に装着される前構造体とを備えた弾球遊技機において、前記前構造体に対応して前記遊技盤の裏側に装着される裏構造体を備え、前記前構造体と前記裏構造体とは前記遊技盤を前後に挟み込むように装着され、前記前構造体には、遊技球を前側に案内して前記遊技盤の前側の下部側に落下させる球案内ステージが設けられており、前記前構造体と前記裏構造体とを前後方向に互いに固定する固定手段を、前記球案内ステージの後側に設けた、弾球遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
球案内ステージが、本願補正発明では、遊技球を左右に往復移動させつつ減速させた後、落下させるのに対し、引用発明1では、左右の球通過口出口23から出された球を中央に誘導して下方へ落下させる点。
相違点2
前構造体と裏構造体とを固定する固定手段を、本願補正発明では球案内ステージの左右方向中央に対応してその後側に設けたのに対し、引用発明1では、球案内ステージの後側に設けた点。

上記相違点について検討する。
相違点1について
遊技球を左右に往復移動させつつ減速させた後、落下させる球案内ステージは、弾球遊技機において、例を挙げるまでもなく周知・慣用の技術であるから、左右の球通過口出口から出された球を中央に誘導して下方へ落下させる球案内ステージを有する引用発明1に基づいて、相違点1に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
相違点2について
引用刊行物2の図面全体、特に【図8】を参酌すると、引用発明2の「側壁102」は、「遊技球を前側に落下させるステージ」を示唆していると認められるから、引用刊行物2には「ステージの左右方向の略中央に対応して設けた固定手段(十字方向の下部の位置に設けられた支持棒103、及びネジ)」が示唆されていると認められる。また、引用発明3には「ステージ(下棚板57)の左右方向の略中央に対応して設けた固定手段(ビスv)」が記載されている。そうすると、「ステージの左右方向の略中央に対応して設けた固定手段」は弾球遊技機の分野において周知・慣用の技術と認められる。そして、固定手段をどこに設けるかは、組立作業時の容易性や固定後の堅牢性などを考慮して、当業者が適宜なし得る設計上の事項であることを併せ考慮すれば、球案内ステージの後側に固定手段を設けた引用発明1に上記周知・慣用技術を適用し、相違点2に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明による効果に格別のものは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(う)補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三、本願発明について
平成22年1月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、上記平成21年8月5日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第二、[理由](1)補正前・後の本願発明」に補正前として記載したとおりである。

(ア)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由に引用された引用刊行物1(特開2001-112950号公報)及び引用刊行物2(特開平8-155107号公報)並びに引用刊行物3(特開2000-37524号公報)に記載された事項は前記「第二、[理由](2)(あ)刊行物に記載された発明」に記載された事項と同様であるから、援用する。

(イ)本願発明と引用発明1との対比・判断
本願補正発明は、前記「第二、[理由](1)補正前・後の本願発明」で検討したように、本願発明を特定するために必要な事項である「固定手段(43)」による固定の態様について、「互いに固定する」を「前後方向に互いに固定する」と限定するものである。
そうすると、本願補正発明は、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するものであって、その本願補正発明が、前記「第二、[理由](2)(い)対比・検討」に記載したとおり、引用発明1及び周知・慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び周知・慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知・慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2011-01-12 
結審通知日 2011-01-18 
審決日 2011-02-02 
出願番号 特願2006-217155(P2006-217155)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 昌也土屋 保光  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 澤田 真治
川島 陵司
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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